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ダーバンからバルセロナへ
全てのHIV感染者への治療実現を

MSFがバルセロナ世界エイズ会議に向けて公表したパンフ「From Durban to Barcelona: Overcoming the Treatment Deficit」(ダーバンからバルセロナへ 全てのHIV感染者への治療実現を)の紹介です。
原文はhttp://www.accessmed-msf.org/prod/publications.asp?scntid=18720021525252&contenttype=PARA&をご覧下さい。

2002年7月

アフリカ日本協議会感染症研究会訳(この翻訳は、感染症研究会が独自に行ったものです。内容への疑義・助言はinfo@ajf.gr.jpへお願いします。)

目次

  1. 多くのHIV感染者が治療を受けられないでいる
  2. 途上国においてもエイズ治療は実現できる
  3. いくつもの声明が出された、だが実行されたことは僅か!
    政治的意図が適切な資金供与に結びついていない
  4. 資金が供与されないため、「治療か、予防か」の誤った二者択一を迫られる
  5. 現状を超える
  6. 公平なアクセス 薬価をめぐる競争の必要・ジェネリクス薬の存在意義
  7. 以下、未訳
  8. 厳しい環境でも実施しうる治療法を 簡易化された治療法の必要性
  9. 提案一覧

    1 序

    HIV感染者の95%は途上国で暮らしている。毎日、数千の人びとが延命を可能にする抗エイズ薬による治療を受けられないために、死んでいる。途上国で暮らすエイズ患者への治療は、選択の対象ではなく、必要なことなのだ。途上国で抗エイズ薬を使った治療は困難だが実現できることを、私たちは知っている。世界各国の政府そして国際社会は、途上国でのエイズ治療をさらに拡大するために、抗エイズ薬を含むエイズ治療薬の薬価引き下げ、資金供与の拡大、使いやすい薬剤・薬剤パッケージの導入、限られた資材で治療を進め・ケアを行う療法確立のための調査実施や支援に取り組まなくてはならない。この文書は、PWA(HIV感染者)がより長く健康な生活を送ることができるよう、エイズ治療を拡大するために必要な取り組みの概略をまとめたものである。

    エイズは現代世界で最も大きな被害をもたらす感染症であり、思い切った対策を早急に取らなくてはならない。ダーバン会議以降、エイズに対する取り組みに進展はあったが、とても十分とは言えない。日ごとに8000人以上がエイズのために命を失っているという現実の前で、沈黙を保つことも、控えめであることもできない。治療を受けることを渇望している全てのPWAに、効果的な治療を実現するために一丸となって奮闘しなければならない。

    2 多くのHIV感染者が治療を受けられないでいる

    「全てのPWAに対するエイズ治療は不可能だし、あまりにも費用がかかりすぎて実際的ではない、と言う声がある。現に抗エイズ薬を使ったエイズ治療を受け活発な活動を行っているカイエリシャのPWAたちに向かってまで、こうした声を投げかける人がいるだろうか?今、私たちが取り組まなくてはならないのは、第二、第三のカイエリシャを現実のものとしていくこと、そしてまた、こうしたパイロット・プログラムの成功をスケール・アップした取り組みのモデルとしていくことである。」

    (チトー・オーガスト医師、南アフリカ共和国ケープタウン近くのカイエリシャ・タウンシップで働いている)

    「重要なことは、どこかで始めることだ。私たちは一度に全ての場所で取り組むことはできない。そのことが、何もしない理由にはなりえない。」

    (ジャンヌ・ガピヤさん、ブルンジのHIV・ポジティブ、エイズ患者支援全国協会会長)

    2年前、抗エイズ薬(ARV)を使うエイズ治療の費用は一人当たり年間1万米ドルから1万2000米ドルで誰もが受けることができるものではなかった。MSFは、その状況を打ち破るために、抗エイズ薬治療の費用を一人当たり年間200米ドルにすることを目標として立て、取り組みを開始した。2年を経て、この目標はほぼ達成されにもかかわらず、途上国に住む治療を必要とする人びとの96%は、未だ抗エイズ薬を使った治療を受けられないでいる。富んだ国に、エイズ治療に革命をもたらした三剤カクテル療法が出現してから6年経って、途上国の治療を必要とする人びとのわずか4%しか、治療を受けていない。このような状況をどのようにして打ち破っていくのか?

