今知る世界の食料危機No.22(2023年7月号)

2017年度まで、国際農林業協働協会が発行する季刊誌「世界の農林水産」に、GIEWSの資料の一部(”Crop and Prospects”および”Food Outlook”)を紹介するページが設けられていました。

2018年度、同誌は紙面リニューアルを行い、この紹介ページはなくなりました。

そこで、2017年からAJFが呼びかけて行っている「FAOの資料を読む学習会」参加メンバーが中心となって、”Crop and Prospects”の「外部からの支援を必要としている国」「世界の穀物の需給概況」「低所得・食料不足国の食料事情」の3項目の参考訳を作成し、紹介していくことになりました。

「今知る世界の食料危機 No.22」では、2023年7月に公開された”Crop and Prospects #1 March 2023”の該当ページを紹介します。

「FAOの資料を読む学習会」、「今知る世界の食料危機」の作成に関心を持ったら、food@ajf.gr.jpへご連絡ください。

外部からの支援を必要としている国

アフリカ (33カ国)

食料総生産量・供給量の極端な不足

中央アフリカ共和国―紛争、食料価格の高騰、異常気象

・最新の統合食料安全保障フェーズ分類(IPC)分析によると、深刻な食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)の人々の数は、IPCフェーズ4(緊急事態)の約62万2,000人を含め、2023年4月から8月の間に240万人に達すると予測された。この状況は、紛争や社会不安の影響に加え、洪水や干ばつにより作物の収量や農業生産活動が抑制された影響を反映している。

・2023年2月時点で、48万3,000人が武力による暴力の結果、国内避難民となっている。

ケニア共和国 – 異常気象

・最新の推計によると、2020年後半から2023年前半にかけて続いた深刻な干ばつの影響が残っていることを反映し、2022年3月から6月にかけて約540万人が急性食料不安状態に置かれた。主に、北部と東部の牧畜・農耕・限界農耕地域で、作物や家畜が影響を受けた。

ソマリア連邦共和国 ‐干ばつと社会不安

・2023年4月から6月にかけて、約660万人が深刻な急性食料不安に陥ると推定される。これには、2020年後半から続く雨季の降雨不足と、2021年初頭からの紛争の激化によるIPCフェーズ5(大惨事)の約4万人が含まれている。

広範な食料アクセスの欠如

ブルンジ共和国 ‐異常気象と高騰する食料価格

・最新の推計によると、2023年6月から9月にかけて、120万人が急性食料不安にあたるIPCフェーズ3(危機)に直面すると推定されている。この数字は前年同月比では変化がないものの、2022年と異なりIPCフェーズ4(緊急事態)の人がいなくなっている点は特筆すべきである。主な要因は、2022年後半の北部地域での洪水の影響が長引いたこと、食料価格の口頭、また一部は通貨の下落の影響と考えられる。

・最新の推計によると、2022年10月から12月にかけて、約140万人が急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面していた。その主な要因は、豆類の生産に影響を与えた中央部と南東部の一部地域における2月から5月にかけての不順な降雨、長引くCOVID-19パンデミックの社会経済的影響、そして食料価格の高騰である。

チャド共和国 ‐社会不安、食料価格の高騰

・最新のCH分析によると、2023年6月から8月の端境期には、CHフェーズ4(緊急事態)の10万7,000人を含む約186万人が急性食料不安に見舞われると予測されている。この状況は前年に比べると改善している。主な要因は、2021年に穀物生産量が平均を下回ったあと、2022年の穀物生産量が前年同月比で増加したことにある。

・急性食料不安は、ラック地方およびティベスティ地方で続く社会不安によるもので、2023年4月までに38万人以上が避難している。さらに、燃料費の値上げによる食料価格の高騰や、2022年に発生した大洪水による穀物損失の影響が、食料不安を悪化させている。

・2023年6月中旬時点で、71万5000人の難民が国内に滞在している。特に、スーダンで続いている紛争により、2023年4月中旬以降、約9万人の人々が同国に避難しており、今後もその数は増えるとみられている。

