今知る世界の食料危機No.24(2024年3月号)

2017年度まで、国際農林業協働協会が発行する季刊誌「世界の農林水産」に、GIEWSの資料の一部(”Crop and Prospects”および”Food Outlook”)を紹介するページが設けられていました。

2018年度、同誌は紙面リニューアルを行い、この紹介ページはなくなりました。

そこで、2017年からAJFが呼びかけて行っている「FAOの資料を読む学習会」参加メンバーが中心となって、”Crop and Prospects”の「外部からの支援を必要としている国」「世界の穀物の需給概況」「低所得・食料不足国の食料事情」の3項目の参考訳を作成し、紹介していくことになりました。

「今知る世界の食料危機 No.24」では、2024年3月に公開された”Crop and Prospects #1 March 2024”の該当ページを紹介します。

「FAOの資料を読む学習会」、「今知る世界の食料危機」の作成に関心を持ったら、info@ajf.gr.jへご連絡ください。

外部からの支援を必要としている国

アフリカ(33カ国)

食料生産・供給総量の大幅な不足

中央アフリカ共和国ー紛争、食料価格の高騰、異常気象

  • 最新のIPC(Integrated Food Security Phase Classification)分析によると、2024年4月から8月の間に、深刻な食料不安(IPC段階3 [危機]以上)に直面する人の数は250万人に達すると予測されており、その中にはIPCフェーズ4(緊急事態)の約52万1,000人が含まれる。紛争や社会不安、市場へのアクセスの制限、上昇を続ける食料価格の影響を反映している。
  • また、2023年12月時点で、社会不安や武力紛争の結果、約51万1,000人が国内避難民となっている。

ケニアー異常気象

  • 2023年10月から2024年1月の間、約150万人が急性食料不安の状態にあると推定されており、これは2020年末から2023年初頭にかけて続いた深刻な干ばつが引き続き影響を及ぼしているためである。この干ばつは、主に北部および東部の牧畜地、農畜混合地域、限界農耕地域に影響を与え、農産物の生産に影響を及ぼした。

ソマリアー干ばつ、社会不安

  • 2024年1月から3月の間に、約400万人が深刻な急性食料不安に直面していると推定される。これは、2020年末から2023年初頭にかけて続いた雨季の水不足、2023年末の洪水、そして2023年8月以降の紛争の激化に起因している。

スーダンー紛争、避難、食料価格の高騰

  • 2023年10月から2024年2月の間、約1,770万人(総人口のほぼ40%)が、深刻な急性食料不安に直面していると推定されている。2023年4月中旬に勃発した紛争の影響により、経済活動が麻痺し、大規模な避難が引き起こされ、2023年の収穫が激減した。

広範な食料アクセスの欠如

ブルンジー異常気象、食料価格の高騰

  • 2024年1月から3月の間、約123万人が急性食料不安(IPC段階3 [危機]以上)のレベルに直面していると推定されている。主な要因は、2023年初頭に東部および北部地域で発生した洪水の影響が続いていることと、国内通貨の下落も要因の1つである食料価格の高騰が影響している。

チャド共和国ー社会不安、食料価格の高騰、少ない穀物生産量

  • 最新のCH分析によると、2024年6月から8月にかけての端境期に約300万人が深刻な急性食料不安を経験すると推定される。そのうち約29万4,000人がCHフェーズ4(危機)に陥り、同様にダル・タマ県(ワディ・フィラ)とキミティ県(シラ地方)における9万1000人のスーダン難民も深刻な急性食料不安(CHフェーズ3[危機]または危機以上)に陥ると予想される。
  • 食料安全保障状況は特に東部で年されており、2023年4月中旬以降、スーダンから逃げてきた難民や帰還者70万人の大半が東部に滞在している。
    この状況は、食料備蓄と地の生計への圧力の高まり、限られた人道支援の中で、スーダンとの国境閉鎖に伴う貿易の流れの混乱を反映している。2023年の穀物生産量が平均を下回ったこと、食料価格の高騰もまた、国中の脆弱世帯が食料にアクセスすることを制限している。
  • 2024年2月時点では112万人の難民が国内に居住していた。

