2017年度まで、国際農林業協働協会が発行する季刊誌「世界の農林水産」に、GIEWSの資料の一部(”Crop and Prospects”および”Food Outlook”)を紹介するページが設けられていました。
2018年度、同誌は紙面リニューアルを行い、この紹介ページはなくなりました。
そこで、2017年からAJFが呼びかけて行っている「FAOの資料を読む学習会」参加メンバーが中心となって、”Crop and Prospects”の「外部からの支援を必要としている国」「世界の穀物の需給概況」「低所得・食料不足国の食料事情」の3項目の参考訳を作成し、紹介していくことになりました。
「今知る世界の食料危機 No.22」では、2023年11月に公開された”Crop and Prospects #3 November 2023”の該当ページを紹介します。
「FAOの資料を読む学習会」、「今知る世界の食料危機」の作成に関心を持ったら、info@ajf.gr.jへご連絡ください。
外部からの支援を必要としている国
アフリカ(33カ国)
食料総生産量・供給量の極端な不足
中央アフリカー紛争、食料価格の高騰、異常気象
・最新の総合的食料安全保障フェーズ分類(IPC)分析によると、2023年4月から8月の間で、深刻な食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に該当する人は240万人 に及ぶとされる。そのうち62万2,000人がIPCフェーズ4(緊急事態)に該当する。この状況は農業生産を抑制した洪水や干ばつ、紛争や社会不安による影響を反映している。
・2023年8月に48万9,000人が社会不安や武力による暴力が原因で国内避難民となった。
ケニアー異常気象
・2023年10月から1月にかけて約150万人が急性食料不安に陥ると推定され、これは主に北部と東部の牧畜・農耕・限界農耕地域で農業生産に影響を及ぼした、2020年末から2023年始めにかけての長期にわたる深刻な干ばつによる影響が続いていることを反映している。
ソマリアー干ばつ、社会不安
・2020年末から2023年始めにかけての雨季における不十分な降雨量と2021年始めから続いている紛争により、約430万人が2023年10月から12月の間に深刻な急性食料不安状態に直面すると推定される。
広範囲におけるアクセスの不足
ブルンジー異常気象と食料価格の高騰
・2023年6月から9月の期間に約120万人がIPCフェーズ3(危機)急性食料不安レベルに直面していると推定された。前年比で変化はなかったが、2022年とは異なりIPCフェーズ4(緊急事態)状態にある人はいなくなった。その主な要因は北部地域における2022年末の洪水による長引く影響、自国の通貨の下落などによる食料価格の高騰である。
チャドー社会不安、食料価格の高騰、スーダンにおける紛争の影響、難民の流入
・最新のCH分析によると、2023年6月から8月の端境期においてCHフェーズ4(緊急事態)にある約28万8,000人を含む約230万人が急性食料不安状態に置かれた。
・急性食料不安は、約25万5,000人の難民を受け入れているラック地方やティベスティ地方における長引く社会不安によるものである。食料安全保障の状況はスーダンとの国境閉鎖に伴う貿易の流れの途絶に加え、食料備蓄と地方の人々の生計への圧力の高まりを反映しており、特に2023年4月中旬以降スーダンから避難した42万人の難民の大半が居住している東部地域で特に懸念されている。
・2023年10月中旬時点で合計103万人の難民が国内に居住していた。
コンゴ民主共和国―紛争
・2023年9月のIPC分析によると、2023年7月から12月までの間に、2,340万人が切迫した食料不安に見舞われると予測されている。これは、北東部諸州における紛争の激化によるもので、とりわけ収穫の完了が妨げられており、今後数ヶ月の間に入手可能な食料が減少する可能性が高い。
– 2023年8月の時点で、北キヴ、南キヴ、イトゥリの580万人が紛争のために避難した。
ジブチ共和国―天候不順、食料価格の高騰
・2023年3月から6月までに約25万人が深刻な食糧不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面していると推定されている。これは主に、2020年末から2023年初めにかけて起こった長期にわたる深刻な干ばつの影響と食料価格の高騰が原因だ。
エリトリア国
・マクロ経済の課題により、国民の食料不安に対する脆弱性が高まっている。
エチオピア連邦共和国―南部地域の干ばつ、ティグライ州の紛争、食料価格の高騰
