非識字者もメールが読める
Bridging the divide between the having literacy and the not having
『アフリカNOW 』No.96(2012年11月発行)特集記事
執筆:斉藤龍一郎
今年3月27日に「サムスン、アフリカにて、スマートフォン戦略はじまる」というタイトルのニュースがアフリカビジネスニュースから配信された(1)。アフリカで急速に携帯電話の普及が進み、「今年の終わりには、携帯電話所有者数が、7億3800万に上ると予想」される中、「格安なスマートフォンの需要の伸び」がアフリカにあるという記事だ。一方で、今年7月23日付けの情報通信総合研究所のレポート(2)は「グーグルは2012年7月18日、Gmailを携帯電話で送受信できるサービス[Gmail SMS]をガーナ、ナイジェリア、ケニアで開始」と伝えている。スマートフォン利用の拡大は、データ通信の拡大、すなわち文字情報への新たなアクセスルートの拡大を意味しており、携帯電話で利用できる新サービス[Gmail SMS]も文字を読み書きできる人向けのものということになる。
読み上げツールを活用する視覚障害者たち
文字情報利用の拡大は、文字を読むことのできる人たちとできない人たちの間にある情報格差をさらに広げることになる。この情報格差を埋めるために何が必要だろうか。読み書きを身につけ、スマートフォンや携帯電話で各種の文字情報にアクセスし活用できる力を身につけるための教育の充実が必要であることは言うまでもない。だが、一朝一夕に成果が出てくるものではないことも周知のとおりだ。
この情報格差を埋めるためには、文字情報を音声に変えて聞き取るツールを活用している視覚障害者たちの文字情報との向かい合い方に学ぶところが大きい、と筆者は考える。2009年2月に『アフリカNOW』84号の特集「日本に滞在するアフリカ出身者の声」のために、スーダン障害者教育支援の会(CAPEDS)理事で全盲のヒシャム・エルサー(Hisham Elser)さんにインタビューを行った。そのとき彼は、スーダン大学に入学するための受験勉強をどのように行ったのかという質問に次のように応えてくれた。
僕は、ラジオの広告放送で知った受験問題集のテープを買って聴きました。何科目もあって、全部を買うととてもお金がかかるので、同じ高校に通っていた視覚障害者の友人と二人で半分ずつ買いました。今なら携帯電話でMP3のファイルを持ち歩いて聞くことができますから、カセットプレーヤーやCDプレーヤーを持ち歩く必要はありません(と語りながら、普段使っている携帯電話のメモリーに保存してある研究資料を、携帯電話の読み上げ機能を使い音声にしてくれました)。
このとき彼が使っていた日本製の携帯電話は、製造時にテキストメールの読み上げ機能が付されたものであった。彼に聞くと、アフリカ諸国で広く使われている携帯電話向けにフリーウェアのテキスト読み上げツールが公開されており、スーダンの視覚障害者はそのフリーウェアを活用しているようだ。
必要とする人たちのために文書やメールを声を出して読んでいる国際協力専門家やNGOスタッフは、手元のパソコンやスマートフォンあるいは携帯電話に読み上げツールをインストールして読み上げさせてみるとよい。録音の再生ではなく、その場でタイプした文章を読み上げていることがわかると、機械を自分で扱いたいという人も出てくるだろう。そこから、次への一歩が始まるに違いない。
- サムスン、アフリカにて、スマートフォン戦略はじまる
- Gmail SMS:ガーナ、ナイジェリア、ケニアで開始~既存サービスの新興国での展開