ジブチ共和国―天候不順、食料価格の高騰

・主に2020年後半から2023年前半にかけて起こった長期の厳しい干ばつと食料価格の高騰の影響で、2023年3月から6月にかけて約25万人が急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面したと推定される。

エリトリア国

・マクロ経済的な課題により、国民の食料不安に対する脆弱性が高まっている。

エチオピア連邦共和国ー南部地域の干ばつ、ティグライ州の紛争、食料価格の高騰

・「2023年人道対応計画」によると、約2,010万人が深刻な急性食料不安に直面していると公式に推定されている。2020年後半から2023年前半にかけての南部地域の干ばつ、2020年後半から2022年後半にかけてのティグライ州での紛争、食料価格の高騰が主な原因である。

マラウイ共和国―異常気象、食料価格の高騰

・2022年10月から2023年3月までの間に、推定382万人が急性食料不安(IPCフェーズ3[危機])に直面し、2022年1月から3月までの推定値の2倍以上となった。

・南部地区におけるサイクロン・フレディの影響(農作物の損失やインフラの破壊、食料価格の高騰など)は、2023年の食料不安の状況を悪化させると予想される。

モーリタニア・イスラム共和国―食料価格の高騰

・最新のCH分析によると、2023年6月から8月の端境期に、CHフェーズ4(緊急)の約2万8,000人を含め、47万2,000人以上が人道支援を必要とすると予測されている。前年と比べて改善されたことになるが、主に2022年の穀物生産の大幅な増加によるものである。

・食料価格の高騰、特に輸入小麦の高騰は、引き続き急性食料不安を悪化させている。

・2022年11月時点で(入手可能な最新データ)、同国は10万人以上の難民を受け入れており、そのほとんどがマリからの難民である。

ニジェール共和国―紛争、食料価格の高騰、洪水

・2023年6月から8月の端境期に、CHフェーズ4(緊急事態)の15万人以上を含め、約328万人が急性食料不安に陥ると予測されている。2022年の状況より改善されたことになるが、2021年の穀物生産高が平均以下であったことを受け、作物収量が急回復したことが主な要因である。

・持続する食料不安は引き続き生活を破壊し、2023年5月現在、主にディファ県、タウア県、ティラベリ県で36万人以上が避難している。食料価格の高騰に加え、2022年に約32万7,000人が被災した洪水も、食料不安を悪化させる要因となっている。

・2023年5月時点で、同国は主にナイジェリアとマリから約30万人の難民を受け入れている。

ナイジェリア連邦共和国―北部における紛争、食料価格の高騰、マクロ経済の課題

・2023年6月から8月の端境期には、CHフェーズ4(緊急事態)の約114万人を含め、約2,486万人が急性食料不安に直面すると予測されている。これは2022年に深刻な食料不安と推定された1,945万人を上回っている。しかしこの増加は、主にCH分析の地理的範囲の拡大を反映している。

・急性食料不安は、主に北部諸州における治安悪化と紛争が原因で、農民の土地への物理的なアクセスを妨げられて農業活動を混乱させたことだけでなく、2023年4月時点で約357万人の避難民を生み出した。

・インフレ率の高止まり、並行市場でのナイラ安、燃料価格の高騰、2023年初頭の新紙幣導入に伴う現金不足の影響が長引くなど、マクロ経済上の課題によって脆弱な世帯の食料安全保障の状況を悪化させている。

・2023年5月時点で、9万2,000人近くの主にカメルーンからの難民が居住している。

南スーダン共和国ー景気停滞、洪水、社会不安

・持続的な人道支援にもかかわらず、食料不安は依然として人口の大部分に影響を及ぼしている。これは、農業生産の停滞、連続的に発生した広範な洪水の影響、2020年以降の地方レベルでの組織的暴力の激化によって、インフレが高騰し、食料供給が不十分であることに由来する。全人口のほぼ3分の2に当たる約776万人が、2023年4月から7月にかけての端境期に深刻な急性食料不安不足に直面すると予想されている。