・「2023年人道対応計画」によると、約2,010万人が深刻な急性食糧不安に直面していると公式に推定されている。主に2020年後半から2023年初頭にかけて南部地域で長引く干ばつ、2020年から2022年にかけてのティグアライ州での紛争、食料価格の高騰が原因である。
マラウイ共和国―異常気象、食料価格の高騰
・IPCの最新の分析によると、2023年10月から2024年3月の間に急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面する人の数は440万人で、2022/23年の同時期の人数より15%多い。
・特に南部地区におけるサイクロン・フレディの影響と、過去最高価格のトウモロコシを含む食料の価格高騰が、状況を悪化させている主な要因である。
モーリタニア・イスラム共和国―食料価格の高騰
・最新のCH分析によると2023年6月から8月の端境期間中、CHフェーズ4(緊急事態)の約2万8,000人を含め、47万2,000人以上の人々が人道支援を必要としていた。前年と比べて改善されたことになるが、2022年に穀物生産が大幅に増加したことが主な原因である。
・食料価格の高騰は、脆弱な世帯の食料アクセスを引き続き制約した。
・2023年9月時点で、同国は11万人以上の難民・庇護希望者を受け入れており、そのほとんどがマリから来ている。
ニジェール共和国―紛争、政情不安、食料価格の高騰
・2023年3月のCH分析によると、2023年6月から8月の端境期間中、CHフェーズ4(緊急事態)の約15万人以上を含め、約328万人が急性食料不安に見舞われた。
・軍事占領後の制裁措置により、急激な食品価格上昇が引き起こされ、収入機会へのアクセスがすでに限られている不安定な地域では、人道支援の適切な提供が制約され、食料の安全保障が急速に悪化している。
・2023年9月時点で、同国は主にナイジェリアとマリからの32万5,000人以上の難民と庇護希望者を受け入れている。
ナイジェリア連邦共和国―北部地域の紛争、マクロ経済危機、高騰する食料価格
- 2023年の6月から8月の間に、約2,490万人が急性食料不安に直面すると予測されていた。これには、CHフェーズ4(緊急事態)の約114万人が含まれており、これは2022年に推定された1,945万人を上回っている。しかし、増加は主にCH分析の地理的範囲拡大を反映している。
- 急性食料不安は主に北部諸州における社会不安と紛争の結果であり、これらは農業生産活動を混乱させ、2023年6月時点で約358万人の人々が避難する原因となった。
- 2023年にナイラが大幅に価値を失ったことが一因となり、高いインフレ率が、脆弱な世帯の食料へのアクセスを経済的に制限している。
- 2023年8月時点で、主にカメルーンからの約9万4,000人の難民が国内に居住していた。
南スーダン共和国―景気停滞、洪水、社会不安
- 継続した人道支援にもかかわらず、食料不安は依然として大部分の人々に影響を及ぼしている。これは、激しいインフレと不十分な食料供給、停滞した農業生産、連続して毎年起こる広範囲な洪水の影響、そして2020年以降の組織的な暴力のエスカレートによるものである。最新の利用可能なデータによれば、約776万人、つまり全人口のほぼ3分の2が、2023年の4月から7月の間の端境期において、深刻な急性食料不安に直面すると予想されていた。
- 特に、ジョングレイ州のアコボ、カナル/ピギ、ファンガク郡、およびユニティ州のリーとヤマンディット郡の世帯については、約4万3,000人がIPCフェーズ5(大災害)に直面すると予想されているため、特別な懸念が存在する。
ジンバブエ共和国―食料価格の高騰、地域的な生産不足
- 2024年3月までに少なくとも350万人が人道的支援を必要とすると予想されている。
- 経済の低迷による高い食料価格と減少した収入は、急性食料不安の高いレベルを支える主な要因であり、南部と西部地域での生産の局地的な不足も影響している。
ブルキナファソ―紛争
・最新のCH分析によると、2023年6月から8月の端境期には、CHフェーズ4(緊急事態)の60万4.500人以上、CHフェーズ5(大災害)の4万2,700人近くを含む、約335万人が深刻な食糧不安に直面すると予測された。全体では、345万人が人道支援を必要としていると推定された2022年と比較すると、わずかに減少している。しかし、これは、この国で予測されている壊滅的な状況(CHフェーズ5)にある人々の数としては、これまでで最も多い数字となる。
・深刻な食料不安は、主に紛争の悪化と、特に武装集団による包囲戦術によって引き起こされている。不安定な治安は農業活動を妨げ、食料価格を押し上げる一方、人道的アクセスの制約は非常に高い。2023年3月現在、社会不安により約206万人が避難を余儀なくされている。
