熱帯林の伐採業の現状と自然環境やそこに住む野生生物への影響

コンゴ&カボンで国立公園を設置
コンゴもカボンも人口密度が低いため、村長の人が土地を管理している場合もあるが、国土の大部分は国が直接管理している。国はいつものブロックに分割して国土を把握しており、その一分を分譲住宅のように開発業に提供している。そのなかでも、動物がたくさんいて環境保全にとって重要なところを国立公園として設置した。伐採会社がここでの伐採を希望する場合は、その量に応じて税金をかけることを条件に許可している。木材にかけたその伐採による税金は重要な国家収入となっている。

広がる伐採地
コンゴ共和国北部のヌアバレ・ンドキ国立公園が制定されたのが1993年である。この国立公園の面積は東京都の約2倍、山梨県と同じくらいだ。その時点で伐採会社があったのは、国立公園の南側の地域だけだった。東側は小さな村がいくつかあるだけの完全な熱帯林で、人がほとんど入れないような場所だったのである。 だが、この10年で国立公園の東側、北側でも始まり、国立公園の周辺が全て伐採区となった(西側は中央アフリカ共和国との国境)。伐採区を全部あわせると、ンドキ国立公園の約3倍の面積がある。それだけの広さの熱帯林が伐採区に変容し、分譲住宅の売り出しではないが、全て売却されたような形になったしまっている。

密猟増加の3つの要因
1、伐採会社の道路整備による象牙の運び出しが容易に
熱帯林の場合、直径2~3mの大木をチェーンソーで切っている。こんな大木を切り倒すと周囲の木も倒れてしまう。木材として利用する木を1本倒すと周囲の木もなぎ倒されて開けるというのが熱帯林での伐採業である。しかし、切り出した樹木を運び出さないと商売にならないので、道を作ることとなったのである。 本来、熱帯林には、樹木がたくさんあり、草本類も生えていて、歩くことしかできない。このようにかつては沼地があって車で通ることができなかったところに伐採会社が協力して大きい丸太を何十本、何百本と置いて、その上に土を固めて大きい道を作った。またそれぞれの伐採地区をつなげている。伐採会社が道をつなげたことを契機として、コンゴ政府も首都ブラザビルから北部に向かう約900kmの道路を改良して国道として整備した。首都から国道を丸1日かけて走り、伐採会社の道路を通って隣の中央アフリカ共和国まで行くことができるルートが整備されたのだ。 その結果、人間の移動が楽になっただけではなく、密猟した野生生物をトラックに積んで運び出すことも可能となり、伐採区では6年前と比較して軒並びゾウの密度が減っている。反面、象牙を運び出すことも簡単になったことから象牙の違法取引が容易になる中で、生存の場所を失ったゾウが国立公園に入ってきることとなり、国立公園のゾウの密度は上がっている。また、コンゴの国内法では地元の人が野生生物をとって食べることを認めており、合理的な範囲内であれば、野生生物への影響もそれほどない。だが、道路ができたころにより、大量に野生生物を獲ってその肉を町へ運んで売るという動きが始まっている。伐採道路によってブッシュミート(地元の人たちが食べている野生生物の肉のこと)の交易が楽になり、ビジネス化してしまったのである。このようにして密猟や密輸などの違法行為が増加している。

2、携帯電話、インターネットの普及
携帯電話が普及することにより森の中にいてもアンテナさえあればどこにでも連絡できるようになった。そうすると、「ゾウの象牙があるから取りに来い」というような連絡を簡単にすることができ、象牙の取引が容易になってくる。携帯電話だと、簡単に連絡がとれるだけではなく、他人に取引の情報も漏れない。20年前だと、重要な連絡がある場会い、雇っていた現地のアシスタントに手紙を持たせ、30km離れた最寄りの村に歩いて届けてもらった。村長が誰かへの依頼状を来て少しお金も入れて渡してもらったのだった。 今では森にいても携帯電話がかかってくるだけではなく、インターネットも使えるようになった。その分、仕事も増えている。それは同時に、こういった様々な面で熱帯林へのアクセスが簡単になったことで、ゾウの密猟も増えていることを意味している。

3、簡単に武器が手に入る
熱帯林に住むマルミミゾウが密猟の対象になっている。象牙は、歯から進化したものなので、ゾウが倒れたからといってヒョイと引っこ抜けるものではない。首を切って頭を持って帰ることや象牙の根っ子のところまで切り裂くことなどといった作業が必要である。それゆえ、ゾウが死んでなければ象牙を取ることはできない。 ゾウを撃ち殺すのに使われている自動小銃(カラシニコフ)が出回っている。その理由としては、1990年以降コンゴで2度程起きた内戦の後始末がきちんとなされていないことといまだに隣のコンゴ民主共和国で内戦が続いていることが挙げられる。武器が簡単にしかも安い値段で手に入る、伐採用の道路ができたおかげで簡単に運べる、といった変化が密猟の増加につながっている。

※ 熱帯林とは?
地球の最後の氷河時代が1万年くらい前で氷河時代のころは、今の熱帯林地は草原だった。そこから森林が復活したということは何千年もの歴史があるということにほかならない。ただし、熱帯林の樹木は100年くらいで自然に倒れてしまい、成長サイクルが短い。その繰り返しで再生・維持されている。


<出典>
「アフリカNOW No.93」はこちら
「アフリカNOW No.96―特集 :アフリカ熱帯林が直面する課題と日本 Special topic: Issues African tropical forest is faced with」はこちら