・特に懸念されることは、ジョングレイ州のアコボ(Akobo)、カナル/ピギ(Canal/Pigi)、ファンガク(Fangak)郡、ユニティ州のリー(Leer)とマヤンディット(Mayendit)郡の世帯で、4万3,000人がIPCフェーズ5(大災害)に直面すると予想されていることである。

ジンバブエ共和国  -食料価格の高騰 

・政府の調査によると、2023年1月から3月にかけて、推定380万人が人道支援を必要とすると予想されている。この数字は、2022年第1四半期に推定された水準よりも高い。

・食料安全保障状況の悪化は、食料価格の高騰と景気後退の影響による所得の減少により、食料へのアクセスが悪くなっていることが主な原因である。

深刻な局地的食料不安

ブルキナファソ -北部での社会不安、食料価格の高騰

・最新のCH分析によると、2023年6月から8月の端境期の間に、約335万人が急性食料不安に直面すると予測されている。これには、CHフェーズ4(緊急事態)の60万4,500人以上とCHフェーズ5(大災害)の約4万2,700人が含まれる。これは前年度に比して微減である。しかし、壊滅的な状況にある人々の数は最も多い。

・急性食料不安は、主に北部と東部地域の治安の悪さ、特に同国のサヘル地域における非国家武装集団による包囲戦術の使用に起因する。2023年3月現在、社会不安により約206万人が避難を余儀なくされている。

・高止まりする食料価格は、国中の脆弱な世帯、特に紛争の影響を受けた地域の世帯や、市場の混乱や、収入源や人道支援へのアクセスの制約をうけている世帯に影響を及ぼしている

・2023年4月時点で、主にマリからの難民約3万6,000人が同国に居住している。

カメルーン -社会不安、食料価格の高騰、洪水

・2023年3月のCH分析によると、2023年3月から8月の間に、約240万人がCHフェーズ3([危機]以上)の急性食料不安に陥ったと推定された。これは、紛争、社会政治的不安、食料価格の高騰、洪水による住民の避難と作物の立ち枯れの結果である。

・2023年6月現在、北西部と南西部の国内避難民(IDPs)は2,300人以上で、極北部のでの非国家武装集団による攻撃に起因する。

コンゴ共和国 -難民の流入、洪水

・2022年末時点で、中央アフリカ共和国から約3万人、コンゴ民主共和国から約2万6,000人の難民が、主にリクアラ県とプラトー県に居住している。ホスト・コミュニティは既存の食料不足と限られた収入創出機会(livelihood opportunity)に直面しており、難民の食料安全保障は継続的な人道支援に大きく依存している。

・2022年11月以降の降雨量が平均を上回ったため、12月と1月に同国の中部と北部で洪水が発生し、人々が避難した。被害評価報告によると、キュベット(Cuvette)県、リクアラ(Likouala)県、プラトー(Plateaux)県、サンガ(Sangha)県の23地区で約16万5,000人が被災している。 

エスワティニ -食料価格の高騰、経済の低迷 

・IPCの最新のIPC分析によると、2023年1月から3月の間に25万9,000人近くが急性食料不安に直面したとすると予想されており、前年に比べて改善している。

・2022/23 年の食料不安は、食料価格の高騰と経済成長の鈍化により、世帯における収入を得る機会が抑制されていることが原因である。 

ギニア共和国 -食料価格の高騰

・主に食料価格の高騰のために、2023年6月から8月の端境期に約71万人が急性食料不安におちいることが予測される。これにはCHフェーズ4(緊急事態)の約1万2,000人が含まれる。約122万人が急性食料不安に直面していた2022年と比較して改善が見られる。・急性食料不安の主な要因は食料価格の高騰である。2023年3月時点で、主にシエラレオネからの約2,200人の難民がこの国に滞在していた。

 レソト王国  -食料価格の高騰、経済の低迷

・最新のIPC分析によると、2022年10月から2023年3月にかけて、約32万人がIPCフェーズ3(危機)レベルの急性食料不安に直面すると予想されている。これは2022年初頭の状況に比べて少し改善されている。