・2023年6月現在、3万7,000人近くの難民・庇護希望者(ほとんどがマリ出身)が居住している。
カメルーン共和国―社会不安、食料価格の高騰
・2023年3月のCH分析によると、2023年3月から8月にかけて、紛争、社会政情不安、食料価格の高騰、人口移動と農業被害・損失を引き起こした洪水の影響により、約240万人が急性食料不安(CHフェーズ3[危機]以上)に陥ったと推定されていた。
・2023年6月現在、極北地域における武装集団の攻撃により、国内避難民の数は2,300人を超えている。
コンゴ共和国―難民の流入、洪水
・2022年末時点で、中央アフリカ共和国から約3万人、コンゴ民主共和国から約2万6,000人の難民が、主にリクアラ県とプラトー県に居住していた。受入コミュニティは既存の食料不足と限られた生計の機会に直面しており、難民の食料安全保障は継続する人道支援に大きく依存している。
・2023年初めの洪水は、キュベット、リクアラ、プラトー、サンガの各県に住む約16万5,000人に影響を与えた。
エスワティニー食料価格の高騰、経済の低迷
・最新のIPC分析によると、2023年10月から2024年3月の間に、急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面する人々の数は前年比9%増加し、28万3,000人と予測されている。
・食料不安は、食料価格の高騰と経済成長の鈍化によって、家計の収入を得る機会が抑制されていることが原因である。
ギニア共和国―食料価格の高騰
・2023年6月から8月の端境期には、CHフェーズ4(緊急事態)の1万2,000人以上を含む71万人近くが急性食料不安に直面すると予測され、約122万人が急性食料不安に直面すると推定された2022年に比べ改善された。急性食料不安は、主に食料価格の高騰が原因である。
・2023年8月時点で、主にシエラレオネからの2,200人以上の難民が国内に居住している。
レソト王国―食料価格の高騰、経済の低迷
・最新のIPC分析によると、2023年10月から2024年3月までに、推定32万5,000人がIPCフェーズ3(危機)レベルの深刻な食料不安に直面すると予測されており、これは前年に比べ少し悪化している。
・食料不安の状況は、主に食糧価格の高騰と、家計が食糧を入手する経済的能力を圧迫している景気回復の遅れによるものである。
リベリア共和国―食料価格の高騰、マクロ経済の課題
・2023年6月から8月の端境期に、53万1,000人以上の人々が急性食料不安に直面すると予測され、そのうちの約2万1,500人がCHフェーズ4(緊急事態)である。
・急性食料不安は、国際的な物価の高騰と輸送コストの上昇による食料価格の高騰に関連している。
・2023年8月時点で、同国は約1,800人の難民・庇護希望者を受け入れている。
マダガスカル共和国―異常気象と景気回復の遅れ
・2024年1月から3月にかけて、南部および南東部では、170万人がIPCフェーズ3(危機)そしてそのレベル以上(緊急事態)の急性食料不安に直面すると予測され、前年に比べ若干の改善が見られる。
・2023年のサイクロン「フレディ」の影響、その前に数年続いた悪天候の影響、そして高い貧困率が、深刻な急性食料不安の状況の根底にある主な要因である。
マリ共和国―紛争
・最新のCH分析によると、2023年6月から8月の端境期に、約126万人が急性深刻な食料不安に直面すると予測され、その中にはCHフェーズ4(緊急事態)の7万6,250人近くと、CHフェーズ5(大災害惨事)の2,500人以上が含まれる。これは、人口の一部がCHフェーズ5(大災害惨事)レベルに直面すると評価された初めてのケースである。しかしながら、2023年の食料不安人口は、2022年に比べて減少している。
・食料不安の状況は、主に北部と中央部における紛争の影響に裏打ちさ支えられている。この紛争は引き続き人びとの生業と市場を混乱させ、2023年4月時点で37万5,000人以上の避難民を生み出している。
・2023年9月時点で、ブルキナファソ、ニジェール、モーリタニアを中心に約6万6,000人の難民を受け入れている。
モザンビーク共和国―北部地域の治安悪化、局地的な収穫の減少
・北部のカボデルガド州の治安悪化は引き続き生活に影響を与え、最も深刻なレベルの急性食料不安が維持されている。
・南部と中部の一部で天候不順が局地的な不作を引き起こし、急性食料不安を悪化させた。
ナミビア共和国―穀物生産の局地的不足、景気低迷、食料価格の高騰
