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アフリカに関わる活動を行っているNGOのデータベースおよびアフリカのエイズ問題に関するニュース・情報データベースです。
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(特活)難民を助ける会コーディネイター・志沢道子さんインタビュー
エイズと共に生きるコミュニティづくり 〜ホーム・ベイスド・ケアからの出発〜

 ジンバブウェの北にあるザンビア共和国は、ジンバブウェと同様、HIV/AIDSの蔓延に悩まされています。かつて、銅の生産が世界でも5本の指にはいるほどだったこの国は、銅価格の長期に渡る低迷で経済的苦境下にありました。そこに追い打ちをかけたのがエイズでした。しかし、ジンバブウェ同様、ザンビアの人々もエイズに打ちひしがれているだけで はありません。厳しい状況の中でも、疫病に前向きに立ち向かっていこうという意志が、首都ルサカ全体に広がるホーム・ベイスド・ケアの組織網として結実しています。ザンビアで「(特活)難民を助ける会」コーディネイターとして長期間、活動してきた志沢道子さんに、ザンビアにおける、エイズを巡る人々の活動のあり方について聞きました。

ルサカのホーム・ベイスド・ケアのしくみ

事務局:ザンビアでもエイズの問題が深刻化していると聞きます。志沢さんは「難民を助ける会」のスタッフとして長期間、ザンビアで活動してこられましたが、ザンビアでは、市民レベルでエイズに対する活動は行われているのでしょうか。

志沢:もちろんです。特に、ザンビアの首都ルサカでは、エイズ患者・HIV感染者に対するホーム・ベイスド・ケア(以下、HBC)の活動がとても盛んです。

事務局:ルサカでのHBCの活動は、キリスト教会が母体になっていると聞きましたが。

志沢:そうです。ザンビアはキリスト教国で、カトリックの力が強いのです。ですから、HBCも主にカトリック教会が作っている組織がもとになっています。しかし、たとえば資金の面でみても、カトリック教会だけに依存することなく、各地域のHBCプロジェクトが独自にドナーの確保を行っています。

事務局:HBCはどのようなしくみで行われているのですか?

志沢:まず、ルサカ市内だけで22のHBCがありますが、それぞれに、経験を積んだコーディネイターがいます。このコーディネイターは有給で、HBCに参加する人達の中から選ばれ、運営をリードしていく存在です。そのもとに、専門的なスタッフとして、2〜3人のナースと、だいたい1〜2人のカウンセラーが置かれています。ナースは引退した看護婦さんなどがなっていることが多いです。また、カウンセラーは、一定の期間、講習を受けた人がなっています。HBCの主役といえる人たちは、ひとつのグループに数十人置かれているケア・ギヴァーズ care givers と言われる人たちです。このケア・ギヴァーズの多くは女性で、近所の世話焼きおばさんといった人たちです。この人たちが一定のトレーニングを受け、毎日、患者・感染者の人たちの家を訪問するのです。ケア・ギヴァーズの人たちのかなりの割合が、夫を失った女性です。この中には、夫をエイズで失った人たちがたくさんいます。夫を失った悲しみが、彼女たちの精力的な活動の原動力なのかも知れません。

ルサカ全体を覆うホーム・ベイスド・ケアの網

事務局:ケア・ギヴァーズと他のスタッフはどのように連携をとっているのですか?

志沢:さきほど触れたように、ケア・ギヴァーズは、毎日患者・感染者たちの家を訪問します。そして、訪問した患者・感染者たちと会話したり励ましたりしながら、その人たちの様子を観察します。もし、そこで体の調子がおかしいというようなことがあったら、ナースに連絡するわけです。そうすると、今度はケア・ギヴァーズと一緒にナースが家庭訪問をすることになります。

事務局:ナースは、患者・感染者たちに対してどのような医療を提供するのですか?

志沢:ナースの家庭訪問で提供できるのは、ビタミン剤や、日和見感染に対する薬、たとえば真菌感染に対応するための抗真菌剤(antifungus)などの薬です。HIVに対して直接作用する薬は、現在のところルサカの大学病院で限定的に用いられているのみで、普通の人達の手には届いていません。ナースの家庭訪問で対応できない場合は、紹介状を書いて病院に紹介することになります。

事務局:カウンセラーはどのような仕事をするのですか?

