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ケニア・ウガンダHIV/AIDS対策調査日報 第2号


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ケニア・ウガンダHIV/AIDS対策調査日報 第2号
発行日 2004年7月31日(加筆あり)
作成  稲場 雅紀
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【注】

  • この「日報」は、7月22日から8月11日にかけて実施したケニア・ウガンダのHIV/AIDS対策に関する調査中に現地からお送りした日報(日本語、ローマ字)を漢字かな文字に修正し、加筆したものです。
  • 本件調査は、7月22日〜7月31日までのケニア滞在についてはアジア経済研究所の機動研究(http://www.ide.go.jp/Japanese/Research/Project/2004/304.html)として、8月1日〜8日までのウガンダ滞在についてはアフリカ日本協議会の在日アフリカ人支援プロジェクト事前調査として、それぞれ行ったものです。

■1.ナイロビのHIV/AIDS活動調査とりまとめ

今週は、ケニアの首都ナイロビのHIV/AIDSに関わる活動の調査に当たっていましたが、それも昨日で終わり、明日から、後半戦に入ります。後半戦では、ナイロビの西200キロのところにあるナクル(リフト・バレー州州都)、ビクトリア湖畔のキスム(ニャンザ州州都)を経てウガンダの首都カンパラまで陸路移動し、そのプロセスでナクル、キスム、カンパラのNGOや病院などを訪問調査します。

さて、ナイロビでは、ナイロビのHIV/AIDSに関わるNGOなどの取材はとても有意義なもので、非常に参考になりました。回った団体の一覧と簡単な感想を書いておきます。ちなみに、私たちのチームは、私ともう一人の同僚の二名です。また、現地で多くの日本人の方のお世話になりました。とくに、徳岡由佳さん(AMDA)、公文和子さん、神戸俊平さんからは絶大な御協力を頂きましたので、ここに感謝の意を表します。

(1)回った団体の名称(日本語訳・英語正式名称の順)

○7月26日

  • アフリカ開発・救援機構 ナイロビ事務所
     African Development and Emergency Organization (ADEO) Nairobi Office
  • ケニヤッタ国立病院VCTセンター ディヴィッド・ブクシ教授
     Prof. David Bukusi, VCT Center, Kenyatta National Hospital
  • ケニア・エイズNGOコンソーシャム
     Kenya AIDS NGO Consortium (KANCO)

○27日

  • ケニア・エイズと共に生きる女性たちのネットワーク
     Kenya Network of Women with AIDS (KENWA)
  • ケニア・エイズに取り組む男性運動
     Movement of Men against AIDS Kenya (MMAAK)
  • ケニア・治療アクセス運動
     Kenya Treatment Access Movement (KETAM)

○28日

  • ケニア・エイズと共に生きる女性たちのネットワーク
     Kenya Network of Women with AIDS (KENWA)
  • ケニア・エイズと闘う女性たち
     Women Fighting AIDS in Kenya (WOFAK)
  • アフリカPLWHAネットワーク(NAP+)
     Network of African People with Living with HIV/AIDS (NAP+)

○29日

  • ナザレス病院(中央州キアンブ県)
     Nazareth Hospital (at Kiambu District)
  • キベラ・コミュニティ自助プログラム
     Kibera Community Self Help Program (KICOSHEP)
  • 国家エイズ・性感染症管理プログラム
     National AIDS and STD Control Programme (NASCOP)

○30日

  • ナイロビ大学医学部コミュニティ・ヘルス部 エリザベス・グギ教授
     Prof. Elizabeth Ngugi, Department of Community Health, University of Nairobi
  • ケニア・専門カウンセラー協会
     Kenya Association of Professional Counsellors (KAPC)
  • リヴァプール・VCT・ケアプログラム
     Liverpool VCT and Care Program (LVCT)

(2)私の印象

□HIV/AIDSに関する包括的アプローチ

私たちの調査は、ケニアにおいてHIV/AIDSに関わるNGOや市民社会がHIV/AIDSに対するアプローチを如何に包括的なものにしようとしているかに焦点をあてたものでした。実際、VCT(自発的カウンセリング・検査)をやっている団体も、ケア・サポートをやっている団体やHIV感染者・AIDS患者(people living with HIV/AIDS、以下PLWHAとする)の団体も、いずれも、いかにVCT→ケア・サポート→治療→エイズによる社会的インパクトの軽減、という連続性を確保するか、というところを課題として強く認識しているように感じられました。