・食料不安の状況は、主に食料価格の高騰と、食料を入手する家計の経済力を圧迫している経済回復の遅れによるものである。

リベリア共和国 -食料価格の高騰、マクロ経済の問題

・2023年6月から8月の端境期に、53万1,000人以上が急性食料不安となることが予測されている。これには、CHフェーズ4(緊急事態)の約2万1,500人が含まれる。

・急性食料不安は、国際的な物価高騰と輸送コストの上昇に起因した食料価格の高騰が関係している。

・2023年5月時点で、同国は1,800人の難民を受け入れていた。

リビア -社会不安、経済・政治的不安定、食料価格の高騰

・「2023年人道的ニーズ概要」によると、2023年に約30万人(人口の4%以下)が人道支援を必要とすることが予想される。

マダガスカル共和国 -異常気象、経済回復の遅れ

・2023年1月から3月にかけて、南部および南東部の地域では、2022年に連続して発生した干ばつにより、推定220万人がIPCフェーズ3(危機)以上のレベルの急性食料不安に直面すると予測されていた。

・2023年2月のサイクロン「フレディ」の通過は、生計の混乱を引きおこし、また作物被害、ひいては食料不安の一層悪化を招いた。

マリ共和国 -社会不安、食料価格の高騰

・最新のCH分析によると、2023年6月から8月の端境期に、約126万人が急性食料不安に直面すると予測されている。これは、CHフェーズ4(緊急事態)の7万6250人近くと、CHフェーズ5(大災害)の約2,500人を含む。人口の一部が、フェーズ5に直面すると予測されたのは初めてのことである。他方、食料不安に置かれている人々の人数合計は、2022年に比べて2023年は減少している。

・食料不安の状況は、主に、2023年4月時点で同国の中部と北部を中心に37万5,000人以上の避難民を引き起こしている紛争の影響によるものである。

・食料価格の高止まりは、国全体の脆弱な家計に影響を与えている。特に、紛争の影響を受けた地域の人々の食料アクセスを制限している。なぜならば、当該地域では、市場の混乱や、収入源及び人道支援へのアクセスの制約もあるからである。

・2023年5月時点で、同国はブルキナファソ、ニジェールとモーリタニアを中心とした約6万4,000人の避難民を受け入れていた。

モザンビーク共和国―北部地域の治安悪化、異常気象

・2022年の異常気象は多くの人々に影響を与えたが、北部のカボデルガド州の社会不安は引き続き生活に影響を与え、最も深刻な食料不安が維持されている。2023年の食料不安の予測はまだできていないが、2022年4月から9月の間に予測された140万人が深刻な食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面していた。

・2023年2月のサイクロン「フレディ」の上陸は、生計の混乱を引きおこし、また作物被害と被災民の食料不足を悪化させたと予想される。

ナミビア共和国―穀物生産の局地的不足、景気低迷、食料価格の高騰

・推定39万人が2023年1月から3月にかけて、深刻な食料不足(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面しており、これは2022年の同時期の数字よりも低い。食料価格の高騰と、2022年の穀物生産における局地的な天候不順が主な要因である。

セネガル共和国―食料価格の高騰、マクロ経済の課題

・最新のCH分析によると、2023年6月から8月の端境期には、約126万人が深刻な食料不安に見舞われると予測されており、その中にはCHフェーズ4(緊急事態)の約5万7,000人も含まれている。これは、人道支援を必要とする人々が約88万1,000人と推定された前年と比べると、大幅に悪化することになる。

・深刻な食料不安の主な要因は、マクロ経済の課題と基本的な食料品価格の高騰である。

・2023年1月時点、モーリタニアを中心とする推定1万2,000人の難民が人道支援を必要としていた。

シエラレオネ共和国―食料価格の高騰、マクロ経済の課題

・最新のCH分析によると2023年6月から8月の端境期には、CHフェーズ4(緊急事態)の約3万4,500人を含む、約118万人が人道支援を必要とすると予測されている。