志沢:カウンセラーが担うのは主に心のケアです。たとえば、体調が悪くなった人がいて、AIDSを発症したのではないかという場合、自発的に検査を受けてもらう。ただ、検査で陽性とわかった場合、それは抗HIV薬を入手するのがきわめて難しい現状では「死の宣告」のようなものですから、その後、精神的なケアが必要になる場合が多いのです。

 検査で結果が出た後の精神的なケアがカウンセラーの仕事のひとつです。

事務局:患者・感染者が自らケア・ギヴァーズとして働く、といったことはありますか?

志沢:もちろん、ケア・ギヴァーズの中に感染している人はいると思います。しかし、今のところ、自ら陽性であることを明らかにしているケア・ギヴァーズは私の知る2、3のHBCの中では出会っていません。タブーの問題が影を落としているのだろうと思います。

事務局:ひとつのユニットで、どのくらいの数の人のHBCを担っているのですか?

志沢:およそ120人〜500人です。私が関わっていたあるHBCユニットでは、毎月8人〜20人の患者さんが亡くなっていきます。もちろん、エイズ以外の理由で亡くなる方もいますが、病状から判断して、大多数はエイズによる死です。

ホスピス、所得創出、エイズ孤児救援など多角的な活動も展開

事務局:それ以外に、ルサカで行われているエイズに関する民間の活動としてはどんなものがありますか。

志沢:紹介したいものとして、あと3つあります。このHBCと関連して、ルサカにはホスピスが三つあります。これらのホスピスは、篤志家や国際NGOの支援で運営されていますが、HBCの活動の一部としてケア・ギヴァーズたちもボランティアとして参加しています。

 もう一つは、ケア・ギヴァーズの人たちも生きていかなければなりませんから、ケア・ギヴァーズたちの所得創出というのがあります。このために、私が関わっていたあるHBCでは、マッシュルームを育てて出荷する、というプロジェクトを開始しました。これについては、「難民を助ける会」も支援し、ある程度の所得創出まで可能になっているところです。

 最後に、エイズによって親を失った孤児に対するサポートがあります。ザンビアには膨大な数のエイズ孤児がおり、いまや家族・親族などによる引き受けも間に合わない状況です。ただでさえ貧しい親戚の家庭に引き取られたエイズ孤児たちは、学校に行くこともできず、ストリート・チルドレンになるケースも多いのです。こうした孤児たちのためのサポートが地域単位で行われており、それをたとえばUNICEFやNGOが支援しています。サポートの結果、あるHBCのユニットでは、6名のエイズ孤児たちをコミュニティ・スクールに通わせることができるようになりました。ザンビアでは、公立学校でもいろいろと出費が必要なため、もっとも貧しい人々は子どもを学校に行かせることができません。そのため、こうした子どもたちのために、地域にコミュニティ・スクール(未公認学校)というものがたくさん設けられています。コミュニティーの住民によって運営される、一定のカリキュラムが設けられた寺子屋、私塾のようなものと考えればいいでしょう。 また、孤児を引き取っている大人(ガーディアン guardian という)たちの集まりを設け、彼ら・彼女らの意識を啓発するということも行われています。孤児の環境を改善するには、ガーディアンたちの所得創出も必要なのですが、一般的に言って、所得創出を目指した事業は成功例が少ないようです。

ルサカには抗エイズ治療を行う土壌はある

事務局:お話を聞く限り、コミュニティを基盤にしたエイズに対する活動は、非常に積極的に行われているのですね。政府セクターは、それに対してどのような関係を持っているのですか。

志沢:政府は主に公立の医療セクターを中心に、こうした民間の動きと連携しています。ルサカ市内はもちろん、全国に数多くの公立クリニックが設置されています。各クリニックにはメディカル・プラクティショナー(医師ではないが一定レベルの治療行為ができる)がいます。また、大きな公立病院が全国主要都市にあります。病院やクリニックの数や患者のレファレンス・システムという点だけを見れば、ルサカの医療インフラは整っているように見えるかもしれません。地域での民間のHBCでも、患者・感染者の人たちの体調が悪くなれば、こうしたクリニックや大きな公立病院に頼ることになりますから、連携は自然とできている、という感じはします。しかし、ザンビアの医療セクターは常に資金不足で、必要な医薬品がないために十分な治療ができないといったことは日常茶飯事です。

事務局:HBCのネットワークができており、また公共セクターによる医療インフラも一定整備されている、というのであれば、抗エイズ薬の導入によるエイズ治療プログラムの開始といったことも不可能ではないのではないか、というふうにも思いますが、どうでしょうか。たとえば結核のDOTS(直接監視下短期化学療法:結核患者を直接訪問して服薬指導を行い、短期間で治療効果を上げる)などは行われていますか?

