ーナイトコミューター支援の現場からー
イベント概要
- 日 時:2006年10月28日(土)14:30~16:30(14:00開場)
- 講 師:エマニュエル・ムワカさん/岩井雪乃さん
- 場 所:早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター
講師プロフィール
岩井雪乃さん
東アフリカ、特にタンザニアの野生動物保全について研究している。地域住民の生活に根ざした動物保護のあり方を模索中。人間・環境学博士(京都大学)。青年海外協力隊員としてタンザニアの高校で数学教師をした後、京都大学大学院人間・環境学研究科およびアジア・アフリカ地域研究研究科を経て現職は早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター客員講師。
その他、NPO法人アフリック・アフリカ代表、現在は東アフリカの子供を救う会(アルディナウペポ)会計。
エマニュエル・ムワカさん
1980年代から内戦状態にあるウガンダ北部グルで生まれる。ゲリラの襲撃、こども兵士補充のための誘拐を恐れて、毎晩草むらで眠る生活を送ってきた。親戚の協力でウガンダのマケレレ大学を卒業し、フリージャーナリストとなる。
同じグル出身の若者と共にNGO・UYAP (Uganda Youth Action Project)を設立し、路上にたむろするナイトコミューター支援を始める。そんな時に東アフリカの子供を救う会・アルディナウペポの吉田と出会い、協働でナイトコミューター支援事業を開始。宿泊所の建設と運営に采配をふるいながら、現在は職業訓練所を建設し子供たちの自立に向けた支援に取り組んでいる。
イベント趣旨
「居場所がない。夜も恐くて眠れない。」
東アフリカ、ウガンダの北部地方では、長く続いてきた内戦の影響で子ども達がストリートにあふれています。
10月28日のアフリカひろばは、そんな子供たちを救おうとNGOを立ち上げ、支援を行っているフリージャーナリストのエマニュエル・ムワカ氏と、その活動を支えている東アフリカの子供を救う会(アルディナウペポ)の岩井雪乃さんをお迎えして、北部ウガンダの現状とナイトコミューター支援についてお話いただきます。
イベント報告
参加者は25名(AJF会員8名 非会員17名)です。今回、早稲田大学ボランティアセンターとアルディナウペポさんに共催をいただいたこともあり、学生さんや報道関係の方など幅広い方にお越しいただくことができました。
まずウガンダ北部の現状を知るため岩井さんにニュース映像(NHK-BS)を使って説明していただきました。ナイトコミューターとは反政府軍Lord’s Resistance Army(LRA)の誘拐を避けるため村から街へ、夜移動する子ども達のことを指しており、LRAは捕まえた子どもが自分の村に帰れなくなるように同じ村の人を襲わせて、居場所を奪うなど非常に残酷な性格を持っていること。アルディナウペポはそのように逃げてきた子ども達が泊まるシェルターを提供していること。または街に帰ってきた子ども達はトラウマをケアするためリバビリセンターに通う必要があるということなどをお話いただきました。
次にエマニュエルさんから、現在の内戦に至った背景や20年にわたる戦争で何があったか、そしてそれらと密接な関係にあるHIV/AIDSの問題、子どもたちの自立へ向けての取り組み、平和交渉についてなど自身の体験もまじえて語っていただきました。彼自身もナイトコミューターであったこと、親と妹をAIDSで失ったことなどウガンダ北部の歴史を刻み込んだような体験を通して、子ども達が厳しい状況でも希望を持ち続けるために教育が重要であるということを言われていました。またウガンダは一般的にHIV/AIDS対策に成功した国と言われているが、それは平和だった南部の話であり、北部では今もAIDSの犠牲者が増え続けているそうです。当事者の視点から語られるウガンダ北部の状況に参加者の方々は真剣に耳を傾けられていました。
休憩中には、現地でNGOコーディネイトを行っている桜木奈央子さんから、ご自身が撮ってこられた写真スライド使って、アフリカの真珠と呼ばれるウガンダの魅力とグル県で必死に生きる子ども達について伝えてもらいました。
その後、会場から質疑応答を紙に書いてもらい黒板に張り出して、エマニュエルさんにお答えいただきました。時間の関係で残念ながらすべての質問に答えていただく事はできなかったのですが、「北部内戦とアメリカとの関係性」や「和平は進んでいるが人々はLRAを許すことができるのか」といった質問に対しては「アメリカが南部スーダンの油田をねらってスーダンの反政府勢力SPLAに支援を行っていたことなどを指して、現ウガンダ政権もアメリカと親密な関係を築いているが、自分はアメリカを信用できない」、また許す事について「アフリカには伝統的に許しの文化がある」というふうに答えておられました。
アンケートから学んだことや講師に対するメッセージが寄せられましたので、一部を紹介します。
- ウガンダ、しかも当事者の方からお話が聞けて非常に良かったです。(30代女性)
- アフリカは本来アフリカだけで十分やっていける力を持っていると改めて感じた。一度外から壊してしまったアフリカのバランスを、今後どのように回復させたらいいのだろうか(20代女性)
- 西洋での「正義」や裁判とは違い、アフリカでは「許す」という文化が存在しているという話は有意義でした。(20代女性)
- アフリカの文化では罪を許す、という主張に感銘を受けた。LRAや政府に対して抗議するだけではなく建設的、前向きな意見に好感を持ちました。(20代女性)
- 実際にナイトコミューターであった人のお話を聞けてとてもよかった(女性)
- ウガンダの内戦の歴史や原因、特にアメリカの関わりについて理解できた。(40代男性)
- ウガンダ内戦のことは今まで全然知りませんでした。家が焼かれたり、草むらで毎晩眠らなければいけないなど、とても厳しい生活をしているのが分かりました。そしてその中を生き抜いてきたエマニュエルさんだからこその真剣な取り組みにとても心を動かされました。(30代女性)