2017年度まで、国際農林業協働協会が発行する季刊誌「世界の農林水産」に、GIEWSの資料の一部(”Crop and Prospects”および”Food Outlook”)を紹介するページが設けられていました。
2018年度、同誌は紙面リニューアルを行い、この紹介ページはなくなりました。
そこで、2017年からAJFが呼びかけて行っている「FAOの資料を読む学習会」参加メンバーが中心となって、”Crop and Prospects”の「外部からの支援を必要としている国」「世界の穀物の需給概況」「低所得・食料不足国の食料事情」の3項目の参考訳を作成し、紹介していくことになりました。
「今知る世界の食料危機 No.25」では、2024年7月に公開された”Crop and Prospects #2 July 2024”の該当ページを紹介します。
「FAOの資料を読む学習会」、「今知る世界の食料危機」の作成に関心を持ったら、info@ajf.gr.jへご連絡ください。
外部からの支援を必要としている国
アフリカ(33カ国)
食料生産・供給総量の大幅な不足
中央アフリカ共和国ー紛争、食料価格の高騰、異常気象
- 最新のIPC(Integrated Food Security Phase Classification)分析によると、2024年4月から8月の間に、深刻な食料不安(IPC段階3 [危機]以上)に直面する人の数は250万人に達すると予測されており、その中にはIPCフェーズ4(緊急事態)の約50万8,000人が含まれる。紛争や社会不安、市場へのアクセスの制限、上昇を続ける食料価格の影響を反映している。
- 2024年6月時点で、社会不安や武力紛争の結果、約52万人が国内避難民となっている。
ケニア共和国ー干ばつ
- 2024年4月から6月の間、約120万人が急性食料不安の状態にあると推定されており、これは2020年末から2023年初頭にかけて続いた深刻な干ばつが引き続き影響を及ぼしているためである。この干ばつは、主に北部および東部の牧畜地、農畜混合地域、限界農耕地域に影響を与え、農産物の生産に影響を及ぼした。
ソマリア連邦共和国ー異常気象、社会不安
- 2024年4月から6月の間に、約340万人が深刻な急性食料不安に直面していると推定される。これは、2020年末から2023年初頭にかけて続いた雨季の水不足、2023年末と2024年初頭の洪水、そして2023年8月以降の紛争の激化に起因している。
スーダン共和国ー紛争、避難、食料価格の高騰
- 2024年6月から9月の間、約2,560万人(人口のほぼ54%)が、深刻な急性食料不安に直面していると推定されている。2023年4月中旬に勃発した紛争の影響により、経済活動が麻痺し、大規模な避難が引き起こされ、2023年の収穫が激減した。
- 特に懸念されるのは、大ダルフール地域、南・北コルドファン州、青ナイル州、アル・ジャジラ州、ハルツーム州で、IPCフェーズ5(大災害)レベルの深刻な食料不安に直面している75万5,000人である。
- 紛争がさらに激化する最悪のシナリオでは、大ダルフール地域と大コルドファン地域、アルジャジラ州とハルツーム州の5つの地域と9つの国内避難民・難民クラスターにおいて、飢饉のリスクがある。
ザンビア共和国ー生産量の低下、食料価格の高騰
- エル・ニーニョに連動した乾燥気象のため、2024年の穀物生産量は過去5年間の平均に比べて42%減少し、大幅な供給不足に陥ると推定される。その結果、同国はトウモロコシの純輸出国から純輸入国に移行すると予想される。
- 食料価格は2024年も上昇を続け、食料の価格が手ごろではなくなってきており、脆弱な世帯によるアクセスを制約している。
- 深刻な食料不安に関するIPCの数字はまだ入手できないが、最近実施された評価は、状況の悪化を示唆しており、これは政府が2024年2月に「国家レベルの災害と緊急事態」を宣言したことに続くものである。
ジンバブエ共和国ー生産量の低下、食料価格の高騰
- 主食である穀物の生産量は、広範な干ばつによる不作と低収量のため、過去5年平均に比べて50%減少した。