    この7月、世界保健機構(WHO)の見積もりによると、途上国では抗エイズ薬治療を必要とする600万人のエイズ発症者のうち23万人しか抗エイズ薬治療を受けていない(UNAIDSによると、世界中に4000万人のHIV感染者がおり、そのうち95%が途上国で暮らしている)。しかも、治療を受けている人びとの半数は、ブラジルにいる。すなわち、途上国で暮らす570万人以上のエイズ発症者、緊急に治療を必要とする人びとの96%が、治療を受けられないでいるのだ。

    すぐにも治療を必要とする570万人、そして数年のうちに治療が必要になる数百万人に対する治療を実現するために、治療法の適合と必要な費用拠出のために協調して計画された努力が必要である。

    3 途上国においてもエイズ治療は実現できる

    途上国における抗エイズ薬服用を続けながらの延命治療が実現可能であることは、以前から明らかにされてきた。ブラジルでは、PWAに対して治療を実施することでエイズを「死刑宣告」から慢性病へと変えてしまった。ブラジル保健省が2001年に明らかにした「国家エイズ戦略(性感染症・エイズに関する国家的プログラム http://www.aids.gov.br/assistencia/aids_drugs_policy.htm)」によると、全ての対象者へのエイズ治療が実現したことで、エイズによる死者は1995年から1999年の間に54%減少した。

    アフリカ、アジアそしてラテンアメリカ諸国で実施されたパイロット・プロジェクトの経験も、抗エイズ薬治療によって臨床的な成果があっただけでなく、個々人の生活と共同体に大きな影響が与えられたことを明らかにしている。

    MSFはこの2年間に、7カ国で9つの治療プロジェクトを開始し、2002年7月時点で、ほぼ1000人の患者が治療を受けている。来年、MSFはプロジェクト数そして対象とする患者数を大きく増やす計画である。MSFのプログラムは、保健行政に取って代わろうというものではない。PWAの生活を改善し延命をはかり、そうした取り組みを通して得られた経験が国家的なプログラムが確立され広範に実施されることに寄与することを願ってのものである。

    バルセロナで開かれる第14回世界エイズ会議において、南アフリカ共和国、マラウイ、ケニア、カメルーン、カンボジア、タイそしてグアテマラで取り組まれているプロジェクトで得られたデータが提示されることになっている。MSFのプロジェクトでは、かなり進行したエイズ患者(患者684人のCD4細胞数の中央値は48 cell/mm3)がプログラムの対象となり、貧しいタウンシップの診療所、農村の診療所、町中あるいは都市部の病院の外来病棟といったさまざまな医療条件の下で治療を受けている。対象となった743人の患者の6カ月生存率は93%となった(詳しくは、‘Time to Treat: Transforming AIDS Treatment from Right to Reality’, Satellite Meeting Co-sponsored by Medecins Sans Frontieres (MSF) and Health GAP (Global Access Project), July 7, 2002, XIV International AIDS Conference 2002, Barcelona.で報告される)。6カ月で、体重測定を受けた228人の患者は平均して3キロ体重が増加し、200人の患者のCD4細胞数は平均で104 cells/mm3増加した。治療を受けている6カ月間、系統だってウイルス量測定を行った3つのプロジェクトでは、118人の患者の82%の血中濃度が100 copies/ml未満、すなわち測定不可能となった。

    患者たちの治療指示遵守(コンプライアンス)も印象的で、患者の95%が6カ月、指示に従って治療を受け続けた。「患者たちが生き延びていることに不思議はない。何よりも、抗エイズ薬が効果があるのは判っていたし、また、不安を表した人たちもいたが、患者たちが継続してきちんと服薬することができるという確信も持っていた。それでも、患者たちが自覚的に、診療所で受けた指示を守り服薬を続けたことは、非常にうれしかった」と、MSF感染症対策本部・ジャン・ミシェル・タッシー博士は語っている。

    MSFのプロジェクトそしてまた途上国での他の取り組みは、限られた資材しかない国々においても公的保健医療の仕組みを通して抗エイズ薬治療を実施することができることを明白に示している。これらのプロジェクトを再現可能にするために、MSFはエイズ治療薬の薬価を可能な限り引き下げ、また人的資源を含めすでにある能力を最大限発揮しようとしてきた。たとえば、いくつかのプロジェクトでは、検査技術者は顕微鏡を使うDynabeadsィ technologyでCD4細胞数チェックを行い、高価な血球検査装置と熟練を不要にした。

    4 いくつもの声明が出された、だが実行されたことは僅か!

     政治的意思が適切な資金供与に結びついていない

    一部の途上国は、予防およびケアプログラムを増やし、国際社会の協力を得ながらケアを必要とする人びとを対象とした取り組みを進めている。別のいくつかの途上国では、地域のNGO、全国的NGOが被害を軽減しようと努力をしている一方で、政府は日和見感染症の治療も抗エイズ薬治療も組み込まないエイズ戦略を立て国家的な仕組みを作ろうとし続けている。劇的な変化は、政治的意思、資金確保、ヘルス・ケア・システムの強化と安価な医薬品の相当量の確保とがかみ合った時にだけ実現されてきた。ブラジル、カメルーン、ウガンダ、ボツワナ、そしてタイはこうした変化の実例である。東欧や中米の一部の国々のように、協調して計画された努力と十分な国際的支援によって、低中位の感染率にとどまっていた多くの国々は、感染拡大に向かっていきそうだ。一方で、HIV/AIDSが特定地域・集団の病気に留まっていた多くの国々は、治療実現向け独自の目標を立てつつあるが、資金不足のため計画達成に至らない。

