2006年 食料安全保障研究会 公開セミナー 記録
開催日時:2006年1月20日 午後6時半~8時半
講師:ゲイ・カマルさん
会場:丸幸ビル2F JVC会議室
公開セミナー「WTO農業交渉とアフリカ農業」を開催しました。座長の吉田さんのあいさつの後、カマルさんから50分ほどプレゼンテーションを 受け、続いて1時間半近い質疑を行いました。
カマルさんのプレゼンテーションの狙いは、以下の通りです。
- Changes in the flows and structure of agricultural trade
- Agricultural subsidies: Rules, state and trends
- Implications of agricultural subsidies for sustainable development
- Reforming agricultural subsidies: What has been achieved?
- Options and strategies for subsidy reform in the context of the Doha negotiations
- Bottom line
プレゼンテーションで印象に残っているのは、以下のことです。
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- アフリカ諸国の伝統的輸出農産物(カカオ、茶、コーヒー、ピーナッツなど)の国際シェアが小さくなり、国際貿易におけるアフリカの存在そのものも小さくなっていること
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- かつては先進国市場への輸出がほとんどであったが現在は他の途上国への輸出が増えていること、また花・フルーツ・野菜・海産物など新しい輸出品の占める割合が高くなっていること
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- 農業補助金を考える視点として、食料安全保障、農業者の所得保障、景観・環境維持と農業があること
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- 日本政府は、「景観・環境維持と農業」を強く打ち出した主張をWTO農業交渉で展開していること(プレゼンテーションではありませんが、北海道庁が作成した「WTO関連用語集」には、EU諸国が「動物愛護」を農業交渉での論点として主張していることが紹介されていました)
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- 低開発国は、補助金を出すことができないので、先進国そして一部途上国(ブラジル、タイ、ベネズエラなど)が国内農業保護や輸出振興のために支出している農業補助金の全面的廃止を求めていること
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- EUとアフリカ諸国をはじめとする低開発国との間で結ばれているコトヌ協定は、締結国にEU市場への輸出割り当てを認めているので、この輸出割り当てを維持する補助金がなくなると、コトヌ協定締結国のEUへの輸出は減少する可能性が高い(バナナ、砂糖など)
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- 多くが低開発国であるアフリカ諸国における、農業技術革新や輸送費用減少につながるインフラ整備などが実現しなければ、農業補助金問題が解決してもアフリカの農産物輸出が増加するかどうかはわからない
- 質疑では、「農民組織の影響力はあるのか?」といった興味深い質問も出ていました。