今知る世界の食料危機No.26(2024年11月号)

2017年度まで、国際農林業協働協会が発行する季刊誌「世界の農林水産」に、GIEWSの資料の一部(”Crop and Prospects”および”Food Outlook”)を紹介するページが設けられていました。

2018年度、同誌は紙面リニューアルを行い、この紹介ページはなくなりました。

そこで、2017年からAJFが呼びかけて行っている「FAOの資料を読む学習会」参加メンバーが中心となって、”Crop and Prospects”の「外部からの支援を必要としている国」「世界の穀物の需給概況」「低所得・食料不足国の食料事情」の3項目の参考訳を作成し、紹介していくことになりました。

「今知る世界の食料危機 No.26」では、2024年11月に公開された”Crop and Prospects #3 November 2024”の該当ページを紹介します。

「FAOの資料を読む学習会」、「今知る世界の食料危機」の作成に関心を持ったら、info@ajf.gr.jへご連絡ください。

外部からの支援を必要としている国

アフリカ(33カ国)

食料生産・供給総量の大幅な不足

中央アフリカ共和国ー紛争、食料価格の高騰、異常気象

  • 最新のIPC分析によると、深刻な食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)にある人々の数は、IPCフェーズ4(緊急事態)の約50万8000人を含め、2024年4月から8月の間に250万人に達すると予測された。 この状況は、紛争や市民の不安の影響に加え、市場アクセスの制限や食料価格の上昇を反映している。
  • 2024年6月時点で、45万1000人以上が市民の不安と武装暴力の結果、国内避難民となっている。

ソマリア連邦共和国ー異常気象、社会不安

  • 2024年10月から12月の間に、約440万人が深刻な急性食料不安に直面していると推定される。これは、2020年から2023年にかけて続いた深刻な干ばつ、2024年の洪水、そして10月から12月の推定降雨量が平均を下回ることに起因している。紛争の激化も、高いレベルの急性食料不安に影響を与えている。

ケニア共和国ー干ばつ

  • 2024年10月から2025年1月の間、約170万人が急性食料不安の状態にあると推定されている。これは2020年から2023年にかけて続いた深刻な干ばつと2024年の洪水、10月と12月の推定降雨量が平均以下であることによる悪影響の結果である。

スーダン共和国ー紛争、避難、食料価格の高騰

  • 2024年10月から2025年2月の間、約2110万人(人口の45%)が、深刻な急性食料不安に直面していると推定されている。2023年4月中旬に勃発した紛争の影響により、経済活動が麻痺し、大規模な避難が引き起こされ、農作物の生産が激減した。
  • 特に懸念されるのは、ジャジーラ州、東・北・南ダルフール州で、10万9,000人がIPCフェーズ5(大災害)レベルの深刻な食料不安に直面していることである。
  • 紛争がさらに激化する最悪のシナリオでは、北ダルフール州と南コルドファン州、ジャジーラ州とハルツーム州の7つの地域で、飢饉のリスクがある。

ザンビア共和国ー生産量の低下、食料価格の高騰

  • 2024年10月から2025年3月の間、約580万人が急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]または危機以上)のレベルに直面していると推定されている。この数字は記録上最も高いレベルであり、干ばつが家計の食料供給と収入に与える影響の深刻さを反映している。
  • 食料価格は高騰し、食料に手が届きにくくなっており、脆弱世帯の食料へのアクセスがさらに制約されている。

ジンバブエ共和国ー生産量の低下、食料価格の高騰

  • 主食である穀物の生産量は、広範な干ばつによる不作と低収量のため、過去5年平均に比べて50%減少した。
  • 収穫量の少なさとともに、家計は食料価格の高止まりにも直面しており、これが深刻な食料不安を悪化させている。
  • IPCによる予測は得られていないが、食料危機に関するグローバル報告書の推計によると、干ばつの影響と食料価格の高騰により、2025年10月から12月の間に最大500万人が急性食料不安に直面すると推定されている。

