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南アフリカ エイズ裁判

1980年代以来、国際協力活動に関わってきたAJF代表理事・林達雄が折々に発したメッセージです。


今、南アフリカ共和国でエイズ治療薬の特許をめぐる法改正に対して裁判が行われており、ヨーロッパを中心に世界の注目を集めている。訴えているのは39の製薬会社、訴えられているのは南アフリカの政府である。新聞報道の1つは『エイズ渦に苦しむアフリカなどの途上国にとってエイズ関連の治療薬を安く手に入れられるかどうかは死活問題…・。製薬会社は知的所有権をタテにスジ論で対抗…・』と伝えている。39社の中には、英国を本拠地とする世界最大大手のグラクソ・スミス・クライン(GSK)社が存在し、『(この裁判に負ければ)南アでは特許システムを無視してよいのだという解釈を招く。世界の特許システムを脅威にさらすことになる。』と主張している。南アフリカ政府側の応援団としては、国内の医療者のNGOや労働組合の他、国境なき医師団などの国際的NGOが存在する。国境なき医師団は、製薬会社に対して提訴を中止するように要求しており、その署名活動の要請が、日本にいる私のところまでEメールで届いている。英国のNGOオックスファムは、GSK社の英国本社にたいして、様々な働きかけを行っている。つい先日までGSKで働いていた法律顧問が、今度はオックスファム側について、途上国により安い値段で医薬品を届けるキャンペーンに参加することになった。そんな知らせが今、私のところに届いた。

ここまで読んで、一体何がおきているのかわかる人がいれば、よほどの事情通である。つい一年前まで、こうした問題が世界でおこりうることを予想できた日本人は、研究者や専門家を含めて誰もいなかったからである。私自身は過去1年間、エイズ治療薬と特許の問題を追っているが、わからないことのほうが多い。キャンペーンをはっている国境なき医師団の法律顧問の女性ですら、いつも頭を悩ませている。

今回の裁判の発端は南アフリカ政府が医薬品法を改正したことに始まる。1997年、南ア政府は、国家の非常事態には薬の特許保護を制限できるよう法改正を行った。より安い値段で薬を輸入すること、また薬の自国生産を促進することが目的であった。ところが1998年この新しい法律に対して、製薬会社が特許法違反として裁判所に訴えた。同時に米国政府が南ア政府に対して、世界貿易機構のTRIPS協定違反だとして政治的な圧力をかけた。そんなことをすると、南アから米国への輸出品を米国は買わないぞと脅しをかけたのである。経済制裁といわれる方法である。結局、98年の時点では、新しい医薬品法は執行停止となった。そして、今年の3月、南ア政府側が国際的に応援を受ける形で、裁判が再開された。この3年間で、『エイズ』と『特許』に対する見方が、欧州を中心として大きく変わったのである。国際NGOは、『製薬会社が法律の無効を求めている間に40万人がエイズ関連の病気で死亡した。』と訴えている。日本にいる私の所まで届いた、国境なき医師団の署名活動は、裁判が続く限り、せっかくの法律が執行できないという考えの上での行動である。

3月に再開された裁判は2週間の休廷を挟んで、4月18日に開廷する。『裁判所の司法権を逸脱しているかもしれない』という理由で、当初この件に及び腰だった裁判官も、休廷直前の時点では製薬会社側に対して『価格設定を含む企業の業務方針を公開するよう』求めた。これまで、ベールに包まれていた企業側の実態が明らかになるかもしれない。

4月18日、製薬会社39社のうち37社が提訴をとりやめる意向をしめし、製薬会社側と南ア政府は法廷を離れ、交渉にはいった。提訴の中止は一応の朗報だが、交渉の過程で、どのような譲歩がされるは不明である。南ア政府が法律の条文を書きかえることになれば、朗報とはいえない。

4月20日、新聞報道をとおして、朗報であることが一応確認できた。日本経済新聞によると、『現行法の改正につながるものではない』との見解を南ア政府は明らかにした。とある。これは大切な点だ。より安い治療薬を手に入れるための戦略として、南ア政府は『法には法を』という対抗手段を続けててきた。世界のトレンドとなっている特許重視の法に対して、例外的とは言え、抜け道を作る法律を押し通した。大手製薬会社が提示してきた薬の値下げに、基本的には応じてこなかった。これはアフリカにおけるエイズ治療の将来を見越した、一貫した方針の勝利である。

エイズの治療法は日本のような先進国においても、決して完成されているわけではない。より安く、より飲み続けやすく、より薬剤耐性や副作用が少ない薬の開発が待たれる段階である。そうした意味で将来開発される薬においても、適応が可能な法が大切である。

南ア政府はこの薬剤法の適応によって、インドからより安い値段で薬を輸入したり、自国生産を始めたりすることになるだろう。しかし、さしあたって輸入や自国生産が想定される薬だけで十分が治療が可能だとは、少なくても日本の診療家たちは見ていない。また、薬の値段が現行の10分の1になったとしても、その値段で飲み続けることのできる経済層が南ア黒人社会の中にどの程度いるのだろうか。薬を必要とする大多数の感染者に届けるためには、社会保障を充実させ、さらに値段を安く、限りなくゼロに近づける必要がある。病院、診療所、医療スタッフの養成などの医療インフラの整備が必要となる。

昨年の7月に垣間見た感触にすぎないが、南アの社会はまだまだ、エイズをありのままに見つめ、語りあえるほど開かれた社会ではない。差別や偏見のなかで、ひっそりと生と死が進行しているようだ。薬というひとつの出口が見えてきたが、今すぐ、すべての感染者を解放するわけではない。

先の道のりは遠い。しかし、今回の法廷闘争の勝利は、次の10年を考えたとき、確実な第一歩である。傍聴席に集まった南アの人々は歌いながら踊りだした。私の所に、情報を翻訳し、送って下さった人々に感謝したい。ひとまず、祝杯をあげたい。今後とも、アフリカの人々、国際NGOの人々と同時進行で、事態を見つめ、ともに将来のために今、何をすべきか考えてゆきたい。

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