・深刻な食料不安は、急激な食料価格の高騰によって維持されており、その原因の一部は通貨安と脆弱な人々の購買力の低さにある。

スーダン共和国―紛争、避難、食料価格の高騰

・現在、約1,990万人が緊急の食料と生計支援が必要であると推定される。これは、2023年4月半ばに勃発した紛争が原因である。この紛争は、生計に厳しいダメージを与え、経済活動を麻痺させ、すでに高くなっていた食料価格を高騰させた。さらに、約167万人が国内に避難し、約52万8,000人が隣国に逃亡する大規模な避難を引き起こした。

ウガンダ共和国―異常気象、不安、食料価格の高騰 価格

・北東部の農牧畜地帯であるカラモジャにて実施された最新のIPC分析では、2023年4月から8月の間に、約58万2,000人が深刻な食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面していると推定している。こうした状況は、天候による打撃、作物と家畜の疫病、市民の不安、食料価格高騰の悪影響を反映している。

・南スーダンからの難民約88万2,000人、コンゴ民主共和国からの難民約45万5,000人がキャンプに収容され、人道支援に頼っている。

タンザニア連合共和国―地域的な主食の生産不足、食料価格の高騰

・IPCの最新の分析によると、2023年3月から5月の間に、推定99万人が深刻な急性食料不安に直面しており、その内訳は、本土28県で83万9,000人、ザンジバル島で15万1,000人である。

・主な要因は、国内作物生産の減少と食料価格の高騰である。

ザンビア共和国―穀物生産の減少、食料価格の高騰

・2022年10月から2023年3月の間に、推定195万人が急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面すると予測され、2021/22年に推定された160万人と比べて増加した。

・高水準の急性食料不安は、平均を下回る穀物の収穫と食料価格の高騰が、家計の食料入手とアクセスに悪影響を与えたことに関連している。

シリア・アラブ共和国-内戦、経済危機 

・世界食糧計画(WFP)の統合指標報告アプローチ(CARI)によると、2022年8月から10月にかけて、全人口の55%に当たる約1,210万人が深刻な食料不足に陥っていると見積もられ、その主な原因は、生計機会の制約と継続的な経済の悪化にある。

・国際的な食料支援も行われているが、シリア難民は近隣諸国の受け入れコミュニティの資源を圧迫している。

朝鮮民主主義人民共和国-低い食料消費水準、乏しい食生活の多様性、景気後退、2022年の農業生産の減少

・2022年の農業生産高が平均を下回ることで経済的制約が悪化し、食料安全保障の状況は脆弱なままであると予想される。

レバノン-経済危機 

・ IPC急性食料不安分析によると、2022年9月から12月の間に、住民人口の33%に当たる約129万人のレバノン住民とレバノン国内にいるシリア難民総数の46%に当たる70万人がIPCフェーズ3(危機)以上になると推定された。この数は、2023年1月から4月にかけて、レバノン居住者人口の38%に当たる146万人、レバノン国内のシリア難民総数の53%に当たる80万人に増加した。

スリランカ民主社会主義共和国-2023年の農業生産高は見通し不良、主要食料品目は高値で推移 

・2023年の穀物生産量は5年平均を下回ると予測されているが、これは主に農家が農業投入資材を入手する上での制約を反映している。主要食料品目の価格高騰も、多くの世帯の食料への経済的アクセスを制約している。

・ 国内の大半の世帯は食料が確保されているが、一部の地域では食料不安が続いている。

イエメン共和国-紛争、洪水、食料と燃料価格の高騰

・2022年10月から12月にかけて、人口の53%以上にあたる1,700万人近くがIPCフェーズ3(危機)以上に分類された。最も懸念されるのは、IPCフェーズ4(緊急事態)に分類された610万人および紛争の結果として国内避難民となっている430万人である。

アフガニスタン・イスラム共和国-内戦、人口移動、経済減速 

・最新のIPC分析では、2023年5月から10月の間に、IPCフェーズ3(危機)およびIPCフェーズ4(緊急事態)に陥る人の数を分析対象人口の35%に当たる1,530万人と見積もっている。

