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芦田崇さん(「ジンバブウェ・エイズ・ネットワーク」前情報統括者)インタビュー
〜正面からエイズに立ち向かう人々:「成人感染率30%」の現実の中で〜

2002年7月実施

HIVの蔓延がきわめて深刻な事態を迎えている南部アフリカ諸国。その中でもジンバブウェは、成人感染率(15-49歳)30%を超える、きわめて深刻な事態を迎えています。人々はその中で、どのようにエイズに立ち向かい、エイズと共に生きているのか。日本では、数字が一人歩きする一方で、現地の人々のエイズに対する取り組みはあまり伝えられておらず、それが南部アフリカのエイズの現実に対する理解や共感を妨げる一つの原因になってきたように思います。

芦田崇さん(現在、「(特活)シェア=国際保健協力市民の会」タイプロジェクトスタッフ)は、2001年1月から12月までの一年間、ジンバブウェでエイズに取り組むNGOの連合体「ジンバブウェ・エイズ・ネットワーク」(Zimbabwe AIDSNetwork、以下「ZAN」)の本部で、インターンとして情報統括者の業務についていました。保健分野NGO研究会事務局では、2002年7月31日、芦田さんにインタビューを持ちました。芦田さんはジンバブウェでエイズに正面から取り組む人々の姿を生き生きとお話してくれました。以下は、インタビューをまとめたものです。

現場での活動を求めて

事務局:ジンバブウェ・エイズ・ネットワーク(Zimbabwe AIDS Network, 以下ZAN ホームページは http://www.kubatana.net/html/sectors/zim001.asp?sector=HIVAID&details=Tel&orgcode=zim001)という団体に参加したきっかけは何ですか。

芦田:1998年から2000年にかけて、アメリカの大学院で社会福祉・社会政策の観点から国際協力、「特にアフリカにおける社会開発」を学んでおり、その関係で3カ月、カメルーンに滞在しました。その後、大学院における研究のメインテーマの一つであった、アフリカにおけるエイズ問題に関する国際協力の仕事を現場でぜひやりたいと思っていたところ、途上国に人を派遣する事業を行っている米国のNGO「Visions in Action」がジンバブウェに派遣する人を募集していたので、これはチャンスだと思い、全額自費で応募しました。ZANで仕事をしたのは、2001年の1月から12月までの1年間です。

事務局:ZANというのは、どのような団体なのですか。

芦田:本部はジンバブウェの首都であるハラレにあります。ジンバブウェでは、エイズ関係のNGOは全国に150以上もあるのですが、それらをアンブレラ組織としてまとめているのがこの団体です。

事務局:具体的には、ZANはどんな仕事をしているのですか。

芦田:ZANの仕事の柱は二つあります。一つは地方にあるNGOのトレーニングと情報収集・交換。地方にあるエイズNGOのキャパシティ・ビルディングや、NGOのやっているプロジェクトの評価、活動に必要な新しい情報を伝えていくことなどです。もう一つは、NGOの声をまとめて、政府に対するアドボカシーをしていくことです。

事務局:芦田さんはどのような仕事をしていたのですか。

芦田:ZANのハラレのオフィスにて、インフォメーション・オフィサー(情報統括者)という仕事をしました。インターンと言えどもオフィサーレベルとして扱ってもらい、責任ある仕事をさせてもらいましたね。メンバーNGOの活動の中で他のメンバーに有用な物をピックアップするため非常に多くのNGOの方とあいました。その外にも健康福祉省のエイズ担当官へのインタビューですとか、国内外におけるエイズ関連の情報収集も私が担当でした。最終的にはそれをまとめてニュースレターを作成までやっていました。

最近ではインターネットの普及で、海外から質問や支援の話が来ましたので、その窓口となるのも私でした。

その他にも、プログラム担当者の業務量が多かったもので、アシスタントとしてサポートしました。オフィス内では比較的若手だったもので、ZANが主催する様々な会議や研修にオブザーバーやアドバイザーとして参加するために、各州を飛び回っておりました。

NGO活動の中心:ホーム・ベイスド・ケアの実践

事務局:ZANの設立の経緯や歴史について少し教えてください。

芦田:ZANが設立されたのは90年代初頭でしたが、ジンバブウェ政府からNGOとしての認証を受けたのは94年でした。当初は、全国にあるローカル・エイズNGOのネットワークと、患者・感染者のネットワークという二つの側面を持っていました。しばらくして、患者・感染者のネットワークの方が分離して新しく「ジンバブウェ全国AIDS患者・HIV感染者ネットワーク」(Zimbabwe National Network of People Living with HIV/AIDS、以下ZNNP+)というグループとなり、ZANの方はジンバブエ国内でHIV/AIDSに関連するプロジェクトを行っているNGOのネットワークとしての仕事に集中することになったのです。

事務局:ジンバブウェには、患者・感染者であることを公表している人はいますか?