・推定69万5,000人が2023年10月から2024年3月にかけて、急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面すると予測されており、昨年の数字よりも大幅に悪化している。天候不順、食料価格の高騰、景気低迷が高レベルの急性食料不安を引き起こす主な要因である。
セネガル共和国―食料価格の高騰、マクロ経済の課題
・最新のCH分析によると、2023年6月から8月の端境期には、約126万人が深刻な食料不安に見舞われると予測されており、その中にはCHフェーズ4(緊急事態)の約5万7,000人も含まれている。これは、人道支援を必要とする人々が約88万1,000人と推定された前年と比べると、大幅に悪化している。
・深刻な食料不安の主な要因は、マクロ経済の課題と基本的な食料品価格の急激な高騰である。
・2023年8月時点、モーリタニアを中心とする推定1万2,000人の難民と庇護希望者が人道支援を必要としていた。
シエラレオネ共和国―食料価格の高騰、マクロ経済の課題
・最新のCH分析によると2023年6月から8月の端境期には、CHフェーズ4(緊急事態)の約3万4,500人を含む、約118万人が人道支援を必要としていた。
・急性食料不安は、食料価格の高騰によって維持されており、その原因の一部は通貨安と脆弱な人々の購買力の低さにある。
スーダン共和国―紛争、避難、食料価格の高騰
約2,000万人が緊急の食料と生計支援が必要である。これは、2023年4月半ばに勃発した紛争が原因である。この紛争は、生計に厳しいダメージを与え、経済活動を麻痺させ、すでに高くなっていた食料価格を高騰させた。
ウガンダ共和国―異常気象、不安、食料価格の高騰 価格
・北東部の農牧畜地帯であるカラモジャにて実施された最新のIPC分析では、2023年4月から8月の間に、約34万2,000人が急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面していると推定している。こうした状況は、天候による打撃、作物と家畜の疫病、社会不安、食料価格高騰の悪影響を反映している。
・南スーダンからの難民約90万人、コンゴ民主共和国からの難民約50万人が主にキャンプに収容され、人道支援に頼っている。
タンザニア連合共和国―地域的な主食の生産不足、食料価格の高騰
・IPCの最新の分析によると、2023年3月から5月の間に、推定99万人が深刻な急性食料不安に直面しており、その内訳は、本土28県で83万9,000人、ザンジバル島で15万1,000人である。
・主な要因は、国内作物生産の減少と食料価格の高騰である。
ザンビア共和国―食料価格の高騰
・トウモロコシの記録的な高値を含む食料価格の高騰は、食料へのアクセスを制限し、急性食料不安を悪化させている。急性食料不安に直面する人々の数は、前年のレベルである200万人に迫ると予測されている。
朝鮮民主主義人民共和国-低い食料消費水準、乏しい食生活の多様性、景気後退
・継続する低調な経済成長の中で、食料安全保障の状況は脆弱なままであると予想される。
レバノンー経済危機
・IPC急性食料不安分析によると、2022年9月から12月の間に、住民人口の33%に当たる約129万人のレバノン住民とレバノン国内にいるシリア難民総数の46%に当たる70万人がIPCフェーズ3(危機)以上になると推定された。この数は、2023年1月から4月にかけて、レバノン居住者人口の38%に当たる146万人、レバノン国内のシリア難民総数の53%に当たる80万人に増加した。
パレスチナ国-紛争
・2023年のHumanitarian Needs Overviewによると、2022年5月から7月にかけて、人口の28%にあたる合計約150万人(ガザ地区120万人とヨルダン川西岸地区35万3,000人)が急性食料不安であり、早急な支援を必要としていると推定された。2023年10月には紛争が激化し、人道的ニーズがさらに高まった。
スリランカ民主社会主義共和国-低い2023年農業生産高の見通し、食料品目の高騰
・2023年の穀物生産量は2年続けて5年平均を下回ると予測されており、これは主に農家が農業投入資材を入手する中での継続的な困難を反映している。主要食料品目の価格高騰も、多くの世帯の食料への経済的アクセスを制約している。
・ 国内の大半の世帯は食料が確保されているが、一部の地域では急性食料不安が続いている。
シリア・アラブ共和国-内戦、経済危機
・世界食糧計画(WFP)の統合指標報告アプローチ(CARI)によると、2022年8月から10月にかけて、全人口の55%に当たる約1,210万人が深刻な食料不足に陥っていると見積もられ、その主な原因は、生計機会の制約と継続的な経済の悪化にある。
