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津波、貧困、援助、MDGs

1980年代以来、国際協力活動に関わってきたAJF代表理事・林達雄が折々に発したメッセージです。


2005年1月

 こんにちは皆さん、バンコクから林 達雄です。 

エイズの本を書いているのですが、津波の件も気になり、感じていることを書きます。パプアの津波の際、現地調査をした経験、震災ボランティアの体験などを思い出したからです。それらの経験からみると、一ヶ月を過ぎるこれからが、問題が浮き彫りになる時期です。災害というインパクトにより、以前からあった問題、社会の健全性、脆弱性、貧困、格差、政治のあり方、国際政治や援助のあり方などの全容が見えてきます。

1) 津波と地震

天災(災害だけではなく、戦争や感染症の流行)はそれ以前からの社会のあり方・弱さを浮き彫りにし、助長します。

水、食料、燃料、住居、情報などへのアクセス、サステイナビリテイ、その背後にある自然環境、教育、メディア、政治・経済的プライオリティなどが問われます。また、差別、格差、不満、人権侵害などの不満や諍いの種をかかえていたかどうか。地域の中にコミュニティ、学校、教会、行政、などアクターや社会的機能が存在したかどうかで、その後が左右されます。問題ばかりではなく、ポジティブな側面も見えやすくなります。女性やマイノリティの担ってきた社会的役割、農村や地域社会の持つ潜在的な力、コミュニティというものの意味、伝統の意味、ボランティアやNGOや友人の意義などなどが見えてきます。あらためて評価する機会となります。

パプアのケースでは自然環境が保たれ、伝統的生活が維持されていたので、波による被害は最小限に留まり、飲料水、燃料、食料などに困りませんでした。行政に代わって、教会が機能しました。道がなく、救援のアクセスは困難でしたが、援助の必要はほとんどありませんでした。ただ、土地争いは起きました。津波や地震は住居や土地を奪い、使えなくすることを特徴とする災害です。神戸でも避難所、仮設住宅などでの不和、その後の区画整理に伴う土地をめぐる争いが見られました。

関西の震災では、都市部と淡路などの農村を比べたとき、被害程度は同様でも、水、燃料、食料のアクセスで差がでました。家の復興も農村の方がずっと早かったのです。

天災が起きてから、しばらくは一種の高揚期で、被災者は平等、助け合いましょうという機運がたかまります。その後は、もともとあった脆弱性、経済格差が顔を出すので、復興の速度に差がでます。格差は不満を呼びます。災害で露出するのは経済の問題ばかりでありません。神戸では『女性』の社会的地位の問題が露呈しました。家庭内暴力やレイプが増加しました。関東大震災の際、朝鮮人への日常的な差別が、暴動のうわさを呼び、逆に朝鮮人が虐殺につながったことも、歴史の教訓の一つです。

一方で、女性や外国人が頼りになるで存在あることも見えてきました。在日の人の炊き出しは人気が高く、ベトナム人の住まいの復興の早さは目をみはらせ、ボランティアで自信をつけた女性は夫から自立し、働き始めました。神戸の西半分が農村であることも大きかった。農協がいち早く、米倉を開放し、おにぎりを配ることができました。メキシコの地震の後、住宅は瞬く間に住宅を復興されたそうです。コミュニティの底力が発揮されたのでしょう。

しかし、こうした火事場の華は、すぐに忘れ去られます。その後の防災の教訓には生かされませんでした。

2) 貧困

普段は見えにくく、説明しにくい『貧困』が、たとえば、津波という災害を通して見えてきます。数字上のデータが現実の人の顔、生き死にという形になって現れやすいのです。天災に限らず、戦争や感染症といった駄目押しに弱い状態こそが『貧困』の一側面です。逆に、天災などの際、力を発揮する女性やマイノリティや農村の力、自然の力こそが、『豊かさ』です。災害を受けとめる準備がないこと。余力がないこと。生き延びるためのモノへのアクセス、人やコミュニティや自然環境の力や意欲が生かせれているかどうか。逆に借金(債務)、基本サービスの停滞(民営化)、情報、経済格差、人権・人間の尊厳などの面で、脆弱性や不満の種をかかえていないかどうか。これらの総体こそが貧しさの本体なのだと思います。天災などの衝撃によって、目に見えてくる、助長される人災の部分といってもよいかもしれません。

