Japan-Africa Children’s Book Project (JACBOP)
『アフリカNOW』106号(2016年10月30日発行)掲載
執筆:さくま ゆみこ
現在はフリーの翻訳家、編集者。著書は『エンザロ村のかまど』、『どうしてアフリカ? どうして図書館?』(あかね書房)など。訳書は200点を超えるが、そのうちアフリカ関係の児童書は『トビのめんどり』(さえら書房)、『ネルソン・マンデラ』(鈴木出版)『路上のストライカー』(岩波書店)など34点。
2004年から活動している「アフリカ子どもの本プロジェクト」は、現在会員が全国に約100名。小さな会ですが、月一回は定例の集まりを持って、さまざまなことを話し合ったり決めたりしています。私たちの活動には、
(1) ケニアに設立したドリーム・ライブラリー(現在、2館)を継続的に支える。
(2) 識字や楽しみのための本を必要としているアフリカの子どもたちがいれば、そこに本を届ける。
(3)日本の子どもたちに、アフリカの文化やアフリカの子どもたちのことを伝える。という3つの柱があります。
活動の発端にあるのは、『エンザロ村のかまど』(文:さくま、絵:沢田としき、福音館書店)という小学生向きのノンフィクション絵本で、『たくさんのふしぎ』という月刊誌の1冊として2004年に、単行本では2009年に出版されました。私はこの絵本で、金・モノではない国際協力のあり方を日本の子どもたちにも考えてほしいと考えて、岸田袈裟さんがケニアで行っていた活動を取り上げました。最初は日本で岸田袈裟さんのお話を聞いて感銘を受け、編集者として岸田さんに子どもの本を書いてもらおうと企画しました。そして岸田さんの活動地域である西ケニア州まで出かけていき、かまどづくりの講習会や村の人たちの反応、それぞれの家にあるかまどを見せていただいたのです。そのうち、岸田さんが「私は忙しいから、あなた書きなさいよ」とおっしゃって、自分で文章を書く羽目になりました。
岸田さんを訪ねていったときにエンザロ村(西ケニア州ビヒガ県の山間の村)にある小学校の先生や生徒たちにインタビューをしたこともあり、帰国後に何かお礼ができればと私は考えました。そして、最初は英語の絵本をエンザロ村の3つの小学校に送ったのです。なぜ英語かといえば、ケニアでは小学校に入ると英語の授業があり、8年制小学校の4年生くらいにもなれば、英語の本も読める子どもが多いからです。しかし、うまく届かなかったり、届いても局留めになって税金を払わないと引き出せなかったりという問題が起こりました。そこで岸田さんと相談し、子どもの本にかかわる仲間たちにも助けてもらって、エンザロ村で始めたのが、前述した活動の(1)で取り上げたドリーム・ライブラリーです。もともとはヘルスセンターのスタッフ宿舎として建てられたレンガ造りの建物に、地元の方がつくった書棚をおき、日本から持って行った600冊の絵本や児童書を並べて、この小さな私設図書館は始まりました。その後、現地で出版されているスワヒリ語や英語の本を購入したりして、現在は蔵書数が2,000冊近くになっています。また2008年には、同じく西ケニア州カカメガの原生林の近くにあるシャンダ小学校の敷地の中に、第2の子ども図書館ができました。
エンザロ村の図書館は週5日半の開館で、自転車で通ってくるピーター・インブーカ(Peter Imbuka)さんというライブラリアンがいて、平均すると月にのべ700〜1,100人くらいの人が利用しています。シャンダの図書館のほうは、地元の村のアイリーン・ナムニュ(Irene Namunyu)さんがライブラリアンとして働き、週3日開館しています。学校の生徒がよく使うので、利用者数は毎月のべ1,000人以上になります。
