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速報版報告書:HIV/AIDS治療教育・アドボカシーに関する国際サミット

皆さま こんにちは。

3月13日から16日まで、南アのケープタウンで開催された「HIV/AIDSの治療教育とアドボカシーに関する国際サミット」に参加しました。

極めて充実した会議で、報告しなければならないことは山ほどあります。今回は、会議の全体像について報告します。今後、追って以下の内容について報告していきたいと思います。

  1. 会議の全体像←本日
  2. アフリカ各国におけるエイズ治療の現状(数カ国を例に)
  3. 治療アドボカシーの方向性(世界基金、G8、カンクンに向けて)

また、来週はやいうちに、南アで「治療行動キャンペーン」(TAC)が3月〜4月に大規模に展開する予定となっている「市民的不服従運動」に関して、大きく紹介し、日本国内での支援キャンペーンの方向性を打ち出していくつもりです。この「市民的不服従キャンペーン」への支援については、これまでのレベルではなく、より大きなレベルで日本から取り組んでいく必要があるだろうと思います。

では、以下、国際サミットの全体像に関する報告をお読みいただき、意見・感想などいただければ幸いです。

稲場 雅紀


速報報告書:「HIV/AIDSの治療教育とアドボカシーに関する国際サミット」

ケープタウン 3月13〜16日

1.<会議の概要>

南アフリカ・西ケープ州のケープタウンで、3月13日から16日までの4日間にわたって、「HIV/AIDSの治療教育とアドボカシーに関する国際サミット」 International summit on HIV/AIDS Treatment Education and Advocacy (別名「国際治療準備度サミット」ITPS: International Treatment Preparedness Summit)が開催されました。

この国際会議は、アフリカ、アジア、中南米・カリブ海、東欧・旧ソ連圏、先進国の5つの地域から、AIDS患者・HIV感染者グループのメンバーや医療専門家、エイズに関する国際的なアドボカシーを展開する先進国のアクティヴィストなど、67カ国から合計130人以上の参加者を選んで開催されたものです。

地元での会議運営実務は、南アフリカ共和国で抗レトロウィルス薬(ARV:Antiretrovirals)の公的医療への導入の実現を目指す患者・感染者のNGO、「治療行動キャンペーン」(Treatment Action Campaign)が行い、全体の組織化は、米国ニューヨークでHIV/AIDSの治療・ケアを最も古くから行ってきた老舗NGO「GMHC」(Gay Men's Health Crisis)が行いました。先の5つの地域全てで地域組織委員会が作られ、参加するメンバーを選考しました。

また、この会議のスポンサーは、世界銀行、国連エイズ合同計画(UNAIDS)、世界保健機構(WHO)などが担い、会議には米国国際開発庁(USAID)なども含め、主要なドナー組織が参加してエイズの治療に関する非公式なミーティングなども行われていました。

残念ながら、日本からの参加者は「アフリカ日本協議会」より稲場のみ。韓国や北朝鮮、モンゴルなどからの参加もありませんでした。一方、中華人民共和国からは2名、台湾からも2名の参加がありました。

2.<会議の目的>

この会議の目的は、

  1. 途上国において、患者・感染者やヴァルネラブル・コミュニティ、一般人口の間で、エイズ治療に関するリテラシー(Treatment Literacy)をいかに向上させていくか
  2. 途上国において、抗レトロウィルス薬の導入を含むエイズの治療や自発的カウンセリング・検査(VCT)、モニタリング(ウィルス量やCD4の検査)など、適切なエイズ治療を実現するための国際的なアドボカシー(Treatment Advocacy)をどのように効果的に行っていくか

の二点です。

この会議で目標とされたのは、こうした治療リテラシーと治療アドボカシーを効果的に行っていくことによって、世界におけるHIV/AIDS治療準備度(Treatment Preparedness)を向上させ、昨年のバルセロナ国際エイズ会議でWHOが示した「2005年までに世界の300万人の人々が抗エイズ治療を受けられるようにする」という目標を達成することです。