・国際的な食料支援も行われているが、シリア難民は近隣諸国の受け入れコミュニティの資源を圧迫している。
イエメン共和国-紛争、洪水、食料と燃料価格の高騰
・2022年10月から12月にかけて、人口の53%以上にあたる1,700万人近くがIPCフェーズ3(危機)以上に分類された。最も懸念されるのは、IPCフェーズ4(緊急事態)に分類された610万人および紛争の結果として国内避難民となっている430万人である。
深刻な局地的食料不安
アフガニスタン・イスラム共和国―内戦、人口移動、経済減速
・最新のIPC分析では、2023年5月から10月の間に、IPCフェーズ3(危機)およびIPCフェーズ4(緊急事態)に陥る人の数を分析対象人口の35%に当たる1,530万人と推定した。
バングラデシュ人民共和国―経済的制約、難民の流入
・経済的制約が続いていることから、食料不安は引き続き脆弱であると予想される。
・ミャンマーからの約100万人のロヒンギャ難民が、主にコックスバザール地区に居住している。
ミャンマーー紛争、経済的制約、主食の価格高騰、2023年の農業生産高減少
- 長引く政治危機により、弱い立場にある世帯とロヒンギャ国内避難民が脆弱な状況にさらされている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の最新値(2023年10月)によると、国内避難民の数は約200万人(2023.07.183万人↗︎)と推定されている。国内避難民の多くは、ラカイン州、チン州、カチン州、カイン州、シャン州に居住している。
- 同国の主食であるコメの2023年の生産量は、2年連続で5年平均を下回ると予測されているが、これは主に農家の農業投入資材へのアクセス制限と天候不順を反映している。
- 国内で最も消費されている品種である「エマタ」米の国内価格は、2023年9月時点で記録的な水準にあり、主要な主食へのアクセスを制約している。
パキスタンー極端な天候、経済的制約、主食の価格高騰
- 最新のIPC分析によると、2023年11月から2024年1月の間に、高レベルの急性食糧不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面する人々の数は、2022年の壊滅的な洪水の影響の長引く影響と国内の食糧価格の高騰により、1,180万人(2023.07.1050万人↗︎)と予測されている。
- 同国の主要食糧である小麦粉の価格は、2023年9月にはほとんどの市場でほぼ記録的な水準となった。同国の主食であるコメの2023年の生産量は、2年連続で5年平均を下回ると予想されているが、これは主に農家の農業投入物へのアクセス制限と天候不順を反映している。
ラテンアメリカおよびカリブ諸国(2カ国)
広範なアクセス不足
ハイチ-食料価格の高騰、自然災害、社会不安
・約430万人(分析対象人口の44%)(2023.07.490万人↘︎)が深刻な急性食料不安に直面し、2023年8月から2024年2月の間に緊急の食料支援を必要としていると推定される。高水準の食料不安は、持続的な経済低迷、国内食料生産の減少、食料価格の高騰、燃料不足、自然災害の頻発によるものである。治安の悪化によって状況は深刻化しており、市場を含む必要不可欠なサービスへのアクセスが制限され、人口移動が生じている。
ベネズエラ(ボリバル共和国)-経済危機
- 同国からの難民および移民の総数は770万人(2023.07.730万人↗︎)と推定され、そのうち最も多いのはコロンビア(289万人)(2023.07.248万人↗︎)、ペルー(154万人) 2023.07.152万人↘︎)、ブラジル(47万7,500人)( 2023.07.44万9,700人↗︎)、エクアドル(47万4,900人)( 2023.07.50万2,000人↘︎)、チリ(44万4,400人)(2023.07. 44万4,400人→)である。残りの70万人は他のラテンアメリカおよびカリブ海諸国に広がっており、約120万人はその地域外に位置している。受入国での高い食料インフレ率や収入機会の制約が、ベネズエラの難民および移民の食料へのアクセスを制約しているため、人道的ニーズは著しいものである。「2023年難民・移民ニーズ分析」によれば、食糧支援を必要とするベネズエラ難民および移民(受け入れ国)の数は、2023年には318万人と予測されており、2022年の316万人からわずかに増加している。
北アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア(1カ国)
