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韓国とアフリカ諸国の関係

 アフリカ・インサイトが果たす役割

Relationship between Republic of Korea and African countries – Role of Africa Insight

『アフリカNOW』109号(2017年12月31日発行)掲載

※本稿は、2017年6月4日に開催された「日韓とアフリカをつなぐ交流会」でのホ・スティーブン・ソンヨンさんのプレゼンテーションをまとめたものです。

ホ・スティーブン・ソンヨン
Heo Steven Sung-Yong:2009年にタンザニアでUN ハビタットのインターンを経験し、2010~2013年に韓国国際協力団(KOICA)でセネガルに赴任。2013年にアフリカ・インサイトを設立、代表に就任した。アフリカ・インサイトでは、若者起業家支援プロジェクトや各種啓発活動などを統括。グローバルファンド活動者ネットワーク(GFAN)での提言活動も行っている。


私は、韓国から来た、ホ・スティーブン・ソンヨンです。アフリカ・インサイト(Africa Insight)というNGO の代表を務めています。後で詳しく説明しますが、アフリカ・インサイトは、アフリカ諸国で活動したことのある若い活動家が2013年に起ち上げたばかりの新しいNGO です。

今回、私は韓国とアフリカ諸国の関係そして市民社会組織としてのアフリカ・インサイトの役割を紹介します。まず韓国のアフリカ政策、韓国の政治・経済とODA の現状紹介、続いて問題点と限界、そしてアフリカ・インサイトの役割の紹介の順で話をします。

韓国のアフリカ政策

韓国政府は、アフリカ諸国と一方的な関係ではなく相互に利益のある関係を作るために、3つの基本政策を立てています。一つ目は「平和」です。アフリカ大陸に平和を確立するために政治的関係を強化していくということです。二つ目は、「互恵的な経済協力」の発展です。三つ目は「人」で、人と人が接し文化的交流を行うことを通して相互理解を深めていくことを意味しています。この基本政策が、韓国のアフリカ政策の根本にあると理解することができます。

そして、アフリカ政策の支える5つの制度的仕組みがあります。韓国はアフリカの25ヵ国に大使館を置いています。韓国に大使館を置いているアフリカの国々は19ヵ国です。

アフリカ16ヵ国には韓国国際協力機構(KOICA)の事務所があり、韓国貿易促進機構(KOTRA)の事務所が9ヵ国に、3ヵ国には韓国輸出入銀行の事務所があります。韓国アフリカ・フォーラム(KOAF)、韓国アフリカ経済協力会議(KOAFEC)、韓国アフリカ産業協力フォーラム(KOAFIC)、韓国アフリカ食料農業協力イニシアティブ(KAFACI)といった多くの韓国とアフリカをつなぐイニシアティブがあり、また韓国政府は「アフリカの新たな未来フォーラム」を国会内に起ち上げ、2年前には「韓国アフリカセンター」を開設しました。

54あるいは55ヵ国と言われるアフリカの国々のうち、25カ国には韓国の大使館が存在しています(韓国大使館がある国々を着色された地図で紹介)。大使館が置かれていない国々は、隣接国の大使館が管轄しています。そうした国々は、(国連に加盟する)アフリカ54カ国の半数以下であることがわかります。

 韓国には、アフリカ19ヵ国の大使館が置かれています。大使館を置いていない国々は、隣接国にある大使館が韓国との通交を管轄しています。たとえば、ブルキナファソは韓国に大使館を置いていません。東アジア・太平洋地域を管轄する駐日ブルキナファソ大使館が韓国も担当しているのです。

アフリカの16ヵ国に置かれたKOICA の事務所の多くは、外交関係のあるエチオピア、タンザニアといった北東部の国々と南アフリカにあります。KOICA に比べると少ないのですが、9ヵ国にはKOTRA の事務所があります。韓国輸出入銀行の事務所が置かれているのは、エチオピア、モザンビーク、ガーナの3ヵ国です。