- 収穫量の少なさとともに、家計は食料価格の高止まりにも直面しており、これが深刻な食料不安を悪化させている。
- 深刻な食料不安に直面している人々の数に関する最新の推計はまだ得られていないが、2024年には干ばつの影響により状況が悪化することが示唆されており、政府は2024年3月に「災害状態」を宣言した。
広範な食料アクセスの欠如
ブルンジ共和国ー異常気象、食料価格の高騰
- 2024年1月から3月の間、約123万人が急性食料不安(IPCフェーズ3 [危機]またはそれ以上)のレベルに直面していると推定された。主な要因は、2023年初頭に東部および北部地域で発生した洪水の影響が続いていることと、国内通貨の下落も要因の1つである食料価格の高騰が影響している。
チャド共和国ー社会不安、食料価格の高騰、少ない穀物生産量
- 最新のCH分析によると、2024年6月から8月にかけての端境期に約378万人が深刻な急性食料不安を経験していると推定される。約42万人のスーダン難民とチャド帰還民を含み、約65万7,000人がCHフェーズ4(緊急事態)にいる。
- 食料安全保障状況は特に東部で懸念されており、2023年4月中旬以降、スーダンから逃げてきた難民や帰還民81万1,000人の大半が東部に滞在している。この状況は、食料備蓄と地元の生計への圧力の高まりと、限られた人道支援の中で、スーダンとの国境閉鎖に伴う流通の混乱を反映している。2023年の穀物生産量が平均を下回ったこと、また高騰した食料価格も国中の脆弱世帯が食料にアクセスすることを制限している。
- 2024年6月時点では合計126万人の難民と庇護希望者が国内に居住していた。
コンゴ民主共和国ー紛争
- 2023年9月のIPC分析(急性食料不安報告)によると、2024年1月から6月にかけて2,340万人がIPCフェーズ3 [危機]またはそれ以上の急性食料不安を経験するとされた。これは北東部諸州における紛争の激化によるもので、他の要因もあるが、紛争の激化が収穫の完了を妨げており、入手可能な食料が減少するとされる。
- 2023年10月時点で北キヴ、南キヴとイトゥリにおける合計630万人が紛争によって移動を余儀なくされた。
ジブチ共和国ー不順な天候、食料価格の高騰、港湾活動における収入獲得機会の減少
- 2024年4月から6月にかけて約22万1,000人が急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]またはそれ以上)に直面したと推定された。これは主に、2020年後半から2023年前半にかけての長期にわたる深刻な干ばつ、2023年後半と2024年前半における平均以下の降水量、食料価格の高騰と紅海経由の海上交通における混乱とそれに伴う港湾活動における雇用への悪影響が長引いているためである。
エリトリア国
- マクロ経済の課題により、食料不安に対する国民の脆弱性が高まっている。
エチオピア連邦民主共和国ー異常気象、紛争、食料価格の高騰
- 2024年の人道危機対応計画によると1,580万人が深刻な急性食料不安に直面すると正式に推定された。これは主に2020年後半から2023年前半にかけての長期にわたる深刻な干ばつ、2023年後半と2024年前半における洪水、北部における紛争と食料価格の高騰の影響が長引いているためである。
マラウイ共和国ー生産の減少、食料価格の高騰
- •乾燥した天候が南部地区の大半と中部地区の一部に影響を及ぼし、2024年の穀物不作と平均を下回る穀物収量を引き起こした。全国のトウモロコシの収穫量は、過去5年間の平均を下回ると見積もられている。
- 収穫量の減少と持続的な食料価格の高騰の結果、2024年も急性食料不安の状態が引き続き厳しいままであると予測されている。
モーリタニア・イスラム共和国ー難民の流入
- •最新のCH分析によると、2024年6月から8月の端境期の間に、CHフェーズ4(緊急事態)の約29,000人を含む約65万7,000人が人道支援を必要としていると推定されている。これは、47万2,000人以上が人道支援を必要としていると推定された前年と比べると悪化しており、2024年の分析範囲が拡大したことが増加の一因だと考えられる。