バングラデシュ人民共和国-経済的制約、難民の流入、主食の価格高騰

・経済的制約が続いていることから、食料不安は引き続き脆弱であると予想される。

・ミャンマーからの約100万人のロヒンギャ難民が、主にコックスバザール地区とバサンチャー島に居住している。

・重要な食料品目であるコムギ粉とパーム油の国内価格は、2023年5月には高水準にあった。

ミャンマー連邦共和国-紛争、政情不安、経済的制約、主食の価格高騰、2022年の農業生産高減少

・長引く政治危機により、弱い立場にある世帯とロヒンギャ国内避難民が脆弱な状況にさらされている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の最新値(2023年5月)によると、国内避難民の数は約183万人と推定されている。国内避難民の多くは、ラカイン州、チン州、カチン州、カイン州、シャン州に居住している。

・国内で最も消費されている品種である「エマタ」米の国内価格は、2023年5月時点で記録的な水準にあり、主要な主食へのアクセスを制約している。

パキスタン・イスラム共和国―気象の極端な変動、経済的制約、主食用作物の価格高騰

・最新のIPCの分析によれば、2022年の壊滅的な洪水の影響により、2023年4月から10月までの間に高水準の急性食料不安(IPC段階3 [危機] 以上)に直面する人々の数は約1,050万人と推定されている。この数は2022年の予測を上回り、主にIPC分析の地理的範囲が拡大したことを反映している。

・同国の主要食糧である小麦粉の価格は、2023年1月にはほとんどの市場で高騰し、主食へのアクセスが制約された。

ラテンアメリカおよびカリブ海諸国(2カ国)

広範なアクセス不足

ハイチ共和国―食料価格の高騰、自然災害、社会不安

・約490万人が深刻な急性食料不安に直面し、2023年3月から6月までの間に緊急の食料支援を必要としていることが推定されている。高水準の食料不安は、持続的な経済低迷、国内食料生産の減少、食料価格の高騰、燃料不足、自然災害の頻発によるものである。治安の悪化によって状況は深刻化しており、市場を含む必要不可欠なサービスへのアクセスが制限され、人口移動が生じ、人道支援の提供が妨げられている。

ベネズエラ・ボリバル共和国―経済危機

・この国からの難民および移民総数は730万人と推定され、そのうち最も多いのはコロンビア(248万人)、ペルー(152万人)、エクアドル(50万2,000人)、ブラジル(44万9,700人)、およびチリ(44万4,400人)である。残りの70万人は他のラテンアメリカおよびカリブ海諸国に広がっており、約100万人がその地域外に位置している。2021年以降の経済成長の再開にもかかわらず、2023年の最初の5か月間は難民や移民が流出し続けていた。受入国での高い食料インフレ率や収入機会の制約が、ベネズエラの難民および移民の食料へのアクセスを制限しているため、人道的ニーズは著しいものである。「2023-2024年地域難民および移民対応計画」によれば、ベネズエラの難民および移民が行先地で食料援助を必要とする数は、2022年の357万人からわずかに増加して2023年には362万人が見積もられている。

北アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア(1か国)

広範なアクセス不足

ウクライナー紛争

・ウクライナは世界の重要な食料供給国であり続けている。しかし、「2023年人道的ニーズ概要」によれば、2023年に少なくとも1,760万人が多部門的な人道的援助を必要としており、そのうち1,100万人以上が食料保障と生計の支援を必要としている。

穀物需給概要

世界の穀物生産量予測が引き上げられ、過去最高を記録し、FAOが新たに発表した2023年の世界の穀物生産量予測は、7月に前月比590万トン(0.2%)引き上げられ、28億1900万トンとなり、前年同月比1.1%増となり、過去最高を記録した。

今月の上方修正は、世界の小麦生産量の見通しがほぼ全面的に改善したことを反映しており、予測は0.9%増の7億8,330万トンとなったが、それでも2022年に記録した記録を1,840万トン下回っている。イベリア半島における降雨不足の影響はあったものの、全般的に良好な気象条件により収量予測が若干上向いたため、欧州連合(EU)は小麦生産量予測を上方修正した。