    一連の政治的意思表明

    ・2000年7月 G8沖縄サミット
    我々は、最優先の取り組みを必要とする疾病が何であるか、さらに現在の保健医療の諸課題を解決しうる基本的なテクノロジーがすでに実施可能な状態にあることについて、幅広い領域において合意を得た。このことを踏まえ、我々自身がこれまで以上の資金確保の努力を行うこと、および、すでにある、主要な医薬品、ワクチン、治療法、予防法を含む費用対効果の高い対策が、途上国においてさらに広範に実現しうる低廉なものとなるよう働きかけることを約束する。(参照:http://www.g7.utoronto.ca/g7/summit/2000okinawa/finalcom.htm

    ・2000年9月 欧州委員会「治療実現」会合
    EUは、「貧困削減の一環としての主要な感染症を対象とした取り組みの強化」に関する新しい声明を採択した。(参照:European Commission DG Development press release, Brussels 28 September 2000)

    ・2000年4月 OAUアブジャ・サミット
    我々は、年間予算の少なくとも15%を保健分野の改善・強化に当てるという目標を定めることを、約束する。(参照:http://usinfo.state.gov/topical/global/hiv/01050401.htm

    ・2001年6月 国連エイズ特別総会
    コフィ・アナン国連事務総長は、世界基金の創設を表明し、富裕国、財団、企業、個人に対し年間70億ドルから100億ドルの資金提供を求めた(ハーバード大学の研究によると、エイズ対策だけで年間100億ドルが必要と見積もられている)。

    ・2001年7月 G8ジェノバ・サミット
    指導者たちは、数年にわたって年間15億ドルを世界基金に拠出することを約束した。

    ・2001年11月 第4回WTO閣僚級会議
    公衆衛生の保護措置および全ての人びとの医薬品へのアクセス実現を明記する「知的所有権保護協定(TRIPS)と公衆衛生に関する宣言」が採択された。

    2000年7月から2002年7月までに、ハイレベル会合や政治声明が何度も繰り返された。政治的指導者たちが声をあげたことが、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)創設、そしてWHOおよびユニセフによる一連の効果的なツール開発(下記参照)につながったが、上述された約束の多くは未だ実現されていない。

    WHOおよびユニセフによる低廉なエイズ治療実現に向けた努力

    ・必須医薬品リストに12種類の抗エイズ薬を掲載
    WHOの必須医薬品参考リスト第12版(2002年4月 http://www.who.int/medicines/organization/par/edl/eml.shtml。追加された抗エイズ薬は、abacavir, didanosine, efavirenz, indinavir, lamivudine, lopinavir, nelfinavir, ritonavir low-dose, saquinavir and stavudine. Zidovudine およびnevirapineは母子感染予防用途ですでにリストに掲載されていた。現在ではこの2種類もHAART療法薬としてもリストに掲載されている)

    ・治療ガイドライン公刊
    「制約された医療条件の公共医療機関において抗エイズ薬治療を拡充していくためのガイドライン」“Scaling up antiretroviral therapy in resource limited settings: guidelines for a public health approach”(http://www.who.int/HIV_AIDS/HIV_AIDS_Care/Scaling_Up_ARV_Guidelines_Final_E.pdf

    ・WHOが数種類のジェネリクスのエイズ治療薬について品質保証
    「信頼できるエイズ治療薬確保のために:エイズ治療薬調達に向けたパイロット・プロジェクト」“Access to HIV/AIDS Drugs and Diagnostics of Acceptable Quality, Pilot Procurement Quality and Sourcing Project”(http://www.who.int/medicines/organization/qsm/activities/pilotproc/pilotproc.shtml April 2002)

    ・多様な調達先でのエイズ治療薬の詳細価格情報
    「PWAにとって信頼できるエイズ治療薬調達先と価格」“Sources and prices of selected drugs and diagnostics for people living with HIV/AIDS”(最新のものは、2002年3月のFourth Edition、WHO、ユニセフ、UNAIDS、GFATMのサイトで公開されている)

    GFATMが明らかにした基金の不足額は以下の通り。現在まで20億80万ドルの拠出(http://www.globalfundatm.org/files/Financial_contributions280502.htm)が表明されており、2002年に支出可能な額は7億ドルから8億ドル(The Global Fund: Which Countries Owe How Much? 21 April, Tim France, Gorik Ooms and Bernard Rivers. Available in publications section of http:www.accessmed-msf.org)にとどまっている。この額は、エイズのみが対象で必要とされる額の十分の一にも満たない(Attaran A, Sachs J. Defining and refining international donor support for combating the AIDS pandemic. January 6 2001, Lancet 357, 9249.)。主要各国の拠出額が、必要額に対してそれぞれの国が果たすべき割合とどれだけ照合しているのか、詳細に検討する価値がある。国連が算定した年間必要総額で各国が占めるべき割合と表明された拠出額を比較した最近の分析によって、国ごとに拠出すべき資金額に対する不足額が明らかになる(この分析では、年間必要総額は100億ドル、うち10億ドルは民間セクターから拠出されるものとされている)。G7および他の人間開発指数の高い国々を分析した結果、2002年には、スウェーデンとイタリアだけが算定された分担額の15%ないしそれ以上を拠出している。その一方、最も富裕な米日独3カ国は、分担額の7%以下しか拠出していない(前述のアッタランとサックスによる分析)。もし分析の対象とされた国々が90億ドルを拠出したとしても、各国のGNPのわずか0.035%にすぎない。