- マリ難民や受け入れコミュニティの間で人道的ニーズは依然として高く、新たな流入が続くオド・エシ・シャルギ地域ではすでに限られた資源にさらなる負担がかかっている。
- 2024年2月時点で、同国は合計12万8,000人の難民と庇護希望者を受け入れており、そのほとんどがマリからの難民である。
ニジェール共和国ー治安悪化、政情不安、食料価格の高騰、平均以下の穀物収穫量
- •最新のCH分析によると、2024年6月から8月の端境期には、CHフェーズ4(緊急事態)の12万6,000人以上を含む約344万人が深刻な食料不足に陥ると推定される。これは2023年に人道支援を必要とすると推定された約328万人をわずかに上回るものである。
- ティラベリ州、タウア州、ディファ州、マラディ州などの治安悪化の影響を受けている地域では食料へのアクセスが著しく制限されている。さらに、軍事クーデター後の制裁の影響や平均以下を下回る2023年の穀物収穫量により、食料価格は高止まりしており、脆弱な世帯の食料不安を悪化させている。
- 2024年5月時点で、同国はナイジェリアとマリを中心に41万1,000人以上の難民及び庇護希望者を受け入れている。
ナイジェリア連邦共和国ー北部地域の紛争、マクロ経済危機、食料価格の高騰
- 2024年6月から8月の端境期には、CHフェーズ4(緊急事態)の約99万9,000人を含む約3,176万人が、深刻な急性食料不安に直面すると予測されている。これは、2023年に深刻な急性食料不安に陥ると推定される2,486万人を大きく上回っている。
- 高水準の急性食料不安は、北部諸州における社会治安と紛争の激化によるもので、農業活動や市場が混乱し、2024年5月時点で340万人近くの避難民を生み出した。
- 高いインフレ率や国内通貨の急激な下落など、マクロ経済の悪化が脆弱な世帯の食料への経済的アクセスを制約している。
- 2024年5月時点で、主にカメルーンからの難民および庇護希望者8万9,000人以上が同国に居住している。
南スーダン共和国ー経済の悪化、洪水、社会不安
- 持続的な人道支援にもかかわらず、高騰するインフレ、不十分な食料供給、連年続く広範な洪水や地域間暴力の影響により、食料不安は依然として国民の大部分に影響を及ぼしている。全人口の半数以上にあたる約710万人が、2024年4月から7月の間に深刻な急性食料不安に直面すると予想されている。
- 特に懸念されているのは、大ピボール行政区の約1万1,000人、バール・エル・ガザル州北部のアウェイル・イースト郡の4万人、およびスーダンからの帰還者2万8,000人がIPCフェーズ5(大災害)レベルの深刻な食料不安に直面している点である。
ブルキナファソー紛争
- 最新のCH分析によると、2024年6月から8月の端境期には273万人以上が深刻な急性食料不安に直面すると推定されており、それには、CHフェーズ4(緊急事態)の42万3,000人以上が含まれている。
- 急性食料不安は主に紛争の継続、特に非国家武装集団による包囲戦術によって引き起こされている。これにより生計と市場が深刻に混乱し、人道支援の提供が制限されている。2023年3月現在、社会不安により約206万人が避難を余儀なくされている。
- 2024年4月現在、約4万人近くの難民と庇護希望者(そのほとんどがマリ出身者)が国内に居住している。
カメルーンー社会不安、食料価格の高騰
- 2024年3月のCH分析によると、2024年6月から8月にかけて紛争、社会情勢不安、食料価格の高騰、人口移動、農業被害と損失をもたらした洪水の影響により、約250万人が深刻な食料不安(CHフェーズ3[危機]またはそれ以上)に陥ると推定されている。
- 2023年には、極北地域における非国家武装集団の攻撃により、国内避難民の数は100万人を超えている。
コンゴ共和国ー難民の流入、洪水
- 2022年末現在、中央アフリカ共和国からの約3万人とコンゴ民主共和国からの約2万6000人の難民が、主にリクアラ県とプラトー県に居住している。受入れコミュニティは、既に食料不足と厳しい生計状況にあり、難民の食料は継続して人道支援に大きく依存している。
