執筆:小崎隆
2008年1月に発行した『アフリカの食料安全保障を考える』をウェブ化しました。
土壌の生成因子
アフリカの土はいろいろな要素が組み合わさってできている。大きく分けると、土を決めている生成因子が5つある。1つは母材であり、元々は岩であったり、岩が風化して積み重なって生成される堆積物が材料になるものである。2つ目は地形で、斜面、平面、そして凸斜面と色々なものがある。また高地部、台地部、平地部、などの大きな地形の違いがあり、これらも影響している。3つ目は雨や温度などを含む気温で、雨の降り方、温度が関係する。4つ目は植生や動物などの生物、5つ目は時間である。時間の長短により土地のできが異なってくる。
近代土壌学には、19世紀頃に成立した古典的な概念としてこの5つがある。これに加えて第6番目の要因があるとも考えられるようになった。6番目の要因は人間で、人間を生物に含める考えもあるが、生物が土壌に及ぼす影響と人間のそれとでは大きな違いがある。特に産業革命以降、農業やその他色々な活動をする際に、エネルギーを強制的に投入する事になってきた。昔、または現在でもアフリカならばクワ1本で農業をやっているが、そうでない場所が増えてきている。アフリカ以外では、もうクワ1本でやっている場所がほとんどなくなってきている。人々はトラクターを使い、土壌を改良し、資材を入れ、肥料を投入し、非常に大きな変化を伴い土地を作り変えていく。
アフリカの土壌の特徴
この5つの要因を通して世界を見回して、アフリカの土壌の特徴は何かを考えると、まず母材がおしなべて非常に古いことがいえる。大地に穴を掘っていると、数億年前にあたる先カンブリア紀の岩に到達するが、アフリカでは結構浅いところに数億年前の岩がある。他の国と比較すると、日本は一番新しい土壌を持っている。火山がたくさん噴火してきた、また急峻な地形であるため新しい土壌が混ざっているためである。これに対してアフリカの土地は平らで、噴火した後に地表が削られている準平原であり、岩自体が非常に古いと言える。とはいうものの、アフリカの中でも新しい土壌を持つ所がある。大地溝帯周辺部がそれで、コンゴ、ルワンダ、ウガンダ、ケニアのあたりから、地殻の割れ目がずっと下のマラウイまで続いている。その周辺は下のマグマが割れ目に沿って吹き上がって表面に出て、山地を形成している。このため標高が高くなっている場所が続いている。日本からも東北大学のグループがニャムラギラ火山やニイラゴンゴ火山などルワンダ周辺の数千メートルほどの高さを持つ火山を調査しているが、このように火山がある大地溝帯は非常に新しく、また多湿である。しかし、その他の部分は古く、先カンブリア紀の土地が連なっている。このように日本と比べるとアフリカの土地は古い岩が基礎となっているのが特徴である。
ヤムイモ栽培の問題点は種イモの繁殖率が低いことにある。たとえば、トウモロコシは3~4ヵ月で1粒の種子が300倍に、キャッサバは12ヵ月で10倍に増やせるが、ヤムイモは5~10倍にしかならない。また、キャッサバが枝を挿し木で増やすのに対して、人間の食用部分を種イモとするヤムイモは繁殖を一層困難にしている。
地形は急峻なものではなく、だいたい侵食されて平原になっているところが多く、アジアと異なっている。アフリカではインゼルバーグなど、大きな石が地上に出ていることがある。かつて岩の上にあった土が削れた結果100メートル以上の石の山ができているのである。つまり、見えている石は、かつては100メートル下の土の中にあったものだと、地形学者は述べている。アジアならばヒマラヤ、北米にはロッキーなど大きな山地があるが、アフリカにはそれがない。雨が降ると、山が侵食され、土壌が流れていくのであるが、高い山が無いと土壌の供給源がないことになる。アジアではヒマラヤから大きな河が流れ出て、河口部に大きなデルタを作っているが、アフリカで川に土壌が流れないので、海の近くで堆積することもなく、三角州やデルタの肥沃な土地も生成されない。アフリカでは、大きなデルタは、ナイル川河口以外は、ニジェール川の湾曲部、マリに生成された内陸デルタと、ナイジェリアにある河口デルタ、タンザニアにあるルフィジ川河口デルタくらいしかないのである。
気候と土壌
