政策提言の基盤 ネットワーキングの取り組み

アフリカ日本協議会は、国際保健の取り組みの中で、日本国内でも、海外への取り組みについても、さまざまな市民社会団体とのネットワーキングを重視してきました。それは、独りよがりでなく、公共性をもった「みんなの願い」を実現するという立場で政策提言を進めて来たからです。アフリカ日本協議会の国際保健におけるネットワーキングの取り組みについて紹介します。

日本国内:グローバルヘルス市民社会ネットワーク
(略称:GHネット)

英語名称:Japan CSO Network for Global Health

UHCキャンペーン2021
日本政府の「グローバルヘルス戦略」に関する意見交換会ののち、UHCデーキャンペーンに向けて写真撮影(2021年11月)

GII/IDI懇談会(GII/IDIに関する外務省・NGO定期懇談会)は、日本政府と市民社会の現存する対話枠組みの中で最も早く開始されたものです。1994年、日米両政府は、クリントン政権下で実施された「日米コモンアジェンダ」の中で、感染症と人口・リプロダクティブヘルスの分野に焦点を当て、「人口・エイズ分野に関する地球規模問題イニシアティブ」(GII: Global Issues Initiative on HIV/AIDS and Population)を共同で開始しました。その際に、米国側がこのイニシアティブへのNGOの積極的参画を日本政府に求めたことから、「GIIに関する外務省・NGO定期懇談会」(GII懇談会)が開始されました。

その後、2000年の「沖縄感染症対策イニシアティブ」(IDI: Okinawa Infectious Diseases Initiative)が策定されたため、名称にIDIが加わり、「GII/IDI懇談会」となりました。同懇談会は、ほぼ2ヵ月に1回、グローバルヘルスの政策について、日本政府(担当:外務省国際保健戦略官室)と、グローバルヘルス市民社会ネットワーク(略称:GHネット、30団体が加盟、旧称:GII/IDI懇談会NGO連絡会(2023年12月に改称))の対話が続けられ、2024年10月までに169回の会合が行われています。AJFは2010年以来、GHネットの代表の立場にあり、事務局団体(2024年現在、(公財)ジョイセフと(公社)セーブザチルドレンジャパン)や、5団体で構成される幹事会とともに、政府との対話を担っています。同ネットワークは、加盟団体の年会費によって運営されています。

GII/IDI懇談会は、政府が1994年以降、定期的に策定・実施しているグローバルヘルスに関する戦略(沖縄感染症対策イニシアティブ(IDI:2000年)、保健と開発イニシアティブ(2005年)などを経て、現在、2023-30年をカバーする「グローバルヘルス戦略」を実施中です)の策定や実施への市民社会からの参画や提言を行ってきたほか、国際的にも、国際ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)デーなどのキャンペーンを実施しています。


<詳しく知りたい方へ>
GII/IDI懇談会(外務省ホームページ)
 こちら
GII/IDI懇談会の役割を詳しく紹介している報告書があります。「国際保健をめぐる政策決定プロセスにおける日本のNGOの役割と課題」(兵頭智佳・勝間靖 2009年 日本国際交流センター)


持続可能な開発資金枠組み達成に向けた市民社会ネットワーク(JFFネットワーク

2026年3月にフィリピン・マニラで行われた「アジア債務キャンペーン戦略会議」

2020年以降、世界は気候危機や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック、また、ウクライナ戦争など「複合的危機」に直面しています。2025年の米国のトランプ政権成立で、米国の対外援助が激減しました。また同政権が気候変動対策に完全に背を向けたことで、世界は保健や緊急人道支援等を含む社会セクターの開発資金の不足や、気候変動対策資金の不足に悩まされることになりました。さらに、ポスト・コロナのインフレを抑制するために各国が行った金利引き上げで、特に貧しい途上国が債務危機に陥ることになりました。

こうした現実の中で、世界の市民社会には、力を合わせて、開発資金や気候変動対策資金の拡大、また、途上国の債務救済に向けて、積極的な政策提言を行う必要が出てきました。日本は世銀・国際通貨基金(IMF)やアジア開発銀行など国際金融機関(IFIs)への世界有数の出資国であり、また、日本は円借款を中心にODAを展開してきたため、世界の多くの国に対して債権国となっています。こうしたことから、世界の市民社会の期待もあり、日本の市民社会として、2024年に「持続可能な開発資金枠組み達成に向けた市民社会ネットワーク」を設立して、開発資金・気候変動資金の拡大や、債務問題の解決に向けて政策提言を行うことになりました。

同ネットワークは、現在、共同実施団体が(特活)国際協力NGOセンター(JANIC)とアフリカ日本協議会の2団体、アドバイザー団体がアジア太平洋資料センター(PARC)、セーブザチルドレンジャパンなど5団体、ネットワーク参加団体が32団体おります。主な活動は以下の通りです。(組織の詳細→こちら(JANICウェブサイト)