- 2023年後半の洪水は、主に国の東部に住む30万人以上の人々を襲い、推定2,300ヘクタールの耕作地(収穫面積の1%未満)も浸水し、作物の損失と被害を引き起こした。
エスワティニ王国ー食料価格の高騰、経済の低迷
- 最新のIPC分析によると、2023年10月から2024年3月の間に、深刻な食料不安(IPCフェーズ3[危機]またはそれ以上)に直面する人々の数は前年比9%増加し、28万3,000人と予測される。
- 食料不安は、食料価格の高騰と経済成長の鈍化により、家計収入の機会が抑えられていることが原因である。2024年の乾燥した気候による農業生産への悪影響も深刻な食料不安状態を悪化させると予想される。
ギニア共和国ー食料価格の高騰
- 2024年6月から8月の端境期に、約103万人が深刻な急性食料不安に陥ると推定され、これは約71万人が深刻な急性食料不安に直面すると推定された2023年の状況と比較すると悪化している。ただし、予測される悪化は2024年のCH分析の地理的範囲が拡大したことが一因である可能性がある。
- 食料不安は、主に食料価格の高騰が原因である。
- 2024年5月現在、主にシエラレオネから2,200人以上の難民・庇護申請者が、国内に居住している。
レソト王国ー食料価格の高騰、経済の低迷
- – 最新のIPC分析によると、2023年10月から2024年3月までの間に、推定32万5,000人がIPCフェーズ3(危機)レベルの急性食料不安に直面すると予測されている。
- 食料不安は、主に食料価格の高騰と、景気回復の遅れが家計を圧迫して食料入手が困難になっているためである。2024年の農業生産に対する乾燥した気象条件の悪影響は、食料安全保障状況を悪化させることが予想されている。
リベリア共和国ー食料価格の高騰、マクロ経済の課題
- 最新のCH分析によると、2023年6月から8月の端境期に、約53万1,000人が深刻な急性食料不安に直面すると予測されており、そのうち約2万1,500人がCHフェーズ4(緊急事態)に該当する。急性食料不安は高い食料価格と関連している。
- 2024年5月時点で、この国には約1,800人の難民と庇護希望者を受け入れていた。
リビア国ー社会不安定、経済的および政治的な不安定、高い食料価格
- 2024年の世界人道支援概要報告書では、2024年の急性食料不安の人数が2023年の90万人から2024年に25万人に減少したと報告されている。
マダガスカル共和国ー異常気象
- サイクロン「ガマネ」は北部地域で作物やインフラの被害を引き起こし、約53万5,000人に影響を与えた。全国的な農業生産の見通しは2024年において一般的に好調だが、北部での生産の局所的な不足は食料安全保障の状況を悪化させると予想されている。
- 2024年5月から7月にかけて、南部および南東部では、約110万人がIPCフェーズ3(危機)またはそれ以上の緊急レベルの急性食料不安に直面すると予測され、前年と同等の数である。
マリ共和国ー紛争
- 最新のCH分析によると、CHフェーズ4(緊急事態)に該当する約12万1,000人とCHフェーズ5(大災害)に相当する約2,600人を含む約137万人が、2024年6月から8月の端境期に深刻な急性食料不安に直面すると予測される。126万人が人道支援を必要としていると予測されている。
- 食料不安の状況は主に北部および中央部地域の紛争の影響によるもので、これが生計や市場を混乱させ、2024年5月時点で約35万5,000人が避難を余儀なくされており、人道的アクセスへの制約も高い。
- 2024年5月時点で、この国には約9万4,000人の難民と庇護希望者が滞在しており、その多くはブルキナファソ、ニジェール、モーリタニアから来ている。
モザンビーク共和国ー穀物生産量の減少、北部地域の治安悪化
- カーボ・デルガード州北部では不安定な治安が続き、また全国的にエルニーニョに関連した干ばつが主な要因となり、2024年は最も深刻なレベルの急性食料不安に向かっている。
- 2024年には推定320万人がIPCフェーズ3(危機)および、急性食料不安のレベルを超えると予測され、昨年とほぼ同様の数字だが、IPCフェーズ4(緊急事態)に分類される人の数は2倍以上になると予測される。