赤道周辺には上昇気流があって雨が降り、雨を降らせた後の乾いた空気が下りることで赤道から少し離れた北緯、南緯30度位のところには砂漠が存在する。赤道の北にサハラ砂漠があり、南にはカラハリ砂漠等がある。赤道周辺は気温が高く、雨が多いところでは化学反応が起こりやすく、また速く進む。水が岩の中に入っていくとテロップ化し、水が多ければ多いほど早く溶け、風化の速度が速くなる。赤道アフリカは風化の速度が速く、雨が降るため土壌が新しく、他の土地に比べると急速に土壌が疲弊していく。土地が疲弊すると、植物を育てるカルシウム、マグネシウム、カリ、ナトリウム等の無機元素がなくなっていき、最終的に鉄やアルミニウムが残る。これらの植物にとってそれほど必要ではない元素が多く残り、濃縮されることにより土地が固くなっている。結果としてできるアイアンストーンは、植物が根を張る際に障害となる。鉄の集積程度は赤道から離れて南北に行くほど弱くなる。しかし、現在の気候環境では弱くなるということであって、昔はどうであったか、今の気候では説明できないことが多い。
鉄が濃縮するような条件ではないにもかかわらず実は鉄がたまっていることから、サハラがもっと湿っていたのではないかとの推測もなされている。サハラ砂漠では、雨が少ないにもかかわらず鉄が多く、養分が抜けていく状況がある。中緯度なので温度が下がり、雨が少なければもっと養分が残っていてしかるべきであるのに、アフリカのサハラ砂漠では土壌に養分がない。よくみてみると、雨が良く降る場所でできたような物がサハラにもあり、昔は雨が多かったため今も残っているのだと考えられる。このように、アフリカでは土地が古いため、乾いた土地と湿った土地との違いが適用できないのである。
バイオマスと土壌
熱帯雨林では雨が多く、木も多いため地上部のバイオマスが多くなる。サハラになると水が届かず潅木しか生育できないためバイオマスは少なくなる。バイオマスの量は、植物が死んだ後に地表に帰ってくる有機物の容積を表す。それで、赤道周辺には有機物がたくさん帰ることになる。炭素に関しては、赤道周辺が有利で、サバンナになると炭素が減っていくが、この炭素が、土地の肥沃度に非常に大きく関わっている。炭素などの有機物は、養分を吸着する能力がある。有機物がたくさんあることは、養分が入ってきた時に逃がさずとどめることを意味し、加えて、有機物は粘土などの無機物をくっつける接着剤にもなる。つまり有機物があると大小の粒がまとまり、団粒というような塊ができる。この土の塊ができると、その間に孔隙(こうげき)という隙間ができ、大きな孔隙には空気が入りやすくなる。小さな孔隙は水が入った時には抜けにくいということがいえる。通気性と保水性という相反する性質を持たせる役割がここにある。この孔隙がなくなることが土壌の疲弊であり、砂漠化なのである。砂漠化とは砂漠が広がることを意味するわけではなく、元々植生があったところが、植物が育たなくなり、砂漠のようなものになることである。これには人工的に本来の植生から砂漠のような状態になることを含むが、砂漠と砂漠化は異なる。
時間が土壌に及ぼす影響
次に時間に関して、アフリカのような古い大陸では、雨や高い温度にさらされる時間が長いため風化が進んでいる。また、新しい土壌の供給が非常に限られている。火山も少ないし、砂漠から飛んでくるダストも一つの供給源になるのだが、サハラから飛んでくるものはそれほどフレッシュなものを期待することができない。ゴビ砂漠など、温帯の砂漠では土壌が新しい。黄砂などは土壌が新しく、肥沃度が非常に高いとされている。サハラからのダストもないよりはましで、アフリカの海岸沿いの肥沃度を支えている面も否定できない。
土壌の種類と性質
世界的な土壌の分類体形には、FAOが中心となって作成したWorld Reference Base (WRB)によるものと、それよりも先にUnited States Department of Agriculture (USDA:米国農務省)によるものとがある。WRBは分類が30以上ある。もう一つの米国農務省の分類は20程度で、WRBがデジタル化される前にはこちらが多用されていた。以下は、WRBによる分類である。
赤道アフリカから西アフリカにかけての土壌
- フェラールソル