    また、多くの途上国の決意表明が具現化しても保険分野での支出が大きく増えるわけではない。途上国では、保険分野への支出が優先されておらず、また現在の危機の大きさに比して途上国の国内資金そのものが不十分なため、保健大臣たちは資金不足で身動きならないでいる。

    5 資金が供与されないため、「治療か、予防か」の誤った二者択一を迫られる

    「米国・欧州の公衆衛生専門家たちは、費用対効果を考えれば、予防に専念すべきだと主張する。しかし、彼らは、自らのコミュニティでエイズが猛威を振るい、すでに多くの人々が感染してしまっていても、やはり感染者が死んでいくのを見過ごしながら予防への専念を主張するだろうか?」(デイビッド・エバンス医師、MSFモザンビーク)

    「私の担当するエイズ患者に、人力車の車引きをしている人がいます。この患者を見て、費用対効果について改めて考えさせられました。以前、彼は、体が持たないので一日中仕事することができない、と言い、日に1.5米ドルの稼ぎしかありませんでした。ところが、抗エイズ薬を服用するようになってから、彼はフルタイムで仕事することができるようになり、4.5米ドル稼げるようになりました。この稼ぎで、家族を養うだけでなく抗エイズ薬の購入費用もまかなえるようになったのです(彼の服用する薬代は一日1米ドルにもならないのです)。」(キャサリン・キエット医師、MSFカンボジア)

    エイズ対策に投じられる資金が圧倒的に不足してきたため、限られた資金を何に使うのかをめぐる論争が続けられてきました。一部の論者は、予防への資金投与の方が治療にお金を使うよりずっと費用対効果があると主張してきました(Creese A, Floyd K, Alban A, Guiness L: 「アフリカにおけるHIV/AIDS対策の諸施策の費用対効果」Cost-effectiveness of HIV/AIDS interventions in Africa 359, 9318, 11 May 2002. Marseille E, Hofmann P, Kahn J 「サハラ以南アフリカではHAART療法ではなく、HIV感染予防への注力を」HIV prevention before HAART in sub-Saharan Africa. Lancet 359, 9319, 25 May 2002.)「アフリカにおけるHIV/AIDS対策の諸施策の費用対効果」と題された論文は、「公衆衛生に関する効用を最大限にするために、今後サハラ以南アフリカのエイズ対策に投入される資金は、感染予防の取り組みと日和見感染症の治療およびケアに投じられるべきだ」と主張しています。

    こうした主張は、すでに治療法があるにもかかわらずHIV感染者への治療を拒むという意味で、医師としての倫理を否定しているだけでなく、予防と治療を切り離しているという点で効果の程を疑わせるものです。なぜなら感染者に治療の機会を与えることが、感染予防の取り組みの効果を高める状況を作るからです。たとえば、マラウイで活動するMSFのチームは、「感染者が治療を受けられるようになったことで、感染の不安を表明することが可能になり感染者への差別意識を打ち破る道筋も見えてきた」と報告しています。治療の可能性が見えて、はじめて、人々はHIV感染への不安を明らかにし、多くの人々が、全ての感染予防の取り組みの重要なステップでもあるVCT(カウンセリングとHIVテスト、ケアを組み合わせた取り組み)を受け始めたのです。

    先進国では、経済的な分析である費用対効果研究を唯一の根拠に、保健・保障政策が定められることはありません。たとえば、避けることのできる死の50%が喫煙に起因しているという明白な証拠があります(European Heart Journal p 1434-1503, Volume 19, Number 10, October: 「臨床的見地から見た冠動脈疾患予防」Prevention of coronary heart disease in clinical practice. Second Joint Task Force of European and other Societies)。だからといって、心臓疾患治療に資金を投入せず、禁煙啓発活動にのみお金を使うなどということは考えられません。サハラ以南アフリカ諸国や他の途上国に、費用対効果理論に基づく政策決定を強いることは、はなはだしいダブル・スタンダードなのです。

    ブラジルでは、抗エイズ薬治療実施によって病院の負担が減り日和見感染症治療も減少したために、政府のエイズ対策支出総額が減少するという結果になっています。1997年から1999年までに支出が不要になった額は4億7200万米ドルにおよび、また14万6000入院日を避けることができた、というのです(National AIDS Policy, Ministry of Health of Brazil, National STD/AIDS Programme, Brazilia, 2001. http://www.aids.gov.br/assistencia/aids_drugs_policy.htm)。加えて、治療推進によって、エイズ孤児の発生が抑えられ、人々がより長く生き、また労働に耐えることができるので、コミュニティや企業の一員にとどまることができていることの大きな社会的経済的効用を無視することはできません。