ナミビア共和国ー穀物生産の減少、食料価格の高騰
- 2023年10月から2024年3月の間に、推定69万5,000人が急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]またはそれ以上)に直面すると予測された。
- 雨量不足の気象条件が2024年の農業生産に影響を与え、急性食料不安の悪化が続くと予測される。
セネガル共和国ーマクロ経済の課題
- 最新のCH分析によると、2024年6月から8月の端境期に約51万9,000人が深刻な急性食料不安に直面すると予測されており、そのうち約1万2,000人がCHフェーズ4(緊急事態)に該当する。これは、2023年と比較して半分以下であり、大幅な改善は2023年の平均以上の穀物生産によるものである。
- 急性食料不安の主な要因はマクロ経済の課題である。
- 2024年5月の時点で、主にモーリタニアからの約1万3,000人の難民と庇護希望者がこの国に滞在していた。
シエラレオネ共和国ー食料価格の高騰、マクロ経済の課題
- 最新のCH分析によると2024年6月から8月の端境期には、約157万人が人道支援を必要とすると予想されている。これは、約118万人が深刻な急性食料不安に陥っていると推定された2023年の同時期と比べて悪化することになる。
- 急性食料不安は、食料および食料以外の価格高騰と関連しており、その原因の一部は通貨安と脆弱な世帯の購買力の低さにある。
ウガンダ共和国ー異常気象、社会不安、食料価格の高騰
- ウガンダ北東部、農耕牧畜地域のカラモジャ地域で実施された最新のIPC分析では、2024年3月から7月にかけて、約60万人が急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]またはそれ以上)に直面していると推定されている。こうした状況は、異常気象、農作物および家畜の病気、社会不安、食料価格の高騰による負の影響を反映している。
- 主にキャンプで受け入れられ、人道支援に頼っている難民と庇護希望者の数は、南スーダンから約94万6,000人、コンゴ民主共和国から約52万4,000人を含む169万人と2024年5月下旬に推定された。
タンザニア連合共和国ー地域的な主食の生産不足、食料価格の高騰
- タンザニア本土の21県で実施された最新のIPC分析によると、2023年の作物生産量の公式推定値が平均以下だった県は、2024年5月から10月までの間に、推定37万9,000人が深刻な急性食料不安に直面すると見られる。
- 作物生産不足の主な要因は、悪天候と病害虫の発生である。
世界の穀物需給概況
2024年の世界の穀物生産量の予測は引き上げられ、2023年の水準を超える見通し
2024年におけるFAOの最新の世界の穀物生産量の予測は6月に790万トン(0.3パーセント)増加し、現在は28億5,400万トンに達した。これは2023年からわずかに増加し、過去最高値を記録することとなった。この増加は、6月の予測と比べ、粗粒穀物の見通しの改善を反映し、世界の生産量の予測は0.4パーセント増加し15億3,000万トン、小麦の予想生産量は6月の予測と比較して0.3%増の7億8,900万トンとなった。粗粒穀物の堅調な見通しは、主にアルゼンチンとブラジルにおけるトウモロコシの収穫の増加した生産見込みに基づいている。今月の両国の収穫量の予測は緩やかに引き上げられたが、これは前月の不安定な天候の後の好調な天候条件が反映した結果である。
しかし、ブラジルの生産量は依然として2023年の記録には及ばないと見込まれる。トウモロコシ生産の予測は、トルコやウクライナでも引き上げられている。これらの上方修正は、インドネシアや南部アフリカ諸国でのトウモロコシ生産予測の下方修正を上回っている。これらの地域では乾燥によって収穫量が抑制され、パキスタンについては、価格の低下と家畜部門からの飼料需要の減少が作付面積の縮小を導くと予想されている。世界の小麦生産量も上方修正され、主にアジアでの見通しの増加に基づいており、特にパキスタンでは記録的な小麦生産量が見込まれている。ロシア連邦では、主要な小麦生産地域における悪天候により、生産量予測が大幅に減少し、今月の世界見通しの増加が抑制された。FAOの2024/25シーズンの世界のコメの生産量の予測は、6月以降、わずかな調整のみ行われた。これは世界のコメの生産量が新たなシーズンにさらに0.9%増加し、5億3,510万トン(精米ベース)の新たな記録に達する可能性があることを引き続き示していている。