この「包括的アプローチ」への方向性には、

  • いくつかのNGOや病院が連携してネットワークを作り、リファレンス体制を強化する形態
  • 一つ一つのNGOが百貨店化する形態(たとえばケア・サポートをやっているNGOがVCTセンターを併設したり、エイズ遺児へのケアを開始するなど)

の二つがあり、いずれも、形にはなってきています。たとえば、ナイロビには公共、民間など様々な運営主体により60箇所のVCTセンターが存在していますが、この60のVCTセンターと、保健省の国家エイズ・性感染症管理プログラム(NASCOP)が毎月協議の場を持っていたり、ケニヤッタ国立病院とケア・サポートのNGOが意見を交換する協議会があったり、PLWHAのNGOで作るネットワークである「ケニア・PLWHAネットワーク」がPLWHAのケア・サポートの情報交換やリファレンスのためのネットワークとして役立っていたりという進展が見られます。

一方、NGOの百貨店化という点では、KENWAやWOFAK、MMAAK(いずれも日本語訳名称は上記参照)のような代表的なPLWHA組織がVCTセンターや診療所を併設して、VCTや治療に乗り出しています。また、各VCTセンターが、検査を受けた人のフォローアップの場として「ポスト・テスト・クラブ」を併設するという動きも、いかにVCTとケア・サポートをつなげていくか、という努力の現れです。このような点で、HIV/AIDSに対する「包括的アプローチ」をどう保障していくか、という課題に多くのNGOが取り組んでいるのは非常に評価できることだと思います。

□食料安全保障、貧困削減との関係

ナイロビのNGOとのインタビューの中でよく出てきたのは、こうしたHIV/AIDS対策のコンポーネントをどう連携させるかということ以上に、「食料安全保障」や「貧困削減」の部分を自分の活動にどうつなげていくか、ということでした。スラムでは、PLWHAは食べるものもろくになく死んでいく、エイズによる遺児も、家族や親戚の養育能力を超えるほどたくさんいて、食べるものが保障されていない。出稼ぎの単身労働で都市に出てくる人たちがセックスワークを利用して感染する。こうした貧困に由来する問題がHIV/AIDSを拡大している状況がある中で、たとえば、スラムのエイズ遺児たちにどう食料を保障していくか、スラムでの現金収入の未知をどう確保していくか、スラムの人々に対して、生き甲斐のある将来像をどうやって打ち出していくか、といったことが、スラムで活動するNGOの非常に大きな課題として現れています。この辺については、私の課題としても、きちんと勉強していかなければならないところだと、痛感しました。ここで課題として挙げられるのは以下のことでしょう。

<短〜中期的展望>

  • ケア・サポートの拡大:スラムにおけるPLWHAやエイズ遺児の住居、食料の保障をどう実現していくか
  • 収入向上:スラムにおける貧困な人々の仕事や現金収入をどう作り出していくか
  • 人々の将来展望の確保:スラムにすむ人々が、将来に希望を持って生きていけるような何らかの活動をどう作っていくか

<長期的展望>

  • 単身での出稼ぎ労働に多くのヒットが頼らなければならないような社会経済構造をどう変えていくか

ヴァルネラブル・コミュニティへの認識の乏しさ

これはアフリカのどこでもそうなのかも知れませんが、アジアや、他地域に比べて、明らかに、セックスワーカーやゲイ・MSM(男性とセックスをする男性)、薬物使用者などの存在や自己組織化がほとんど見えない状況なのは、非常に大きな問題だと思います。他地域では、「ヴァルネラブルな人々」といったら、すぐにセックスワーカーやゲイ・MSM、薬物使用者、というようなコミュニティの名前が挙がりますが、アフリカでは、「ヴァルネラブルな人々」といったら、エイズによる遺児のことになってしまいます(もちろん、エイズ遺児がヴァルネラブルであることは明らかですが)。アジアや先進国におけるエイズの文脈に慣れている私としては、驚きました。