赤道付近に広がっているフェラールソル(Ferralsols)は、鉄の元素記号Feからも分かるとおりに、鉄が集積してできた土壌である。フェラールソルは、分布が中南米と中央アフリカの熱帯地域に限定されている。そのことからも、かつてこの二つの大陸が繋がっていたのではないかと想像することができる。植物の養分であるカルシウムなどがなくなった結果、動きにくく現れにくい鉄が出現してできた土壌である。鉄は少量で酸化鉄になり、赤土を形成する。塩基成分や養分が抜けているため、土は酸性であり、植物が育つには不利な条件の土壌である。さらに、風化が進んでいるため粘土質となっており、粘土の鉱物的な性質をみると、陶磁器などに使用するカオリンというタイプの粘土である。このカオリンは養分を吸着させる性質が低いので、肥料を与えても、閉じ込めておくことができずすぐに流れてしまう。こうした低活性粘土と呼ばれるものを多く含むのがフェラールソルである。元来養分が少なく、養分を与えたとしても閉じ込めておく能力が低いことが特徴である。しかしフェラールソルが多い地域は熱帯雨林であり、なぜこのように痩せて能力が低い土に木が育つのかは、謎と言える。これは木が養分を土に依存していないためである。表層の有機物層を利用して、自分の落とした葉から養分を得ている。このため、土が痩せていても大きな木が育つのである。北方林でも同じことが言える。シベリアにある針葉樹林地帯には、酸性の強い養分がない土壌が広がっている。それでも、森林が生成するのは、土の上の有機物層で養分を循環しているからである。森林がある状態では、この仕組みが持続するが、木を切り倒してしまうと循環が壊れてしまい、その後で植林をしても土壌の養分が少ないためすぐには木が育たず、元の森林に戻すために非常に長い時間を要してしまう。フェラールソルの場合は有機物層での循環があるうちは良いのだが、木を伐採してしまうと植林再生が難しくなる。開発の課題として、まずどの程度伐採しても良いのかを事前に調べる必要がある。
- アクリソル
アクリソルはフェラールソルよりも風化度が弱いが、養分がかなり抜けているため酸性の土である。しかし、鉄のみが集積したのではなく、養分を吸着する粘土がフェラールソルより少し活性化していることが特徴である。ここでもカオリンが主体であることに変わりはない。何が変わるかというと、粘土の量が多く、特に表層と比べて下層部に粘土が溜まっていることで、粘土の量が多いことは、養分を吸着する能力が高いということである。これは赤道付近よりも雨が少なく、風化が弱くなるため粘土が形を保っているためである。フェラールソルでもカオリンの話が出てきた。粘土はカオリンだが、その他の鉄酸化物などがたくさんあると、粘土の割合が減る。アクリソルは鉄酸化物が少なく、粘土の量が多いため、カオリンであっても吸着能力がフェラールソルよりも高い。雨の量が熱帯雨林よりも少ないため、養分を洗い流す力も弱くなる。そして温帯と比べれば少ないが、同じ熱帯のフェラールソルと比べると肥沃な土地が多いのである。
- アレノソル(Arenosols)
アレノソルは砂質土壌で粘土が非常に少なく、養分を吸着する能力が非常に低くなっている。岩が風化した砂がたまり、マリやニジェールなど、サヘル地帯に広がったものとみられる。この地域では、遊牧民を自分の畑に招き、家畜の糞で土壌の肥沃度を高め、ヒエ類を栽培するパッカレージュと呼ばれることをしている。遊牧民は年毎に巡回するが、遊牧民を呼ぶ能力のある農家と無い農家との差が拡大しているという問題が出ている。一つの畑で見ると、およそ5年に1回の巡回となっている。家畜の飼料として何百何千ヘクタールの地域の草が必要となる。家畜が畑からあまり遠く離れると戻ってこられなくなるため、畑を支える草がどれくらい必要かを考慮して呼ばなくてはならない。このように周辺の土地の疲弊に留意が必要である。
コンゴ民主共和国のキンシャサ郊外に砂地が広がっている。ここの土地の形成プロセスとしては、先カンブリア時代の土が風化して低いところへ流れて溜まっていったものが干上がって砂になったのではないかと思われている。砂丘の砂にかなり近いものである。先カンブリア時代の土のところは粘土がいくらかあるため森林があるが、砂地になると森林はなくなる。雨が降ったとしても、下が水持ちの悪い砂であるため森林は形成されない。
サハラ砂漠の土壌