1.日本政府(財務省・外務省など)や国会議員およびG7/G20などの国際会議に向けた政策提言
2.開発・気候資金・債務・租税など経済正義に関する勉強会の開催
3.国際NGOとの連携構築
4.国際NGOとの連携構築

JFFネットワーク イベント等のお知らせ

JFFネットワークで開催するイベント等については、以下のリンクをご覧ください。

2月16日 エミリア・レジェスさん(メキシコのジェンダー・気候変動・開発資金に取り組む市民社会リーダー)来日ワークショップ開催のお知らせ
◎日時:2月16日 午後3時~6時
◎場所:新橋駅前ビル6階「エミール・ガレ」(対面のみ)
◎詳細:こちら

2月17日 エミリア・レジェスさん来日記念セミナー開催のお知らせ
◎日時:2月17日 午後4時~5時30分
◎場所:オンライン
◎詳細:こちら


国際活動とネットワーク

アフリカ日本協議会は、国際保健の分野について、海外の市民社会のネットワーキングと政策提言の活動にも、積極的に参加しています。特に、エイズ・結核・マラリアの三大感染症に関わる世界および地域別のネットワークや、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関する市民社会のネットワークなどです。

三大感染症とグローバルファンドに関わるネットワーク

2017年「UHCフォーラム」の際に、WHOのテドロス事務局長と会合をしたアジア太平洋の市民社会ネットワーク(2017年)

アフリカ日本協議会は、グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)が2002年に設立された当初から、「エイズに関して、知的財産権の問題が大きく前進した今、積極的に、各国・地域レベルでのHIV/AIDSへの具体的な取り組みを前に進めていく」という、同基金との連携・協力を推し進める世界の市民社会と連携して、グローバルファンドを支える取り組みを行ってきました。2004年から09年までは、AJF国際保健ディレクターの稲場雅紀が、同基金の理事会の先進国NGO代表団にメンバーとして参加。2010年以降は、特に日本国内やアジア太平洋・アフリカなど地域レベルにおける市民社会の連携で、日本政府による同基金への資金拠出の拡大などに取り組んできました。

この関係で、グローバルファンドを支える世界の市民社会のネットワークである「グローバルファンド活動者ネットワーク」(Global Fund Advocates Network: GFAN)に日本から参加しているほか、アジア太平洋の枠組みであるGFANアジア太平洋(GFAN AP)の運営委員を務めています。また、アフリカに関しては、GFANのアフリカにおける枠組みである「GFANアフリカ」(事務局:WACi Health)や、グローバルファンドの「ジェンダー・権利・コミュニティ・イニシアティブ」(CRG)の地域プラットフォームを務める「東アフリカ地域国家エイズサービス組織ネットワーク」(EANNASO、本部タンザニア)および「必須医薬品アクセス連合」(RAME、本部ブルキナファソ)と連携しています。

<詳しく知りたい方へ>
それぞれのネットワークのウェブサイトは以下の通りです。
GFAN
 こちら
GFAN Asia-Pacific こちら
GFAN Africa  こちら

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関するネットワーク

市民社会ミーティング
UHCに向けては、保健の課題の中でも異なったテーマに取り組む市民社会が力を合わせている(2021年)

UHCは、リーマンショック以降の2012年頃から打ち出された、「すべての人に健康を」(Health for All)を実体化するための政策で、「誰もが、お金の心配をすることなく、必要な質の高い保健医療サービスを受けられる」ことを意味します。「持続可能な開発目標」(SDGs)のターゲット3.8にも取り入れられ、2030年までに実現ことが目標とされています。

このUHCに関して、2015年以降、「UHC2030」という、マルチステークホルダーでの国際調整機関が設立されています(世界保健機関(WHO)、世界銀行、経済協力開発機構(OECD)が共管)。
UHC2030の意思決定機関である「運営委員会」には、「北の世界」(The Global North、先進国)市民社会、「南の世界」(The Global South、途上国)市民社会、および保健において厳しい状況に置かれているコミュニティの3議席が設けられています。このUHC2030への、世界の市民社会の参画のための枠組みとして、「CSEM」(市民社会参画メカニズム)が設置されています。

アフリカ日本協議会は、2015年に東京で開催された国際UHCフォーラム、および2017年に開催されたUHCフォーラムについて、GII/IDI懇談会の枠で市民社会として参画、政策提言や海外の市民社会との連携・協力の役割を担いました。その後、2020年からはCSEMの諮問グループ(Advisory Group)メンバーとして役割を果たし、2021-22年には、国際保健ディレクターの稲場雅紀が、UHC2030の「北の世界」市民社会選出運営委員として、同機関のガバナンスに参画しました。また、「世界UHCデー」のキャンペーンに協力しているほか、世界各国のUHCの状況についてマルチステークホルダーでレビューする「UHC誓約進捗状況調査」(State of UHC Commitment Survey)にも、コア・チームのメンバーとして参画してきました。


<詳しく知りたい方へ>
UHC2030のウェブサイト こちら(英語)
CSEMのウェブサイト こちら(英語)
UHCに関してわかりやすく解説する「Health for All Toolkit」 こちら (英語)