食料アクセスの欠如の広がり

ブルンジ共和国ー異常気象、食料価格の高騰

  • 2024年6月から9月の間、約119万人が急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]または危機以上)のレベルに直面していると推定された。主な要因は、長引くマクロ経済的課題、高いインフレ率、そして2023年後半と2024年に発生した洪水による生計手段の喪失である。

チャド共和国ー社会不安、洪水、食料価格の高騰

  • 最新のCH分析によると、2024年6月から8月にかけての端境期に約378万人が深刻な急性食料不安を経験していると推定された。約42万人のスーダン難民とチャド帰還民を含み、約65万7000人がCHフェーズ4(緊急事態)にいる。
  • 食料安全保障状況は特に東部で懸念されており、2023年4月中旬以降、スーダンから逃げてきた難民や帰還民83万6000人の大半が東部に滞在している。ラク州では、長引く社会不安と国内避難民への人道支援延期のため、食料へのアクセスが引き続き制限されている。
  • 2024年10月中旬時点で190万人に影響を与えた洪水は、食料価格の高騰とともに、国全体の急性食料不安の状況を悪化させている。
  • 2024年9月時点では合計126万人の難民と庇護希望者が国内に居住していた。

コンゴ民主共和国ー紛争

  • 2024年10月に発表された最新のIPC急性食料不安報告書によると、2024年9月から12月の間に2560万人がIPCフェーズ3(危機)またはそれ以上の急性食料不安に直面している。これは、北東部諸州における紛争の激化によるもので、他の要因もあるが、紛争の激化が収穫の完了を妨げており、入手可能な食料が減少するとされている。
  • 2024年4月時点で、北キヴ、南キヴとイトゥリにおける合計730万人が紛争によって移動を余儀なくされた。

ジブチ共和国ー天候不順、食料価格の高騰、港湾における収入獲得機会の減少

  • 2024年7月から12月にかけて約28万5000人が急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面すると推定された。これは、2020年後半から2023年前半にかけての長期にわたる深刻な干ばつ、2023年後半と2024年前半における平均以下の降水量、食料価格の高騰、紅海経由の海上交通の途絶に伴う港湾活動の雇用への悪影響を反映している。

エリトリア国

  • マクロ経済の課題により、食料不安に対する国民の脆弱性が高まっている。

エチオピア連邦民主共和国ー異常気象、紛争、食料価格の高騰

  • 2024年の人道対応計画によると、2024年7月から9月までの端境期の間に、約1580万人が深刻な食料不足に直面していると正式に推定された。これは主に、2020年後半から2023年前半にかけての長期にわたる深刻な干ばつ、2023年後半と2024年前半における洪水、北部地域での紛争と食料価格の高騰の影響が長引いているためである。

マラウイ共和国ー生産の減少、食料価格の高騰

  • 2024年10月から2025年3月までの間に、推定570万人がIPCフェーズ3(危機)またはそれ以上の急性食料不安に直面している。この数値は、同期間における2023/24年推定より約30%高い値となっている。
  • 急性食料不安の増加は、干ばつで減少した2024年の収穫量と高止まりする食料価格の影響によるものである。

モーリタニア・イスラム共和国ー難民の流入

  • 最新のCH分析によると、2024年6月から8月の端境期の間に、CHフェーズ4(緊急事態)の約29000人を含む65万7000人が人道支援を必要としていると推定されている。これは、47万2000人以上が人道支援を必要としていると推定された前年と比較すると悪化している。しかし、2024年の増加の一因は、2024年のCH分析の地理的範囲が拡大したことにあると思われる。
  • マリ難民や受け入れコミュニティの間で人道的ニーズは依然として高く、新たな流入が続くオド・エシ・シャルギ地域ではすでに限られた資源にさらなる負担がかかっている。
  • 2024年9月時点で、同国は合計15万人の難民と庇護希望者を受け入れており、そのほとんどがマリからの難民である

