7月11日、アフリカ日本協議会は、ストップ結核パートナーシップ、米国のNGO「治療行動グループ」(TAG)とともに、現在国連で開かれている「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム」(HLPF)のサイドイベントとして「人間中心の結核アプローチ:より健康な都市と人間居住のために」を開催しました。
古くて新しい感染症である「結核」は、年間の推定死者数170万人と、感染症としては世界最大の被害をもたらしています。この結核を克服し、2030年までに世界規模の主要な保健上の脅威としての結核を終息させていくというSDGsの目標をどう達成するかということで、9月26日に国連で「結核ハイレベル会合」が開催されます。この会合の共同議長を務めるのが日本です。私たちのサイドイベントは、この重要な時期に、世界の市民社会と日本政府の対話を促進するとともに、結核への取り組みの特に難しいポイントである、都市貧困層や、移民、難民、鉱山といった様々な「人間居住」における結核の問題に焦点を当て、SDGsの「ゴール11」に関わる問題としての結核をどう克服するかをテーマに開催しました。
日本政府代表部からは、結核ハイレベル会合の共同議長を務める日本の別所浩郎・国連大使が参加。市民社会パネリストとの質疑応答にも応じてくれました。その後、「国際結核・肺疾患連合」(Union)の科学ディレクター、ポーラ・フジワラ氏が登壇。フジワラ氏は、90年代にエイズなどとの関係でニューヨーク市が結核危機に瀕した時に、市の結核対策責任者として危機克服に尽力した人物です。フジワラ氏はデータを交えながら、いかに「人間中心の対策」が大事か熱弁をふるいました。
その後、旧ソ連の構成国で多剤耐性結核が深刻化しているジョージア(サカルトヴェロ、旧グルジア)政府の代表部から、タマール・チェリゼ参事官が発言。医師でもあるチェリゼ氏もデータを交えながらジョージアの結核対策について説明してくれました。
市民社会からは、国境なき医師団(MSF)のレオ・パルンボ氏、米国の「治療行動グループ」のマイク・フリック氏が登壇。パルンボ氏は結核の予防・診断・治療へのアクセスの大事さと、アクセスを阻みかねない国際的な仕組みと、それを変えていくための国境なき医師団のアドボカシーの取り組みについてスピーチ。また、フリック氏は、結核対策の進捗をしっかり評価できるアカウンタビリティ・メカニズムの在り方や、結核の患者や影響を受けた人の人権をどう守るかについてスピーチしました。
その後の質疑セッションでは、特に若い世代から多くの質問が寄せられました。また、現在ニューヨーク市の結核対策責任者を務めるジョゼフ・ブレジンスキ氏からも発言がありました。
企画は、ルチカ・ディティウ・ストップ結核パートナーシップ事務局長から、ハイレベル会合に向けてもっとアドボカシーを、と呼びかけるビデオ・メッセージで閉幕しました。
9月の国連ハイレベル会合は各国や市民社会からも多くの注目を集め、政治宣言の起草プロセスもホットな議論が繰り広げられています。2030年までに、「世界の公衆保健上の主要な脅威」としての結核を克服して行けるように、市民社会としても最大限取り組んでいければと思います。