コンゴ民主共和国ー紛争

  • 2023年9月のIPC分析によると、2024年1月から6月にかけて2,340万人が急性食料不安を経験するとされる。これは北東部諸州における紛争の激化が原因であり、特に紛争の激化が収穫の完了を妨げており、今後数ヶ月は入手可能な食料が減少するとされる。
  • 2023年10月時点で北キヴ、南キブとイトゥリにおける合計604万人が紛争によって移動を余儀なくされた。

ジブチ共和国ー不順な天候、食料価格の高騰

  • 2023年3月から6月にかけて約25万人が急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]または危機以上)に直面したと推定された。主な原因は、2020年末から2023年初頭の長期にわたった深刻な洪水による長引く影響と食料価格の高騰である。

エリトリア国

  • マクロ経済の課題により、食料不安に対する国民の脆弱性が高まっている。

エチオピア連邦民主共和国ー南部における干ばつ、ティグライ州における紛争、食料価格の高騰

  • 2024年の人道危機対応計画によると1,580万人が深刻な急性食料不安に直面すると正式に推定され、これは主に異常気象や北部での紛争、食料価格の高騰によるものとされる。

マラウイ共和国ー異常気象、食料価格の高騰

  • 最新のIPC分析は2023年10月から3月にかけて440万人が急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]または危機以上)に直面すると予想し、2022/23年の同時期より15%増加している。
  • 乾燥した高温な状況は中央と南部地区に影響を与えており、2024年の農業生産の見通しを圧迫している。また、食料価格の高止まりに伴い急性食料不安は2024年も続くと予想されている。

モーリタニア・イスラム共和国ー食料価格の高騰

  • 最新のCH分析によると、2024年6月から8月にかけての端境期に、CHフェーズ4(危機)に値する7,100人を含む約36万5,000人が人道支援を必要すると予想される。これは主に食料生産量の増加によるもので、前年と比べると改善したとされる。
  • 食料価格の高騰は脆弱な世帯における食料へのアクセスを制約し続けた。
  • 2024年1月時点で12万3,000人の難民と亡命希望者を主にマリから受け入れていた。

ニジェール共和国ー社会不安、政情不安、食料価格の高騰、局地的な作物生産不足

  • 2023年11月のCH分析によると、2024年6月から8月の端境期にCHフェーズ4(緊急事態)の約9万5,000人を含め、323万人以上が深刻な食料不足に陥ると予測されている。
  • ティラベリ、タウア、ディファ、マラディ地域を含む社会不安の影響を受けた地域では食料へのアクセスが依然として大幅に制限されたままであり、軍事政権奪取後の制裁は、食料価格の急激な上昇を引き起こし、国中の脆弱な世帯の食料不安を悪化させた。
  • 2023 年の雨季には、約 17 万人が洪水の影響を受けた。
  • 2024 年 1 月の時点で、同国は主にナイジェリアとマリからの 30 万 6,000 人を超える難民と庇護希望者を受け入れている。

ナイジェリア連邦共和国ー北部地域の紛争、マクロ経済危機、高騰する食料価格

  • 2024年6月から8月の端境期に約2,646万人が深刻な急性食料不安に直面すると予測されている。これにはCHフェーズ4(緊急事態)に陥っている100万人以上が含まれており、2023年に推定された2,486万人を上回っている。しかし、この増加はCH 分析の適用範囲の拡大を部分的に反映している。
  • 急性食料不安は、ほとんどが北部諸州における内乱と紛争の激化の結果であり、農業活動と市場を混乱させただけでなく、2023年6月時点で約349万人の避難民を生み出した。
  • ナイラの価値が急落したことによる高インフレ率が、脆弱な世帯の食料へのアクセスを経済的に制限している。
  • 2023 年 12 月時点で、主にカメルーン出身の 8万6,000人を超える難民と庇護希望者が同国に居住している。

南スーダン共和国ー景気停滞、洪水、社会不安

  • 継続した人道支援にもかかわらず、食料不安は依然として人口の大部分に影響を及ぼしている。これはインフレの蔓延と食料供給の不足、連続して毎年起こる広範囲な洪水の影響や地域間暴力の影響などによるものである。総人口のほぼ半数に当たる約578万人が、2023年12月から2024年3月までに深刻な急性食料不安に直面すると予想されている。
  • 大ピボール行政区の約1万1,000人と、紛争の影響を受けたスーダンからの帰還者1万4,000人がIPC フェーズ 5 (大災害) レベルの急性食料不安に直面しているため、特に懸念される。

