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HIVポジティブの女性による、HIVポジティブの女性のための運動

1980年代以来、国際協力活動に関わってきたAJF代表理事・林達雄が折々に発したメッセージです。


2001年9月

私のケニア訪問の意義は彼女たちとの出会いにあった。

政府関係や国連機関が、わたしとのアポをなかなか取り付けてくれないのに対し、KENWAは即座に訪問を受け入れてくれた。そんな彼女たちによって私が試されたのは、事務所で話し合いを始めてからであった。自動車の修理工場の2階にある事務室でひととおりの説明を受けたあと、『一体なにをしにきたの?』彼女たちの疑わしげな視線と矢継ぎ早の質問の嵐に私はさらされた。日本に伝え、理解者を一人でも増やすために。・・それなら書いたものを是非送って。・・こんな調子である。無理もない。これまでの訪問者の多くは、見るだけみて、その後何の音沙汰もないそうだ。ここは動物公園ではないのだ。

彼女たちの試験に一応合格したのか、メンバーの一人であるローズブコがスラムの家庭訪問に連れて行ってくれた。炎天下のコンゴシャスラムの奥深く、下水の匂う路地に連なるブリキ屋根長屋の一画にジャスティンの家があった。昨年エイズで夫を亡くした彼女はここで、3人の子供たちと暮らしている。2人は小学校に行っているが、一人は学費が払えぬため学校から拒否されたという。彼女は血痰が出るようになり、家で寝込んでいる。その彼女に、励ましの言葉とわずかばかりの食料を携えてKENWAの仲間たちが訪問する。

もう少し栄養のある食べ物を持ってこれればよいのだけど。とローズブコはいう。ここでは病気になることは飢えることを意味している。病気で働けなくなった女性たちは病気自体ではなく、飢えで死んでゆく。98年に32人のHIVポジティブの女性が集まって始めたKENWAは現在2000人のメンバーを持つ。その75%は売春をして、子供を育てているシングルマザーである。感染した夫の多くはすでに死亡し、感染していない夫は家族を残して逃げてしまう。残された妻は一家の働き手にならざるを得ない。売春はそのための限られた手段である。ケニアでは女性は立場は極度に悪い。子供の学校での成績がよければ夫の手柄に、悪ければ妻の手柄にされてきた。HIVの運び手としても女性が槍玉に挙げられ、売春で検挙される際も、男性ブローカーたちは逮捕を免れ、彼女たちだけが警察に捕まる。ケニアではHIV陽性者たちは差別されてきた。陽性だとわかった途端、奨学金はもらえなくなるし、小規模融資も受けられなくなる。会社も首になる。病院もまた差別する。なんらかの症状がでて、公立病院を受診すると、なぜセックスしたと責められ、適切な治療が受けられない。(どうせ死ぬんだから)薬の無駄遣いだ。と言われ、アスピリンなど安価な薬を渡され、帰される。

やるせない気持ちの中、ドロップインセンターに案内された。女性たちが入り口から外に溢れている。ここはスラムの女性たちが気軽に立ち寄れる憩いの場だ。HIVに関するグループ相談や学習の場でもある。今日は私の訪問を歓迎して集まってくれた。堅苦しいあいさつはない。歌って踊って楽しむ。それがケニア流の歓迎だ。お互いの手と手を叩き、子気味よい音をたてながら踊る人々の輪に私も入れてもらった。何があろうと、踊りが始まれば、すべてを忘れることができる。ここはアフリカなのである。

KENWAの代表アスンタ・ワグラになぜ活動を始めたのかたずねてみた。彼女は私を自室の招き、一枚の新聞記事を見せてくれた。その見出しには『息子だけが生きる支えだった』と書かれていた。彼女は13年前にHIV陽性であることがわかり、7年前にカミングアウトした。自分が陽性であることを宣言した。その際、家族から猛烈な反対を受けたという。いまでもエイズを語ることが困難なケニアの社会風土のなかで、カミングアウトは勇気がいることだ。家族もまた、周囲からの嫌がらせを覚悟せざるをえない。しかし、同じ境遇にある者どうしが支えあうためには、自分を語るところから始めざるをえない。

ローズブコもその一人である。7年前にルーティンの健康診断で陽性だとわかってすぐ会社を解雇された。そして、5年前にカミングアウトした。カミングアウトすることによって、良いこともある。学校に招かれ、生徒たちの前で話をすることによって、多少の収入が得られるようになった。KENWAの運営は、看護婦と会計士という2人の有給スタッフを除いてすべて無給のボランティアによって担われている。しかし、メンバーたちのすべてが売春に頼っているわけではない。エイズ予防教育に貢献することによって、新しい収入の道が開けたからである。予防教育を受ける側にとっても、現実の体験に基づいた生の話がもっとも説得力がある。

ケニア政府は今後のエイズ対策費の6割を予防啓蒙活動に振り向けると宣言している。若者たちの行動変容を促すのだともいっている。しかし、これまでの性習慣を変えることは容易ではない。また、自主的に検査を受けることを奨励している。事前事後のカウンセリングつきのものである。しかし、陽性だとわかった後の、しっかりしたサポートが保証されていなければ、検査は期限付きの死刑宣告でしかない。予防の必要性だけを声高に訴えるのではなく、まずはすでに陽性を宣言された人を大切にし、彼らの力を借りて、予防に取り組む、この姿勢がもっとも建設的なエイズ対策である。『予防』と『ケア』や『治療』を切り離していけない。このことは、多くのエイズ関係者によって言われてきたことだが、私もようやくその意味を理解することができた。

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