「人々の保健運動」(PHM)呼び掛けの
共同声明に賛同
米国のトランプ大統領は、4月15日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19、2019年コロナウイルス病)対策に関連して、世界保健機関(WHO)への米国の義務的拠出金の拠出停止を命令しました。この措置に対しては、グテーレス国連事務総長が「いまはその時期ではない」として批判したほか、4月24日には、英国、フランス、ルワンダなどの首脳がテレビ会議で一堂に会して、WHOと連帯してワクチン開発等に取り組む、との意向を一斉に表明するなど、WHOへの連帯の動きが強まっています。
世界の市民社会の中でも、トランプ政権の姿勢を批判し、WHOとの協働を呼びかける声明が多く出ています。プライマリー・ヘルス・ケア(PHC)の促進と「すべての人に健康を」を訴える世界的な市民ネットワークである「人々の保健運動」(People’s Health Movement:PHM)は、「PHMは米国のWHOへの拠出停止を拒絶する」(PHM Condemns US Halt on Funding to WHO)と題する共同声明を起草し、世界の関係団体に賛同を呼びかけました。アフリカ日本協議会も、この声明に賛同し、COVID-19対策について、分断ではなく、WHOを軸とする国際的な協働で取り組むべきとの立場を共有しました。
◎PHMの「米国のWHOへの拠出停止を拒絶する」声明(英語)
https://phmovement.org/phm-statement-condemning-us-halt-on-funding-to-who/
PHMは、南アフリカ共和国でPHCの推進に当たり、世界のリーダー的存在でもあった故・デイヴィッド・サンダース氏(西ケープ大学教授)によって設立された世界的なネットワークで、日本では、愛知県にある(公財)アジア保健研修所(AHI)や(特活)シェアなどともつながりがあります。PHMはこの声明で、COVID-19がこれだけ広がる深刻な事態の中で、米国が義務的拠出金の支払いを拒否し、孤立・分断の道を歩んでいることを批判し、米国の民主的な世論、市民運動が、この動きを止め、国際的な協働の道に戻すための取り組みをすることを求めています。また、COVID-19に関するWHOの緊急アピールに対して、クウェート(6000万ドル)、日本(4750万ドル)、欧州連合(3300万ドル)など、各国が一定金額を拠出していることに言及しています。
また、同声明では、WHOの財政がもともと年間48億ドルと、米国の大きな病院と同程度の予算であり、米国疾病予防管理センター(CDC)の予算よりも20億ドルも少ないことを指摘した上で、80年代のレーガン政権以降の経済の新自由主義的傾向の中で、WHOへの各国の義務的拠出金が減らされ、各テーマごとの任意拠出金への依存度が深まり、WHOの財政基盤が弱体化して、結果として、保健政策について充分に公正・中立な立場で取り組むことができなくなっている現状を指摘しています。
2014年の西アフリカ3カ国でのエボラ・ウイルス病のアウトブレイクでも、今回のCOVID-19でも、WHOは、関係各国からの通知の遅れなどによって、初動が遅れ、PHEIC(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)やパンデミック宣言も、よりスピード感をもって取り組む必要があったとは言えます。また、台湾に関する扱いについては、WHOだけではありませんが、きわめて問題のある状況が続いており、公正な解決が図られるべきです。
しかし、COVID-19という緊急事態は、WHOが抱えるこうした問題にかかわらず、世界の保健問題に関する方針・戦略、ルール形成を行う唯一の国際機関であるWHOを軸に、世界がまとまらなければならないことを示しています。アフリカ日本協議会としても、「分断ではなく、連携・協働でCOVID-19を克服しよう」と呼び掛けていきたいと考えています。