グローバルファンド増資会合:まずは保健系国際機関で最大の誓約額を達成

資金誓約を延期した英国・イタリアを始め、国際社会は目標達成のため更なる尽力が必要


保健系国際機関で最大の増資目標額

増資スローガン「Fight for What Counts」(かけがえのないもののために闘う)

長らく世界中で猛威を振るってきた三大感染症、エイズ・結核・マラリア。途上国の三大感染症対策に資金を供給する国際機関、グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)の2024-26年の資金を確保するために、今年の2月に開始された「第7次増資」を集約する、「第7次増資誓約会合」が9月21日、米国のバイデン大統領が主催して、米国ニューヨークで開催された。

グローバルファンドの増資プロセスは3年周期で行われる。前回の「第6次増資」は2019年2月、インドが増資準備会議を主催し、140億ドルを目標額として行われ、フランスのリヨンで開催された増資誓約会合で目標を達成して終了した。この資金は、2021-23年の3年間で活用される資金であったが、2020年から始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックと重なることになった。COVID-19禍で通常の対策ができなくなり、これまでの成果が大きく後退したこと、COVID-19の下での三大感染症対策は、より多くの資金がかかること、さらには、三大感染症対策を、強くしなやかで持続可能な保健のためのシステムのグローバルな構築に結び付けていく必要があること、等の理由から、「第7次増資」については、目標額が前回から約28.6%増の180億ドルに設定された。これは、保健関係の国際機関の増資プロセスの目標額としては最大のものである。

米国と日本が30%増のトレンドを形成

この目標額にまず率先して応えたのは米国のバイデン政権であった。バイデン大統領は3月26日、米議会に対して3年間で60億ドルの拠出を要請、これまで通り、最大、目標額の3分の1を支払うことを約束した。その後、主要ドナーとして、求められている28.6%増のトレンド作りにレールを敷いたのは日本であった。日本の岸田文雄総理は、8月27日にチュニジアで開催された第8回アフリカ開発会議(TICAD8)で上限10.8億ドル、前回の誓約(8.4億ドル)から正確に28.6%増の誓約を行った。これに影響を受け、もともと20%増の12億ユーロを誓約していたドイツは9月8日、さらに1億ユーロを追加し、30%増の13億ユーロに誓約しなおしたのである。この流れを踏まえ、今回の誓約会合の成果がどうなるかが注目されていた。

韓国は4倍増、アフリカ諸国も16か国が拠出誓約

今回の誓約会合では、新しく資金拠出を誓約した国、また、資金拠出を復活させた国が8か国あった。アフリカのガーナ・ギニア・マラウイ・タンザニア、中東・北アフリカからモロッコ、欧州からキプロス、アジアからインドネシア、そして中南米からパラグアイである。韓国は前回の2500万ドルから4倍増の1億ドルに拠出を拡大した。っまた、ケニアは66%増の1000万ドルを拠出した。資金を得て対策を実施する側のサハラ以南アフリカ諸国も、上記4か国以外に、ブルキナファソ、中央アフリカ共和国、コートジボワール、コンゴ民主共和国、エスワティニ王国、ニジェール、ナイジェリア、ルワンダ、南ア、トーゴ、ウガンダ、ジンバブウェと、16か国が拠出を表明した。このうち、南アは1300万ドル、ナイジェリアは1320万ドルを拠出誓約した。サハラ以南アフリカ諸国の拠出誓約額は合計6015万ドルとなった。

また、民間セクター・民間財団の拠出も前回より若干増え、12億3600万ドルとなった。民間財団の最大拠出者はゲイツ財団で、誓約額は前回より20%増の9億1200万ドルとなった。

主要ドナーについては、カナダが9億420万米ドル(34%増)、フランスが15億8569万米ドル(ドルベースで11%増、ユーロベースで23%増)、オランダが1億7884万米ドル(ドルベース4%増、ユーロベース15.4%増)、スペインが1億2916万ドル(ドルベース17%増、ユーロベース30%増)など、ドルベースもしくは当事国の通貨ベースで一定の増額をした国が目だった。また、サウジアラビアが30%増の3900万ドル、カタールも20%増の5000万ドルなど、湾岸諸国も一定の増額を果たした。

「未完」の増資会合:国際社会は目標額の達成に責任を果たせ

今回の誓約会合には、「未完」の要素もある。グローバルファンドの第3位の拠出国である英国は、グローバルファンドへのコミットメントを再確認したものの、この誓約会合では拠出誓約を行わなかった。これについて、英国で政府に拠出拡大を働きかけてきた市民社会組織「ストップエイズ」は、「グローバルファンドへの各国の温かい支援は、今後数週間以内に、増資目標額とのギャップを縮める確実かつ大胆な(英国の)資金誓約によって報われなければならない」「まだ誓約をしていない英国とイタリアのみが、ギャップを埋めることができる。英国が本当に世界のリーダーとして、必要な金額を届けることができるのかどうかに、世界の注目が集まっている」との緊急声明を出した。イタリアで同様にグローバルファンドへの拠出増の働きかけを行っている「イタリア国際保健ネットワーク」も、イタリア政府に対して、他の主要ドナーと同様に30%増の誓約を求める、と表明している。

今回の誓約会合の成果を踏まえ、まだ誓約を行っていない英国・イタリアを含めて、目標額の180億ドルに向けた37.5億ドルの不足分をどう埋めるのかが国際社会に問われている。COVID-19パンデミックの下で、2030年までの三大感染症の終息を達成するには、180億ドルは必須である。まずは英国およびイタリアの資金誓約の表明が待たれるところである。