ジンバブエ共和国ー食料価格の高騰、地域的な生産不足

  • 少なくとも2024年3月まで350万人が人道的支援を必要とすると予想されている。
  • 景気低迷の影響による食料価格の高騰と収入の減少が、高レベルの急性食料不安を支える主な要因となっている。天候不順のため2024年の穀物生産量が減少するとの予測は、今年の食料不安の深刻な悪化要因となる可能性が高い。

ブルキナファソー紛争

  • 最新のCH分析によると、2024年6月から8月の端境期には、300万人近くが深刻な急性食料不安に直面すると予測されており、それにはCHフェーズ4(緊急事態)の42万5,000人強も含まれている。
    ・深刻な食料不安は、主に紛争の悪化と、特に武装集団による包囲戦術によって引き起こされている。不安定な治安は農業活動を妨げ、食料価格を押し上げる一方、人道支援が極めて制限されている。2023年3月現在、社会不安により約206万人が避難を余儀なくされている。
  • 2024年1月現在、3万9,000人近くの難民と庇護希望者(そのほとんどがマリ出身者)が居住している。

カメルーン共和国ー社会不安、食料価格の高騰

  • 2023年10月のCH分析によると、2024年6月から8月にかけて、紛争、社会政情不安、食料価格の高騰、人口移動と農業被害をもたらした洪水の影響により、約250万人が急性食料不安(CHフェーズ3[危機]以上)に陥ると推定されている。
  • 2023年6月現在、極北地域における武装集団の攻撃により、国内避難民の数は110万人を超えている。

コンゴ共和国ー難民の流入、洪水

  • 2022年末現在、中央アフリカ共和国から約3万人、コンゴ民主共和国から約2万6,000人の難民が、主にリクアラ県とプラトー県に居住している。受入れコミュニティは既に食料不足と厳しい生計状況にあるため、難民の食料は継続して人道支援に大きく依存している。
  • 2023年初頭の洪水は、キュベット、リクアラ、プラトー、サンガの各県に住む約16万5,000人に影響を与えた。

エスワティニ王国ー食料価格の高騰、経済の低迷

  • 最新のIPC分析によると、2023年10月から2024年3月の間に、急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面する人々の数は前年比9%増加し、28万3,000人と予測されている。
  • 食料不安は、食料価格の高騰と経済成長の鈍化により、家計収入の機会が抑えられていることが原因である。

ギニア共和国ー食料価格の高騰

  • 2024年6月から8月の端境期には、CHフェーズ4(緊急事態)の約5万3,000人を含む67万5,000人以上が深刻な急性食糧不安に陥ると予測され、2023年の予測約71万人に比べ改善された。急性食料不安は、主に食料価格の高騰が原因である。
  • 2024年1月現在、主にシェラレオネからの約2,200人の難民・庇護申請者が、居住している。

レソト王国ー食料価格の高騰、経済の低迷

  • 最新のIPC分析によると、2023年10月から2024年3月までの間に、推定32万5,000人がIPCフェーズ3(危機)レベルの深刻な食料不安に直面すると予測されており、これは前年に比べ少し悪化している。
  • 食料不安は、主に食料価格の高騰と、景気回復の遅れが家計を圧迫して食料入手が困難になっているためである。

リベリア共和国ー食料価格の高騰、マクロ経済の課題

  • 最新のCH分析によると、2023年6月から8月の食料不足期に、約53万1,000人が深刻な急性食料不安に直面すると予測されており、そのうち約2万1,500人がCHフェーズ4(緊急事態)に該当する。急性食料不安は高い食料価格と関連している。
  • 2024年1月時点で、この国には約1,800人の難民と庇護希望者を受け入れていた。