(外務省がアフリカ政策を統括する)中国や日本とは違い、韓国では各省庁が独自にアフリカとの4つのイニシアティブを実施しています。外務省が担当する韓国アフリカ・フォーラム(KOAF)は外交関係に関わっており、多くの国の代表団そして外務大臣を韓国へ招いて開催しています。このフォーラムでは政治的協力を討議しています。昨年、アフリカ連合(AU)主導により、KOAF が初めてエチオピアで開催されました。

2つ目のイニシアティブのKOAFEC は、国家戦略・財務省が担当して2006年に開始され、3年ごとに開催されています。これまで2006年、2009年、2012年、2015年に開催されました。KOAFIC を担当するのは通商産業エネルギー省で、産業の協力を目的としていますが、KOAFIC とさまざまな部分で重なっています。KAFACI を主催するのは農村開発省で、食料と農業に関する協力に焦点をあてています。

このように韓国のイニシアティブが4つに分かれているので、市民社会は、リソースが重複することを批判しています。これらのイニシアティブが一つにまとまったら、さまざまな問題についてもっと焦点をあて深く検討することができるはずです。すべてのイニシアティブが省庁ごとに運営されているために、複数のイニシアティブがあるのです。省庁間の連携が充分でないばかりか、時には競合までも起きています。私たちは、この現状を批判しています。

最近、韓国国内で、アフリカ大陸への関心が高まっていることを示す良い兆候が見られます。たとえば、国会議員のリー・ジョーヨン(Lee Joo-young)の働きかけで、第19期国会に設けられたアフリカ新しい未来フォーラムには60~70人の議員が参加しました(第20期国会は2016年に始まったばかりです)。毎週水曜日の朝、各分野のアフリカ専門家をまねいて開催されたフォーラムは20回を重ね、その成果は韓国内の専門家の考察をまとめた何冊もの本になりました。

第19期国会では、外務省の支援を受けて、韓国アフリカ戦略センターというイニシアティブも開始され、これが2015年に開設された韓国アフリカセンターになりました。このセンターの初年度(2015年度予算)は210万米ドルで、多くの分析を行い、何冊も本を出版して、経済的政治的協力を促し、また韓国アフリカ協力をテーマにしたイベントを開催、韓国にあるアフリカ諸国の大使館とも協力しています。このセンターは政府の機関で、アフリカのために日常的に分析を行い、戦略的計画を作成するという役割を担っています。

これまで4人の韓国の大統領がアフリカを訪問しました。韓国の大統領の最初のアフリカ訪問は1982年で、後の3人の大統領がアフリカを訪ねたのはごく最近で21世紀になってからです。4人の大統領はそれぞれ3カ国を訪問しました。政府はアフリカ諸国との外交関係にあまり焦点を置いていなかったのです。4人の大統領は、5年の任期中にそれぞれ1度だけアフリカへ行き、一部の国々だけを訪ねました。それがアフリカ諸国と韓国のサミットにつながる歴史、そして韓国の大統領がアフリカ諸国を訪問した歴史になります。

韓国のODA 政策

次に、韓国の政府開発援助(ODA)について話します。韓国のODA は、韓国経済が国際社会に占める割合から考えるとまだまだ小規模ですが、着実に拡大しています。2015年に韓国の国民総所得(GNI)に対するODAの割合は0.27%となりました。70%がバイラテラル(二国間)援助、30%はマルチラテラル(多国間)援助です。市民社会は、バイラテラル援助ではなくマルチラテラル援助を増やすべきだと主張しています。

2011~2015年度の中期ODA 計画によれば、政府はODA の25%を無償援助に、20%を特に公衆衛生、上下水道、教育、農村開発、情報通信技術などの分野への友好国への譲許的融資(concessional loan)にあてると決めました。この中期計画によれば、2010年にODA の15%を占めるにすぎなかったバイラテラル援助が、2015年には24%近くにまで拡大するのです。

韓国のODA 全体の1/4 がアフリカ大陸に向けられています。韓国のODA の主要な対象はアジア諸国です。しかし、アフリカ向けのODA 拡大してきましたし、これからますます拡大していくと考えています。2015年には、ODA の多くがアジアとアフリカに向けられている中、アフリカへのODA は24%を占めていました。