2024/25年の世界の穀物利用の予測は、7月時点で28億5,600万トンで、6月の予測からわずかに増加し(540万トン、0.2%)、2023/24年に比べ1,360万トン、0.5%以上増加している。2024/25年度の世界の粗粒穀物利用は370万トン増加した。これはトウモロコシや大麦などの飼料や、その他の用途の増加、ソルガムの食料消費量の増加によるものである。この上方修正により、世界の粗粒利用量の予測は2023/24年度の水準から0.8%増の15億2,900万トンに押し上げられた。2024/25年度の世界の小麦利用率も、より多くの生産が見込まれるパキスタンでの利用の増加に支えられ、今月に150万トン上方修正された。これらの増加にもかかわらず、世界の小麦利用率は2024/25年に2023/24年の水準から0.7%減少すると見られている。2024/25年の世界のコメの利用量は、依然として前年比1.2%拡大し、過去最高の5億3,150万トンに達すると予測されている。 食品使用の増加がこの成長を促進すると予想されており、世界の1人当たりの米の食料摂取量が年間0.5%増加し、約53キログラムになる可能性がある。
FAOは2025年のシーズン終了時までの世界の穀物在庫予測を8億9,400万トンとし、前月から290万トン引き下げたが、それでも期首レベルより1.3%増加すると予想している。新たな予測では、2024/25年の世界の穀物在庫比率は前シーズンからほぼ変わらず30.8%となり、新シーズンの供給見通しは引き続き十分であることを示している。
今月の下方修正は主に、世界の粗粒穀物在庫予測の430万トン削減を反映しており、これはブラジルとウクライナのトウモロコシ在庫推定値の低下に起因している。下方修正にもかかわらず、世界の粗粒穀物在庫は2024/25年に依然として増加し、期首レベルより2.8%増の3億8,100万トンに達する見込みである。
対照的に、世界のコムギ在庫の予想は今月160万トン上方修正され3億800万トンとなったが、それでも期首レベルより1.4%減少する見込みである。ロシア連邦のコムギ在庫予想が予想収穫量の減少により下方修正されたことが、今月の世界コムギ在庫の下方修正の大半を占めている。
2024/25販売年度末の世界米在庫は2億490万トンと予想されており、6月の予想からほとんど変わらず、過去最高の期首レベルを2.7%上回っている。これは主に中国本土とインドでの予想される蓄積、そしてそれほどではないがブラジルとタイでの蓄積によるものである。
FAOの2024/25年度の穀物全体の国際貿易予測は6月から変わらず4億8,100万トンで、2023/24年度のレベルから3.0%の減少となる。
2024/25年度(7月/6月)の粗粒穀物の世界貿易予測は2億3,100万トンで、先月から90万トン微増したが、前シーズンのレベルから3.9%の減少する見込みである。ウクライナのトウモロコシ輸出見通しの改善と、中国本土のトウモロコシ輸入が増加により世界予測は100万トン引き上げられたが、世界のトウモロコシ貿易は依然として2023/24年度のレベルから4.4%減少する見込みである。 2024/25年(7月/6月)の世界オオムギとソルガムの世界貿易予測は6月から変らず、オオムギ貿易は3.9%の減少、ソルガムは6.4%の増加が見込まれている。
2024/25年(7月/6月)の世界コムギ貿易の予測は前回から90万トン下方修正され、前シーズンからの予想縮小幅が3.7%に拡大した。今月の下方修正は、ロシア連邦の生産予測下方修正に伴う輸出予測の引き下げを反映している。カザフスタンやウクライナなど他の主要コムギ輸出国の販売増加予測が輸出側の引き下げを相殺した。輸入面では、トルコが6月21日から10月15日までコムギの輸入が一時停止したこと、およびインドが国内の在庫レベルが十分と評価して輸入関税を維持すると政府が発表したことから、両国の購入量が減少している。ただし、これらの下方修正は、中国本土と欧州連合のコムギ輸入の増加が見込まれることで部分的に相殺されている。