一般的に、砂漠の土地は雨が降らず無機養分が逃げないため肥沃である。しかし水がないため植物が育たない。塩だまりや塩の中でもナトリウムの多い塩だまりなどは乾燥する砂漠に現れ、養分は多くても塩辛い。いわば漬物のぬかのようなものである。このような塩性土壌では植物は育たない。自然の状態では、養分は地表よりちょっと下にあり、年間50ミリ、100ミリといった雨が降ると、少し下がるが、植生に影響はない。ところが灌漑して水をかけると、下に水が停滞して地下水が生じ、その地下水と地表の間に毛管現象が生じる事により地下の水が地表の水に吸い上げられる。この時、上へあがる水は塩を溶かしながら上がってゆき、表面に塩が溜まる仕組みになる。自然の塩類化と同じように、灌漑により同現象が起きるのである。これを過灌漑といい、うまくコントロールしなければ地表に塩を吸い上げすぎてしまう。しかし、灌漑のすべてが悪いわけではない。灌漑を何千年もやっているところとして、中国のオアシスは千年以上続いている。扇状地のような傾斜があり、排水がしっかりとしているところであれば、水を与えてもきちんと下に向かって流れる。つまり場所を選んで灌漑をする必要があるということで、そうしなければ水が地表に吸い上げられることにより塩類化が生じてしまう。エネルギーを投下しての排水路確保などは持続性が低く、できれば自然環境にあったものを使用すべきなのである。
東アフリカの土壌
- アンドソル(Andosols)
大地溝帯が大きく走っており、大陸を引き裂こうとする力が働き、その割れ目から火山の噴火が起こっているため、周辺に火山噴火物から成る土が存在する。日本の火山灰に非常に良く似たアンドソルという土も小さい範囲であるが存在している。アンドソルは世界的に見ても非常に限られている土であり、日本、ニュージーランド、アメリカの西海岸にみられる。
- ニティソル(Nitisols)
結論的に言うと、非常に良い土である。養分が多く、粘土量も多く、鉄も多いが良い土だ。ニティソルはケニア、エチオピア、タンザニアなどの東アフリカの高地に分布している。ニティソルは塩基に富む母材で、風化も弱く、新鮮である。比較的黒っぽい土で、やわらかく、団粒が発達している。旧ザイールのキブ湖の近くで行われたトウモロコシの栽培試験では、トウモロコシは無施肥で3メートルほどに成長していた。土地が元々肥沃であるため、施肥の効果がほとんどないことが証明されたのだ。この土は、フェラールソルやアクリソルなどの古い地層の上に新しくのっている。
- バーティソル(Vertisols)
東アフリカではコットンブラックソイルなどと呼ばれている。Vertとは変化したというのが語源である。この土の特徴は、乾くと大きな割れ目ができ、湿るとその穴が閉じることで、乾湿の差が非常に大きいため、閉じた場合に土地が盛り上がることである。乾き開いた時に表層部分の土が崩れ落ち、湿ったときに崩れた屑が割れ目の下に残り、割れ目が閉じようとした時にくずが下に入り込んでいるため盛り上がってしまうのである。乾季になっても水持ちが良いため、綿を栽培するのに適しており、そのためコットンブラックソイルと呼ばれている。綿花以外にもひよこ豆の栽培もよく行なわれており、インド系住民にひよこ豆は高く売れるという有利さがある。乾季でも水が保たれるため地元の人々はこれをresidual moistureと呼んでいる。バーティソルは熱帯から亜熱帯に見られ、インドのデカン高原、アメリカのテキサス、オーストラリアなどにもある。このように雨季と乾季での体積の差が大きいことが特徴であるが、逆に言えば物理的に耕作に大きな障害になりやすい。粘土が多く粘り気が強いため、割れ目が生じたときにその一つの塊が非常に固い。乾季に耕そうとすると固くて困難であり、雨季になると粘土が多いため非常に粘り気が強く、歩くこともままならないくらいである。ナイフで泥を落としながらでないと歩くことが困難だ。しかしながら化学性は非常に良く、肥料を施す必要がない。良い土であるが、非常に厄介な土であるということができる。
その他の土壌
- グレイソル(Gleysols)
非常に地下水が高い水の豊富な土地の土壌であり、また、低地にある土壌である。土の中に酸素が少なく根腐れがおきやすいので畑作にあまり適していない。倒れた木や草が分解するための酸素が少ないため、あまり分解が進まない。生物が働こうとしても酸素不足のため働くことができず、死骸が積み重なった結果有機物が多くなる。これが極端になると無機物がほとんど無い有機物の泥炭土(ピート)に変わる可能性がある。アフリカでは、泥炭土はセネガルやガーナに多少ある程度であるが、これがインドネシアでは大きな問題となっている。例えばタバコをポイ捨てすると、火が泥炭土の下に入り、上の火を一旦消したと思っても土の中を火が這って別の場所に火が出てきてしまう。森林火災が泥炭土に入ると、コントロールが非常に難しい。しかし、泥炭土は上手くすると上に水田を作ることができるという利点がある。アフリカでは泥炭土は非常に少なく、ニジェール川の内陸デルタ、シエラレオネの排水場となるデルタ部にみつけることができる。