広範なアクセス不足
ウクライナ-紛争
- ウクライナは、世界にとって重要な食糧供給国であり続けている。しかし、「2023年人道支援ニーズ概要」によると、2023年に少なくとも1,760万人(2022.9〜12.1770万人↘︎)が戦争のために多部門にわたる人道支援を必要としており、そのうち1,100万人以上が食料保障と生計の支援を必要としていると推定されている。
世界の穀物概況
穀物需給概要
世界の穀物生産は前月と変わらず、利用率と貿易は増加、在庫は減少するも過去最高を記録する見通し
FAOの 2023 年世界穀物生産予測は、前年比0.9%(2600万トン)増の28億1900万トンに留まっている。2023年の世界のコムギ生産量は、10月の前回値からほぼ横ばいで、昨年より2.2%(1,800万トン)低い7億8,510万トンと予想された。欧州連合(EU)とカザフスタンの生産予測が前月比で下方修正されたが、これはシーズン後半に天候不順が長引いたため、収量が以前の見込みよりも減少したためである。これらの減産は、イラクと米国の生産量見通しの増加を相殺した。2023年の世界の粗粒穀物生産量は15億1,000万トンとなり、これは10月の見通しと変わらず、昨年の実績を2.7%(3,880万トン)上回る。しかし、国単位でも注目すべき変更がいくつかある。11月に行われた主な修正は中国(本土)に関するもので、作付けが事前予想より多く、収穫量予想に400万トンが上乗せされた。ほとんどの西アフリカ諸国の生産量予測も、最近発表された公式データに沿って上方修正された。これらの修正は、アメリカ合衆国における天候の不順による、トウモロコシとソルガムの生産予測の大幅な減少と、欧州連合における東部地域の乾燥に伴うトウモロコシの収穫量の減少と相殺する形となった。。FAOの2023/24年の世界コメ生産量予測は現在5億2,390万トンとなり、この予想は2022/23年のものより0.8%の増加、前回報告された10月時点の値より85万トンの増加である。この上方修正は主に、2022/23年産米の生産量予測が修正されたことに伴い、インドの生産量予測が上方修正されたことを反映している。この修正は、他の様々な修正、特にインドネシアのオフシーズンの作付けが事前予想よりも顕著に減少したことから同国の生産量見通しをさらに下方修正したことに影を落とした。
2024 年に目を向けると、冬コムギの作付けは北半球全域で進行中である。今年の作物価格低下を反映し、作付面積の増加は限定的と予想される。米国では、主要生産州で干ばつが部分的に解消し、今後数ヶ月は平均を上回る降雨が予想されることから、2024年産コムギの作付け初期の気象条件は好転しそうである。10月時点で、作付けは通常通りに進んでいる。
欧州連合(EU)では、比較的乾燥した温暖な気候が冬コムギの播種に好都合であり、北部諸国ではすでに播種が完了しつつある。ウクライナでは、畑へのアクセスが制限され、農場出荷価格が低いなど、戦争の影響が続いており、天候もあまり良くないため、コムギの栽培面積が減少している。インドでは、引き続き堅調な国内価格に牽引され、コムギの作付面積は昨年を上回ることが予想され、また、灌漑用水は十分供給されるとみられ、収量見通しも良好となっている。パキスタンでは、記録的な国内価格の高騰の中、コムギの作付面積は過去5年間の平均を大幅に上回ると予想され、また質の高い種子、肥料、農薬の供給も十分にありよい収穫が期待される。中国(本土)では、コムギの国内需要が上向くとの予想から、今年の作付けは若干増加する可能性がある。
南半球諸国では、2024年産粗粒穀物の播種が進行中である。ブラジルでは、コスト価格比が大豆に有利なため、トウモロコシの作付けが5%程度後退するとの見方が初期段階から示されている。アルゼンチンでは、2024年のトウモロコシ作付面積が前年比でわずかに減少するとの見通しが初期段階から示されている。南アフリカでは、初期の予想では、2024年のトウモロコシの作付けは若干増加する見込みだが、エルニーニョ現象は一般的に平均より乾燥した高温の天候を伴うため、南アフリカおよび近隣諸国の収穫量には下振れリスクがある。