リビア国ー社会不安定、経済的および政治的な不安定、高い食料価格、ダムの破壊

  • 2023年9月に強い嵐が国を襲い、2つのダムが破壊されて洪水が発生し、急性食料不安が悪化した。2024年の世界人道支援概要報告書では、2024年の急性食料不安の人数が25万人に減少したと報告されている。

マダガスカル共和国ー異常気象と景気回復の遅れ

  • 2024年1月から3月にかけて、南部および南東部では、約170万人がIPCフェーズ3(危機)あるいは以上の緊急レベルの急性食料不安に直面すると予測され、前年と比較してわずかな改善が見られる。

マリ共和国ー紛争

  • 最新のCH分析によると、CHフェーズ4(緊急事態)に該当する約5万5,000人を含む約137万人が、2024年6月から8月の端境期に深刻な急性食料不安に直面すると予測される。この数は前年と比較して増加しているが、CHフェーズ5(大災害)に該当する人口は予測されておらず、CHフェーズ4(緊急事態)に該当する人数は減少すると予測されている。
  • 食料不安の状況は主に北部および中央部地域の紛争の影響によるもので、これが生計や市場を混乱させ、2023年10月時点で約35万5,000人が避難を余儀なくされており、人道的アクセスへの制約も高い。
  • 2024年1月時点で、この国には約6万7,000人の難民と庇護希望者が滞在しており、その多くはブルキナファソ、ニジェール、モーリタニアから来ている。

モザンビーク共和国ー北部地域の治安悪化、局地的な収穫の減少

  • 最新のIPC分析によると、2023年10月から2024年3月の間に約330万人がIPCフェーズ3(危機)以上に分類されている。カーボ・デルガード州北部の不安定な状況が、最も深刻な急性食料不安の根底にある。
  • 2023/24年の作付けシーズン中に国内の一部地域での悪天候が、2024年の局所的な農業生産量の減少をもたらし、急性食料不安を悪化させる可能性がある。一方で、カーボ・デルガード州でのNSAG(非国家武装集団)による継続的な攻撃が引きつづき深刻な存在となっている。

ナミビア共和国ー穀物生産の局地的不足、食料価格の高騰

  • 2023年10月から2024年3月の間に、約69万5,000人が急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面すると予測されており、昨年の数値と比較して大幅な増加となっている。
  • 気象や価格高騰、そして経済成長の低迷が、高いレベルの急性食料不安を引き起こす主な要因となっている。

セネガル共和国ーマクロ経済の課題

  • 最新のCH分析によると、2024年6月から8月の端境期に約72万7,000人が深刻な急性食料不安に直面すると予測されており、そのうち4万3,500人以上がCHフェーズ4(緊急事態)に該当する。これは、約126万人が人道支援を必要としていると推定されていた前年と比較して大幅な改善を示しており、2023年の平均以上の穀物生産が主な要因となっている。
  • 急性食料不安の主な要因はマクロ経済の課題である。
    2024年1月時点で、主にモーリタニアからの約1万2,700人の難民と庇護希望者がこの国に滞在していた。

シエラレオネ共和国ー食料価格の高騰、マクロ経済の課題

  • 最新のCH分析によると2024年6月から8月の端境期には、約146万人が人道支援を必要とすると予想されている。これは、約118万人が深刻な急性食料不安に陥っていると推定された2023年の同時期と比べて悪化することになる。
  • 急性食料不安は、食料価格の高騰によって維持されており、その原因の一部は通貨安と脆弱な人々の購買力の低さにある。

ウガンダ共和国ー異常気象、社会不安、食料価格の高騰

  • 難民受け入れ地区で実施された最新のIPC分析では、2024年2月から6月にかけて、約96万3,000人が急性食糧不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面していると推定されている。こうした状況は、異常気象による農作物生産への悪影響、難民と受け入れ住民の間の争い、食料価格の高騰を反映している。
  • 主にキャンプで受け入れられ、人道支援に頼っている難民・庇護申請者の数は、2024年2月上旬には、南スーダンからの難民約92万7,000人、コンゴ民主共和国からの難民約52万7000人を含む162万人と推定されている。。

