変化を作り出すための十分な配慮 

IRINインタビュー

 

『アフリカNOW』 No.63(2003年3月31日発行)掲載

フォロゴロ・ラモスワラ
TAC(南(アフリカ治療行動キャンペーン)ハウテン州地域コーディネイター。1978年生まれ。1998年にHIV感染が判明した。その後、TACのザッキー・アハマットと出会い、抗エイズ薬の供給を求めるPHAの運動に参加。抗エイズ薬の特許権をめぐる「南アフリカ薬事法裁判」や政府の抗エイズ薬政策をめぐる「ネビラピン裁判」に、TACの主要なアクティビストの一人として関わる。昨年11月に、「地球規模のエイズ問題について考える10日間」のゲストスピーカーとして来日した。


■2001年11月30日/ジョハネスバーグ(南アフリカ)

フォロゴロ・ラモスワラはこの3年間、HIV/AIDSとともに生活している。
彼は23歳、他の同年代の南アフリカ人と同じように率直で将来への希望に満ちている。
だが、他の人々と違って彼は、この国で大流行しているHIV/AIDSについて、変化を作り出そうと考えている。
フォロゴロは大学生の最後の年の初めに、HIVに感染していることを知った。医師は、彼がHIVポジティブであることをさりげなく知らせた。
彼はHIVポジティブだったからといって、研究を止めはしなかった。「どうやってうまくやっていけばいいかわからなかった、でも、何とかやりぬいた」。
この年、フォロゴロはHIV/AIDSについて落ち着いて調べ、HIV/AIDSに関連する問題についての論文を書き上げた。
「わたしはHIVについて再考し、自分の人生の計画を一から立て直す必要があった」。
ジャーナリストとして、HIV/AIDSに関するコラムを書く仕事をするなかで、フォロゴロは同僚たちの不愉快な態度を改めるのが難しいということに気付いた。
「彼らは、まるでわたしがガラスでできているかのように扱うんだ。いつも『元気?』と訪ねる。もう十分だと思ったので、仕事を辞めたんだ」。
フォロゴロは現在、この国の先駆的なエイズ活動家のグループであるTAC(治療行動キャンペーン)の地域コーディネイターをつとめている。
彼は、大学時代から長い道のりを歩んできたこと、彼のエイズに対する理解が大きく広がってきたことを感じている。
南アフリカの人々は、とくに地方に住んでいる場合、HIV/AIDSについての適切な知識を持っていないとフォロゴロは言う。
「わたしが知る限り、HIV/AIDSは自分で管理し、ともに生きていくことができる病気だ。今、HIV/AIDSに関して起きている偏見は、この病気には大げさすぎる」。
しかし、政府の混乱したメッセージは、人々がこの病気を理解することを妨げている。
昨年(2000年)、ターボ・ムベキ大統領は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)とAIDS(後天性免疫不全症候群)の関係について国会で尋ねられ、その関連性を疑うという発言をした。
今年になってからムベキは、抗エイズ薬には毒性があるので、政府として南アフリカのHIV感染者に対して抗エイズ薬を供給するつもりはないと述べた。
これらのメッセージは何の助力にもならないどころか、破滅をもたらすものである、とフォロゴロは言う。
今年の世界エイズデーのテーマは、HIV/AIDSに対する「男性の役割」に焦点を当てているが、フォロゴロは自分と同じ世代の若者がエイズに関して無関心であることを心配している。
「若い男性は、HIV/AIDSが広がるスピードに対応していない。同世代の友人たちは、自分たちにとってエイズは関係ないかのように人生を楽しんでいる」。
若い世代に向けたエイズ啓発キャンペーンは、どれも単純であいまいすぎる、「真実を知る」ことが必要なのだ、とフォロゴロは言う。
20代の若い男性に、具体的にどんな危険があるのかということを率直に説明しないで、ただ「貞節であれ」というだけなら、人々はたくさんの人を相手にセックスし続けるだろう。
「もしわたしが他の20代の男性と同じ立場にいて、今知っていることを知らなかったとしたら、同じように振る舞ったと思う」と、彼は付け加えた。
人々に「コンドームを付けよう」と言うのはすばらしい、だがまず最初に、コンドームとは何か、どうやって使うのかということを知る必要がある、と彼は指摘する。
多くの人がコンドームを選ばないのは、彼らがコンドームをどう使うかを教えられていないからだ。「単にコンドームをあげるだけでは、何の解決にもならない」。
一方、「ラブライフ((Love Life)」のような啓発キャンペーンも、メッセージを普及するにはあまりに時間がかかりすぎる、とフォロゴロは言う。
「ラブライフ」とは、論争の的となっている若者対象のHIV/AIDS教育の方針だが、HIV/AIDSについてのメッセージがあいまいであるということで議論を巻き起こしてきた。
「これに費やしているお金を全部使って、何か現実的なこと、より早く人々に何かを伝えることに集中することが必要だ」と、彼は付け加えた。  世界エイズデーのようなイベントの時にだけHIV/AIDSについて報道するというメディアの姿勢も助けにならない、この病気に対して、もっとバランスのとれた形で報道すべきだと、フォロゴロは言う。
「わたしたちは、HIV/AIDSを自分たちの生活の一部分として位置づけていく必要がある」。
多くの人々が、HIV/AIDSについて何の注意も払っていない、とフォロゴロは悲しげに指摘する。
今年の世界エイズデーのキャンペーンは「私は注意する、あなたは?(I care…do you?)」だが、若い男性はそれを見て、「わたしは何に注意するのか、そして十分に注意しているか?」と問わなければならない。
なぜなら若い男性は、充分に注意していないからだ、と彼は言う。
「わたしは、自分の姉妹たち、そして感染していないすべての若い女性たちに配慮している。
さらにできる限り多くの人たちに、エイズに注意するように話す。彼・彼女らが、自分たちの人生の中で『知らされた上での選択(informed choice)』ができるように」。
「わたしは、末期の病状にある人々に配慮している。なぜ彼らは、死を待つだけの状態に取り残されてだろうか」。
フォロゴロは最近、米国の人気ロックバンドREMと交渉し、この国にHIV/AIDSのホスピスをつくる資金を集めるためのコンサートを開催しようと計画している。
彼は保健省のマント・シャバララ=ムシマン長官に会って、「ホスピスを訪問したことがあるのか」と尋ねようと思っていたが、今はもうそんな機会を待つことはできないと言う。
「ムシマンはホスピスに行ったことなどないと思う。もし行って、私が見たのと同じような苦痛と苦しみを見たのなら、彼女は人々が死んでいくのを放置し続けるはずがない」。

  • 翻訳:保健分野NGO研究会事務局
    原文出典:IRIN (Integrated Regional Information Networks )PulsNews

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