=アフリカ連合ワクチン特別代表が欧州の姿勢に苦悩の記者会見=
インド由来のデルタ株の感染拡大によって、アフリカの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の状況は急速に悪化している。7月1日の世界保健機関(WHO)アフリカ地域事務所の発表によると、アフリカ諸国の感染は毎週最大25%ずつ拡大している。また、アフリカ疾病予防管理センター(アフリカCDC)によると、6月21-27日の1週間で、アフリカ55カ国において合計20万8464件の新規感染と3592人の死亡が記録された。アフリカは昨年7月、本年1月と大きな波を経験しているが、今回の第3波はまだ第2波に及ばないものの、拡大のスピードはこれまでで最も速くなっている。また、人口10万人当たりの新規感染数も、急速な拡大で酸素不足に見舞われている南部アフリカのナミビアが478件、南アフリカ共和国で178件、ボツワナで161件、ザンビアで106件と、特に南部アフリカでの拡大が顕著になっている。
デルタ株による置き換わりも国によって顕著になっている。デルタ株は16カ国で確認されているが、WHOによると、ウガンダではサンプルの97%、コンゴ民主共和国ではサンプルの79%がデルタ株であった。実際、ウガンダでは、重症化ケースの66%が45歳以下で生じており、入院者の数も増えている。1年前の第1波の際に比べ、酸素の需要量は50%増大している。
WHOアフリカ地域事務所のマチディソ・モエティ所長は「アフリカの第3波の拡大速度と規模は我々がかつて経験したことのないものです。より感染力の強いウイルスによって、COVID-19へのアフリカの脅威は新たなレベルに達しています。緊急事態が悲劇に転化しないように、すぐに予防措置を取るべく行動しなければなりません」と述べる。
この緊急事態に際して、アフリカ連合の「アフリカ・ワクチン確保タスクチーム」(AVATT)の代表およびアフリカ連合のCOVID-19ワクチン特別代表を務めるストライブ・マシイワ氏は、「欧州連合にはCOVID-19ワクチン工場があり、ワクチンを製造している。ところが、欧州で作られたワクチンはただの一接種分もアフリカに来ていない」と、欧州の姿勢を厳しく批判した。アフリカの携帯電話・ITネットワークを総合的に扱う巨大企業であるエコネット・グローバルの創立者で富豪としても有名なロンドン在住のジンバブウェ人であるマシイワ氏は、アフリカCDCの定例記者会見において「我々は寄付を求めていない。求めているのはワクチンだ。ワクチン製造工場を開放して、アフリカの国々がワクチンを買えるようにすべきだ。欧州はすぐに決めなければならない。我々を支援しているなどというべきでない」と述べた。
実際、マシイワ氏が言うように、欧州のワクチンは直接アフリカには届いていない。欧州は多国間によるワクチン共同購入の仕組みであるCOVAXに資金を出し、COVAXはインドの「インド血清研究所」(Serum Institute of India)が製造したアストラゼネカ社のワクチンをその資金で購入してアフリカ等の低所得国・下位中所得国に配分しているが、インドにおける感染拡大・医療崩壊への対応としてとられたワクチン禁輸措置により、COVAXはワクチン供給不足に陥っている。先進国は余剰ワクチン寄付で急場をしのごうとしているが、感染が急増するアフリカ諸国には、「ワクチンがいつ、どれだけ来るのか」が示されていない状態である。
マシイワ氏はさらに、欧州連合が発行するデジタル渡航パス(いわゆる「ワクチン・パスポート」の対象となるワクチンから、インド血清研究所の製造によるアストラゼネカ社のワクチンが外されたことについても、その問題点を切々と訴えた。欧州連合が発表したワクチン・パスポートの対象となるワクチンは4つしかなく、そのうちアストラゼネカ社のワクチンについては、欧州向けのブランドである「バクゼブリア」Vaxzevria のみが記され、インド血清研究所がライセンス生産している「コビシールド」Covishieldは対象となっていなかった。これは、同ワクチンが欧州医薬品庁から個別の許認可をまだ受けていないことによる。これについて、「欧州は資金をCOVAXに提供し、その金はインドに行ってアストラゼネカのワクチンを調達した。そのワクチンを欧州は『有効でない』とでもいうのか」とマシイワ氏は述べた。
マシイワ氏の記者会見は、以下のYouTubeのアフリカCDCチャンネルで視聴できる。
COVID-19 Pandemic | Africa CDC’s response to COVID-19 Part 1
COVID-19 Pandemic | Africa CDC’s response to COVID-19 Part 2