タンザニア連合共和国ー地域的な主食の生産不足、食料価格の高騰

  • タンザニア本土の21地区で実施された最新のIPC分析によると、2023年の作物生産量の公式推定値が平均以下であったため、2023年11月から2024年4月までの間に、推定90万人が深刻な急性食料不安に直面している。
  • 作物生産不足の主な要因は、悪天候と病害虫の発生である。

ザンビア共和国ー食料価格の高騰

  • 2023年10月から2024年3月の間に、200万人強がIPCフェーズ3(危機)以上に分類される。トウモロコシの記録的な高値や局地的な穀物生産不足を含む食料価格の高騰が、高水準の深刻な食料不安を引き起こしている主な要因である。
  • 2024年、乾燥した気候が国の大部分に影響を及ぼしており、穀物生産が減少すれば、影響を受けた地域における深刻な食料不安が激化する可能性がある。

アジア(9つの国と地域)

広範囲に及ぶアクセスの欠如

朝鮮民主主義人民共和国ー低い食料消費水準、乏しい食生活の多様性、低い経済成長

  • 継続する低調な経済成長の中で、食料安全保障の状況は脆弱なままであると予想される。

レバノンー経済危機

  • IPC分析によると、2023年10月から2024年3月の間に、約105万人のレバノン人、シリア難民、レバノンおよびシリア・アラブ共和国からのパレスチナ難民がIPCフェーズ3(危機)以上に分類され、分析対象人口の19%に相当する。2024年4月から9月の間に、約114万人が高水準の食料不安に直面し、IPCフェーズ3(危機)以上になると予想され、これは分析対象人口の21%に相当する。

パレスチナ国ー紛争

  • 2024年2月7日時点のIPC分析によれば、ガザ地区の全体人口(220万人)が高レベルの急性食料不安に直面していた(IPCフェーズ3[危機]以上)。50%以上(117万人)がIPCフェーズ4(緊急事態)に分類された。少なくとも4人に1人(50万人以上)がIPCフェーズ5(大惨事)に直面している。

シリア・アラブ共和国ー経済危機、長引く内戦

  • 2024年のHumanitarian Needs Overviewによると、2024年は、人口の半分以上にあたる少なくとも1,290万人が食料支援の必要があると推定されている。その主な原因は経済危機と生計機会の制約にある。

イエメン共和国ー紛争、洪水、食料と燃料価格の高騰

  • 2022年10月から12月にかけて、人口の53%以上にあたる1,700万人近くがIPCフェーズ3(危機)とそれ以上に分類された。最も懸念されるのは、IPCフェーズ4(緊急事態)に分類された610万人および紛争の結果として国内避難民となっている430万人である。

アフガニスタン・イスラム共和国ー内戦、人口移動、経済低迷

  • 最新のIPC分析では、2023年11月から2024年3月の間に、IPCフェーズ3(危機)およびIPCフェーズ4(緊急事態)に陥る人の数を分析対象人口の36%に当たる1,580万人と推定した。

バングラデシュ人民共和国-経済的制約、難民の流入

  • 経済的制約が続いていることから、食料不安は引き続き脆弱であると予想される。
  • ミャンマーからの約100万人のロヒンギャ難民が、主にコックスバザール地区に居住している。

ミャンマー-紛争、経済的制約、主食の価格高騰、2023年の農業生産高減少

  • 長引く政治危機により、弱い立場にある世帯とロヒンギャ国内避難民が脆弱な状況にさらされている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の最新データ(2024年1月)によると、国内避難民の数は約260万人と推定されている。国内避難民の多くは、ラカイン州、チン州、カチン州、カイン州、シャン州に居住している。
  • 同国の主食であるコメの2023年の生産量は、2年連続で5年平均を下回ると予測されているが、これは主に農家の農業投入資材へのアクセス制限と天候不順を反映している。
  • 国内で最も消費されている品種である「エマタ」米の国内価格は、2024年1月時点で記録的な水準にあり、主要な主食へのアクセスを制約している。

パキスタン・イスラム共和国ー異常気象、経済的制約、主食の価格高騰

  • 最新のIPC分析によると、2023年11月から2024年1月の間に、高水準の急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面する人々の数は、2022年の壊滅的な洪水が長引いている影響と国内の食料価格の高騰により、1,180万人と予測された。
  • パキスタンの主要食料である小麦粉の価格は、2024年1月にはほとんどの市場で過去最高水準の値上がりを記録した。

