Homeへ戻る特定非営利活動法人 アフリカ日本協議会:Africa Japan Forum

アフリカに関わる活動を行っているNGOのデータベースおよびアフリカのエイズ問題に関するニュース・情報データベースです。
収録されたデータ更新の連絡、最新情報の紹介をAJF事務局あてにお願いします。
【2017年3月】アフリカに関わる活動を行っているNGOのデータベースを順次、更新しています。


AJFの活動

あなたの寄付がAJFの活動強化につながります
AJFへの寄付について
アフリカで活動するNGO一覧:
感染症研究会:
アフリカ関連情報(生存学ウェブサイト)

南アフリカのエイズ治療薬供給問題:「ネヴィラピン裁判」とその後の経過

牧野久美子

1.ネヴィラピン裁判

ケープタウンに本部があるトリートメント・アクション・キャンペーン(Treatment Action Campaign: TAC)は、すべてのHIV感染者が適切な治療を受けられるようになることを目指して活動しているNGOである。リーダーのザッキー・アハマット(Zackie Achmat)はHIV感染者であるが、抗レトロウィルス薬を服用していない。民間の医療保険に加入し(公的な医療保険制度は南アフリカにはない)、私立病院にかかることさえできれば、抗レトロウィルス薬は南アフリカで簡単に手に入る。しかし、その余裕がなく、薬を入手できない貧しいHIV感染者が南アフリカには何百万人といる。そのような状況で自分だけ治療を受けるのは良心に反する、というのがアハマットの決意の理由である。その結果として免疫力の低下は疑いようもなく、ときおりアハマットの「極度の体調不良」が新聞で伝えられる。2002年には前大統領のマンデラがアハマットを訪問し、TACへの支援を表明するとともに、抗レトロウィルス薬による治療を開始するよう説得を試みた。しかしアハマットは、マンデラの心遣いに感謝しつつも、薬の服用については譲らなかった。彼はこの運動に、文字通り命をかけている。

抗レトロウィルス薬は、HIV感染者の治療に用いられるとともに、HIV陽性の妊婦に処方することによって、生まれてくる子どもへの母子感染の危険性を半減させる効果がある。TACは、安価なジェネリック薬普及の障害となっている特許システムの変更を求めて国境なき医師団などの国際NGOと連携して運動する一方(日本においてはアフリカ日本協議会がTACの協力団体となっている)、南アフリカ国内では母子感染予防プログラムの全国的実施の実現を第一の目標としてきた。

TACなどの圧力を受けて南アフリカ政府は2000年に、各州2カ所(全国で18カ所)のパイロット・サイトにおいてHIV母子感染予防プログラムを試験的に実施することを決定した。同プログラムには、妊婦への自発的カウンセリングとHIV検査の実施、HIV陽性の妊婦へのネヴィラピン処方、および出産後の母乳からの感染を防ぐための粉ミルクの提供が含まれる。しかし、パイロット・サイトの指定から漏れた大多数の公的医療機関においては、「態勢が十分に整っていない医療機関では安全性が確保できない」といった理由に基づいて、医師は抗レトロウィルス薬を処方することを禁じられた。そのことが憲法の保障する「医療を受ける権利」の侵害にあたるとして、TACは2001年8月、政府を相手取って訴訟を起こした。

これに対して政府側は、ネヴィラピンには副作用の恐れがあるうえ、要求通りの政策を実施できるような資源が政府にはない、などと反論した。しかし、2001年12月のプレトリア高等裁判所の判決は、抗レトロウィルス薬の提供をパイロット・サイトに限定することは合理性を欠くとして、政府に母子感染予防プログラムの全国的実施を命ずるものとなった。政府はこれに対して、裁判所が具体的な政策内容を命令するのは行政府に対する不当な介入であり、権力分立を脅かすものであるとの理由で控訴したが、2002年7月の憲法裁判所判決もTACを支持するものとなり、政府側の敗訴が確定した。

2.その後の経過

ネヴィラピン裁判が終結したことで、中央政府および各州政府はHIV母子感染予防プログラムを実施する法的義務を負うことになった。しかし、その後の経過は州によってまちまちである。全国に先駆けてHIV母子感染予防に取り組み、そのため全9州のなかで唯一TACの訴訟の対象から外された西ケープ州では、2002年9月時点で人口の90%が母子感染予防プログラムを受けられる状況になっていた。それに対し、ムプマランガ州では進展がいっさい見られず、2002年12月にTACは、同州の保健に関する最高責任者らを改めて緊急提訴した("TAC: We Want to Help," Mail & Guardian, September 20-26, 2002; "Aids Activists Launch Urgent Court Action in Pretoria Against Health Minister, MEC," Business Day, December 18, 2002)。

全国レベルでは、TACと南アフリカ労働組合会議(COSATU)の申し入れにより、政府、財界、労働、コミュニティの代表からなる全国経済開発労働評議会(National Economic Development and Labour Council: NELDAC)のなかにエイズの全国治療・予防計画を起草するためのタスク・チームがおかれ、TACからも事務局長のマーク・ヘイウッド(Mark Heywood)がメンバーとして参加した。タスク・チームは2002年10月に初会合を持ち、当初の予定通りエイズ・デー(12月1日)までに起草作業を終えた。しかし、政府代表を含む交渉担当者の合意に基づく文書であるにもかかわらず、政府は治療・予防計画への署名を拒み、NEDLACの交渉の場に戻ることも拒否した。

TACは2003年2月14日の国会開会にあわせてケープタウンで2万人規模のデモ行進を行い(写真)、政府にNEDLACで合意された治療・予防計画への署名を迫った。しかし、政府が相変わらずその要求を無視しつづけたことから、TACはもはや合法的な手段(訴訟、ロビーイング、合法的な集会など)では政府を動かすことができないと判断し、3月20日、非暴力的な非合法行為(警察署など公的施設での座り込みなど)を通じて政府にプレッシャーをかける「市民的不服従キャンペーン」の開始に踏み切った。「市民的不服従キャンペーン」についてより詳しくはアクション・キットを参照されたい。

【付記】(独法)日本貿易振興機構アジア経済研究所刊 牧野久美子・稲場雅紀編『エイズ政策の転換とアフリカ諸国の現状』を参照して下さい。

特定非営利活動法人アフリカ日本協議会 (Africa Japan Forum)

〒110-0015 東京都台東区東上野 1-20-6 丸幸ビル3階
TEL:03-3834-6902 FAX:03-3834-6903 E-mail:info@ajf.gr.jp

Englishプライバシー・ポリシーサイトマップお問い合わせ
Copyright© Africa Japan Forum. All Rights Reserved.