ー南アフリカ・スラムの現実ー
イベント概要
- 日 時:2007年7月28日(土)14:00~16:30
- 講 師:小山えり子さん
- 場 所:東京ウィメンズプラザ 第二会議室
2010年にはワールドカップが開催され、またBRICSに続き大きな経済成長が見込まれるVISTAの一国である南アフリカ。 ネガティブな話題が先行しがちなアフリカの中で、希望の星とも言えるそんな南アフリカには、もう一つの顔が存在します。 それは、世界でも有数の格差社会国であるという現実。 GDPは世界21位、世界銀行の分類では「高中所得国」とされているにも関わらず、失業率は公式統計でも35%を越え、 「人間開発指数」は世界121位、HIVの成人感染率は18.8%とされています。 そして、旧黒人居住地区、いわゆるタウンシップには、映画にもなったツォツィ(南アで不良という意味)に 見られるような、どうあがいても抜け出せない貧困に苦しむ人々が数多く存在し、暴力が蔓延しています。
裕福な人々や外国からの観光客は決して近寄らない地域で、観光客が5分歩けば必ず犯罪に遭遇すると言われています。 そんなタウンシップで3年間ソーシャルワーカーとして働いたのが今回の講師・小山えり子さんです。 映画『TSOTSI(ツォツィ)』の舞台となった場所のすぐ近くで暮らしていたという小山さんに、 ツォツィと暮らした経験や内側から見た南アフリカの現状についてお話していただきます。 会場では、ホスピスの子どもたちの写真や子どもたちの作ったおもちゃなども展示します。
講師プロフィール
小山えり子さん
NPO法人多摩草むらの会職員・NGOニバルレキレ事務局代表・精神保健福祉士・社会福祉士・鬱病体験者。多摩市在住。大学卒業後10年間医療ソーシャルワーカーとして勤務。 2003年から南アフリカ共和国へわたりエイズホスピスで勤務する傍ら、貧困地域での感染者や遺族・遺児の支援活動を始める。サウスアフリカ大学心理学科HIV/AIDSケア・カウンセリングコース修了。日本国内でニバルレキレ展を全国巡回させて講演活動とあわせ啓発活動に取り組む。NPO多摩草むらの会では精神保健福祉士として勤務。
イベント報告
参加者はボランティアを含め総勢32名でした。
今回お話して下さった小山えり子さんは、NPO法人多摩草むらの会職員・NGOニバルレキレ事務局代表・精神保健福祉士・社会福祉士・鬱病体験者。大学卒業後10年間医療ソーシャルワーカーとして勤務し、 2003年から南アフリカ共和国へわたりエイズホスピスで勤務する傍ら、貧困地域での感染者や遺族・遺児の支援活動を行いました。サウスアフリカ大学心理学科HIV/AIDSケア・カウンセリングコースを修了し、日本国内でニバルレキレ展を全国巡回させて講演活動とあわせ啓発活動に取り組みながら、NPO多摩草むらの会では精神保健福祉士として勤務されています。
今回の講演では、小山さんが滞在していたタウンシップ(スラム)のお話をして頂きました。
小山さんが活動していたのは、ジョバーグという都市の、貧困地区周辺に抱えた町、ボクスバーグのホスピス。日本で鬱病を発症し、勤務していた病院を休んでいた間に新聞記事を見つけて検索し、南アフリカのホスピスで働くことに。ジョバーグは危険な都市なので、徐々に仲間を見つけながらタウンシップのいろいろなHIVアクティビストの家に滞在し、タウンシップを渡り歩いたそうです。
政府が電気や水を通している地域をタウンシップ、そうでない地域はスクウォッターキャンプと呼ぶとのことですが、映画にもなったツォツィ(不良)たちは、このスクウォッターキャンプに住んでいる場合が多いそうです。この辺は現地の人でも早足で通り過ぎるそうで、ご自身も強盗を何度も目撃し、本当に映画とおりの犯罪の多さだとお話していました。
次に写真とともに具体的に実際にホスピスや個人的な活動を通して出逢った人達のお話をして頂きました。小山さんがその家族の家計を支えていたAIDS遺児の男の子や、2005年に無料ARV(抗レトロウィルス薬)支給がちょうど始まる頃に出会ったエイズホスピスにいた女の子、3人の娘さんがいるホスピス患者さんの話などがありました。
その後は、再び小山さんが出会ったツォツィについての話題になりました。南アフリカでは、4人家族が必要としているお金が月に最低25,000円程度であるのに対し、生活保護でもらっているお金が1万円ほどで、家族がもともと持っているお金は5千円ほど。つまりお金が足りず、結局途方にくれてツォツィになる人も多いとのことです。小山さんが一緒に活動したボランティアの中にもツォツィがいて、彼はやり直そうとしたけれども、ボランティアを続けることができず、再び犯罪に手を染めてしまったそうで、立ち直るのは難しいという現状があるようです。小山さんはそんなツォツィに対し、今30歳くらいの人は幼少期・青年期をアパルトヘイトの時代に過ごしたため、努力をしても報われないという考えが根底にあることや、彼らの中で犯罪に対する敷居が低いことなどがあるとおっしゃっていました。また、映画「ツォツィ」の内容についてのお話などもありました。
その後、質疑応答が行われ、新聞記事を読んでから、実際にどのように南アフリカの病院にアプローチしたのか、働いているときの言語はどうしているのか、どんな支援が必要か、またアパルトヘイト後の影響、日本のニートとの比較などさまざまな質問がありました。
ここでアンケートに寄せられた参加者の声を紹介します。
- 南アの人々と同じ視線で活動をしていたとのことで、共感を得やすかった(20代女性)
- 個人的に深く南アの方と関わった話が聞けた点が非常に良かった(50代女性)
- 現地の人々がどんな暮らしをしているかわかった(20代男性)