3.<会議参加国>

会議の参加国は以下の通りです。

○アジア(30):バングラデシュ(1)、カンボジア(2)、中華人民共和国(2)、インド(10)、マレーシア(3)、ネパール(2)、パキスタン(2)、フィリピン(2)、台湾(2)、タイ(4)、

○アフリカ(39):カメルーン(3)、コンゴ共和国(1)、ガーナ(2)、コートディヴォワール(2)、ケニア(4)、リベリア(1)、マラウイ(2)、モザンビーク(1)、ナミビア(2)、ナイジェリア(5)、セネガル(1)、南アフリカ(6)、タンザニア(2)、トーゴ(2)、ウガンダ(2)、ザンビア(2)、ジンバブウェ(1)

○中南米・カリブ海(18):アルゼンチン(1)、ボリビア(1)、チリ(2)、コロンビア(1)、コスタリカ(1)、キューバ(1)、ドミニカ共和国(1)、エクアドル(1)、ガイアナ(1)、ホンジュラス(1)、ジャマイカ(1)、メキシコ(1)、ニカラグア(1)、パラグアイ(1)、ペルー(2)、ヴェネズエラ(1)

○東欧・旧ソ連圏(18):ベラルーシ(2)、ブルガリア(1)、エストニア(1)、グルジア(1)、カザフスタン(1)、ラトビア(1)、リトアニア(1)、モルドバ(1)、ポーランド(1)、ルーマニア(1)、ロシア(3)、スロヴァキア(1)、タジキスタン(1)、ウクライナ(2)、

○先進国(21):オーストラリア(2)、フランス(1)、イタリア(1)、日本(1)、オランダ(2)、ニュージーランド(1)、イギリス(4)、アメリカ合州国(9)、

○ファンド(18):世界銀行(2、うちレズビアン・ゲイ・プロジェクト担当1)、国連エイズ合同計画(3)、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(4)、国連開発計画(1)、米国国際開発庁(1)、世界保健機関(1)、その他(6)

4.<会議の流れ>

また、会議は4日間ありましたが、以下のようなプログラムで進行しました。

第1日(3月13日)

○開会挨拶(ザッキー・アハマット:治療行動キャンペーン議長、南アフリカ)

○会議の趣旨説明(グレッグ・ゴンサルヴェス:GMHC・本サミットチーフ・コーディネイター、オノス・イムハンワ:治療行動キャンペーン・国際コーディネイター)

○全体会:治療アドボカシーおよび治療リテラシーの定義とその重要性・ウラディーミル・ゾプチャック(ウクライナ)、カルロス・ガルシア(メキシコ)、ケヴィン・ムーディ(オランダ)、シフォ・ムタティ(南アフリカ)、パイサン・スワナウォン(タイ)

○全体会:治療の供給のスケールアップ

  • スバ・ラガヴァン(インド):WHOのエイズ治療ガイドラインのレビュー
  • シャロナン・リンチ(米国):エイズ治療のファンディングの構造と問題
  • ヘルマン・ウンベルト(コロンビア):治療薬供給の問題=価格、特許、流通
  • マイケル・アリ(ガイアナ):エイズ治療に必要なインフラストラクチャー
  • バクトリン・キコンゴ(ケニア):母子感染予防に関する需要
  • マーク・ハリントン(米国):日和見感染の予防と治療

○全体会:地域・国別報告

  • 東欧・旧ソ連圏:ロシア、グルジア、ルーマニアの代表者が報告
  • アフリカ:ナイジェリア、ケニア、タンザニアの代表者が報告
  • アジア:インド・タイ・中華人民共和国、マレーシアの代表者が報告
  • 中南米・カリブ海:ドミニカ共和国、コスタリカ、ペルーの代表者が報告

第2日

○分科会1:

  1. 治療リテラシーの需要、障害、モデル
  2. 治療アドボカシーの需要、障害、モデル→3つのグループに分かれ、全員が両方に参加

○分科会1の全体シェアリング

○地域別ミーティング1(アジア、アフリカ、中南米カリブ、東欧旧ソ、先進国)