ラテンアメリカおよびカリブ諸国(2カ国)

広範なアクセス不足

ハイチ共和国ー食料価格の高騰、自然災害、治安悪化

  • 約440万人(分析対象人口の45%)が深刻な急性食料不安に直面し、2024年3月から2024年6月の間に緊急の食料支援を必要としていると推定される。高水準の食料不安は、経済低迷、国内食料生産の減少、食料価格の高騰、燃料不足、頻発する自然災害によるものである。治安の悪化によって状況は深刻化しており、必要不可欠なサービスへのアクセスが制限され、人口移動が生じている。

ベネズエラ(ボリバル共和国)ー経済危機

  • 人道的対応計画によると、昨年と同様に2024年におよそ200万人が食糧支援を必要とすると推定される。2023年、年間物価上昇率は190パーセントと高く、脆弱世帯の食料へのアクセスを制約している。2021年以来、ある程度の経済回復が見られたものの、2014年から2020年の深刻で長期にわたるマクロ経済危機による影響が残り、2023年も難民や移民の流出が続いている。

北アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア(1カ国)

広範なアクセス不足

ウクライナー紛争

  • 同国は世界にとっての重要な食料の供給国である。しかし、2023年のHNOによると、戦争により最低で1,760万人が多分野における人道支援を必要とすると推定されており、そのうち、1,100万人が食料安全保障と生活支援を必要としている。

世界の穀物需給概況

2023年から24年にかけての世界の穀物供給は引き続き順調、2024年の小麦の早期生産見通しは良好

FAOは、2023年における世界の穀物生産量の新たな予測を僅かながら引き上げ、前年比1.1%(3,040万トン)増の28億4,000万トンとした。この増加は主に、ブラジル、中国(本土)、アメリカ合衆国が牽引する形で、世界のトウモロコシ生産量予測が大幅に増加(5.3%増)した結果であり、コムギ生産量の減少(2.3%減)を相殺するものである。コメに関しては、FAOは2月以降、夏作サイクルの作付けが大幅に延長されたことを示す公式データを考慮し、インドの2022/23年と2023/24年の生産量を上方修正した。この修正は、他の国、特にコロンビアとミャンマーの生産量の下方修正を上回っている。これらの変更により、2023/24年の世界のコメ生産量は5億2,620万トン(精米)となり、2022/23年の改定値から0.4%増加すると予想される。

2023/24年の世界の穀物利用率の予測は、2月時点の予測を140万トン上回る28億2,300万トンとなり、2022/23年のレベルを3,130万トン(1.1%)上回った。主にアルジェリアとインドを中心としたトウモロコシの飼料利用の増加に起因し、2023/24年の世界粗粒穀物利用率の予測は0.9百万トン増の1,506百万トンとなり、2022/23年比で1.2%の増加となった。2023/24年の世界のコムギ利用率は、今月予想が100万トン下方修正されたにもかかわらず、前年比1.8%増の7億9,330万トンとなる。2023/24年の世界のコメ利用量は、主に2022/23年以降のインドにおけるコメ利用の増加により、前回予想より150万トン多い5億2,370万トンになると予想される。この上方修正にもかかわらず、2023/24年の世界のコメ総利用量はほとんど増加しないか、マイナス成長となるだろう。

FAOは、2024年までの世界の穀物在庫について、2月の前回報告から150万トン増の8億9,690万トンと予測しており、これは期初水準を2,400万トン(2.8%)上回るものである。その結果、世界の穀物在庫対使用比率は2022/23年の30.9%から2023/24年には31.1%に上昇すると予想され、世界的な供給状況は引き続き順調であることを示唆している。今月の世界穀物在庫見通しの上方修正は、世界粗粒穀物在庫の更なる増加(前月比240万トン増)によるものであり、その大部分は中国(本土)のトウモロコシ在庫見通しの改善によって押し上げられたものである。この修正により、世界の粗粒穀物在庫は3億7,930万トンとなり、期初水準から2,590万トン(7.3%)増加すると予想される。これに対して、世界のコムギ在庫は前月からわずかに(800万トン)引き下げられ、期初水準から430万トン(1.3%)減少すると予想されている。2023/24年産米の世界在庫は1億9,870万トンと予想され、2月時点の予想とほぼ変わらず、前年比1.2%増の史上最高となる。コメの在庫は輸出国(主にインド)で増加する一方、輸入国の在庫は3シーズン連続で減少すると予想されている。