韓国政府は「優先的対象国(priority partner country;PPC)」を設定しています。「2016~2020年度第2期中期計画」では26ヵ国がPPC とされました。この中には、アフリカの7 ヵ国、ガーナ、エチオピア、ウガンダ、ルワンダ、モザンビーク、セネガル、タンザニアが含まれています。政府は、政治的経済的見地から戦略的な分析を行い、これまでの関係を勘案し、また韓国にとって将来利益をもたらすという観点から、PPC を選定しています。

2005年にバイラテラル援助全体の8~9%だったアフリカへのODA は、2014年には24%を占めるほどに拡大してきました。そのほとんどの94%(2014年)はサハラ以南アフリカ諸国を対象としたものです。そしてその81%(2014年)は後発開発途上国に向けられました。

それ以外に、南スーダンへのPKO 要員派遣費用、エボラ危機のシエラレオネへの保健従事者200人派遣の費用などがあり、2016~2020年度には「若い女性たちを支援するBetter Life for Girls Initiative に200万米ドルの支出を予定しています。また、韓国政府は、ソマリア沖海賊対策のため、清海部隊(Cheong-haeunit)を派遣しています。 KOICA は、アフリカ諸国へも「世界の友人、韓国(World Friends Korea)」という長期ボランティアを派遣しています。韓国は、これまで96ヵ国に約55,000人の長期ボランティアを派遣してきました。その中の4,755人、8.3%がアフリカに派遣されています。

韓国はODA 先進国とはいえず、またアフリカへの寄与もまだまだ小さいことがわかります。経済を見ると、韓国の国際貿易総額1兆1000 億米ドルのうち、アフリカとの貿易は180億米ドル、たった1.6%にすぎません。韓国は、アフリカ諸国から天然ガス、石油、銅鉱石、鉄鉱石・鉄鋼製品を輸入し、自動車、船、合成樹脂製品を輸出しています。韓国・アフリカ諸国間の貿易は毎年拡大していますが、まだ1.6%にすぎないのです(1)。

国際投資を見ると、韓国の投資総額2800億米ドルのうち、アフリカ諸国へ向けたものは37億米ドル、1.3%にすぎません。特に21世紀に入ってからアフリカ諸国向け投資が増えてきていますが、まだまだ限られています。

アフリカ・インサイトの活動

韓国とアフリカの関係の問題点と限界を考えていきます。まず、韓国では、経済的関係、外交関係での優先度が低いことから、アフリカへの関心も理解も十分ではありません。大使館や経済機関の事務所の数もまだまだ限られています。

次に、経済的利益も協力関係も不十分です。韓国が長期的なエネルギー安全保障を望むのであれば、アフリカ諸国との経済的関係を強化しなければなりません。そのことを政府の役人の多くも理解しています。アフリカ諸国の潜在力への期待があります。貿易も投資も不十分です。全体の2%にも達していません。

そして、情報もネットワークもきわめて不十分です。ケニアはどんな国、タンザニアはどんな国といった、地域に関する適切な情報が不十分なことが政策の誤りにつながります。人と人とのネットワークがないと、政策実施を適切に行うことができません。政策を立てたとしても、情報そして人と人とのネットワークが不十分だと、その政策は不適切なものになってしまう、もしくは「適切に実施されない」のです。それが、韓国の現状です。

こうした問題点と限界があるので、アフリカ・インサイトを起ち上げました。韓国には、アフリカの課題に中心的に取り組んでいる市民社会組織はあまりありません。その一方で、世界各地で取り組んでいる国際協力活動の一環として、アフリカでコミュニティ開発や収入向上、トイレ整備のプロジェクトを実施している大きなNGO はあります。

アフリカに関わるアドボカシーと意識啓発に中心をおいたNGO がなかったので、5つの「問題認識」に基づきアフリカ・インサイトを設立しました。バイアスのかかった情報しかなく、適切な情報が不十分なことから、人々はアフリカの実情を知りません。人々は、アフリカといえば、貧困と困難が広がる地とだけ考えているのです。

こうしたネガティブなステレオタイプは、私たちがアフリカの人々と関係を作って行く際に悪影響を及ぼしてきました。一方的な上から目線の関係になってしまったのです。こうした関係は、しばしば、地域コミュニティを無視したり一方的に指示をしたりするという誤ったアプローチにつながっています。私たちは、アフリカ諸国の良い友人になろうと努力していますが、ややもすれば支援することにつながらず、時には害を及ぼしているのです。