2023/24年の世界の穀物利用量は、10月のレポートより670万トン増加し、2022/23年より1.0%多い28億1000万トンに達すると予測される。2023/24年におけるコムギの総利用量予測は、11月に630万トン拡大されたが、これは主に中国(本土)におけるコムギの飼料利用の増加が見込まれるためであり、世界の予測は7億8900万トンとなり、2022/23年のレベルを1.4%上回る。今月は100万トンの下方修正となったが、これは主にインドネシアにおけるトウモロコシの減産見通しによるものである。 粗粒穀物の世界利用量は、2023/24 年に 1.2%増の 14 億 9,900 万トンに拡大する見込みである。コメについては、主にインドの国内用途の増加を主に反映し、2023/24年の世界のコメ利用量予測が10月以降150万トン引き上げられ、5億2,200万トンとなった。それにも関わらず、修正後のレベルでは、世界のコメの総利用量は2022/23年のレベルで停滞する可能性が引き続き示唆されているが、これは食用米の増加が飼料用米の削減によって相殺されるためである。
2024年のシーズン終了時点での世界の穀物在庫予測は、10月から290万トン減少して8億8100万トンとなったが、それでも初期レベルを2.6%上回る増加を示している。最新の在庫と利用予測に基づくと、2023/24年の世界の穀物在庫使用率は30.7%で、2022/23年の30.5%をわずかに上回り、歴史的な観点から見ても十分な供給状況である。月ごとの在庫の下方修正は主に、世界のコムギ在庫予測が420万トン減少したことに起因しており、中国本土での飼料消費の増加、カザフスタンでの生産見通しの減少、トルコでの輸出の増加が予想されている。今月の下方修正後、世界のコムギ在庫は初期レベルに近い3億1500万トンにとどまると予想されている。世界の粗粒穀物在庫予測は今月100万トン増加して3億6700万トンとなり、初期レベルから5.9%増加している。この上方修正は主に、中国本土でのトウモロコシ生産見通しの増加を反映している。2023/24年の市場シーズン終了時点での世界のコメ在庫は、前年比1.5%増加して1億9,890万トンに達すると予測されている。しかし、この増加の多くはインドでの蓄積と、パキスタンとアメリカ合衆国での在庫回復によるものであり、他の主要なコメ輸出国での在庫減少を上回る可能性がある。輸入国が保有する総在庫は、2022/23年の減少レベルからわずかに回復すると見られており、増加は主に中国本土、インドネシア、フィリピンに関するものであり、他の輸入国全体の在庫減少を上回ると予想されている。
FAOの2023/24年の世界の穀物貿易予測は、10月から300万トン増加して4億6,900万トンとなり、2022/23年から1.6%の減少が見込まれている。欧州連合からのトウモロコシとコムギの輸入需要が予想以上に強く、先月から世界の粗粒穀物とコムギの貿易見通しが改善された。輸出側では、アルゼンチンとパラグアイからのトウモロコシ販売が予想以上に多く、今月の世界の粗粒穀物貿易予測の上方修正を支えた。コムギについては、今月の上方修正はトルコからの出荷増加によっても支えられた。しかし、これらの上方修正にもかかわらず、2023/24年の世界の粗粒穀物とコムギの貿易は、それぞれ2022/23年から2.8%と1.8%の減少が予測されている。2024年(1月~12月)の国際コメ貿易は、10月の予測とほぼ変わらず、2023年の減少レベルに近い5,280万トンと見られている。インドネシアや東アフリカ諸国からの購入が減少すると予想される一方で、極東の一部の輸入国、欧州連合、ラテンアメリカ諸国からの輸入増加が見込まれている。
2024年のシーズン終了までの世界の穀物在庫の予測は、10月から290万トン減の8億8,100万トンとなったが、それでも当初の水準を2.6%上回る水準を示している。最新の在庫と利用予測に基づくと、2023/24年度の世界の穀物在庫対使用率は30.7%で、2022/23年度の30.5%をわずかに上回っており、これは歴史的な観点から見ると良い供給状況である。最近の前月比在庫の下方修正は主に、世界の小麦在庫予測の下方修正(420万トン)によるもので、中国(本土)では飼料消費量の増加により在庫が減少すると予想され、カザフスタンでは生産見通しの低下により、そしてトルコでは好調な輸出によるものである。今月の下方修正を受けて、世界のコムギ在庫は3億1,500万トンと当初の水準に近い水準で推移すると予想されている。今月の世界の粗粒在庫予測は100万トン引き上げられ、当初の水準から5.9%増の3億6,700万トンとなった。この上方修正は主に、トウモロコシ生産量の増加見通しにより、中国(本土)でのトウモロコシ在庫の増加が見込まれることを反映している。 2023/24市場年度終了時点での世界のコメ貯蔵量は、前年比1.5%回復してピークの1億9,890万トンになると予想されている。しかし、この増加の大部分はインドで起こると予想されており、パキスタンと米国での生産回復と相まって、さらなる蓄積が他のすべての主要なコメ輸出国の在庫取り崩しを小さく見せる可能性がある。輸入業者が保有する総在庫量は2022/23年度の減少水準からわずかにしか回復しないとみられている。その増加は主に中国(本土)、インドネシア、フィリピンで他のすべての輸入業者が保有する合計在庫の減少を上回ることによるものである。