    PWAへの延命治療実施を拒否することを正当化する論理には「費用対効果」がないからこそ、国際社会はこうした論理に与するわけにはいきません。また、途上国の医師たちが患者に対し、「効果的な治療法があるのだけれど、あなたは受けることができない」などと言わざるを得ないことになってはならないのです。

    6 現状を超える

    現在、途上国への抗エイズ薬供給を増やすために二つのアプローチが取られれています。一つは、世界的な製薬企業が参加している抗エイズ薬供給推進イニシアティブ(Accelerating Access Initiative;AAI)です。UNAIDSとWHOの協力の下で途上国がHIV/AIDS戦略を立案し、UNAIDSとWHOをファシリティターに、途上国と製薬企業が抗エイズ薬の薬価をめぐる交渉をする、という仕組みです。製薬企業はそれぞれに定めた規定に従って、途上国の状況を判定し、割引価格を提示するのです。途上国に提示される割引価格は、製薬企業によって大きなばらつきがあります。MSFのレポート「割引価格決定プロセスの謎(Untangling the web of price reductions; Pricing Guide for the Purchase of ARVs for Developing Countries, 2nd Edition, 26 June, 2002. http://www.accessmed-msf.org/prod/publications.asp?scntid=1872002161586&contenttype=PARA&.)」は、製薬企業ごとにどのような判定基準を設けているのかを詳しく説明しています。

    この製薬企業主導型の取り組みとは異なるアプローチが、すでに、ブラジル、タイ、カメルーンのような国々でとられています。これらの国々は、国内生産、ジェネリクス薬の並行輸入、そしてこうした選択肢を提示しての特許権を持つ企業との交渉などを通して、抗エイズ薬の薬価引き下げを実現してきました。

    AAIによって、一部の企業がサハラ以南アフリカ諸国へ供給する抗エイズ薬の薬価が系統的に引き下げられましたが、世界規模で見た時、このアプローチは特例措置にすぎません。こうした取り組みによって、かなりの数のエイズ患者がAAIで供給された抗エイズ薬による治療を受けることができるようなり、また世界市場で最も安価な抗エイズ薬を生産あるいは供給してきた国々が、さらに多くの人々を治療の対象とすることができるようになりました。この2年余りで、AAIの枠組みを通して11カ国が抗エイズ薬の供給を受けるようになり、2万7000人が治療の対象となっています(Accelerating Access - Summary Status for the 4th Meeting of Contact Group, 28th May 2002)。その一方で、ブラジル一国で11万5000人が治療を受けています。国がAAIによる割引価格で供給される抗エイズ薬ではなくきちんと品質の保証されたジェネリクス薬を使う方針を立てた方が、より多くの患者が治療を受けることができるのです。

    以下に、現行の三剤カクテル療法で使われる2種類の抗エイズ薬、AZT/3TCとネビラピンの薬価が、ジェネリクス薬と特許薬とで大きく違っていることを示すグラフを提示します。

    ブラジルそして南アフリカ共和国

    大きな国内市場と薬剤の製造能力を持つ国々にとって、コンパルソリー・ライセンス(強制特許実施)は、薬価引き下げのための大きな武器となります。2001年春、ブラジルは、ロシュの持つネルフィナビルの特許を無視して国内で生産すると通告しました。ブラジルが実際に生産に踏み切ろうとしているのを見て、ロシュは抵抗を止め、ブラジル政府に一人当たり年間2101米ドルでネルフィナビルを供給することを申し出ました。その時点で、ロシュが途上国あるいはアフリカ諸国向けに設定した最安価な供給価格は一人当たり年間3087米ドルでした(ブラジルへの供給価格はこれより32%安くなっています)。

    南アフリカ共和国で、MSFは医薬品管理評議会から特別に許可を受けてブラジル産のジェネリクス薬を使用し、三剤カクテル療法の費用を50%削減することができました(グラフあり)。同額の予算で倍の数のエイズ患者への治療が可能になったのです。南ア政府が他のジェネリクス製造業者をも対象として「公正価格」政策を施行すれば、さらに2.7分の一から3.5分の一に薬価は下がるものと見られています(Untangling the Web of Price Reductions: A Pricing Guide for the Purchase of ARVs for Developing Countries, 2nd Edition, 26 June, 2002. http://www.accessmed-msf.org/prod/publications)。

    しかし、南アでは抗エイズ薬に特許が設定されているため、薬価引き下げのためには、南ア政府が特許を持つ企業と交渉するか、コンパルソリー・ライセンスを行使するか、しなくてはなりません。南アではコンパルソリー・ライセンスに関する法的規定が整備されており、政府が決断すれば行使することができます。