ニジェール共和国ー治安悪化、洪水、経済状況の悪化、食料価格の高騰

  • 最新のCH分析によると、2024年6月から8月の端境期には、CHフェーズ4(緊急事態)の12万6,000人以上を含む約344万人が深刻な食料不足に陥ると推定される。これは2023年に人道支援を必要とすると推定された約328万人をわずかに上回るものである。
  • 広範囲にわたる洪水により、紛争の影響を受けているティラベリ州、タウア州、ディファ州、マラディ州の各地域で特に憂慮すべき状況が生じており、国内避難民がさらに増加し​​、避難民と受け入れ世帯の両方で急性食料不安が悪化している。2024年10月中旬時点で、洪水の影響は全国で140万人に及び、経済状況の悪化と相まって、脆弱な世帯の食料へのアクセスが著しく制限されている。
  • 2024年9月時点で、同国はナイジェリアとマリを中心に約41万7000人以上の難民及び庇護希望者を受け入れていた。

ナイジェリア連邦共和国ー紛争、マクロ経済危機、食料価格の高騰、洪水

  • 2024年6月から8月の端境期には、CHフェーズ4(緊急事態)の約100万人を含む約3,176万人が深刻な急性食料不安に直面すると推定されている。これは、2023年に深刻な急性食料不安に陥ると推定される2486万人を大きく上回っている。
  • 高水準の急性食料不安は、北部諸州における社会治安と紛争の激化によるもので、農業活動や市場が混乱し、2024年9月時点で約360万人近くの避難民を生み出した。
    一方で、ボルノ州、アダマワ州、ヨベ州では人道状況が悪化し、アクセスが依然として厳しく制限されている。
  • 高いインフレ率や国内通貨の急激な下落など、マクロ経済の悪化が脆弱な世帯の食料への経済的アクセスを制約している。
  • 最近では、北部地域での広範囲にわたる洪水により、2024年10月中旬時点で130万人が影響を受けている。そのうち約3分の1がボルノ州に集中しており、被災地の深刻な食料不安が悪化している。
  • 2024年9月時点で、主にカメルーンからの難民および庇護希望者10万9000人以上が同国に居住している。

南スーダン共和国ー経済の悪化、洪水、社会不安

  • 持続的な人道支援にもかかわらず、高騰するインフレ、不十分な食料供給、連年続く広範な洪水や地域間暴力の影響により、食料不安は依然として国民の大部分に影響を及ぼしている。全人口の半数以上にあたる約710万人が、2024年4月から7月の間に深刻な急性食料不安に直面すると予想されている。
  • 特に懸念されているのは、大ピボール行政区の約1万1000人、バール・エル・ガザル州北部のアウェイル・イースト郡の4万人、およびスーダンからの帰還者2万8000人がIPCフェーズ5(大災害)レベルの深刻な食料不安に直面している点である。

ブルキナファソー紛争、食料価格の高騰

  • 最新のCH分析によると、2024年6月から8月の端境期には273万人以上が深刻な急性食料不安に直面すると推定されており、それには、CHフェーズ4(緊急事態)の42万3000人以上が含まれている。
  • 急性食料不安は主に紛争の継続、特に非国家武装集団による包囲戦術によって引き起こされている。これにより生計と市場が深刻に混乱し、人道支援の提供が制限されている。2023年3月時点で、社会不安により約206万人が避難を余儀なくされている。食料価格の高騰により、全国で急性食料不安の状況が悪化している。
  • 2024年10月中旬時点で、洪水により全国で1万6500人が被害を受けた。
  • 2024年9月時点で、約4万1000人近くの難民と庇護希望者(そのほとんどがマリ出身者)が国内に居住している。

カメルーン共和国ー社会不安、食料価格の高騰

  • 2024年3月のCH分析によると、2024年6月から8月にかけて紛争、社会情勢不安、食料価格の高騰、人口移動、農業被害と損失をもたらした洪水の影響により、約250万人が深刻な食料不安(CHフェーズ3[危機]またはそれ以上)に陥ると推定されている。
  • 2023年には、極北州における非国家武装集団の攻撃により、国内避難民の数は100万人を超えている。