春コムギが主に栽培されているカナダとカザフスタンの予測もわずかに引き上げられた一方、最近発表された公式予想では、トルコのコムギ収穫量は事前予想を上回った。これらの増産は、平年より乾燥した天候が収量見通しを悪化させるとの予測から、オーストラリアの生産量見通しを大幅に下方修正したことを相殺した。2023年の粗粒穀物の世界生産量見通しは、7月に前月比で僅かながら引き下げられたが、15億1,200万トンとされ、2022年を2.9%上回った。

今回の格下げには、東アフリカ諸国のトウモロコシ生産量予測の下方修正が含まれる。これらの減産幅は、オオムギの世界生産量見通しの増産幅を上回っていて、これは主に当初予想された収穫量よりも多いというトルコの公式予想を反映している。

バングラデシュの収量予想が改善しされ、主要作物の収穫が終了した赤道直下とその南に位置する国々の生産量に若干の調整が加えられたことにより、FAOの2023/24年の世界コメ生産量予測は5億2,370万トン(精米ベース)となり、2022/23年の修正値である5億1,760万トンから若干上方修正された。

2023/24年の世界の穀物利用予測は、7月に前月比でわずかに(150万トン、0.1パーセント)引き上げられ、現在は2022/23年度より0.9パーセント高い28億500万トンに達する見込みである。コムギ利用量が230万トン上方修正され、これは主に以前の予想よりも高い飼料利用によって促進され、2023/24年度のコムギ利用全体の予測は2022/23年度より0.3パーセント高い7億8,300万トンに引き上げられた。2023/24年度の粗粒穀物利用総量は15億300万トンに固定されており、FAOの予測は6月からほぼ変わっていないが、特に飼料用としてトウモロコシの利用が増加すると予想され、2022/23年度のレベルから1.6パーセント拡大することを示しており、成長の大部分を占めている。2023/24年度の世界のコメ利用は5億2,000万トンと予測されており、2022/23年度の水準とほぼ変わらないが、これは予想される人口主導による食料利用の拡大が家畜飼料用コメの利用の減少によってほぼ相殺される可能性が高いためである。

FAOが新たに発表した2023/24年シーズン末までの世界の穀物在庫予測は8億7,800万トンで、6月の数値に比べ510万トン(0.6%)増、前シーズン比では2.3%増となった。

このレベルでは、2023/24年の世界の穀物在庫対使用比率は前年比横ばいの30.6%となり、次のシーズンの供給見通しは引き続き良好である。今月、中国(本土)、欧州連合(EU)、カザフスタンを中心に550万トンの上方修正が行われた結果、2023/24年の世界の小麦在庫は期首の水準を僅かに上回り(0.9%増)、3億1,400万トンに達すると見られる。

世界の粗粒穀物在庫の予測は、ブラジルとウクライナのトウモロコシ在庫の下方修正を主因として、今月僅かに縮小されたが、それでも2023/24年には前年比3.7%増の3億6,600万トンとなり、米国におけるトウモロコシ在庫の急激な回復見込みがその要因となっている。2023/24年シーズン末の世界コメ在庫は史上最高の1億9,850万トンと予想される。この予測は6月時点から若干増加しているが、これは主にミャンマーでの在庫減少がそれほど顕著ではないという予想を反映したものである。

FAOが発表した2023/24年の穀物貿易見通しは、コムギを中心に110万トン(0.2%)の上方修正が今月なされたにもかかわらず、2022/23年比で0.9%の減少となる。2023/24年(7月/6月)の世界小麦貿易見通しは、6月より160万トン上方修正され1億9,500万トンとなったが、それでも2022/23年の記録的な水準から3.4%の縮小となる。

生産見通しの改善に支えられたカナダの販売増と、中国(本土)の需要が前回予想より高いことが、今月の上方修正の背景となっている。2023/24年(7月/6月)の粗粒穀物貿易見通しは2億2,100万トンと、先月からほぼ横ばいで、2022/23年の水準からわずかな減少(0.3%)にとどまる。世界のトウモロコシ貿易は2023/24年に0.8%縮小すると見られている。