    ところが、プロアテーゼ阻害剤を組み合わせるカクテル療法には、こうしたオプションがありません。というのは、まだプロアテーゼ阻害剤のジェネリクスがほとんどなく、特許薬の価格はAAIによる割引価格であっても大変高価だからです。プロアテーゼ阻害剤を含むカクテル療法がさらに広く実施されるためには、特許薬の大幅値下げが絶対に必要なのです。一部の企業は、他の企業よりも値下げを実施しています。たとえば、現在、2年間AAIに参加してきたロシュがネルフィナビルの価格として提示しているうちの最安値は、一人当たり年間2704米ドル(ロシュは2002年4月、最貧国およびサハラ以南アフリカ諸国向けのネルフィナビルの価格を2102米ドルまで値下げしたが、この価格は5500パック以上購入時にのみ適用される。5500パックは、これまでどの薬であれ実際に抗エイズ薬が購入された際の量を上回る量である)ですが、メルクの同クラスのプロアテーゼ阻害剤(インディナビル)の一人当たり年間価格は600米ドル(For a daily dose of 2,400mg for indinavir)であり、どちらを組み合わせるかで、年間コストは下記のグラフのように大きな違いが出てきます(グラフあり)。この2種の薬の副作用の特徴から、途上国向けにはネルフィナビルの需要がインディナビルを大きく上回っているが、ロシュの現在の価格が、この薬の使用を阻んでいるのです(インディナビルと併用するリトナビル促進剤を含む、年間費用計算は、WHOの「制約された医療条件の公共医療機関において抗エイズ薬治療を拡充していくためのガイドライン」“Scaling up antiretroviral therapy in resource limited settings: guidelines for a public health approach”(http://www.who.int/HIV_AIDS/HIV_AIDS_Care/Scaling_Up_ARV_Guidelines_Final_E.pdf)に基づく)。

    AAIのもう一つの限界は、特許薬企業の多くが、サハラ以南アフリカ諸国以外の途上国に対する明確な方針を持っていないことです。たとえば、ブリストル・マイヤーズ・スクイブはサハラ以南アフリカ諸国に対しては卸売り・小売りの際の割引価格を設定しています。しかし、同社は中米諸国の国家プログラム向けに大幅割引することを拒否しており、また恣意的な判定基準を設けて、途上国の取り組みに水を差しています。

    同様の問題が、診断薬・検査薬にもあります。検査費用に試薬の占める割合はかなり大きいのです。治療薬と同じように、これらの試薬は、一握りの限られた製薬企業しか製造していないため高価です。競争がないために、試薬製造企業は独占価格で販売しています。たとえば、ホンジュラスでウイルス量検査薬は、一人分で250米ドルかかります。大量購入価格で一人分が180米ドルです。ところが、グアテマラのグアテマラ市では、小パッケージで140米ドル、大量購入価格が70米ドルです。これらの数字を他と比較してみると、スイスのジュネーブでは、同じテスト薬が一人分141米ドルです。

    7 公平なアクセス 薬価をめぐる競争の必要・ジェネリクス薬の存在意義

    「25年前、国連児童基金(UNICEF)と協力者たちは、途上国で数百万の子どもたちに何種類ものワクチンを与える取り組みの中で、エイズとの闘いの中でも活用しうるモデルを開発しました。現在、UNICEFは、国連の機関が抗エイズ薬をまとめて購入し個々の国に配分するという仕組みの実現に向けて準備を進めています。私たちは、資金を集め、ワクチンを購入して各国に配分するための効果的な戦略を開発することができました。同様のアプローチがエイズとの闘いにとっても有効だと考えます。」(UNICEFキャロル・ベラミー事務局長)

    MSFは、薬の値段を継続して引き下げていくために、「公正なアクセス」アプローチを支持し、薬の値段が諸個人にとっても保健医療機関にとっても、妥当で、公正かつ安価であるように一連の施策が実施されることを求めます。公正価格は、貧しい人々が必須医薬品をより安価に入手できるという原則に基づいています。公正価格を確実なものとするために、途上国の患者・共同体・政府・国連諸組織そして新たに設けられた世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)は、競争と現地生産を通して、最も安価を提示する安定供給者の医薬品購入をさらに推し進めていく努力をしなくてはなりません。WHOとUNICEFは、医薬品の事前審査、大量購入そしてもっと安価な医薬品を使用できるようにするために特許の壁を超えるための支援などの、技術的な支援を担当するべきです。

    公正価格実現の重要な要素として、ジェネリクス薬による競争があります。実際に最も医薬品の価格引き下げに効果的だった戦略です。この2年間、ジェネリクス薬による競争と国際的な世論の圧力を受けて、繰り返し抗エイズ薬の価格引き下げを行ってきました。