先月から310万トン増の4億8,300万トンとされた2023/24年の世界穀物貿易予測は、2022/23年の水準を640万トン(1.3%)上回るものであり、これは専ら世界粗粒穀物貿易の増加が見込まれることによる。今月310万トン上方修正された粗粒穀物の世界貿易は、2023/24年(7月/6月)には1,030万トン(4.6%)増の2億3,410万トンと予測される。今月の上方修正は、ウクライナのトウモロコシ輸出見通しの改善と中国(本土)の需要増加を反映し、世界のトウモロコシ貿易が拡大すると予想されることによる。今月もほぼ横ばいの1億9,750万トンで、2023/24年(7月/6月)の世界小麦貿易は、前シーズンの水準から240万トン(1.2%)縮小する見込みである。2024年(1月〜12月)の米の国際貿易は5,140万トンと予想され、2月の予想とほとんど変わらず、2年連続の縮小を示唆する。

2024年産小麦の初期見通し

2024年産小麦の世界生産量について、FAOの予備予測は7億9700万トンで、2023年産より1%増加するが、2022年産の過去最高を下回っている。米国では、価格下落により冬コムギの作付けが前年比6%減少した。それにも関わらず、2年連続の広範な干ばつの後、2023年最終四半期以降の十分な降水量により、収量の見通しと収穫面積が2023年の水準を上回る可能性への期待が高まっている。2024年の同国のコムギ総生産量は5,150万トンと予想され、最近の5年平均と2023年の生産量を上回る。カナダでも同様に、価格軟化を反映し、公式予測ではコムギの作付面積は2%縮小する。しかし、天候不順だった2023年の収穫後、今年はより好ましい気象条件が予測されており、収穫見通しが良好であることから、2024年にはコムギ生産量が3,300万トンに増加するとの期待が高まっている。逆に欧州では、特に主要生産国であるフランスとドイツで、大雨が冬コムギの播種を中断・遅延させたため、2024年のコムギ総面積は小幅に減少すると予想される。

欧州連合(EU)のコムギ生産量は、最近の寒波や降雨不足の影響もあり、2024年には1億3,300万トンに微減すると予想されている。グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国でも、播種時期には理想的とは言えない気象条件であり、コムギ栽培面積が減少した結果、2024年の生産量は若干減少すると予想されている。

ウクライナのコムギ栽培面積は、戦争により畑へのアクセスが妨げられ、農家に厳しい財政的制約が課され、小麦生産の収益性が制限されているため、2024年にさらに減少すると推定されている。ロシア連邦では、全般的に良好な気象条件がシーズン中も続くと予想され、2024年の冬コムギの生産量は若干増加する見込みである。アジアでは、インドで2024年に小麦の豊作が予想される。これは、十分な灌漑用水の供給、良好な気象条件、そして作付け増加を誘発する割高な作物価格を反映したものである。パキスタンでは、全般的に好ましい気象条件により、コムギ生産量は2,830万トンに増加すると予測されている。中国(本土)では、国内需要が堅調であることと、大規模な作付けを支えた最低購入価格の上昇により、生産量は平均をわずかに上回る1億3,630万トンになると予測されている。近東アジア諸国では、概ね好ましい気象条件により、主要生産国であるトルコとイラン・イスラム共和国で、ほぼ平均レベルのコムギ生産量が予測されている。

