ーカメルーン若手作家の魅力ー
イベント概要
- 日 時:2007年9月22日(土)13:00~16:00(午後の部)、18:00~21:00(夜の部)
- 講 師:分藤大翼氏
- 場 所:UPLINK(F)ACTORY
昨年から今年にかけて、アフリカを舞台にした映画が数多く上映され、アフリカに注目が集まっています。あまり知られていませんが、アフリカと向き合い、頑固にアフリカで映画を撮り続けているアフリカ人映像作家も多く存在します。
今回はその中の一人、カメルーンの若手映像作家、シリル・マッソ(Cyrille Masso)氏の2作品「ガラスの値段」「告白」を上映します。
「ガラスの値段」は、カメルーンの首都ヤウンデの巨大なゴミ捨て場で、ガラスの破片を売買しながら逞しく生きていく女性たちを撮影した珠玉のドキュメンタリーです。長期間かけて信頼関係を築き、撮影したからこそ引き出せた当事者の貴重な言葉や表情は、私たちに深く語りかけてきます。アフリカの映画監督ならでは、の映像です。 「告白」は、都市に生きる若者と麻薬の問題が主要のテーマで、若者の生活を内側を描いた劇映画で、国内外からの評価も高く、アフリカ最大の映画祭「FESPACO」で審査員特別賞を受賞しました。アフリカは農村ばかりではありません。アフリカの大都市では人々が急増し、多くの社会問題を生んでいます。この映画から、現代アフリカの若者が直面する苦悩、そして監督が描く希望も浮かび上がってきます。映画の力を信じる作家の熱意と、その力を必要としているアフリカの人々の思いが感じられる作品に仕上がっています。
上映後は、監督と交友も深く、アフリカ映画に精通した映像人類学者の分藤大翼(ぶんどうだいすけ)氏をお招きし、疾走するアフリカ映画産業の現在や、アフリカの映像作家の魅力など、余すところ無くお話しいただきます。
シリル・マッソ氏
1971年カメルーン共和国・首都ヤウンデ生まれ。ヤウンデ大学人文学部に入学。父親の死や大学のストライキなどの出来事が重なり自主退学。ラジオ・テレビ番組の制作会社で経験を積み、1998年にフランス国立高等映画学院(femis)に入学。卒業後は、アフリカ出身の映画作家がヨーロッパを拠点に活動することが多い中で、カメルーンに帰国し、プロダクションMalo Picturesを設立。カメルーンを拠点にアフリカの人々を描き続ける姿勢を貫いている。
プログラム
※午後の部→12:30開場、13:00開演
13:05-13:29 上映「ガラスの値段」(24分)
13:40-14:57 上映「告白」(77分)
15:10-16:00 分藤大翼氏・講演会&質疑応答
※夜の部→17:30開場、18:00開演
18:05-18:29 映画「ガラスの値段」(24分)
18:40-19:57 映画「告白」(77分)
20:10-21:00 分藤大翼氏・講演会&質疑応答
講師プロフィール
分藤大翼氏
映像人類学者。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科研修員。1996年よりカメルーン東部州の熱帯雨林でピグミー系狩猟採集民の調査研究に従事し、2002年より映画製作を始める。第1作「Wo a bele-もりのなか-」がSKY Perfect TV!や海外の映画祭において上映されている。2006年11月にはシリル・マッソ監督を日本に招聘し、京都と東京で上映会を開催する。また、今年開催されたアフリカ最大の映画祭「FESPACO」にも参加している。
イベント報告
三連休の初日、9月22日(土)に行われた、アフリカひろばvol.21「アフリカ映画最前線!~カメルーン若手作家の魅力~」のご報告です。今回は映画の上映会と講演のセットで、渋谷の映画館アップリンクファクトリーにて、昼と夜とで二回開催されました。参加者はお客さんとボランティア合わせて総勢110名でした。
今回上映した映画は『ガラスの値段』と『告白』の2本。カメルーンのシリル・マッソ監督の作品です。前者はカメルーンの首都ヤウンデでガラスの破片を拾いながら生計を立てる女性たちを撮ったドキュメンタリー、後者は、都市に生きる若者と麻薬の問題を主要のテーマにして若者の生活を内側を描いた劇映画で、ブルキナファソで行われるアフリカ最大の映画祭「FESPACO」で審査員特別賞を受賞しています。また講演をしてくださった分藤大翼さんは、映像人類学者として、カメルーン東部州のピグミー系狩猟採集民の調査を行われている方です。ご自身でも映画を撮られておられます。
会場となったアップリンクファクトリー前にて
当日は上映開始30分前から開場しお客さんがぞくぞくとお越しになりましたが、その様子を見ていると、いわゆる「国際協力」に興味がある人だけでなく、映画好きの方もいらっしゃってくださっているようでした。また複数名で参加される方も多く見られました。
会場はお客さんでいっぱいとなりました
上映中のお客さんの様子はと言うと、もちろん直接的にはわかりませんが、アンケートの回答結果から、『ガラスの値段』では、よりリアルな脚色されていないアフリカの姿が、『告白』ではアフリカ映画のレベルの高さがお客さんの印象に残ったようです。
映画終了後は続いて分藤さんのお話がありました。まずはシリル・マッソ監督との出会いの話から始まり、コンタクトをとることになった経緯、、その後日本に招聘したときの話などをされました。ちなみにそのときの上映会がきっかけで、分藤さんにアフリカ日本協議会の会報誌『アフリカNOW』への寄稿をお願いすることとなりました。
続いてアフリカ映画産業について‐アフリカ映画はどういう人が撮っているのか、どのような環境で製作されているのか、その製作環境の変化、アフリカの映画祭とは、アフリカ映画の日本と欧米での扱われ方の違い、日本におけるアフリカ映画の状況など‐を、ここではすべてを伝えられないほどたくさんお話していただきました。普段なかなか聞けないであろうそれらの話は、初めて聞くことばかりで非常に興味深く、思わず頷いてしまうものでした。また、途中シリル・マッソ監督のカメルーンのスタジオでの様子を録画したビデオが流されると、そのお茶目な人柄に会場から笑いが生まれました。
FESPACOについて説明する分藤さん
アフリカ映画の見方についての話では、『告白』を見ているときの日本とアフリカでの観客の反応の違いが例に出されました。日本ではみんな神妙に見ているが、アフリカで高校生に見せたときは、ものすごい盛り上がった、大爆笑していたということで、そこからアフリカ映画の本当の価値がわかるのではないかとのことでした。このエピソードから、みなさん驚いたと同時に、アフリカ映画の新しい見方を発見したのではないかと思います。
講演は対談形式で行われました。
その後質疑応答が行われ、ここでは、映画の結末についてといった映画そのものの話から、アフリカで映画館はどれくらいあるのか、といった映画産業全体の話など、幅広い質問が出されました。
ここでアンケートに寄せられた感想や、講師・監督へのメッセージをご紹介します。
- 映画で、現地の人々の生活がリアルに描き出されていたこと、講演で、我々の目線と現地の人々の目線(映画に対する)の違いの話が特に興味深かった(40代女性)
- アフリカの学生の生活部分が少し見えてよかったです(20代女性)
- ドキュメンタリーに出て来た女性たちが幸せになってほしいなあと、社会が変わるといいなあと思います。(40代女性)
- FESPACOのお話など現地の最新の情報を分藤さんご自身の生の感想も含めて聞くことができて貴重だった(40代男性)
- アフリカ映画に関する一般的な情報提供があっても良かったのではないかと思います(30代女性)