この2つの図書館は、これまでは岸田袈裟さんが関わっておられたNPO「少年ケニヤの友」と一緒に運営してきました。しかし、2010年に岸田さんが亡くなられてからは「少年ケニヤの友」が活動を縮小して現地からも撤退し、2016年3月には解散したことから、この2つの図書館を今後、具体的にどう維持していったらいいのか、私たちは頭を悩ませました。昨年夏には2 つのドリーム・ライブラリーを訪問して現地の方々と話し合いをもち、協力してくれそうな方を見つけ、今はそのケニア人の方たちを通してライブラリアンのお給料や新聞購読料などを送ったり、現地の様子を伝えてもらったりしています。
活動の(2) は、リクエストがあったところに子どもの本を送るという活動です。これまでナイジェリア、ルワンダ、ケニア、タンザニアなどに本を送ってきました。このときに送る本もドリーム・ライブラリーの蔵書も、なんでもいいから送るというわけではなく、一定の方針をもって本を選んでいます。当初は、現地の子どもたちが「自分が主人公」と思えるような本、世界への視野が広がる本、という方針で選んでいましたが、ナイジェリア人の会員から「日本の文化や日本の子どもについて紹介するような本も」という声が出て、今はその点も考慮しています。
活動の(3)は、日本の子どもたちに向けた活動です。「アフリカ子どもの本プロジェクト」のメンバーのなかには教員、司書、編集者、翻訳者、読書ボランティアとして子どもの本にかかわる人たちがたくさんいるのですが、定例の集まりのときには選書会も行い、日本で出版されたアフリカ関係の児童書をすべて読み合い、感想や意見を言い合っています。そしてその結果を、日本の子どもたちにおすすめできる本のリストにして公開しています。現在、おすすめ本は約180点にのぼっていますが、たとえば『ヤクーバとライオン』のように、世間ではもてはやされていてもリストに入っていない絵本もあります。なぜその本を推薦するのか推薦しないのかという情報は、そのつど会員の方たちにはお知らせしています。
リストをつくるだけでなく、おすすめ本をセットにして貸し出す活動も行っています。このセットには、受け取った側の方たちが、開いてすぐに展示ができるよう、図書展に必要なものがすべて含まれています。
セットにはA とB がありますが、A セットには以下のようなものが含まれています。
・アフリカ関連の児童書約120冊(各図書のデータと内容紹介カード付き)
・写真絵本(『おばあちゃんにおみやげを』『AはアフリカのA』『いっしょにあそぼう』『戦争が終わっても』の本文にある写真パネル30点と、会員の画家によるイラストレーションパネル5点
・アフリカの子どもの状態を伝えるパネルやアフリカ地図
・「展示趣旨」「プロジェクトの紹介」および会場内の表示用パネル
B セットには、A セットに加えて沢田としきさんの原画や泥染めのアフリカ地図、アフリカで出版された児童書などがつきます。
アフリカというと内戦、児童労働、子どもの兵士、飢餓、貧困などマイナス面が報道されることが多く、豊かな文化や、子どもたちの様子などについては知る機会が少ないかと思います。私たちはもっと楽しい側面や豊かな文化も知ってもらいたいと思って、セットをつくっています。貸出料は1会場につきA セットが3万円、B セットが5万円です。以前はセット使用の申込みが年間10件以上はあったのですが、最近は多くの自治体の図書館が外部委託にされ、独自の企画を打ち出せなくなったこともあり、申込み団体が減ってきているのが残念です。また展示に合わせて、会員がトークをしたりイベントを行ったりもしています。アフリカンフェスタなどでも子どものスペースを受け持って、いろいろなイベントを行ってきました。
今年は、広報を充実させるため新しいウェブサイトも作りました。
http://africa-kodomo.com
同時に折々の情報などはフェイスブックでも発信しています。
https://www.facebook.com/africachildrenbooks/
よろしかったら、どうぞ仲間に入ってください。年会費はたったの2,000円。入会金はありません。お気持ちのある方は、ウェブサイトの「会員になる」をご覧になってください。