“知る”ことからはじまる共生ー在日コリアンとガーナ人の語りを通してー
2025年10月18日JICA地球ひろばで第三回アフリカ玉手箱 「ともに語る、共に生きる~日本で生まれたコリアン・ガーナ人としての経験~」がハイブリッドで20人ほどの参加を得て開催されました。登壇者は、アフリカ玉手箱を支えてきた在日コリアンのパクさんと、在日ガーナ人のクアテンさん、そして理事の茂住さん。本セミナーで在日コリアンとガーナ人を一緒に取り上げることにより、共生に必要な日本社会の課題を浮き上がらせる意図がありました。ニュースでは分断や排斥をめぐる出来事が報じられる一方で、国際協力や草の根交流を通じて世界と関わろうとする動きも広がっています。そうした今だからこそ、「日本社会が誰と、どのように共に生きていくのか」が改めて問われています。
最初に登壇した茂住さんは、「日本人」と「外国人」という境界がどのように形づくられてきたのか、そして在日外国人が社会の中でどのように問題や課題として扱われてきたのかについて話しました。また、国籍や地域別に見た在留外国人の現状や、戦後日本社会における「在日」の位置づけの変化など、データを交えながら解説しました。

続いて、在日コリアン3世のパクさんからは、「うちの家族から見える外国人問題:日本と朝鮮半島と世界で」と題し、ご自身の家族4世代の歩みを通して、在日外国人として日本で生きることの現実を語りました。講演の中では、朝鮮学校での自身の学生時代にも触れられました。朝鮮学校は「各種学校」の扱いであり、1994年までは通学定期券の学割が適用されなかったといいます。幼い頃は「なぜ自分だけが」と感じることもあったものの、そうした経験を通じて社会を多角的に見つめる視点を得たと振り返りました。この視点はやがて、アフリカをはじめとする国際社会の課題への関心へと広がり、アフリカ日本協議会での活動にもつながっていったそうです。日本で世代を重ねながら生きてきたスナさんの家族のライフストーリーは、「外国人」としてではなく「隣人」として共に生きる社会のあり方を問いかけます。

最後に登壇したのは、日本で生まれ育ったガーナ人のクアテンさん。「日本で生まれ育った仮放免者として」というテーマで、自身の経験と仮放免制度の実態について語りました。仮放免者として両親は働くことを認められておらず、経済的に厳しいなかで習い事を諦めたり、友人から譲り受けた服を着て過ごしたといいます。日本で生まれ、日本語を話し、日本の学校に通っていたクアテンさんは、日本にしか生活の基盤がない中で、入管に「日本に残りたい」と手紙を書いたものの、返事はなかったと話しました。「お互いのことを知ることがスタートです」とクアテンさんは語ります。また、多くの人に仮放免制度や入管の問題を知ってもらう必要があるとも訴えました。その言葉は、共生社会をつくる第一歩が「知ること」から始まることを教えてくれました。
登壇者の言葉は、共に生きる社会の実現に向けて、私たち一人ひとりが何を感じ、どう行動していくのかを問いかけました。小さな対話の積み重ねこそが、共生社会への確かな一歩につながっていくのではないでしょうか。三人の発表後の会場参加者との交流では、そうした思いを裏付けるように活発な意見交換が行われました。

<登壇者プロフィール>
茂住衛(もずみ まもる):「アフリカ玉手箱『共生社会を目指して』シリーズに向けて」
AJF理事、アフリカ玉手箱スタッフ
パク スナ:「私のライフストーリー」
日本生まれの在日コリアン三世。朝鮮学校卒業後、朝鮮半島、中国、中東(カタール)、アフリカ日本協議会で国際経験を積み、多様な視点を育む。在日コリアンと在日アフリカ人の視点から、日本社会における共生の可能性を問いかける。
クアテン ユニス:「日本で生まれ育った仮放免者として」
日本生まれ・日本育ちのガーナ人。小学生の頃から10年以上仮放免者として生活し、後に在留資格を取得。仮放免者としての経験から「仮放免高校生奨学金プロジェクト」に参加。現在はアフリカ日本協議会の職員として勤務している。
<本セミナーに関するお問合せ>
アフリカ日本協議会 アフリカ玉手箱 ajf.africatamatebako2@gmail.com
< AJFアフリカ玉手箱セミナーとは?>
NPO法人アフリカ日本協議会の事業の一つとして行っているアフリカに関わる多様な人々の経験や想いを共有し、日本とアフリカのつながりを深める連続セミナーです。アフリカに関心がある方、グローバルな視野を広げたい方、新しい世界に触れて刺激を受けたい方、だれでも是非ご参加ください!