  1. 地域に於ける、治療教育とアドボカシーの需要は何か
  2. アドボカシーにおける障害は何か
  3. 治療教育を効果的に行う方向性にはどんなものがあるか
  4. 治療教育・アドボカシーのための地域的ネットワークの強化をどう実現するか

○ケープタウン東部の黒人居住区カイェリチャ Khayelitsha における「国境なき医師団」と「治療行動キャンペーン」のエイズ治療プロジェクトの全体紹介

第3日

○分科会2:

  1. ファンディング
  2. 治療リテラシーのための資材開発
  3. 治療薬の価格・特許・アクセス
  4. スティグマとヴァルネラブルなコミュニティ
  5. 世界的な治療アドボカシー運動のあり方
  6. 保健医療従事者、薬物治療供給者、NGO、その他のセクター連携のあり方

※1〜3を前半、4〜6を後半に行い、上記6つから二つを選べる構成となっていた。

○地域別ミーティング2

  1. 今後、地域で治療アドボカシーと治療リテラシーをどう進めていくか
  2. 地域に於ける治療アドボカシー・リテラシーの優先順位は何か

○地域別ミーティングの全体シェアリング

○世界エイズ・結核・マラリア対策基金に関する非公式セッション

  • 世界基金の全体像、ガイドライン、構造(ブラッド・ハーバート:世界基金事務局)
  • 治療の運搬車としての世界基金:市民社会の役割と目標(フィリパ・ローソン:世界基金執行委員会感染者代表)

第4日

○途上国の参加者とドナー側とのミーティング

○世界エイズ・結核・マラリア対策基金に関するセッション

  • 世界基金「国家調整機構」のガイドラインと市民社会の権利(ロドリーゴ・パスカル:世界基金執行委員会感染者副代表)
  • 世界基金に対する市民社会の関与のあり方(シャロナン・リンチ:健康のための地球的行動プロジェクト=Health Global Action Project)
  • 質疑応答