    「公正なアクセス」アプローチの一環として、新薬の特別割引価格に関する明確なガイドライン、技術移転と国内あるいは地域内生産の拡大実現のための支援そして知的所有権が創り出す障壁に対して効果的な抗議の声をあげていく、といった取り組みが必要です。国連は、この「公正なアクセス」アプローチに対応する戦略の開発を開始しています。具体的には、途上国が求められた品質を満たす医薬品製造業者を特定するための医薬品の事前審査といった取り組みがあります(「信頼できるエイズ治療薬確保のために:エイズ治療薬調達に向けたパイロット・プロジェクト」“Access to HIV/AIDS Drugs and Diagnostics of Acceptable Quality, Pilot Procurement Quality and Sourcing Project”(http://www.who.int/medicines/organization/qsm/activities/pilotproc/pilotproc.shtml April 2002))。抗エイズ薬の大量一括購入や新薬の特別割引価格に関する明確なガイドライン作成など、安価な医薬品をさらに広範に使用することができるようにするためのリーダーシップも取っていかなくてはなりません。こうした仕組みができることで、抗エイズ薬供給の量的拡大を一挙に進めることができ、抗エイズ薬治療のコストを一人当たり年間50〜100米ドルへと急速に減少させることが可能になるのです。近年の経験から、このレベルの価格引き下げが可能なことが判っています。たとえば、3年間で、日和見感染症である髄膜炎や真菌症治療薬であるフルコナゾールの価格(「PWAにとって信頼できるエイズ治療薬調達先と価格」“Sources and prices of selected drugs and diagnostics for people living with HIV/AIDS”には、2000年から2002年までの各年ごとの調査に基づくフルコナゾール200mg錠剤の最低価格が記されている。この一覧によると、ジェネリクス薬製造業者が途上国向けに提示した価格、一錠当たり0.10米ドルが最低価格である)は84分の一になりました。下記の表にあるように、ワクチンおよび避妊薬も大幅な価格引き下げを実現しています。

    UNICEFによるワクチンほかの一括購入によって実現した価格引き下げ

              米国での小売価格    国連価格   比較率
    ポリオワクチン (一錠当たり)  $10.93      $0.087    125倍
    B型肝炎ワクチン(一錠当たり)  $24.20      $0.54     45倍
    経口避妊薬 (一周期当たり)   $30.00      $0.14-0.23  130-214倍

    公正価格実現に関わる措置

    事前審査
    審査能力のある医薬品管理機関を持たない途上国にとって、信頼できる品質のジェネリクスの日和見感染症治療薬を確保することは困難でした。そこで、WHOの事前審査システム(「信頼できるエイズ治療薬確保のために:エイズ治療薬調達に向けたパイロット・プロジェクト」“Access to HIV/AIDS Drugs and Diagnostics of Acceptable Quality, Pilot Procurement Quality and Sourcing Project”(http://www.who.int/medicines/organization/qsm/activities/pilotproc/pilotproc.shtml April 2002))が不可欠になります。ジェネリクス薬の品質確認システムを持たない途上国は、特許薬企業からプレミアム付きで医薬品を購入せざるを得なくなり、医薬品の価格は意図的に高いままにされています。事前審査によって、貧困国は世界的な医薬品市場で品質が保証された最も安価なオファーを受けることができるようになります。

    ライセンス供与、技術移転による地域内・国内生産
    今日、信頼できる品質の抗エイズ薬製造能力を、多くの途上国が持っています。ブラジル、タイは政府が製造機関を設けて抗エイズ薬生産に踏み切ったことにより、安価な抗エイズ薬の供給力を急速に拡大してきました。すでにある製造能力をさらに拡大し、必要ない薬品の生産を拡大する必要があります。特許権を持つ製薬企業が自発的なライセンス供与協定によって地域内生産を可能にすることもあり得ますし、もし、特許権企業が協力することを拒むのであれば、コンパルソリー・ライセンスの実施によって生産することも可能です。

    医薬品需要の集約と世界規模あるいは地域規模での一括購入の実現
    ワクチンおよび避妊薬に関する経験から、統一交渉による大量一括購入が大幅な価格引き下げにつながることが判っています。UNAIDSおよびWHOと協力して、UNICEFが抗エイズ薬の大量一括購入を取りまとめる重要な役割を果たすことは可能です。UNICEFはこれまでに資金集めとワクチン他の供給で実績を上げています。地域レベルで、まとまった量の一括購入を実現することも価格引き下げにつながります。

    このページには、stavudine (d4T) + lamivudine (3TC) + nevirapine (NVP)の組合せによる三剤カクテル療法の一人当たり年間費用が、この2年間でどのように変化した(減少してきたか)を示すグラフが掲載されています。もとのpdfファイルを参照してください。一部の数値を紹介します。

    特許権企業の価格
    2001年9月まで $10439
    2002年1月現在 $931
    2002年3月現在 $727

    Brazilの価格
    2001年8月まで $2767

    ジェネリクス薬製造業者
    Cipla 2001年2月現在 $350
    Hetero 2001年4月現在 $347
    Ranbaxy 2001年8月現在 $295
    Aurobindo 2002年4月現在 $209

    中米における地域的一括購入

    中米のPWAにとっては残念なことに、国連諸機関が発表したHIV感染率、人間開発指数に基づいて基準を定めたメルクを例外に、抗エイズ薬の特許権企業は、中米においては、ケース・バイ・ケースで割引を行ってきました。

    グアテマラおよびホンジュラスでは、ほとんどの抗エイズ薬が特許によって保護されていないため、MSFは保健省の許可を得て、パイロットプロジェクトでジェネリクス薬を使用し、特許薬に比して圧倒的に費用を削減することができました。