災害は、『貧困』とは何かを学ぶ絶好のチャンスです。何を評価し、誰の力を強めたら、貧しさを克服できるのか知る機会です。多くの人に伝えるチャンスでもあります。

3) 援助と国際社会

直後の救援は機動力さえあれば、有用です。何もできないボランティアだって、励ましになります。NGOによる協力や介入は特に情報と他地域での経験という面で有用です。よそ者にはよそ者の強みがあるからです。視野が狭くなりがちな、現地コミュニティにヒントを提供できるからです。被災者グループ同士が学びあい、協力しあうネットワーク形成にも役に立ちます。メディアが伝えるのとは別な角度での情報を国際社会に伝え、これまでの社会がもってきた脆弱性を明らかにし、教訓を次に生かすことが大きな仕事です。

災害は、国や援助団体にとってチャンスです。初期には援助ラッシュと巧妙争いがおきます。実際の援助の質や効果とは別に、政治家たちとっての好機です。機会とその意味でブッシュさん、小泉さん、タイのタクシン首相の満面の笑顔が目に浮かびます。災害援助は世論、有権者をひきつける絶好の機会だからです。しかし、災害援助による功名、世論をひきつける効果は時間とともに薄れます。当然の如く、援助は減り、最初の約束は反故にされやすくなります。

国連やNGOはサステイナビリティと貧困、MDGsとの連結をはかろうとしているようですが、この世論をめぐる戦いに勝てるのでしょうか?ここらの勝敗が、災害の教訓が後世にどう残されるか、歴史を決める戦いになるのでしょう。

援助は基幹産業の復興に集中しがちです。神戸では港湾、タイでは観光産業という具合です。プケットの復興は迅速で、ホテル業界は2月の中国正月に向けて商戦を開始しています。これから、格差が歴然としてくるのでしょう。神戸ではいまだに放置された焼け跡が見られます。

4) 2005年の私たちの活動と津波

今回の津波に対してNGOは一方で、救援を行い、一方で訴え、伝えようとしていると思います。ともに重要なことです。しかし、最も重要なことは両者の合体です。伝える人間が現地の具体的な実例を持って、訴えることです。実感と実例がなければ、メディアはとりあってくれないでしょう。問題ばかりを伝え、ポジティブで意外な側面を伝えなければ、飽きられるでしょう。また、現地からの報告だけ(自分たちの活動自慢ばかり)伝え、国際社会の構造的な問題やMDGsと結びつかなければ、報告は不本意な解釈と政治に利用されます。

現地での活動は、今に対応するだけでなく、その後の復興のあり方や、次の災害への準備(プリペアドネス)を左右します。だから、様々な位置にいるNGO関係者が組むことが重要です。

Disastar as opportunityと言う言葉がありますが、災害という目に見える機会をどんなチャンスにするかは私たち次第です。現地の当事者、NGO, 国連 VS 政府、G8、産業界という構図(実際の構図はもっと複雑ですが、)の中でのチャンスの争奪戦でもあります。その中間に位置するメディア、専門家、何よりも世論(多くの人々の意識や感情)の争奪戦です。この勝敗が、その後の復興のあり方、現地の人々の生活、尊厳、差別、希望を左右します。今回の津波をという災害を超えて、今後の災害対策、貧困への対応、情報の力点、政治や経済の力点を左右します。残念ながら神戸の震災のときは負け戦でした。敗戦の原因は、NGOや住民側が結束できなかったこと、アドボケイトと現場が共通の意識を持てなかったこと。そして訴える相手を間違えたことにあります。行政や政府に矛先が向きすぎ、視野が狭くなり、多くの人の気持ちや意志を軽んじたところにあると思います。敵の首根っこは『世論』、潜在的な有権者の数にあります。

長くなりましたが、『津波』を2005年の運動の前哨戦にできればと思います。せめて、『貧困』とは何か、学びの機会にしたい思います。

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