独立行政法人環境再生保全機構より平成24年度地球環境基金助成金を受けて実施した「アフリカの熱帯林の環境保全と日本をつなぐ生物多様性保全の教育・普及活動」の一環としてこのページを作成し、公開しています。
活動の目的
アフリカ熱帯林の急激な消失とともに象牙目的で密猟され頭数が急減している生物が増加している。しかし、日本での象牙への特化した需要にもかかわらず多くの日本人はこういった現状を知らない。それゆえ「アフリカ熱帯林の現状と日本との関係」の活動目的は以下のようになる;
1、現場経験に基礎をおいた実践的な生物多様性保全に関する環境教育資料を創出する
2、関連する分野の書籍の出版やセミナー・対話・ウェブサイト等による情報共有システムを通して多くの日本人に向けたグローバルな観点から環境教育・普及活動をめざす
背景
2011年度の象牙密輸は過去最悪となり、その背景には中国などによる増大する象牙の国際的需要がある。特にアフリカ中央部の熱帯林に棲息するマルミミゾウの象牙目的の密猟は横行し、その頭数は激減している。日本にもマルミミゾウの象牙の特化した需要があるが、マルミミゾウの密猟とその象牙の密輸に関する現状や、マルミミゾウの生存がグローバルな生物多様性保全へ寄与する重要性については、多くの日本人に知られていないのが現状である。こうしたアフリカの生物多様性保全に関する課題を、日本の環境保全教育活動と繋ぐ試みはこれまでない。
※マルミミゾウ:長鼻目の出現からはじめ、350万年前からは様々な環境条件に出会い、移動してきて進化してきた。今日ほとんどの人々に身近となっているゾウであり、棲息地はこれまでずっとアフリカ熱帯林に限定され、今日に至るまでその中で生存してきた(ステファン・ブレイク著/西原 智昭 翻訳(2012)の『知られざる森のゾウ -コンゴ盆地に棲息するマルミミゾウ-』を参照し、作成)。
概要
アフリカ中央部・コンゴ共和国の熱帯林にて長年にわたり生物多様性保全・自然環境保全に関わってきた日本人のもとに、生物多様性保全や生態学に詳しい日本人教育者を派遣する。その現場機会に基づいた環境教育資料を作成し、日本に広く普及する。すでに翻訳済の当地熱帯林に棲息するマルミミゾウに関する日本語書籍の自費出版を完隊し、その生存危機や生物多様性上の重要性に関する理解への普及活動の一助とする。日本人にほとんど知られていないこうした事情を、普及効果の考えられる日本人(動物園関係者、象牙を使用する伝統芸能関係者、関係省庁など)を主に対象として対話を実施し、地球規模でのマルミミゾウやアフリカの熱帯林の現状や保全の必要性を共に考えていく契機を提供していく。
※環境教育資料は上記に挙げた動物関係者や象牙を使う伝統芸能関係者などのように基本的に需要があってさらに関心を持っている人が対象となる。
活動内容
報告
熱帯林の伐採業の現状と自然環境やそこに住む野生生物への影響
熱帯林に暮らす人々にとっての開発…先住民たちの伝統的な生活や生業に与える影響
熱帯林地域におけるエコツーリズム
熱帯材、象牙を通して見える日本と中国、アフリカ熱帯林との関係
イベント
2016年11月19日/「野生生物の保全を目指して-ヨウムの事例から-」TSUBASA 第 11 回セミナー (AJF後援)
2016年11月13日/「コンゴの今後-子どもたちに地球上の自然環境を残せるのかどうか-」(AJF後援)
2016年10月14日/「ヨウム・ゾウ(象牙)、そして背景の裏側」.ワシントン条約締約国会議(CITES CoP17) 報告会(AJF共催)
2016年04月02日/「野生ゾウと象牙の現状・未来、これまでの自然保護団体のあり方ついて」象牙・皮 セミナー 和楽器の響きを次世代に伝えるために (AJF後援)
2014年08月26日/ TALK FOR AFRICA~コンゴ共和国で森と動物を守る人たちの活動
2012年04月10日/AJFセミナーアフリカ大西洋岸の海浜部‐生物多様性保全と人間の活動 ~ガボン共和国・大西洋岸の事例より~
2011年04月20日/連続セミナー:アフリカの自然環境保全と日本人の伝統的自然観 第3回 日本の伝統的自然観とアフリカの自然のあり方
2011年04月06日/連続セミナー:アフリカの自然環境保全と日本人の伝統的自然観 第2回 アフリカ熱帯林地域での開発業と先住民・地域住民
2011年03月29日/連続セミナー:アフリカの自然環境保全と日本人の伝統的自然観 第1回 アフリカ熱帯林地域での自然環境と野生生物 質疑応答
2012年10月13日/世界遺産に登録されたアフリカ中央部熱帯林地域-生物多様性・環境保全の課題と日本との関係を考える
関連キーワード
「アフリカ熱帯林の現状と日本との関係」ページの「アフリカ熱帯林の環境保全と日本をつなぐ生物多様性保全の教育・普及活動」という事業を理解する上で必ず知っておくべきキーワードをピックアップしました。(アイウエオ順)
コンゴ盆地 (Congo Basin)
アフリカ中部のコンゴ盆地に広がる熱帯雨林は、アマゾンに次いで世界2番目の広さを持つ森林である。ただ、アマゾンの熱帯雨林とは違い、コンゴ盆地での森林減少率は比較的低いままだ。そのおかげで、この地域には広大な森林が今も残されており、「グリーン・ハート・オブ・アフリカ」と呼ばれている。
コンゴ民主共和国(DRC)内に300万ヘクタール以上にも亘って広がるマインドンベには、熱帯湿潤林やサバンナ、泥炭湿地林といった多様な生態系が見られる。人口密度は低く、住民の大半は狩猟や釣り、林産物の採集が主体の、昔ながらの生活を送っている。また、4大類人猿の一つで絶滅危惧種でもあるボノボの生息地であり、野生のものはもはやここにしかいない。