そこで、アフリカ・インサイトは、適切な情報を提供する、アフリカ諸国に対する政府の姿勢、差別や誤った政策を変えるためにアドボカシーに取り組む、アフリカの人々と対等な関係を築き、交流、協力を進めて行く、といった分野で活動していこうとしています。私たちは、地域コミュニティが自信を深め、持続可能な発展を進めて行くことのできる環境作りをめざしているのです。

私たちの活動を紹介します。まず、意識啓発活動です。多くの一般の人々、学生、決定権を持つ人たち、NGO、そして政策立案者たちに、アフリカを正しく知ってもらえるよう働きかけています。

「ソウル・アフリカ・フェスティバル」も開催しています。アフリカの文化や人々と触れ合う機会があまりないので、他の国際協力団体と協力して、アフリカに関心を持つ人々を対象とした文化的イベントを開催しました。ソウルにあるアフリカと関わるさまざまな組織とも連携してきました。

昨年、第1回ソウル・アフリカ・フェスティバルを開催しました。そして、今年は2週間前(編集部注:このプレゼンテーションは2017年6月4日に行われた)に第2回を開催したばかりです。アフリカに関わるNGO、社会企業、大使館、研究機関と並んでアフリカ・インサイトも出展しました。ケニア大使館、アルジェリア大使館も出展しました。アフリカンフードを味わうことができ、多くの問題に関するセミナーも行われました。アフリカングッズが販売され、子どもたちは東アフリカ(タンザニア)のティンガティンガにチャレンジしたり、一緒に踊ってアフリカの文化に親しみました。こうした活動は、昨年からの重要な取り組みになっています。アフリカでの地域活動として、青年起業者支援(Young Entrepreneur Support) の取り組み’AfricaYES’ を実施しています。これは、アフリカの街やコミュニティへ行って、突然「支援してあげます。何が必要ですか?」と尋ねるようなプロジェクトではなく、地域コミュニティがすでに始めている社会的問題の解決をめざす取り組みを支えるための活動です。

現在、ケニア・ナイロビでこのYES プロジェクトを実施しており、コミュニティが持続的に良くなっていくための取り組みを行いたいという参加者を選んでいます。最初の段階から、ビジネス・モデルを組み込んで、私たちがずっと資金を提供しなくてもコミュニティが自力で取り組みを継続させていくことができるプロジェクトを追求しています。地元の人々がすでに取り組んでいるプロジェクトにおいて、人々が自力で問題を解決できるようにリーダーシップのあり方を提示し、また人々をエンパワーしているのです。

ケニアでは、ムクル(Mukuru)というスラムに住んでいる10人の若い起業者を選んで、クラスを運営しています。このクラスでは、ビーズ細工や衣類を製作しています。製品を販売して得たお金は、ムクルで暴力や性産業に直面している女性たちに提供しています。これは、ケニアの青年たちと起業者たちが交流し、知恵をシェアしていくためのプログラムなのです。

アドボカシー活動、交流・連携プログラムにも取り組んでいます。グローバルファンド支援につながる政策アドボカシーを行っており、グローバルファンド・アドボカシーネットワークに参加しています。韓国政府にエイズ・結核・マラリア対策にもっと資金を投じるよう働きかけているのです。

何度もセミナーや記者会見を行ってメッセージを発し、また、政策の決定者との話し合いを持っています。人種差別反対、アフリカへの差別撤廃、そして、悲惨なイメージを使ってファンドレイジングを行おうとする「貧困ポルノ」反対のキャンペーンも行っています。

私たちの活動を紹介しました。私たちはまた、多くの若いジャーナリストや活動家、特にアフリカ諸国で生活した、滞在したことのある、あるいは働いたことのある(働いている)人たちが参加する、アフリカのさまざまな課題に関する正確な情報と展望を発信し、意識を啓発するための自立したプラットフォーム(韓国語のウェブマガジン)も運営しています。(翻訳:斉藤龍一郎)

(1) 韓国外務省傘下のAfrica-Future center の情報から


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