○治療リテラシーおよびアドボカシーの将来へのステップと結論 ・ケープタウン宣言の採択

<会議内容の分析>

  • 途上国における、エイズ治療を求める患者・感染者運動は、数年前から徐々に活発化していました。また、エイズ治療・ケアを途上国のエイズ政策にきちんと位置づけることによって、エイズ対策のトータルな底上げが可能になることが、ここ数年のタイ、ブラジルの成功例によって明らかになってきています。
  • アフリカにおいても、数年前までは、エイズ治療の導入を求める声は、政府の財政事情などもあって必ずしも大きくなかったのですが、ここ数年、南アフリカでエイズ対策の導入に消極的な政府を相手に、患者・感染者の大規模な市民運動を展開する「治療行動キャンペーン」の運動や、南ア・ケニア・マラウイ・カメルーンなどの資源の乏しい環境でもエイズ治療が不可能ではないことを示した「国境なき医師団」のプロジェクトなどの効果もあり、各国で、治療を求める患者・感染者の運動が大きく活発化してきました。
  • とくに、昨年8月に南アで開催された「環境開発サミット」の前に、「治療行動キャンペーン」はアフリカ各国の患者・感染者の組織に呼びかけて「汎アフリカ・HIV治療アドボカシー運動」(PAHTAM:Pan-African HIV Treatment Advocacy Movement)を結成、米国の「健康のための地球的行動プロジェクト」(Health GAP)などの支援もあってケニア、ナイジェリア、ガーナなどを中心にエイズ治療の導入を求める運動が展開されつつあります。
  • こうした運動は、先進国である日本などから見た場合、ともすると「きちんとした服薬ができるのか」「耐性ウィルスの発生・感染拡大が危険」「きちんとした医療資源がないところでは治療薬の投入はお金の無駄」といった、リスクを中心に捉えられがちでした。結果的に、これらは「途上国では抗エイズ治療は無理、予防を優先すべき」という主張に結びついていました。
  • しかし、昨年のバルセロナ会議では、UNAIDSのピーター・ピオット事務局長の冒頭演説や、WHOの「2005年までに300万人の人々のARV治療を実現する」といった目標などに見られるように、世界のトレンドは大きく「治療」に向かって進む方向性を見せ始めました。
  • 今回の会議は、こうした世界のトレンドの変化を促進させる方向性を持つものです。また、服薬の困難、副作用の問題、耐性ウィルスの問題、治療モニタリングなど、途上国での抗エイズ治療導入に伴う様々な困難な問題に対して、途上国の患者・感染者運動自身が、エイズとの長い闘いの歴史を持つ米国など先進国の患者・感染者運動(例えばGMHCなど)の経験に学びながら、「治療リテラシー」という概念を導入し、自分のコミュニティに普及していくことによって、より効果的なエイズ治療のあり方を模索しよう、という、極めて積極的な側面を持つものです。
  • この会議には、上記「参加者」の部分で触れたように、世界銀行、USAIDなど、主要なドナーも積極的に参加し、公式・非公式の会合を開催していました。また、世界エイズ・結核・マラリア対策基金についても、基金事務局と南の患者・感染者運動、NGOなどが激しいやりとりのなかで討議を深めていました。この「基金」には、現状でも様々な思惑が渦巻いていますが、いかに患者・感染者の側に立つ、市民社会の民主的な組織として作っていくかという積極的な追求がなされていたように感じます。
  • 一方、エイズ治療リテラシー・アドボカシーといった場合、とくにアフリカなど一般人口にHIV感染が大規模に広まっている地域においては、ゲイ・MSMなど、ヴァルネラブルなコミュニティの問題はこれまでなかなか焦点化していませんでした。しかし、今回の会議では、例えば世界銀行のレズビアン・ゲイ・プロジェクトが開催した非公式会合にブラック・アフリカ諸国の代表団が参加し、活発な質疑を展開するなど、新たな展開が見られました。アフリカ諸国の多くでは、レズビアン・ゲイの運動は存在はするものの、南ア以外では、未だにオープンな形では登場していません。しかし、エイズの問題を軸に、患者・感染者運動とゲイ・コミュニティが結びあっていくことで、アフリカの社会がゲイに対してすこしずつオープンになっていく方向性が見いだしうるのではないか、という希望を持つことができました。
  • 今回の会議は、「世界がエイズ治療に舵を切った」ということを示す、非常に重要な会議であったといえます。日本も、抗エイズ薬による治療に関する援助に直接の支援はできなくとも、例えば技術的な見地から自発的カウンセリング・検査(VCT)、治療モニタリングなどにおいて、途上国のエイズ治療に関して積極的な支援をしていくこと、また、治療リテラシーの向上に関して、何らかの貢献をしていくことは可能であると思います。
  • ただ、日本の保健分野の開発援助がこの分野において抱えている問題は、たとえば欧米先進国におけるHIV感染者・AID患者運動が培ってきた思想・歴史と実績(もちろん、日本国内のエイズ・コミュニティもほぼ同様の歴史を持っています)が、開発援助の分野に転移・移植されていないということです。今回の会議でもっとも印象的だったのは、80年代・90年代に米国を始めとする先進国で、ヴァルネラブルなコミュニティを基盤としたHIV感染者・AIDS患者たちが、病に加えて差別や偏見と闘う中で培ってきた思想や、病と闘い、病と共生するなかで培ってきた様々な実績が、途上国の患者・感染者運動やエイズ・コミュニティの中に脈々と受け継がれていること、それが「治療リテラシー」と「治療アドボカシー」という概念によって結合し、グローバリズムの時代に、グローバルな運動として再編成されているということを目の当たりにしたということです。
  • 残念ながら、今回、日本からの参加者は私だけでしたが、本来、この会議は、これまで患者・感染者の立場、エイズ・サービスNGO、医療従事者の立場から治療アドボカシー・治療リテラシーに専門的に関わってこられた方々が参加された方が、会議に対して大きな貢献もできたでしょうし、また、日本にとっても多くの学びを持ち帰ることができたのではないかと思います。おそらく、このような機会は今後も多くあると思いますので、ぜひとも日本からより多くの参加を実現できればと思います。

アフリカ日本協議会 稲場 雅紀

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