コンゴ共和国ー難民の流入、洪水

  • 2022年末現在、中央アフリカ共和国からの約3万人とコンゴ民主共和国からの約2万6000人の難民が、主にリクアラ県とプラトー県に居住している。受入れコミュニティは、既に食料不足と厳しい生計状況にあり、難民の食料は継続して人道支援に大きく依存している。
  • 2023年後半の洪水は、主に国の東部に住む30万人以上の人々を影響を及ぼし、推定2300ヘクタールの耕作地(収穫面積の1%未満)も浸水し、作物の損失と被害を引き起こした。

エスワティニ王国ー食料価格の高騰

  • 最新のIPC分析によると、2024年10月から2025年3月の間に、急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]またはそれ以上)に直面する人々の数は30万3725人である。
  • この数は前年比7%の上昇で、食料価格の高騰と経済成長の鈍化により、世帯における収入機会が減っていること起因する。2024年の乾燥した気候による農業生産への悪影響も急性食料不安状態を悪化させた。

ギニア共和国ー食料価格の高騰、洪水

  • 2024年6月から8月の端境期に、約103万人が深刻な急性食料不安に陥ると推定された。これは約71万人と推定された2023年の状況と比較すると悪化している。ただし、この悪化予測は2024年のCH分析の地理的範囲が拡大したことが一因である可能性がある。
  • 食料価格の高騰と洪水が相まって、2024年10月中旬までに全国で17万6000人が影響を受けたことが、急性食料不安の主な要因となっている。
  • 2024年9月時点で、主にシエラレオネから2200人以上の難民・庇護申請者が、国内に居住している。

レソト王国ー食料価格の高騰、経済の低迷

  • 最新のIPC分析によると、2024年10月から2025年3月までの間に、推定40万2 757人がIPCフェーズ3(危機)レベル急性食料不安に直面すると予測されている。
  • この数字は同じ時期の2023/24年度より24%高い。食料不安は、主に食料価格の高騰と、経済状況の回復の遅れが家計を圧迫して食料入手が困難になっているためである。2024年の農業生産に対する乾燥した気象条件の悪影響も、急性食料不安を悪化させた。

リベリア共和国ー食料価格の高騰、マクロ経済の課題

  • 最新のCH分析によると、2023年6月から8月の端境期に53万1000人以上が深刻な急性食料不安に直面すると推定され、そのうち約2万1000人がCHフェーズ4(緊急事態)に該当する。急性食料不安は、主に高い食料価格に関連している。
  • 洪水は、2024年10月中旬時点で、全国で5万1000人に影響を与えた。
  • 2024年9月時点で、同国は約1800人の難民と庇護希望者を受け入れていた。

リビア国ー局地的な紛争、経済・政治の不安定化、食料価格の高騰

  • 2024年10月中旬時点で、2023年4月以降、10万人以上のスーダン難民がリビアに流入した。スーダン難民の大量流入により、保健、水、衛生(WASH)サービス、資金援助、食料、避難所への需要が高まっている。

マダガスカル共和国ー異常気象

  • 2024年10月から12月にかけて、推定130万人がIPCフェーズ3(危機)レベルの急性食料不安に直面している。
  • この数字は、2023年の同時期の推定値よりも低くなっており、大規模な人道支援のプラスの影響と、2024年の全国のコメ生産量が平均以上のレベルに増加した概ね良好な作付けシーズンを反映している。しかし、局地的な洪水を起こしたサイクロンの影響は、厳しい急性食料不安の状態が続く要因となっている。

