熱帯林地域におけるエコツーリズム

熱帯林は見通しが悪く、動物を実際に見るのはなかなか容易ではないという状態である。そのため、キリンやゾウが見られるサバンナ地方と違って、熱帯林の場合、大規模なツーリズムを行うことはできない。だが、熱帯林地域の国立公園でも、またその近くでもエコツーリズムの試みがある。自然環境や野生生物を守り、しかも経済的効果があるからエコツーリズムはいいことだと考えている人が多いだろう。エコツーリズムのメリットとしてあげられているのは、(1)雇用創出によって地元の人が定期的に収入を得ることと、(2)熱帯林における生物保全につながると同時に先住民がもともと住んでいる熱帯林の自然保護もできることがある。

しかし、実際に現場で実施してみると様々な課題が出てくる。それは、以前にはなかった貨幣経済的、政治的影響が及ぼすことである。ケニアやダンザにア、南アフリカなどの国では、このように国が収入を得ることにより、国家的事業ともいえるような状況である。反面、上記にも言及したように、熱帯林の場合は見通しができず、大規模で行うことはできないため、これらの国々と同じやり方ではツーリズムは発展しない。

ではどうするかというと、先住民の伝統的な歌やダンスをショートして見せるといった先住民を中心としたツーリズムをやることになる。現状では、先住民一人一人が得たお金は貯蓄や家族のために使われるわけではなく、お酒が飲みたいといった欲望充足に使われている。または、村に活用してもらうために渡したのが村長の私物になってしまっているケースもある。というように、収入機会の創出が地域貢献になっていない。一方で、国立公園の入園料が森林省に収められた後、それがいったいどこに行って何に使われているのかがわからない。国立公園の入園料から維持費やスタッフの経費が支出されるはずなのだがそのためのシステムがまだないのだ。

※エコツーリズムとは?
従来のツーリズムはビジネスで金もうけ中心という印象が強いが、エコがつくと自然環境に配慮しながら地域住民にも多少貢献するという印象があり、エコーツアに参加してよかったという自己満足を得るための言葉だともいえる。

<出典>
「アフリカNOW No.93」はこちら
「第二回 アフリカ熱帯雨林地域での開発業と先住民」記録はこちら