2006年第4回 食料安全保障研究会公開セミナー 報告
開催日時:2006年7月15日(土)午後4時~6時
講師:廣瀬 昌平さん(日本大学名誉教授)
会場:丸幸ビル2F JVC会議室
講師の廣瀬さんは、著書「国際協力成功への発想」を基にした詳細なレジュメに加え、論文抜き刷りや図表などの資料も参照しながら、体験を踏まえた問題提起をしてくれました。また、調査で訪れたケニア、コンゴ民主共和国、ニジェール、ナイジェリアで撮影した写真をスライドで見せていただきました。
レジュメ
- アフリカの農民の大部分は自給的小農民(小農)である
- 小農とは
- 小農と土地制度、調査地を事例として
- アフリカ小農民の農業生産を不安定性にしている要因
- 小農民の自助努力なくしてアフリカ農業問題(食料不足、飢餓)の解決は無い
- 農村開発手法としての「環境資源共生型営農システム」の確立
- 「アフリカ農業の改良には近代的技術の導入が不可欠か」
- 農村開発の留意点は農耕技術の改善だけでなく、環境保全、保健医療、教育を包含した生活環境改善、インフラ整備(道路、貯蔵庫、製粉・精米所、配電など)が必要
- 内陸集水域(内陸小低地)での稲作の可能性
- 「ネリカ品種」の普及をどう考えるか
- 雑穀作物および根菜類の品種改良と作付体系の確立
- 営農システム(廣瀬、77~96頁)
- 営農システム
- アフリカの営農システムとその持続性
- 作物中心の営農システム
- 作付体系
「小農民の自助努力」として、「食料安定生産のための伝統的農法」「食料の調達可能性と生計維持」と並んで「非農業収入へのアクセス」「信用による食料、生活費の調達」「地域内外への移住と耕作地の拡散」といった農業技術外のさまざまな努力も紹介されていました。
質疑応答
Q:調査した農村では、どうやって現金収入を得ていたのか?
A:著書でも紹介したバナナ酒を作っている農村へは、町から商人が車で買い付けに来ていた。それ以外の農村では、近くで開かれる市場へ余剰生産物を持ち込んで販売していた。
Q:近くの市場へ持って行ってもあまり売り上げにはならないと思うが、もっと有利な市場へ持ち込むことはできないのだろうか?
A:道路が良くないし、車を使うことができない。旧ザイールのキブ湖近くの農村で調査している時に、夜明け前から近くで一番大きな都市であるブカブへ農産物を担いで歩き始める人々の群を見た。
Q:ナイジェリアでは、キャッサバの加工が農村での稼ぎ仕事のようだが?
A:キャッサバの生産地では、生のキャッサバを買ってきて、保存可能な形にして販売している人がたくさんいた。
Q:パボイルドライス(籾を付けたままゆでた米)はどうやって食べるのか?
A:写真で見てもらったように、お粥状にして食べるしかない。保存性を高めるための手段だ。インドでもパボイルドライスにして保存性を高めている。