マリ共和国ー紛争、洪水、食料価格の高騰

  • 最新のCH分析によると、2024年6月から8月までの端境期には、約137万人が深刻な急性食料不安に直面すると推定されており、そのうち約12万1000人がCHフェーズ4(緊急事態)、約2600人がCHフェーズ5(大災害)に陥っている。この数字は126万人が人道支援を必要と推定されていた昨年よりも大きい。深刻な食料不安の状況は、主に悪化する紛争の影響によって引き起こされており、特に北部と中部の地域に影響を及ぼしている。この紛争により生計手段や市場が混乱し、人道支援のアクセスも悪化している。また、2024年7月時点で約33万1000人が国内避難を余儀なくされた。2024年10月中旬時点で33万9000人に影響を及ぼした洪水は、食料価格の高騰と相まって、国内での急性食料不安状態を悪化させている。2024年9月時点で、同国は約12万3000人の難民と庇護希望者を受け入れており、ほとんどがブルキナファソ、ニジェール、モーリタニアからの難民である。

モザンビーク共和国ー穀物生産の減少、北部地域における社会不安

  • 2024年に深刻な食料不安を引き起こした主な要因は、北部のカーボ・デルガド州で続く社会不安と、エルニーニョ現象に伴う全国的な干ばつの影響である。
  • 2023/24年と同様に、2024年10月から2025年3月の間に、推定320万人がIPCフェーズ3(危機)以上の急性食料不安に直面するとされている。

ナミビア共和国 – 穀物生産の減少、食料価格の高騰

  • 2024年に急性食料不安に直面する人々の数が急増した。最新のIPC分析によると、2024年10月から2025年3月までに、約130万人がIPCフェーズ3(危機)以上の急性食料不安に直面している。
  • 2024年の乾燥した天候条件が農業生産性に与えた影響が、急性食料不安の悪化の主な要因となっている。

セネガル共和国 – マクロ経済の課題、洪水

  • 最新のCH分析によると、2024年6月から8月の端境期に、約51万9000人が深刻な急性食料不安に直面していたと推計され、そのうち約1万2000人がCHフェーズ4(緊急事態)に該当する。この数値は2023年同時期の半分以下であり、この改善は主に2023年の穀物生産が平均を上回ったためである。
  • 現在の急性食料不安の主な要因は、マクロ経済的課題と洪水の影響である。2024年10月中旬時点で、洪水の影響を受けた人は10万3000人に上る。
  • 2024年9月時点で、主にモーリタニアからの難民と庇護申請者約1万3000人が同国に滞在している。

シェラレオネ共和国 – 高騰する食料価格、マクロ経済の課題

  • 最新のCH分析によると、2024年6月から8月の端境期において、約157万人が人道支援を必要としていたと推計されている。これは2023年同期間の約118万人と比べ、深刻な急性食料不安の悪化を示している。
  • 急性食料不安は、弱含みの国内通貨に起因する食料品と非食料品の価格高騰、および脆弱な世帯の購買力低下と関連している。
  • 2024年の洪水により、2024年10月中旬時点で合計2800人が影響を受けた。

ウガンダ共和国 – 異常気象、治安悪化、食料価格の高騰

  • 北東部の農業牧畜地域であるカラモジャ地域で実施された最新のIPC分析によると、2024年8月から2025年2月までの期間に、約40万1000人が急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面すると推計されている。これらの状況は、気象災害、作物と家畜の病気、および治安の悪化を反映している。
  • 主にキャンプに収用されて人道支援に依存している難民と庇護申請者の数は、約176万人と推計され、そのうち約96万6000人は南スーダン出身、約54万4000人はコンゴ民主共和国出身である。

タンザニア連合共和国 – 地域的な主食用食料の生産不足、食料価格の高騰

  • タンザニア本土の21地区で実施された最新のIPC分析によると、2024年5月から10月にかけて、37万9000人が深刻な急性食料不足に直面していた。
  • 主な要因は、2023年の作物の生産不足で、これは悪天候と害虫・病気の発生によるものであった。

