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ロンドンからの手紙(9月4日)

1980年代以来、国際協力活動に関わってきたAJF代表理事・林達雄が折々に発したメッセージです。

2001年9月

皆さんこんにちは林達雄です。

いま、アフリカに向かう途上、ロンドンにおります。

2年前に直腸癌の手術を受け、その後、病気を抱える人々に親近感を持つようになり、エイズをはじめとする病気の問題に取り組みつつあります。グローバル化と呼ばれる現象の中で、様々な分野で地球規模の拡大がおき、同時に地球規模の閉塞と格差がおきていますが、病気の分野でもまたしかりです。いまの世界で問題になっている病気は、昔ながらの地域それぞれに特有な病気というよりは、最近の広範な人口移動により、罹りやすくなった病気です。病気にかかる可能性は平等になりつつありますが、病気に関する情報や治療を受けることのできる可能性は極端なほど不平等です。技術革新により、よい治療法が生み出されてもその恩恵を受ける人は限られています。限られた情報の中で、病人たちは不安に怯え、偏見と差別の中にいます。・…そんな予想の上で、現実の有り様を見つめ、『どうしたらよいのか』その糸口を見つけることが今回の旅の目的です。病気による生活苦や死は怖いことですが、希望の見えない閉塞状態はさらに辛いものと感ずるからです。感染自身の現実に出会うこと、病気を取り巻く世界の動きを知ること。2つの視点を持って、今回の旅を始めました。

先週、英国のNGO・OXFAMを訪ねました。彼らが中心になってはじめている署名嘆願運動に共感しました。11月中旬にカタールで開かれる世界貿易機構(WTO)の閣僚会議をターゲットとしたキャンペーンです。OXFAMが支援する25カ国のヘルスワーカーからの生の情報と、持ち前のネットワークと分析能力・バランス感覚を駆使した、なるほどとうなずけるものです。第2次世界大戦を超える規模になったエイズの感染者やその子供たちに、希望をもたらす行動です。今後の世界の医療や遺伝子情報、農産物の種などを開発者やお金持ちに独り占めさせず、公共財として皆のものにする運動でもあります。署名の集まりかたによっては『次の20年間の病気による死者の数を大幅減らす』可能性があります。

是非皆さんも署名に参加してください。文面を転送しますので、できれば日本語に翻訳して、お友達や他のNGOにも伝えてください。現代世界のからくりを理解するのに最適なテーマでもあります。特許など、わかりにくい言葉がたくさん出てきますが、だからこそ世界の多くの人が気づかないうちに進行した問題です。しかし、過去一年間でかなりの人が気づき、国際的な力関係も変化し、あと一歩のところまできています。

最近出版された『グローバル化と人間安全保障』(小生も分担執筆しました。日本経済評論社発行です。明治学院の勝俣教授、JVCの熊岡さんなど友人たちの共著です。)の拙文。また、アフリカ日本協議会の資料集を参考にしていただければ幸いです。この運動はエイズをはじめとする『病気』と世界的な『特許』がキイワードとなります。OXFAMの担当者によると、『病気』を理解できる人が70%なのに対して、『特許』を理解できる人は5%しかいなそうです。過去一年間、この件を学んできた私でさえ、文献を投げ出したくなります。私なりに解説しますので、辛抱強い人は読んでください。

特許とは発明品によって得られる利益を一定期間、独占できるという特権で、その国の政府が発明者に与えるご褒美のようなものです。とくに技術革新を加速する装置として産業界の注目を集めてきました。元来、国ごとに異なるものでしたが、近年、米国のイニシアティブにより世界規模な仕組みになりました。WTOに加盟する条件として、世界基準に従うことが強制されるようになりました。独占禁止法という言葉がありますが、これと反対に特許は独占を許す法のひとつです。いきすぎた特許の保護は、独占による弊害を招くため、各国はフレキシブルにこれを適用してきました。医療・健康など公共の利益を守るための安全装置(セイフガード)も特許の規定には盛り込まれています。いざというときには、特許の持ち主に無断で、その技術や情報を使用できる『強制特許』という手法です。また医薬品のように公共性の高い分野には特許を適用しない国が多かったのです。

医薬品の場合、最初の開発が行われた後、数年後にはこれをまねた薬が市場にでまわり、値段が3分の1以下に下がることがこれまでの通例でした。ブランド品でなくても品質が保たれていれば何の問題もないからです。特許適応外のノンブランド商品を製造し、輸出することにより、より安い値段で必要とする人に届けるという市場メカニズムが存在していたわけです。カナダ政府は強制特許を用いることによって、薬の値段を下げ、国民に供給してきました。ところが、特許が世界化されることよって、こうした方法が取りづらくなりました。国民の税負担による医療費は2.5倍に跳ね上がるといいます。途上国でも、ブラジル、インドなど工業力を持つ国は同様のことを行い、ブラジルではエイズ治療薬の値段を10分1に下げ、エイズによる死亡者の数を半分以下にしてきました。ところが、WTOへの加盟とともにこうした行動が困難になりました。

WTOの世界基準は、これまで多くの国が国ごとに使ってきた特許法よりも、フレキシビリティが少なく、有効期間が長く、強制特許が使いづらいものです。発明者、開発者にとって過保護なものといえるでしょう。多くの人々の健康や人権を侵害する方向にあるともいえます。このことは、この1年間の国連やサミット、エイズ・感染症関係の国際会議で、指摘されてきました。途上国やNGOのみならず、EU諸国も問題にするようになりました。11月のWTO閣僚会議の議題のひとつに、この世界基準(TRIPS協定)の見直しが含まれています。そして、この基準の解釈の仕方が争点となります。米国はより狭い解釈を求め、途上国やEUはよりフレキシブルで、強制特許のうちやすい解釈を求めることになります。これまでは、米国側の力が圧倒的に強かったのですが、この一年で力関係は変化し、もう一押しのところまできています。だからこそ、世論やNGOの動きが大切になります。たかが、署名だと馬鹿にできないなと感じています。

健康や医療は、いまや、法律や司法の場で勝ちとる課題になっています。製薬会社に直談判して薬を安くしてもらう方法もありますが、ルールで争った方が将来的な継続性があるからです。南アフリカで政府は、特許適応外の薬の自国製産や輸入を可能にする法律を3年前に作りましたが、無効になっていました。大手製薬会社によって提訴され、米国政府によって経済制裁の脅しを受けたからです。しかし、この4月の法廷で製薬会社側は提訴を取り下げ、この法律は使えることになりました。NGOによる署名活動、EU諸国からのバックアップがあったからです。南アの裁判のような、各国それぞれの法律をめぐる戦いを局地戦と呼ぶなら、11月のWHOのような世界のルールをめぐる戦いは本丸の決戦です。この決戦に日本人としても参加したいと思います。

これは途上国だけではなく、先進国の医療にも大きな影響があります。多く先進国では税金や社会保険制度によって、安い値段で国民に医療を供給してきましたが、過保護な特許制度によってこれらの制度がパンクする危険があります。私たちの子供や孫の健康は、私たちが勝ちとる時期にきています。

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