FAOの2023/24年度の世界の穀物貿易予測は10月から300万トン増の4億6,900万トンとなり、依然として2022/23年度から1.6%縮小するとみられている。トウモロコシとコムギの両方について欧州連合(EU)からの輸入需要がこれまでの予想を上回ったことで、先月以来世界の粗粒穀物とコムギの貿易見通しが押し上げられた。輸出面では、アルゼンチンとパラグアイからのトウモロコシの販売が当初予想を上回ったことも、今月の世界の粗粒貿易予測の上方修正を裏付けた。コムギに関しては、今月の上方修正は、トルコで見られた出荷量の増加にも支えられた。しかし、こうした上方修正にも関わらず、世界の粗粒貿易と小麦貿易はいずれも2023/24年度に2022/23年度の水準からそれぞれ2.8%、1.8%縮小すると予測されている。 2024年(1月~12月)のコメの国際貿易は5,280万トン程度と見込まれており、10月の予測からほとんど変わらず、2023年の減少水準に近いが、インドネシアや東アフリカ諸国からのより低く想定されるコメの購入量は、少数の極東輸入国、欧州連合、ラテンアメリカ諸国によるよる想定コメ輸入量の増加を相殺する。
2023年のLIFDCの穀物総生産量はほぼ平年並みと予測
低所得食料不足国(LIFDCs)の2023年の穀物総生産量は、1 億 4,010 万トンになると予測され、5 年間の平均とほぼ変わらない。
アフリカのLIFDCsでは、2023年の穀物総生産量は1億770万トンと予測され、平均をわずかに下回る。東アフリカのLIFDCでは、ケニア、スーダン、ウガンダ、タンザニア連合共和国で降雨条件が悪く、生産見通しが低く抑えられており、収穫量が減少するとみられる。スーダンでは、紛争によって農地や市場への物理的なアクセスが制限され、農業投入財が極めて高くなっているため、生産量は大幅に減少すると予想されている。西アフリカの大半のLIFDCsでは、天候不順な地域もあったものの、総降雨量と降雨時期は概して作物の生育に適しており、穀物生産は5年平均を上回ると予想される。しかし、ニジェールでは、降雨状況の悪化と社会不安が続いており、生産量は5年平均を下回っている。南部アフリカのLIFDCsではサイクロンとそれに伴う洪水により、マダガスカル、モザンビーク、マラウイで局地的な農作物の損失と損害が発生したが、穀物生産全体では平均を上回る水準が予想される。南部アフリカの2024年の作付けは11月に開始される見込みであり、今後の作付けシーズン中の降雨量が全般的に平均を下回るとの予測が生産見通しに影を落としている。
アジアでは、LIFDCs の 2023 年の穀物総生産量は 3,170 万トンとされ、5 年間の平均をわずかに上回った。生産量の増加は主に中央アジアに集中しており、良好な天候と国内価格の低下によって農業投入財の使用量が増加し、収量の増加を支えた。中近東アジアLIFDCsでは、好天に恵まれたシリア・アラブ共和国の生産量が急増し、2023年の収穫量は前年の2倍以上となった。アフガニスタンとイエメンでは、穀物の収穫は平均に近い水準と推定される。中米では、農業投入財の入手が困難なことと全般的な天候不順のため、2023年の穀物生産量は平均を大きく下回ると予想される。
中央アメリカでは、2023年のハイチにおける穀物生産量が、農業資材の不足と全般的に不順な天候のため、平均を大きく下回ると予測されている。
東アフリカが牽引する輸入需要の増加
2023/24年におけるLIFDCsの穀物輸入総需要は2023/24年の販売年において、5年平均を6.2%上回る4,960万トンと予測される。増加の主な要因は、東アフリカ諸国における輸入需要の増加であり、これは2年間の干ばつに見舞われた収穫量の減少と2023年の低生産予測を反映している。中央アメリカと極東アジアのLIFDCsでは、輸入需要の小幅な増加が予測される。逆に、南部アフリカと西アフリカの後発開発途上国では、国内の収穫量の回復が予想されることから、輸入需要が減少すると見られている。同様の理由で、アジア、特に中央アジア諸国では、輸入が減少すると予想される。主食の国際基準価格が引き続き下落しているにもかかわらず、国内の食料価格のインフレ率は、2023年後半に若干の鈍化が見られるものの、依然として高い水準にある。通貨安は、高いインフレ率の主な要因であり、世界的な価格下落が国内市場に反映されにくくなっている。食料価格の高止まりは、LIFDCsの食料不安の根本的要因となっている。