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良心の男

Mandisa Mbali が2002年12月10日にナタール大学Centre for Civil SocietyのMLに投稿
オリジナルの記事は
http://www.guardian.co.uk/health/story/0,3605,857054,00.htmlです。

ザッキ−・アハマットは空腹でないにもかかわらず、チョコレートケーキをほおばり続ける。彼はHIVポジティブだが、延命のための抗レトロウイルス薬(ARV)を拒否している。そのかわりに、彼はプロテインで免疫系を高める。チョコレートケーキはそのプロテイン摂取のために食べるのだ。

アハマット氏は貧しくて薬に手が出ないわけでも、エイズに関して非主流論者で薬が毒だと信じているわけでもない。気が触れているわけでも、自殺願望を抱いているわけでもない。ネルソン・マンデラの言葉を借りれば、彼は国民的英雄なのだ。この極普通の男の、人並み外れた、命がけの決意が無数のアフリカの命を救おうとしているのだ。

先週、ジョハネスバーグで開催されたレセプションで、元大統領がアハマット氏に向き直り、カメラの見守る中、ARVを勧めた。「薬を飲むと、この老人と約束してくれはしないか。」いつものようにTシャツとジーンズ姿の英雄は「No」と答えた。彼がこうした申し出を断るのは初めてではなかった。

数日後、ジョハネスバーグ近郊の庭でケーキをほおばりながら彼は薬を拒む理由を語った。「個人的な、良心の問題だよ。私は中産階級に生まれてきた。仲間たちは労働者階級だ。HIVに感染したのが彼らだったら、薬に手が届かない。」

12年前にAIDSを引き起こすHIVに感染していると診断され、余命六ヶ月と言い渡されて以来、アハマット氏は自らの命を政府に抗う武器としてきた。生涯権力を相手取ってきた彼だが、ANC(アフリカ民族会議)の仲間達や、ともに選挙を闘い抜いたムベキ大統領と対立することになろうとは思いも寄らなかった。

この戦いが命を賭したものとなることに懸念を抱いているのはマンデラ氏だけではない。数ヶ月前、40歳のアハマット氏が息も絶え絶えになりつつも、友人らの「薬を」との頼みを拒んだとき、南アフリカの国中が、彼を追悼する覚悟をした。

彼は死を免れ、回復どころか太りさえした。でも、時折手が震え、疲れやすくなった。「自分のしていることを他人に勧めようとは思わない。それに、これ以上、こんなことをする必要もないよ。」

その必要がなくなったのは、彼が議長を務めるトリートメント・アクション・キャンペーン(TAC)が戦いに勝利を収めつつあるからだ。製薬会社が薬価を下げ、政府がARVの処方を約束したのだ。ただし、この約束が果たされるまで、アハマット氏は薬を飲まない。

長きにわたり法廷、病院、閣議で繰り広げられたこの戦いは筆舌に尽くし難い。しかし、何より異彩を放つのはアハマット氏自身の波乱に満ちた生涯だ。十代にして服役を強いられた反逆者、売春を生業としたこともあるゲイの指導者が、いまやある人びとにとっては救世主なのだ。

その人生のピークでアハマット氏が当惑しているのがジョハネスバーグでは見て取れた。700人の医師、企業幹部、ジャーナリストがスタンディングオベーションをおくる中、彼はぎこちなく足を引きずって歩き、やわらかだが早口のケープタウン訛りで、多くの人々、とりわけマンデラ氏が戦いに加わったことを述べた。

この戦いには、莫大な数の命がかかっている。少なくとも450万の南ア国民がHIVに感染しており、他のどの国よりも感染者が多い。36万人に上る昨年の死亡者数も、これから訪れる働き盛りの世代を奪い、何百万もの子どもたちから親を奪う、死者急増の前触れに過ぎない。

類を見ない、複雑な危機である。数十年におよぶアパルトヘイト(人種隔離)政策に蝕まれた社会と経済が厳しい打撃を受けるのは当然のことであった。しかし、ここまでひどく痛めつけられるはずではなかった。約7万人の新生児がHIVを持って生まれるジョハネスバーグでは、死体を安置する場所が不足している。伝えられるところでは、廃坑を埋葬所として使用することが検討されている模様だ。

ムベキ大統領は、HIVをエイズの原因ではなく利益を追求する薬品会社の陰謀だとみなしたことで、国家のウィルス対策の足を引っ張ったと非難されている。毒性が強すぎるとして、ARVをはじめとする薬品の処方を禁じたのだ。