- プラノソル(Planosols)
南アフリカの一部に見受けられる土壌である。上から下に水が動く場合、一部の材料を下に動かし、上部が一部漂白されたような層がでる。動いた物(粘土)が下に溜まるため、水はけが非常に悪く、水が溜まるため上が水っぽくなる。肥沃度としてはまあまあ良い土であるといえるが、排水性が悪いという難点がある。
- カルシソル(Calcisols)
昔はゼロソル(Zerosols)と呼ばれていた、乾燥した土壌である。またカルシウムが多いという特徴がある。乾いた砂漠の土には、何かしらの養分が溜まっており、これが炭酸カルシウムCaCo3ならばカルシソルとなる。北部の地中海周辺に多く見受けられる。
- ヤーモソル
砂漠という意味を持つ。現在の分類では、おそらくカルシソルに統合されている。ケニアの東に存在する。
- リキシソル(Lixisols)
メジャーな土である。粘土集積層が下層部に出てきたもので、場所によっては排水が悪いところもあるが、養分を吸着する力を持っている。フェラールソル、アクリソルよりも良質の土壌である。
- プリントソル(Plinthosols)
フェラールソルの中でも、ラテライト(鉄が粒子を引き付け、極端になると鉄が粒子をコーティングして固めていくアイアンストーン)が浅く出ているため非常に土質が固く、植物が根を張ることができない土壌である。業界用語ではプリンサイトと呼ばれている。家の煉瓦の変わりに使用される土であり、デカン高原などでこれを切り出して家を作っている。フェラールソルの場合は土であるが、プリントソルの場合は岩盤のようなもので、岩盤でないとしてもぼろぼろに崩れた礫になっている。
- フルビソル(Fluvisols)
川沿いにある土で、灌漑や河川の氾濫のため色々なものが積み重なり、土自体としては新しいものである。水っぽい土が嫌いな植物には問題であるが、そうでなければ良い土で、堆積土、沖積土である。
現地の人と土壌
現地の人々はどこの土が良く、どこの土が悪いかを知っているようです。以前、広瀬さん(日本大学教授)と調査に行った際に、旧ザイールの農民15~6人に「あなたの思う一番良い土と悪い土を持ってきてください」と頼んだことがあります。その時、いくつかの判断基準があることがわかりました。一番はっきりしていた判断基準は色です。有機物が多い黒い土を良い土と判断する人が多かったのです。また、リン酸の量の高い低いによっても判断していました。有機物の量が判断基準のトップで、有機物の量が同じであれば次の判断基準はリン酸の量だったのです。有機物が多くなければリン酸の量の違いに気づかないかもしれません。彼らの経験の中に、プライオリティーがあります。黒い土ばかりを持ってくる人でも、その黒い土の中にも良い土と悪い土があり、その判断基準がリン酸というわけです。黒い土とそうでない土を持ってくる人も当然いました。人によって、自分の持っている土の母集団が何かによって判断基準が変わります。これは単なる一つのケーススタディーにすぎないため、絶対視することはできませんが、非常に面白い研究になると思われます。最終的には肥沃度評価もすることができるのではないかと思います。生えてくる雑草の種類、休閑をしていつまで待てばよいのかは、それぞれの母集団により判断が異なります。本格的に事例研究を行なう際には、さまざまな母集団を研究する必要があります。
土壌を調査し、どの土壌でどのような作物がうまく育つのか、最終的に、地元の農民に結果を還元していきたいと思います。しかし、地元の知識人のトレーニングは先進国で行なわれており、そこでは伝統的な知識を守ろうとする方法論・興味は所持していません。地元の伝統的な知識を吸収しつつ、その土地にあった方法論を築いていかなくてはなりません。エクステンションオフィサー(農業普及員)が地元の知識へ焦点を合わせるよう大いに奨励すべきですと考えます。
【参考】
FAO/World Soil Resources