第1回勉強会 報告
2001年8月4日(土)、食料安全保障の勉強会を東京都文京区の千石生涯学習館で行いました。参加者10名の自己紹介の後、講師の半澤先生から話を伺い、参加者による質疑応答とディスカッションを行うという形で進めました。今回は、TICAD3に向けた具体的な段取りを決める以前に、まずブレインストーミングで各参加者の頭を整理することから始めました。
半澤先生からの話は、「食料安全保障」という概念をめぐる議論の紹介とアフリカの「食料安全保障」を考えるに当たってポイントとなる部分の指摘が中心でした。アフリカ農業の持つ「脆弱性」とそれを補うさまざまなレベルで行われている工夫について、主に生産・供給の面から話されました。
その後、行われた質疑応答・ディスカッションで話題となったポイントを以下に示します。
1)押さえておくべきポイント
- 「安全保障」は国から始まったが、個人や村レベルの安全保障とは異なる。
- 主食という概念を決して固定して考える必要はない。
- 生物学的弱者(子ども等)への食料分配は重要な観点だ。
- 何をどう食べるか、という点が重要だ。
- アフリカの「食」を取り上げる時、「食糧」よりも「食料」が的確だ。
- 生業形態(農業、牧畜、採集狩猟、漁業等)の違いを考慮すべき。
- 生産手段を持たない人々(都市住民・農業労働者)の視点も非常に重要。
- 農民は様々な手段で情報にアクセスしている。
- 流通(インフラ・市場・仲買人)の観点は必要だ。
- 外部の大きな動き(構造調整/グローバリゼーション/援助等)をしっかり見る必要がある。
2)議論いくつか
・伝統
- 「伝統的な食形態に従う限り、栄養状態は悪くない。」
- 「必ずしもそうではない。」
- 「外からの変化に対する従来の対処が的確でなければ、食料事情は悪化する。」
・民営化の流れ
- 「民営化できるところは民営化するというのが世界の流れである。」
- 「利益の上がらないところにもサービスを提供する必要がある。それは民営化では達成できないのではないか。」
・NGOの役割
- 「プロジェクトのレベルでは、NGOでなければ成功しなかった例は無い」
- 「ミクロのレベルのプロジェクトは、より良いものを目指す限り、ODAもNGOも似てくる。」
- 「NGOは、公(おおやけ)に関わることを行う。国家や企業とはまた異なる視点を持つ」
3)いくつかの指摘
- 構造調整の結果、市場に対するアクセスが開かれたという面もある。
- 家庭内の食料保障を考えた場合、所得というのは重要な要素だ。
- 貧富の差が拡がったのは確かに言える。
- アフリカの恵まれた人々が貧困層にどう対していけるか、という視点も重要。
- 環境(自然・社会)の変化にどう対処していけるのか
- こういった問題を見る時に、自分のバックグラウンドにしがみつく傾向がある。
複合的な観点はどうしても必要。
以上、既に何度か指摘されてきた点も多くありました。今回、用意した資料は、AJFがこれまで行ってきた活動の報告書と会報43号(TICAD2の特集号。事務所にはもう残部がありません。)のコピー他、6点になります。この勉強会は、TICAD3を意識した取り組みではありますが、まずは頭の整理ということで進めたので、これまでAJFの活動に関わってきた人にとっては、ある種の「復習」をしているような気がしたかもしれません。
最後に、今後の動きについてお知らせいたします。
今回のような、公開を原則とした勉強会を年度内に後4回は行います。これまでAJFが行ってきた取り組みに連続する形で、テーマを設定します。アフリカの人々の生活に大きな影響を与えているマクロの動きと、それらに対して具体的な単位(国家、村、世帯等)で行われているさまざまな取り組みの両方を追いかけます。
マクロの動きとしては、以下の3点を考えています。
- 2KR(食糧増産援助)
- PRSP(貧困削減ペーパー)
- 食料の保障と知的所有権
このうち、「知的所有権」の問題は、企画委員会として、もう一方の「感染症」勉強会も含んで取り上げたいテーマのひとつです。最終的には、冊子(日本語)にまとめます。