1999年、6月の大統領就任当時は、アハマット氏がムベキ大統領の政敵となるとは思いも寄らないことであった。衣服職人の母と家具職人の父との間に生まれた混血児、ザッキ―・アハマットの政治活動は、アパルトヘイト教育に対する蜂起の最中、自分の学校に放火したことに端を発する。このとき、彼は14歳だった。

暴力と混乱の時代、塀の外では、道端や他人のベッドで夜を明かした。保守的なイスラム教徒の家庭に生まれた彼は言う「そう、私はセックス・ワーカ―だった。隠したことはないよ。」

HIVに感染している、と診断されたのは1990年、公然活動に登場し、トロツキストから社会民主主義へと転換した時だった。「医者は余命六ヶ月といったんだ。家に帰ってフイルムを撮りまくったよ。映画を撮影するのが夢だったからね。だが、病状は悪くなるどころか、快方へと向かったんだ。」

小康状態を保ちつつ、アハマット氏はゲイ・ライト・キャンペーンに精を出し、ウェスタン・ケープ大学の英語学位を取得、そしてマンデラ氏がANCの指導者の座を退く際、その後任にムベキ氏を据えるべく活動した。「彼は良き指導者になると思ったのさ。」

1998年11月、日和見感染症の口腔カンジダ症にかかり、病状が深刻化。炎症に体重激減、食べ物を飲み込めなくなった。友人らが資金を募り入手した薬で命を取り留めた。

その後、医師にARVの永続服用を勧められるが、この頃ちょうどムベキ大統領のエイズ政策というより失策が問題となった。「はじめは、具合も悪かったこともあって投薬を承諾したが、少し考えてやっぱり断ったよ。」彼がともに育ってきた人々が同じ病に倒れても、薬を買ってくれる中産階級の友人はいない。自分だけが特別でいいはずないと思った。

TACは法的かつ倫理的論戦を挑み、多国籍製薬企業に南アが特許薬の安価なジェネリック薬を輸入することを承認させた。ついに、延命治療薬が数百万のエイズ患者に行き渡るという希望がみえてきた。

しかし、戦いはまだ終わってはいない。ムベキ大統領がHIVの母子感染を半減させるネビラピンなどの薬を公的機関の手から遠ざけたのだ。

「主な問題は政治的意志の欠如にある。」とアハマット氏は言う。「どうして大統領はこんなことするのか」―笑顔でスプーンを弄びながら続ける―「あいにく、存在しない神に答えは見出せない。われわれ人間が答えにたどり着くことはないよ。」

ムベキ氏がエイズの原因についてあれこれ言うのは、非主流論者にそそのかされたせいだという説やARVを購入するとなると国庫にかかる負担が余りに大きいことに腹を立てているのだという説が行き交うが、 アハマット氏の見解はというと―「大統領はアフリカでセックスが盛んに行われていると信じたくないのさ。」

理由はどうあれ、TACは政府の申し立てるあらゆる異議に反論し、資金についても正しい使い方をすれば現状のままで十分な措置ができると主張している。ムベキ大統領は活動家との対談は避けたものの、今年はじめにマンデラ氏が病状悪化で自宅に伏せるアハマット氏を訪ねてからというもの、公式な中傷は控えている。

「非常に苦しい立場にあった我々を援護してくれたのさ。私たちのためだけにじゃない。ネルソンは政府に楯突こうなんて思っちゃいないよ。ただ、正しい事をしたいと思っているだけさ。」感謝しつつも、アハマット氏はこの老人の薬を飲んでくれと言う頼みを二度とも断っている。

国際的な非難に方向転換を強いられ、今年(2002年)4月、南ア政府は、(公共医療機関への)ARV供給を約束するに至った。アハマット氏によれば役人が大統領を恐れ未だに薬の出回っていない州もあるというが、問題は薬の件だけではない。看護婦や医師の育成や検査の奨励など、他のアフリカ諸国に出遅れた国家レベルのエイズ対策が必要なのだ。

ごく最近、TACは政府の公約履行の動きを認めて批判の声を緩めてはいるが、2月のデッドラインまでに本質的な変化がなければ反政府運動が展開されることになっている。

(TACの)議長にとって、この闘いへの関与はもやは個人的な問題ではない。 納得して薬を飲む条件を尋ねると、彼の体はこわばり、笑顔は消えた。「そのときがくればすぐに。」―計算されたあいまいな答えが返ってきた。彼の死は政府にとって国際関係上大きなダメージになる。この次に彼が倒れれば、おそらく死にいたるということは政府も心得ているところだ。その死によって彼の称号は反逆者から殉教者へと変わるであろう。

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