=まだ拠出表明していない主要ドナー国に対する強いメッセージに=
岸田文雄・内閣総理大臣は8月27日、チュニジアの首都チュニスで開催された第8回アフリカ開発会議(TICAD8)の開会セッションで、途上国のエイズ・結核・マラリア対策に資金を拠出する国際機関、グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)に対して、3年間で最大10.8億ドルを拠出すると誓約した。この誓約は、グローバルファンドが現在行っている「第7次増資」の呼びかけに呼応したものである。
エイズ・結核・マラリアは未だに年間数百万人の命を奪い続けている地球規模感染症であり、21世紀に入って以降、その克服のための取り組みが世界的に続けられている。2002年に設立されたグローバルファンドは、「グローバルな課題にグローバルに資金を確保・供給する」という、この取り組みの中核を担う存在である。過去20年の間、様々な努力の結果、三大感染症の感染数や死者数は低減されてきた。しかし、2020年に始まる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより、対策は大きな打撃を受け、これまでの取り組みは後退した。また、パンデミック下における三大感染症対策で成果を上げるには、これまで以上に資金がかかる。その結果、2024-26年にグローバルファンドが拠出する資金を集める第7次増資の目標額は、第6次増資の目標額である140億ドルを28.6%上回る180億ドルに設定された。
第7次増資は本年2月、南アフリカ共和国のラマポーザ大統領、セネガルのマッキー・サル大統領などアフリカ5か国の首脳の主催による「増資準備会議」により開始され、9月18-19日に米国バイデン政権が主催する「増資会議」で成果が取りまとめられる。バイデン政権は第7次増資キャンペーンの開始後早々に、目標額の3分の1に当たる60億ドルの拠出を発表した。一方、第4位の拠出国であるドイツは5月20日、12億ユーロの拠出を決定したが、これは前回の拠出額(10億ユーロ)の20%増にとどまり、他のドナー国の拠出誓約にマイナスの影響を与えることが懸念されていた。また、第2位のフランス・第3位の英国はまだ拠出誓約を行っておらず、主要拠出国の一角を占める日本の拠出誓約が注目されていた。
今回の日本の拠出額である10.8億ドルは、前回の拠出額である8.4億ドルと比して28.571%増となる。今回の増資全体の目標額(180億ドル)の、前回の目標額(140億ドル)に対する増額割合(28.571%増)を正確に反映したものであり、日本の拠出誓約は、今回の増資における国際的な期待を正確に反映したものとなっている。日本はこの拠出表明によって、コロナ下におけるエイズ・結核・マラリア対策および保健システム強化に関する世界の期待に正確に応えるとともに、まだ拠出をしていないフランス・英国やカナダ、オランダ、北欧諸国などグローバルファンドへの主要拠出国等に対して、拠出増額に向けた強いメッセージを発するものとなった。
グローバルファンドは、日本の拠出表明を歓迎するプレスリリースを迅速に発表した。また、グローバルファンドへの日本の拠出額拡大に向けて取り組んできた日本の市民団体には、10.8億ドル、28.571%増という日本の拠出誓約を称賛する世界の市民社会の声が次から次へと届いている。三大感染症に取り組む世界の市民社会は、日本の発表を受けて、まだ拠出誓約を行っていない他の拠出国に対して、拠出誓約額を30%程度増額するよう強く求めていこう、との決意を新たにしている。
なお、本年(2022年)は、グローバルファンドの設立(2002年)から20年にあたる。グローバルファンドを支援する日本の民間イニシアティブである「グローバルファンド日本委員会」では、この機会にショートムービー「何事も夢から始まる:グローバルファンド20周年記念ドキュメンタリー」を8月24日リリースした。グローバルファンドの設立趣旨や取り組みについて総合的に理解できる内容となっている。