もちろん、多くのNGOにおいて、こうしたヴァルネラブルなコミュニティの存在は認識され、ハーム・リダクション(健康被害軽減)のアプローチなどについての基本的な考え方も浸透してはいるのですが、やはり、社会のスティグマが強いこと、セックス・ワークも同性間性行為も、ケニアでは「違法」(いずれもヴィクトリア朝のイギリスが持ち込んだものですが)とされていることなどから、こうしたコミュニティの運動はなかなか作り出せないという状況にあるようです。今回は、ケニアでは、この分野は結局セックスワーカーに関する研究をしているナイロビ大学コミュニティ・ヘルス部門のエリザベス・グギ教授としか会えませんでした。彼女も具体的に何かしているというわけではないようで、この点での将来のビジョンは見えないままになっています。

■2.ナイロビの本屋さん

ナイロビでうれしいのは、街の中心部にも郊外のショッピングセンターにも本屋さんがあり、アフリカ文学などの本をそれなりに扱っているということです。

火曜日にナイロビ東部のブルブル(Buru Buru)というところにあるMMAAK(ケニア・エイズに取り組む男性運動)の事務所を訪問した帰り、町の中心部にある本屋さんでいくつか小説を買いました。メジャ・ムワンギ(Meja Mwangi)というケニアの現代小説家が2000年に書いた「The Last Plague」は、ケニアのHIV/AIDS問題を扱っている小説なのだそうで、ジョモ・ケニヤッタ賞ももらっているそうです。長いので、帰国してからゆっくり読もうと思っています。

また、そこでもう一冊、グギ・ワ・ジオンゴ(Ngugi wa Thiong'o)の戯曲「TheTrial of Dedan Kimathi」(デダン・キマジの裁判)も買いました。グギは、現代アフリカ文学の中でも特筆すべき作家の一人で、1977年に「Petals of Blood」(血の花弁)という、イギリス植民地主義とそれへの武装抵抗の歴史から独立、そして新植民地主義支配と買弁資本家階級の専横、国家の腐朽という現代ケニアの歴史と人々の歩みとを、端的な形で表した恐るべき傑作を書いた人物です。彼はその後に書いた戯曲が反体制的だったという理由で、当時のモイ政権に逮捕拘禁され、のちに米国に亡命していました。しかし、2002年12月の選挙でモイが退陣し、キバキを首班とする「虹の連合」(NARC)の国民和解政府が誕生したことにより帰国の条件が整い、ちょうど私たちがナイロビに滞在していた最中に帰国。故郷リムル(中央州キアンブ県の一地域)の人々を始め、数千人の人々が空港に出迎えに行き、故郷に錦を飾ったとのことです。この「デダン・キマジの裁判」は、土地と自由を求めて50年代にイギリス植民地主義と闘ったケニア土地自由軍の軍事指導者デダン・キマジに対するイギリス植民地主義の裁判について、戯曲化したもので、現代ケニアの一つの底流である民衆の抵抗の歴史を現代に復興するという目的を持って書かれたものです。これもじっくり読んでみようと思います。

もう一冊、近くのショッピングセンターの本屋で買ったのが、ソマリア出身の小説家ヌルッディーン・ファラー(Nuruddin Farah)の第一作(1970年)の小説「Froma Crooked Rib」です。これはソマリアの伝統社会に生まれた女性が、伝統的価値観とどう格闘していくかを描いたもので、最初からそれなりに面白い小説です。ヌルッディーン・ファラーは最近非常に注目されている人ですが、日本では翻訳は出ていませんね。

アフリカ文学は、NGOや援助業界からは見えてこないその国の歴史や社会、その社会に置いて存在する抑圧や暴力が持っている相応の論理や倫理を、その作品の持つ固有の文脈から伝えてくれる非常に重要なものだと思います。人々の考え方、社会に存在する暴力の文脈の把握やその深い理解を抜きにして、紛争の処理や平和の定着、良き統治(Good Governance)などをいっても、うわごとで終わってしまうだろうと思います。特に、政治の側面からアフリカに関わる人々が、文学を読むことは非常に重要なのではないかと思います。


第3号に続く

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