2024年(1月から12月)のコメの国際貿易は5,110万トンと、6月の予測からわずかに下方修正された。これは主に中国本土の輸入予測が消極的になり、コメの購入量が現在13年ぶりの低水準にあるとみられていためである。修正後の予測レベルでは、世界のコメ流通量は、すでに減少している2023年のレベルからさらに3.4%減少し、4年ぶりの低水準となる。
低所得・食料不足国の食料事情
低所得・食料不足国(LIFDC)における2024年の穀物生産は増加、しかし、その伸びは一部地域に集中
LIFDC諸国の2024年の穀物総生産量は1億5,430万トンと予測され、5年平均を1.1%上回る。2024年に予想される伸びは、主に西アフリカとタンザニア連合共和国での増産が要因である。
西アフリカでは、LIFDC諸国の穀物生産量が5年平均を6%上回ると予測される。この良好な生産見通しは、3月のシーズン開始以来、おおむね順調な降雨によるところが大きく、沿岸諸国では主要シーズンの穀物がすでに収穫されている。十分な雨量は、サヘル諸国で作物が収穫される9月まで続くと予想されており、地域全体で良好な収量見通しを支えている。しかし、このような気象予報は、過度の降雨と、その結果、作物への被害を引き起こす局地的な洪水のリスクを高める。さらに、いくつかの国で紛争が続いており、サヘル諸国の農業活動を混乱させ、制限している。
東アフリカでは、2020年から2023年にかけて 幾シーズンにも渡って乾燥が続いた後、全般的に十分な降雨量が作物や牧草地に恩恵をもたらした。最近の豊富な降雨を反映し、東アフリカのほとんどのLIFDC諸国の穀物生産量は2024年に過去5年間の平均をわずかに上回ると予想される。しかし、スーダンでの紛争の激化と拡大が農業活動に影響を与え、平均を大幅に下回る収穫につながる可能性が高い。
南部アフリカでは、広範囲にわたる暑く乾燥した気象条件が2024年に地域全体で大幅な生産減少を引き起こしたが、マダガスカルではサイクロンの悪影響にもかかわらず、好天候が平均を上回る生産量をもたらすと予想される。
近東アジアのLIFDC諸国では、シリア・アラブ共和国での好天候が平均を上回る収穫見通しの主な要因となっている。しかし、国内生産が国内供給のわずかな割合しか占めていないイエメンでは、主に紛争の影響を受け、収穫量が平均を下回る水準にある。
中央アジア諸国では収穫が進行中で、2024年の穀物生産量は良好な雨季のため平均をわずかに上回ると予測される。極東アジアのLIFDC諸国では、2024年にはほぼ平年並みの生産量が見込まれている。中米およびカリブ海諸国では、ハイチの穀物生産量が平均を下回ると予測されてるが、これは主に作付け時期の土壌水分不足による作付け量の少なさと、治安が悪い中で農業資材の供給が不足し、アクセスが困難であることによる。
紛争や極端な気象条件の影響を受けた国々では輸入需要が増加すると予想される。2024/25年度のLIFDC諸国の穀物輸入需要は5,130万トンと予測され、5年平均より約300万トン(6%)多くなっている。輸入需要の増加は、干ばつによる穀物生産の不足が続く南部アフリカ諸国と、紛争が国内農業生産を著しく損ない、安定した消費レベルを維持するためにより多くの輸入量が必要とされているスーダンに集中している。中央アジアおよび近東アジア諸国では、2024年の国内生産量が良好であることを反映して、輸入需要の緩やかな減少が予測されている。
2024年5月までの12か月間でFAO穀物価格指数が8%減少によって示されるように、2024年の国際的な穀物価格指標は前年より低い水準にあり、LIFDCsの輸入コストを抑えるのに役立っている。しかし、多くのLIFDC諸国では通貨安が続いていること、前年比での輸送コストの上昇、主要輸出国での2024年の収穫に対する作柄不順への懸念が、2024年の輸入国にとっての主要な価格上昇リスクとして残っている。