>>詳しくはこちら
サンガ3か国保護区複合圏 (Tri-national De La Sangha; TNS)
サンガ3か国保護区圏(TNS)は75,000ヘクタールで、ゾウ・スイギュウ・ゴリラ・チンパンジー・多様な鳥類・ガゼルなどを含む豊かな動植物相を有している。この3カ国保護区圏はこれら3国(コンゴ、カメルーン、中央アフリカ)の主導で2000年に創設された。これにはコンゴ湾岸の森林も含まれていて、その森林は地球の二酸化炭素を吸い込み、光合成によって酸素を作り出すために、ラテン・アメリカのアマゾンに次いで2番目に大きな地球の肺となっている。
サンガ3か国保護区圏(TNS)の文化的価値 TNSは、その自然がもつ価値をもとに世界遺産登録への提案がなされた。この登録は、貴重な生態系の維持および、危機にさらされている生物多様性の保護を目的としている。しかしながらTNSの緩衝地域は、狩猟採集、漁業を生業とする地元住民と先住民の豊かな文化遺産を守っている場でもある。TNSの熱帯林が手つかずでしかも豊かなままであることは、これらの共同体の文化存続と確実な生業維持のために、不可欠な要素である。
>>詳しくはこちら
生物多様性 (Biological Diversity)
「生物多様性」とは、簡単に言うと、地球上の生物が、バラエティに富んでいること、つまり、複雑で多様な生態系そのものを示す言葉である。
地球上の生命、その中には、ヒトも含まれれば、トラやパンダもおり、イネやコムギ、大腸菌、さまざまなバクテリアまで、多様な姿の生物が含まれている。これらの生きものはどれを取ってみても、自分一人、ただ一種だけで生きていくことはできない。多くの生命は他のたくさんの生物と直接かかわり、初めて生きていくことができる。このかかわりをたどっていけば、地球上に生きている生きものたちが、全て直接に、間接的につながり合い、壮大な生命の環を織り成していることが分かる。この、生きもののつながりを、私たちは「生物多様性」と呼んでいる。
>>詳しくはこちら
ヌアバレ・ンドキ国立公園 (Parc Nouabale Ndoki)
カメルーンのロビキ公園や中央アフリカ(RCA)のザンガ公園とともに、ユネスコ世界遺産リストに登録されているサンガ3か国保護区圏を構成している。
いかなる森林開発も被ったことがないという、ひじょうに特別な国立公園である。コンゴ共和国政府も野生生物保全協会(WCS)やコンゴ林業協会(CIB)と連携して、ヌアバレ・ンドキ国立公園周辺生態系管理プロジェクトを立ち上げている。
426.8ヘクタールで、ワリ・バイ、ベリ・バイ、モンディカの3サイトを有する。最初の2つのサイトは森林の中の開けた土地で、特異な植生であるうえ、土壌はミネラルが豊富なので多様な動物を引き寄せている。実際これらのサイトは、ゾウ・スイギュウ・ゴリラ・オナガザル・淡水の水鳥などが交じり合い、出会う場所となっている。
>>詳しくはこちら
伐採 (Logging)
広がる伐採地 コンゴ共和国北部のヌアバレ・ンドキ国立公園が制定されたのが1993年である。その時点で伐採会社があったのは、国立公園の南側の地域だけだった。東側は小さな村がいくつかあるだけの完全な熱帯林で、人がほとんど入れないような場所だったのである。 だが、この10年で国立公園の東側、北側でも始まり、国立公園の周辺が全て伐採区となった(西側は中央アフリカ共和国との国境)。伐採区を全部あわせると、ンドキ国立公園の約3倍の面積がある。それだけの広さの熱帯林が伐採区に変容し、分譲住宅の売り出しではないが、全て売却されたような形になったしまっている。
>>詳しくはこちら
マルミミゾウ ( African Forest Elephant)
マルミミゾウは長鼻目の出現からはじめ、350万年前からは様々な環境条件に出会い、移動してきて進化してきた。今日ほとんどの人々に身近となっているゾウであり、棲息地はこれまでずっとアフリカ熱帯林に限定され、今日に至るまでその中で生存してきた。
アフリカ大陸西部から中部にかけての熱帯森地帯に、絶滅の危機に瀕するマルミミゾウが生息している。マルミミゾウはサバンナにいるアフリカゾウと比べ、胴体が小さく、またまっすぐに伸びる細い牙と、なめらかな皮膚を持つのが特徴である。これらの特性により、マルミミゾウは密林の中でもスムーズに移動することができる。一頭のマルミミゾウが移動する地域は722平方マイル以上にも達し、これは中部アフリカの国立公園の多くよりも広範囲に及ぶ。現在生き残っているマルミミゾウのほとんどは主にガボン共和国、コンゴ共和国に生息する。またカメルーン共和国の南東部と中央アフリカの西南部の国境近辺にも多く生存している。
>>詳しくはこちら
ワシントン条約(CITES)
ワシントン条約は、人間による過剰な取引によって、絶滅するおそれのある野生生物を保護するため、1973年に設けられた、国際条約である。これは、世界の国家間で行なわれている、輸出や輸入を規制し、制限することで、流通する野生生物の数を抑え、間接的に密猟や狩猟、採集を減らして、野生生物を保護することを目的としたものである。さらに この条約は、生きている野生動植物だけではなく、動物の爪や骨といった体の一部や、死骸、それらを利用した加工品も取引の規制対象としている。
>>詳しくはこちら