EUの輸入需要は2022/23年の高水準から後退、ウクライナからの輸出が減少、2022/23年に過去最高を記録したパラグアイからの販売量は減少すると予想される。オオムギの世界貿易も2023/24年には縮小すると予測され、その大部分はオーストラリアからの販売減少とアジアでの需要減退を反映している。

対照的に、世界のソルガム貿易は、米国による販売回復と中国(本土)による購入拡大が見込まれるため拡大すると予測される。バングラデシュ、中国(本土)、ナイジェリアの輸入見通しが下方修正されたことを主因に、FAOの2023年(1月〜12月)のコメの国際貿易見通しは5,300万トンで、6月の見通しから60万トン減少し、過去最高であった2022年を5.1%下回った。

2023年の低所得・食料不足国(LIFDCs)における合計生産量は引き続き安定

FAOによるLIFDCsにおける2023年の穀物生産量の予測は1億3,820万トンで、過去5年間の平均よりわずかに減少し、2022年の生産高と同等となる。アフリカにおけるLIFDCsでは2023年の穀物生産量の合計は1億610万トンであり過去5年の平均をわずかに下回ると予測される。

生産の低迷は主に東アフリカのLIFDCsに関連しており、ケニア、エチオピア、スーダン、ウガンダ、タンザニア連合共和国での不安定な降雨が収穫予測を抑制している。スーダンでは不順な降雨に加え、価格の高騰や現在起きている紛争による主要投入資材の不足が作付けを大幅に制約し、さらに生産の見通しを圧迫している。

西アフリカ沿岸のLIFDCsでは主要収穫期間が7月に始まり、平均以上の合計降雨量に基づき、2023年の穀物生産量は過去5年間の平均を上回ると予想される。サヘル諸国では収穫は年の後半に開始され、良好な天候を反映し生産量は平均レベルを上回ると予想される。しかし、リプタコ・グルマ、チャド湖、ナイジェリア北部の地域では紛争が長引いており、農家の生産力が低下し地方の生産に悪影響を与えるという懸念が残る。

7月には主要収穫期間が完了し、南部アフリカのLIFDCsの生産量は平均レベルを上回るとされる。しかし、台風やそれに伴って起きた洪水は局地的な作物の損失やマダガスカル、モザンビーク、マラウイでの悪影響を引き起こした。

アジアでは、低所得食料不足国間の 2023 年の穀物総生産量は、平均をわずかに上回る 3,100 万トンにとどまる。 近東アジア諸国では、降雨の時間的分布が不規則で累積降雨量が少なかったため、アフガニスタンの穀物生産量は平均を下回った。 シリア・アラブ共和国では、3月以来のほぼ平均的な降雨量により、作物がそれまでの乾燥した気象条件から回復し、2023年の穀物総生産量は平均を上回ると予想されている。中央アジア諸国では、主に降雨の時間的・空間的分布が均一であったことを反映し、2023年の穀物生産(主にコムギ)は平均を上回る水準と予測される。

中央アメリカでは、ハイチの2023年の生産量が平均を下回ると予想される。これは、農業投入資材の入手が困難であることと、3月から5月にかけての降雨量が平均を下回るためであり、作付けと収量の両方が低くなると予想される。

アフリカの低所得食料不足国間での輸入要件の高まり

低所得食料不足国の穀物輸入需要の合計は、2023/24販売年度には5,100万トンと予測され、これは 5 年間の平均を 10% 上回るものだ。この成長は主に、東アフリカ諸国の2023年の生産見通しが平均を下回ることを反映している。2年に渡る干ばつと在庫減少が予想されており、国内供給を増やすために輸入を増やす必要がある。

西アフリカ諸国、特に紛争により地元の農業生産能力が低下しているサハラ砂漠諸国では、輸入の緩やかな増加が予想される。 国際価格は2022年半ば以降下落しているが、いくつかの低所得食料不足国における通貨安により国内市場への流通が制限されており、依然として高い食料インフレ率の一因となっている。低所得食料不足国の世帯が食料購入に割り当てる収入の割合が高いことを考えると、高いインフレ率は最も弱い立場にある人々の食料アクセスに重大な負担を与え、食料不安のレベルを悪化させる。