北アフリカでは、2年連続で広範囲にわたる降雨量不足が続き、アルジェリア、チュニジア、モロッコの2024年のコムギ収穫見通しが悪化している。赤道の南では、2024年の主なトウモロコシ作付けがブラジルで行われているが、作物価格の低下と大豆の収穫遅れで播種作業が遅れたため、トウモロコシ作付け面積は前年に比べて減少すると予測されている。ブラジルのトウモロコシ総生産量は、過去最高を記録した2023年から減少すると見られるが、それでも過去5年間の平均を上回ると予想されている。アルゼンチンのトウモロコシ生産は、干ばつの影響を受けた2023年の収穫後、好条件の気象条件に基づき回復すると見込まれている。南アフリカでは、最近の降雨量不足により収穫量見通しが大幅に低下し、同国の2024年のトウモロコシ生産量は以前の予想を下回り、ほぼ平均レベルまで低下すると予測されている。乾燥した気象条件は近隣諸国に影響を及ぼし、2024年のトウモロコシ生産見通しを大幅に削減している。

低所得・食料不足国の食料事情

さまざまな気象条件と紛争が2024年の穀物生産見通しに影響した

低所得食料不足国(LIFDC)では、2024年の穀物の収穫は4月から始まる予定である。極東アジアとアフリカ南部では、間もなく中央アフリカ、東アフリカと西アフリカで播種が始まる。アフリカ南部では穀物生産が盛んで、2024 年の作物の見通しは降水量が少ない期間が長く続き、平均よりも高い気温により、1月以来の急激な悪化となった。気象状況は今後大幅に改善することは予想されず、マラウイ、モザンビークとジンバブエの2024年の穀物生産量は、平均に達するか、平均を下回る可能性がある。サイクロンの活動は比較的最小限だったマダガスカルの状況はやや有利に見える。

複数の乾燥した気象条件の季節を経た東アフリカでは、降雨量は2023年後半はもっと豊富で、2024年も継続して雨が多く降る見込みで、収穫は好調のように見える。スーダンでは治安の悪化が広がっており、2024年の農業を混乱させ続けると予想され、生産見通しに重くのしかかる。西アフリカで2024年穀物の播種は3月に始まるだろう。気象予報はサヘル諸国では降水量が多い見込みが高いことを示しているが、沿岸国では平年を下回る降雨の可能性が強くなることを示している。いくつかの国の継続する紛争は農家が投入財や畑にアクセスするのを妨げることが今後も続くと予想される。

極東アジアおよび近東アジア諸国では、概して良好な気象条件により、2024 年の生産は全体的に良好な見通しとなっているが、アフガニスタンとシリア・アラブ共和国では依然として困難な社会経済的状況が続いており、十分な投入物にアクセスする農家の能力は引き続き制約されている。中央アジア諸国では、シーズン初めの降水量の減少と、春の数か月間降水量が少ない状態が続くとの予測が、2024年の冬小麦作物の生産見通しを悪化させている。

FAOの2023年のLIFDCの穀物総生産量(精米換算の米を含む)の予測は1億4,140万トンで、5年間の平均を3パーセント上回っており、2023年の生産高と同等である。総計レベルでは、物理的に混乱した農業活動と農業投入財価格の高騰がアクセス可能性と利用を減少させた紛争により、2023年の生産量の伸びはスーダンにおける穀物生産高の大幅な減少により制限された。東アフリカの他の場所では、雨天状況は悪天候が続いた後、ほぼ正常な降雨状況に戻り、多くの国で収穫量が増加した。西アフリカのいくつかの国における紛争や治安不安が生産の伸びを継続して抑制されたが、アフリカ南部や西アフリカでは、2023年の穀物の収穫量は好天に支えられ、概して平均を上回ると推定される。近東アジアにおける総生産量は2023 年には増加し、極東アジアの国々の全体の生産量は平均と推定された。中米では、ハイチの気象ショックと治安不安は2023 年の生産高は平均を下回る2つの主な理由である。

2023/24年の東アフリカの輸入増加予測

LIFDCの総穀物輸入需要は、2023/24市場年度に4,940万トンと予測されており、これは5年間の平均より7%多い300万トン以上である。輸入ニーズの増加の大部分は東アフリカ諸国、特にスーダンとケニアに関係しており、ここ3年間の収穫量が平均を下回ったため国内供給が逼迫している。その他の地域では、平均レベルと比較して輸入ニーズに大きな変化は見られない。国際的な穀物ベンチマーク価格はコメを除いて2023年から2024年初めに下落したが、いくつかの国で通貨安が世界価格下落の転嫁効果を制限している。