朝鮮民主主義人民共和国 – 低い食料消費レベル、貧しい食生活の多様性、弱い経済成長

  • 食料不安の状況と経済成長の低迷が続く中、世帯の食料状況は2024年の主作期の収穫を終えたことにより改善した。

レバノン共和国 – 紛争、長引く経済危機

  • 最新のIPC分析によると、2024年の4月から9月にかけて、レバノン市民および、シリアとパレスチナの難民を含む約130万人が、IPCフェーズ3(危機)またはそれ以上の急性食料不安に直面すると予測されている。この高いレベルでの食料不安は紛争、長期化する経済危機、人道支援の削減が要因となっている。2024年9月以降の紛争の激化で状況はより悪化し、2024年の10月時点でさらに100万人の国内難民が発生すると予想される。

パレスチナ – 紛争、経済の崩壊

  • ガザ地区では、敵対行為の激化を受けて、飢餓のリスクが依然として高い状態が続いている。IPC分析によれば、2024年11月から2025年4月までの間にガザ地区の200万人(人口の90%以上)が、IPCフェーズ3(危機)に分類される深刻な食料難に直面する可能性が高い。進行中の紛争と人道支援の制限により、そのうち87万6000人がIPC フェーズ4(緊急事態)に、34万5000人がIPCフェーズ5(大災害)に分類されている。

シリア・アラブ共和国 – 経済悪化、紛争

2024年3月の時点で、約1300万人(人口の50%以上)が食料不安に直面し、720万人が国内難民となっている。長引く経済の収縮と地域紛争の影響が、急性食糧不安を引き起こす主な要因となっている。

イエメン共和国 – 地域紛争、悪天候、経済悪化

  • 最新のIPCレポートによると、2024年10月から2025年2月までに、約460万人がIPCフェーズ3(危機)以上の状況に陥ると予想され、そのうち110万人が深刻なレベルの食料不安(IPCフェーズ4[緊急])に直面する可能性がある。食料不安が深刻化している主な原因は、地域紛争、長期にわたる経済低迷、限られた生計機会である。

深刻な地域的食料不安

アフガニスタン ・イスラム共和国 – 経済減速、生計機会の減少

  • 最新のIPC分析によると、分析対象人口の28%にあたる1240万人が、2024年5月から10月の間に、IPCフェーズ3(危機)およびIPCフェーズ4(緊急)レベルの急性食料不安に直面しており、景気後退、生計手段の減少、人道的資金・援助の削減が原因である。
  • 今後の主要作期(10月〜5月)に予測される平均以下の降水量は、2025年の同国の主食である小麦の生産に悪影響を及ぼし、急性食料不安の状況をさらに悪化させる可能性がある。

バングラデシュ人民共和国  – 経済的制約、高インフレ率、異常気象

  • 経済的制約、高インフレ率、洪水が続くことから、食料安全保障状況は引き続き脆弱であると予想される。2024年9月下旬の台風 “ヤギ” は、農業生産に影響を与え、大規模な避難、生計機会の喪失、住宅やインフラへの被害をもたらした。
  • コックス・バザール地区を中心に、約100万人の強制移住のミャンマー人が居住している。

ミャンマー連邦共和国 – 紛争、経済的制約、主食の価格高騰

  • 長引く政治危機は、脆弱な世帯やロヒンギャの国内避難民の状況を悪化させている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の最新の数字(2024年9月)によると、国内避難民の数は約340万人と推定されている。国内避難民の多くは、ラカイン、チン、カチン、カイン、シャン各州に居住している。
  • 国内で最も消費されている品種であるエマタ米の国内価格は、2024年9月時点でほぼ記録的な高値にあり、重要な主食へのアクセスを制約している。

パキスタン・イスラム共和国 – 経済的制約、主要食料の価格高騰

  • 最新のIPC分析によると、2024年7月から11月の間に深刻な急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面する人々の数は790万人と予測されており、これは主に2022年の壊滅的な洪水の影響が続いていること、経済的課題、そして国内の食料価格の高止まりが原因である。
  • 今後の主要作付け期(10月~翌年5月)に予想されている平均以下の降水量は、同国の主食であるコムギの2025年の生産に悪影響を及ぼし、急性食料不安の状況をさらに悪化させる可能性がある。