    しかし両国政府は、専ら特許権企業から抗エイズ薬を購入しているため、MSFよりも75%から99%高い価格で購入せざるを得ません。一例を挙げると、GSK(グラクソスミスクライン)は、グアテマラで、AZT/3TCを一人当たり年間4198米ドルで販売しています。それに対し、MSFはジェネリクス薬を一人当たり年間93%安い284米ドルで輸入しています。また、国家エイズプログラムはブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMS)からスタヴディンを一人当たり年間4416米ドルで購入したと伝えられていますが、MSFは99%安い45米ドルのジェネリクス薬を購入しました。

    UNAIDSおよびWHOは、これまでAAIを通して途上国が特許権企業と交渉することを支援してきましたが、やり方を変えるべきです。この2機関は、特許権企業はサハラ以南アフリカ諸国を対象に設定している割引価格を全ての途上国にも適用し、割引価格が一貫性を持つようにすべきと主張しなくてはなりません。また、ジェネリクス薬製造業者を国連が主催する価格交渉に参加させることも検討すべきです。

    「知的所有権保護協定(TRIPS)と公衆衛生に関する宣言」(ドーハ宣言)の活用を

    「TRIPS協定(詳しくはhttp://www.wto.org/english/tratop_e/trips_e/trips_e.htmを参照)は加盟国がとる公衆衛生の保護措置を妨げないことを合意する。」(ドーハ宣言、2001年11月)

    2001年11月、カタールのドーハで開かれた世界貿易機関(WTO)の第4回閣僚級会合で、TRIPS協定が医薬品へのアクセスにおよぼす影響めぐる国際的な議論に画期的な進展がありました。この会合に参加した142カ国は、途上国が強く求めた「知的所有権保護協定(TRIPS)と公衆衛生に関する宣言」(全文は、http://www.wto.org/english/thewto_e/minist_e/min01_e/mindecl_trips_e.htmに掲載)を採択し、公衆衛生の必要が商業的権益に優先することを明確にし、公衆衛生に関わるTRIPS協定の例外規定などをさらに明確に示すことが必要であると提示したのです(Ellen't Hoen, 「TRIPS協定、医薬品特許そして必須医薬品へのアクセス:シアトルからドーハへの長征」TRIPS, Pharmaceutical Patents and Access to Essential Medicines: A Long Way from Seattle to Doha. Chicago Journal of International Law, vol.3, no.1, Spring 2002.。)

    ドーハ宣言は効力のある政治的・法的文書ですが、この宣言を活用するためには、それぞれの国が公衆衛生を優先させた知的所有権法規を整備し、またもっと安価な医薬品供給につながるコンパルソリー・ライセンスを繰り返し行使することが必要です。

    一方で、米国や他の富裕国は、彼らも参加してなされたこの歴史的公約を、いくつかの方法で裏切ろうとしています。ドーハ宣言は、貧国国の医薬品へのアクセスを脅かす可能性を持つ問題を未解決のままにしています。2005年に、TRIPS協定が完全に施行されると、現在ジェネリクス薬を製造して他の途上国へも輸出しているインドやタイのような国々も、新しい薬についてはジェネリクス薬の輸出ができなくなるのです。これは、TRIPS協定がコンパルソリー・ライセンス行使を「主として国内市場への供給のため」にと限定しているためです。現在、アフリカ諸国で使われている抗エイズ薬の大半はジェネリクス薬です。しかし、2005年にTRIPS協定が完全に施行され、製造能力のある国々がTRIPS協定遵守に踏み切った時、自前で製造できない途上国は一体どうやって安価な医薬品供給者を見つけることができるのでしょうか?MSFは他のNGOと協力しながら、国内に製造能力のない国々の公衆衛生のためにコンパルソリー・ライセンスを行使してジェネリクス薬を製造・輸出することができるとの、例外規定を設けるよう働きかけています(See joint NGO letter to TRIPS Council (January 2002), available at http://www.accessmed-msf.org/prod/publications.asp?scntid=12220021732142&contenttype=PARA&)。しかし、米国もEUもこうした解決策に反対しているのです。それどころか、米国は、二国間交渉や米州自由貿易地域協定(FTAA)のような地域的貿易協定を通して、ドーハで得られた成果をひっくり返してしまおうと試みているのです。このことは、米国が掲げたFTAA協定交渉目的、たとえば、「米国はTRIPS-plus要件(TRIPS−plusは、TRIPS協定の定める最短期間である20年を超える特許期間、TRIPS協定が規定していないコンパルソリー・ライセンスの制限、そして早急なジェネリクス薬導入を可能にする例外規定の限定などを主張。これに対し、TRIPS協定が公衆衛生におよぼす影響が充分に評価されていないとして、WHOは途上国に、TRIPS協定の定める要件以上に厳しい要件を求める動きに警戒するよう、警告している)を導入するよう主張する」という条項に明らかです。この条項は、ドーハ宣言の精神と文言と直接背反しています。

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