パンデミック条約交渉、第2回の世界規模公聴会に市民社会として動画を提出

(English follows Japanese)

開かれたプロセスで進められる条約制定交渉に市民社会の声を

コロナ禍を踏まえ、今後、より頻繁に予想されるパンデミック(地球規模感染症)に地球規模でどう備え、取り組むか…。この難しい課題に取り組むために、現在、世界各国は、世界保健機関(WHO)のプラットフォームを活用して「パンデミック条約」の制定に向けた交渉を行っています。

交渉は定められた手続きに沿って、透明で公開されたプロセスで進められています。交渉の進行役になっているのは、2021年12月に設置された「多国間交渉主体」(INB)の「ビューロー」を構成する6ヵ国。日本も、WHO西太平洋地域の代表として「ビューロー」に加わっています。

2022年7月には、各国が提出した論点を統合して、「ワーキング・ドラフト」が発表され、これをもとに、「第2回INB会合」が開催、今後のプロセスが決まりました。「ワーキング・ドラフト」へのコメント受付が9月15日まで、また、8月から10月までに地域別のコンサルテーション、9月29-30日には、様々なステークホルダーから意見を聞く「公聴会」(パブリック・ヒアリング)が開催されます。この公聴会は、全世界で参加を希望する団体が90秒の動画を撮影・登録し、寄せられた動画を統合・編集して、29日・30日の各3時間、合計6時間にわたって上映する形で実施されます。その内容は、11月に発表される「第1ドラフト」に反映されることになっています。

国際保健に取り組むNGO・市民社会のネットワークである「GII/IDI懇談会NGO連絡会」(代表:稲場雅紀・アフリカ日本協議会共同代表)は、パンデミック条約交渉のステークホルダーの一つである「アネックスE団体」にノミネートされ、同交渉について直接、問題提起をすることが可能となりました。これもあり、私たちは、公聴会の呼びかけに応じ、90秒の動画を作成しました。私たちの意見を含め、世界から寄せられる市民社会の意見が、「パンデミック条約」を、真に世界の人々の命と生活をパンデミックから守る、意義のあるものになってほしいと思います。

※なお、提出については、残念ながら、この動画を提出するのではなく、WHOの設置した動画プラットフォームから撮影することになっており、そちらで別動画を撮影して提出しました。

<動画内容の翻訳>
GII/IDI懇談会NGO連絡会(英語名称:Japan CSO Network on Global Health)は、グローバルヘルスに取り組む日本のCSOのネットワークです。

「誰も置き去りにしない」(leave no one behind)は、最も重要な原則です。パンデミック条約は、人権を守るという責任を確保するとともに、診断薬、治療薬、ワクチンへの世界レベルでの公平なアクセスを確保するために、TRIPS免除や、「遺伝資源へのアクセスと公正な利益配分」(ABS)など必要なすべての措置をとることができるようにする必要があります。

また、「共有された、しかし差異ある責任」(Shared but Differentiated Responsibility)の原則に基づいて、研究開発および製造能力向上のための技術をグローバルに共有することは、地球規模のパンデミック対策にとって必須のものです。

日本におけるCOVID-19のパンデミックの経験では、脆弱性を持つ人々が取り残されるのを目の当たりにしました。 一方、日本の衛生、高齢化、NCDに対する長年の取り組みによって、日本は他の多くの国に比べて、COVID-19の重症化率を低く抑えることに成功してきました。

この経験を踏まえれば、「パンデミック条約」は、パンデミックの予防・備えと対策や、パンデミック以外の必須保健サービスの継続に十分な能力を備えた、弾力的で持続可能な保健システムを世界的に構築するための支援を中心におく必要があります。

COVID-19パンデミックが「非感染性疾患(いわゆる「生活習慣病」)を含むシンデミック」(様々な要因が重なり合って、多くの人が非感染性疾患を発症してしまう構造的な状態)の結果であることを踏まえれば、「パンデミック条約」が、非感染性疾患の予防と制御、そして「健康の社会的決定要因」へのアプローチすることは極めて重要です。

日本の市民社会の声に耳を傾けていただき、ありがとうございました。


(English)

Japan CSO Network on Global Health submitted the video for the Public Consultation of the Pandemic Treaty Negotiation

A public hearing of the Pandemic Treaty negotiation is scheduled on September 29-30. It is held by broadcasting the 90-second long videos that were sent from the stakeholders all over the world, including civil society. We, Japan CSO Network on Global Health, that has been enlisted in the Annex E of the Official Stakeholders of the Pandemic Treaty negotiation, sent a video of 90 seconds to the Secretariat of Intergovernmental Negotiation Body (INB) of WHO. The following is the transcript of the video statement.

Japan CSO Network on Global Health is a network of Japanese CSOs working on global health.
There is nothing more important than the principle of “leave no one behind”. The Pandemic Treaty should secure the responsibility to uphold human rights, and accommodate all the necessary measures,including TRIPS waiver and ABS, to ensure global equitable access to diagnostics, therapeutics and vaccines.
Global sharing of technology for R&D and manufacturing capacity is critical, based on a shared but differentiated responsibility principle.
Our experience of the COVID-19 pandemic in Japan saw people with vulnerabilities being left behind.
On the other hand, we saw that Japan’s long-standing efforts in sanitation, aging, and NCDs have supported the low rate of severe cases.
Learning from our experience, the Pandemic Treaty must prioritize support for building resilient and sustainable health systems globally, with sufficient capacity for PPR and continuation of other essential services.
Given that COVID-19 is the result of syndemic with NCDs, the treaty should address the critical necessity of NCDs prevention and control, and social determinants of health.
Thank you for listening to the voices of Japanese civil society.