ラテンアメリカおよびカリブ海地域(2カ国)
広範囲にわたる食料へのアクセス不足

ハイチ共和国 – 治安の悪化、高騰する食料価格、自然災害

  • 2024年8月から2025年2月までに、総人口の約半数に当たる540万人が急性食料不安に直面すると見込まれており、そのうち約6000人がIPCフェーズ5[災害]に分類されている。
  • 治安の悪化により、約70万人の国内避難民が発生し、食料供給網が正常に機能しなくなっている。2024年末に平年の規模を超えるハリケーンシーズンが予想され、急性食料安全保障にさらなるリスクをもたらす可能性がある。

ベネズエラ・ボリバル共和国 – 経済危機

  • 2024年人道対応計画によると、経済のわずかな回復にもかかわらず、約440万人が食料支援を必要としていると推計されている。2024年の食料インフレ率は過去2年間で最低水準を記録したが、最も脆弱な世帯の食料へのアクセスは依然として厳しく制限されている。2024年に生活の基本的なニーズを満たすために国境を越えて隣国へ移動した難民と移民の数は780万人と推計されている。

北米、欧州、オセアニア(1カ国)
広範な食料へのアクセス不足

ウクライナ – 紛争

  • 当国は引き続き、世界的な食料の主要供給国となっている。しかし、2023年の人道支援ニーズ概要(HNO)によると、戦争の影響で2024年に多方面で人道支援を必要とする人は少なくとも1760万人と推計されており、そのうちの1100万人以上が食料と生計への支援を必要としている。2024年4月現在、国際移住機関(IOM)の報告によると、同国で350万人以上が避難民になっていると推定されている。

世界の穀物需給概況

FAOによる2024年の世界の穀物生産量予測は28億4800万トンで、前年からわずかに減少(0.4%減)するものの、依然として史上2番目に多い生産量である。わずかな減少分には主に南米、ヨーロッパ、南アフリカの天候不順による世界的なトウモロコシ生産量の減少が反映されている。一方、コムギの世界生産量は増加すると予想されており、その増加は主にアジアに集中している。また、コメの生産量も増加すると見込まれており、トウモロコシの生産減少を一部相殺するものとなるだろう。

2024/25年度の世界の穀物利用予測は28億5700万トンで、2023/24年度の水準から0.5%増加する。この増加分は概ね、コメとコムギで食料用の消費増が予測されていることによるものである。2024/25年には、穀物のその他の用途もわずかながら増加すると見られており、その増加はほぼすべてコメに関連している。一方、穀物の飼料用途はわずかに減少すると見られている。粗粒穀物の飼料用途の増加予測よりも多く、コムギとコメの飼料用途が減少するためである。
2024年の世界の穀物生産量と2024/25年の利用量に関する現在の予測に基づけば、世界の穀物在庫は期首水準を0.6%上回る8億8900万トンに達する可能性がある。世界のコメの在庫が最も増加すると予想され、粗粒穀物の在庫がそれに続く。一方、コムギの在庫は期首水準を下回る可能性が高い。こうした予測を踏まえると、世界の穀物在庫率は2023/24年度の30.9%から2024/25年度には30.6%へとわずかに低下するものの、5年平均および10年平均に近い水準にとどまるだろう。

2024/25年の世界の穀物貿易量は、2023/24年の水準から3.9%減少し、4億8500万トンに落ち込むと予測されている。減少の要因は、コムギと粗粒穀物の世界貿易の縮小が予想されることによるもので、これとは対照的に、世界のコメ貿易は増加すると予測されている。2024年10月のFAO穀物価格指数は平均114.4ポイントで、昨年の同時期の値より10.3ポイント(8.3%)減、 前年同月比で10.1ポイント(8.1%)下回り、過去5年間の同月平均値を下回った。主要穀物(コムギ、粗粒穀物、コメ)の価格は過去1年間に下落しており、最も大幅な下落はコムギとトウモロコシの価格で生じた。