志沢:同じHBCのシステムで「DOTS!」と大書したTシャツを着たスタッフが結核のDOTS戦略を進めています。結核の薬は、ザンビアでは1クール分は無料でもらえるので、これは効果が上がっているようです。そういう意味では、コミュニティーレベルで存在するシステムをうまく利用することで、抗エイズ薬の導入によるエイズ治療を導入するための土壌を作っていくことは可能かもしれません。

予防啓発:カトリック的アプローチの是非

事務局:ちょっと話は変わりますが、こうした地域活動がきちんと行われているのであれば、予防啓発などもこうした枠組みをベースに展開することができるのではないかと思いますが。

志沢:そう、このカトリック教会をベースにした枠組みの中で、予防啓発のワークショップなども積極的に行われています。5日間くらいのコースになっていて、ターゲット・グループ別に精力的に行われています。私が関わっていたあるHBCでは、たとえばティーンエイジャー、20代の男女、夫婦などのターゲットグループを対象にした予防啓発ワークショップを実施していました。また、「夫を失った女性」と「妻を失った男性」を対象にしたワークショップもありました。特に一家の稼ぎ手である配偶者を失った家庭では、経済苦から売春をしたりすることが多く、ターゲット・グループにする意義は十分にあります。ワークショップでは、だいたい30人くらいの人が集まって、おやつの軽食と昼御飯が出るのを楽しみにセッションに参加するという形です。歌あり、踊りありと、いろいろな表現手段が使われます。みんなで創作劇を作って演じるといったプログラムもあります。残念なことは、行動変容のメッセージがカトリック教会の考え方に一定偏ったところがあり、たとえばコンドームの普及に積極的でなかったり、性行動の抑制や純潔といった、いささか非現実的なアプローチが使われたりしているということです。せっかく大きな規模で、必要なことをやっているのにもったいない、という気持ちになります。

事務局:患者・感染者自身による運動は展開されているのですか?隣国のジンバブウェでは、患者・感染者の運動が積極的に行われていると聞きましたが。

志沢:患者・感染者自身の運動については、残念ながら詳しく存じません。しかしもちろん患者・感染者自身が作っているNGOは存在しているようです。こうしたNGOは、当事者同士の相互扶助を中心に行っているのですが、小規模なものが多いようです。これはあるHBCのコーディネーターから聞いた話ですが、患者・感染者の場合、短命で亡くなってしまうことが往々にあり、また、病状が進行すると身動きがとれなくなってしまうので、なかなか団体として大きくならないのだ、とのことでした。

農村地帯での活動が課題

事務局:ルサカ以外の地域では、エイズに対する活動はどのように行われているのですか。

志沢:ザンビアの中心は、ルサカから北に向かい、コンゴ民主共和国との国境の西側に沿って分布するコッパーベルト地帯です。また、国際的な交通ルートとしては、タンザニアの方に抜ける鉄道路線と道路、また、ルサカからビクトリア・フォールズ方面を通ってジンバブウェに抜けていく道路網があります。こうした地帯では、国際NGOなども入っており、積極的にエイズに関する活動が行われています。たとえばジンバブエへ向かう国道沿いでは、ワールド・ヴィジョン・ジャパン(大規模な国際NGOのひとつ)がJICAとのパートナ―事業として長距離運輸労働者や国境ポイント周辺の町の住民への予防啓発プロジェクトを展開しています。一方、農村地帯では、エイズに関する活動の展開はまだまだ限定的なようです。エイズが未だ「死病」であり、感染すれば「死の宣告」を意味するという状況で、かつ必要・適切な情報が普及されないため、当然のことですが、スティグマが非常に強化されます。また、一夫多妻制といった伝統的な習慣・文化が根強く残っているところで、エイズに関する活動をしていくのはなかなか難しいと言えます。農村地帯でのエイズに関わる活動は、ザンビアのこれからの課題だと言えるでしょう。

事務局:先日、ジンバブウェのエイズNGOで活動されていた方のお話を聞き、ジンバブウェの人々は真剣にこの流行病に立ち向かっているのだということを改めて知り、私は非常に強い印象を受けました。今日のお話で、ザンビアでも、ジンバブウェと同様にHBCを中心とする患者・感染者のサポートがコミュニティレベルで非常に強力に行われていることを知りました。キリスト教会の力がより強力であったり、患者・感染者自身による組織化はあまり行われていないなど、ジンバブウェとは異なった状況がザンビアにはありますが、ザンビアの人々がエイズという状況に対して自分の運命を変えるために立ち向かっているということを改めて知ることができ、大変有意義でした。今日は本当にありがとうございました。(2002年8月24日、東京駅にて)

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