低所得食料不足国(LIFDCs)の食料事情の概要

2024年のLIFDC諸国の穀物生産は平年を上回る

LIFDC諸国における穀物生産量は、2024年には約1億4370万トンに達すると予測されており、これは過去5年間の平均をわずかに上回る。

アフリカのLIFDC諸国では、2024年の穀物総生産量は1億920万トンと予測されており、これは5年間の平均をわずかに上回る。東アフリカでは、不安定な降雨分布にもかかわらず、ほとんどのLIFDC諸国で平均に近い穀物収穫が見込まれている。しかしスーダンでは、現在も続く紛争により農地へのアクセスが制限され、市場が混乱し、投入コストが上昇し、耕作できる面積が限られているため、穀物生産量は2年連続で平均を大幅に下回る見通しである。西アフリカのLIFDC諸国における穀物収穫量は、全体的に好条件の降雨状況を反映して、平均レベルに近いか、または平均レベルを超えると推定されている。しかし、降雨不足と集中豪雨による洪水で、一部の地域では収穫量が減少した。また、現在も続く不安定な情勢と紛争は、一部の地域、特にマリの農業生産に悪影響を与え続けており、2024年の穀物収穫量が平均を下回る見通しである。南部アフリカでは、広範囲にわたる深刻な降雨不足により、穀物の収穫量は平均を下回る水準にとどまった。ただし、局地的な洪水があったものの概ね良好な天候に恵まれたマダガスカルでは、2024年の水稲生産量が増加した。南部アフリカにおける2025年の作物の植え付けは、2024年11月に開始される見通しであり、天気予報では、より湿潤な状態に戻る可能性が高いことが示されており、2025年初頭の生産見通しを後押ししている。
アジアでは、2024年のLIFDC諸国の穀物総生産量は3360万トンと予測されており、これは5年間の平均をわずかに上回る。中央アジアのLIFDC諸国は良好な気象条件に恵まれ、収穫量は平均を上回る水準と予測されている。中東では、シリア・アラブ共和国の生産量は、気温が高く農業投入資材へのアクセスが限られているため、5年間の平均を下回ると予測されている。一方、アフガニスタンでは、困難な社会経済状況の中、概ね良好な天候に恵まれ、穀物生産量は平均を上回る水準にまで増加した。
中米では、ハイチでは、継続的な治安不安により農業投入資材へのアクセスが制限されているため、生産量は平均を下回る見通しである。また、全般的に天候不順により収穫高が減少している。

東アフリカと南部アフリカでは輸入の増加が見込まれる。

LIFDC諸国の穀物輸入総需要量は、2024/25年度には5070万トンに達すると予測されており、これは5年間の平均を約300万トン(約7%)上回る量である。この輸入需要の増加は主に東アフリカと南部アフリカに集中している。

南部アフリカでは、干ばつによる国内生産の不足を主な要因として、輸入必要量は5年間の平均330万トンを上回る400万トンと推定されている。しかし、2024年にはマダガスカルの生産量が増加したため、輸入の必要性が減少した。現在も紛争が続き、国内の農業生産に深刻な影響を及ぼしているスーダンでは、2024年の輸入必要量は430万トンと推定され、5年間の平均値である300万トンを大幅に上回っている。アジアでは、ほとんどの国で輸入需要は平均的な水準に近いと推定されている。2024年の世界の穀物価格は、近年と比較して概して低く、2024年10月時点でFAO穀物価格指数は前年比で10%下落した。この国際穀物商品価格の下落は、LIFDC諸国の輸入コストの軽減に役立っている。しかし、多くのLIFDC諸国で自国通貨安が続いているため、世界価格の下落が国内市場に与える影響は限定的である。