芦田:もちろん、います。最初に患者・感染者であることを公表した女性が、ZNNP+の基盤を作ったのです。彼女は患者・感染者の組織化に取り組み、もう亡くなりましたが、今でも語り継がれています。今でも、ZNNP+は、その設立者の故郷である町で全国大会を開いています。彼女の功績もあって、ZNNP+は、今ではジンバブウェの全国全ての州に支部があり、代表がいて、その上に国全体の組織があるという風に、非常に大きくて整備された組織となったのです。

事務局:ZNNP+やZANでは、南アフリカ共和国で患者・感染者の団体がやっているような、抗エイズ薬を求める運動は展開しているのですか?

芦田:それは、今の所大きな動きにはなっていません。現在、抗エイズ薬は、安くなっているとはいっても月200ドルもするので、一般の人々が薬を得られる状況にはありません。ジンバブエにはエイズ税がありますが、その税金を使っても、すべての感染者をカバーするのは不可能です。また、病院等の設備の観点からも、全国的に抗エイズ薬を受けられる状況にはありません。よって、「患者・感染者に抗エイズ薬を」という要求を政府に対してしないのではなく、NGO側も現実を理解してるがゆえに要求しようにも言えない、というのが実情です。

事務局:ZANに参加しているNGOが展開しているケア・プロジェクトとしては、どんなものがありますか。

芦田:多くのNGOが行っているのが、在宅の患者・感染者に対するホーム・ベイスド・ケア(HBC)です。NGOによってトレーニングされたボランティア達が、コミュニティで生活している患者・感染者の家を訪問して、健康管理や栄養バランスの確保をしたり、結核など日和見感染の状況などを見極め、必要に応じて、医療機関につなげるのです。

事務局:結核については、ジンバブウェではどのような体制が取られているのですか。

芦田:結核の治療は無料です。全国の主要都市に結核センターがあり、そこにつなげることによって医療を受けられるのです。

事務局:ZANは、他の国際NGOと一緒に仕事をすることはあるのですか。

芦田:ほとんどの国際NGOもZANのメンバーですから、もちろんあります。たとえば、ZANは、イギリスのアクション・エイド Action Aid と提携して、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)のジンバブエにおける窓口となるべく動いています。また、赤十字が地方においてホーム・ベイスド・ケアのボランティアを育成するプロジェクトを行う際には、ZANに参加しているNGOと共同で行ったりという事もあります。ただ、こうしたプロジェクトには、融通が利かない点があったりします。エイズに関するプロジェクトだと言ってホーム・ベイスド・ケアをしてしまうと、その対象となっている人がHIV感染者だということを事実上、明らかにしてしまうことにもなります。地方ではエイズに関するスティグマ(差別)が強いため、それを恐れてサービスを受けない、という皮肉な現象も起っています。また、ホーム・ベイスド・ケアだから家庭訪問しかできない、ということで、病状の悪化した人を地方の中心都市の病院まで車で運ぶ、ということができない、など、厳しい問題も起っています。

予防啓発:子どもたちによるメッセージ

事務局:予防啓発や教育については、どんなことが行われていますか。

芦田:予防教育はどんなメッセージを、どんなやり方で出していくかが問題です。ただ、ジンバブエの場合、政府やNGOの出すメッセージに統一感がない印象を持っていました。もちろん、それはZANが努力すべき分野なのでしょうけど。(笑い)例えば、「国際人口サービス」(Population Service International, PSI)が「エイズは怖いからコンドームを使え」というキャンペーンを展開しました。そのような恐怖に訴えるメッセージは、一般的には、患者・感染者への烙印や差別を強める、とされておりあまりいい結果は出ていないのですが、だからといってそのメッセージを変えてくれ、とPSIに要求するような動きはありませんでした。

若者への教育には、ZANは力を入れています。私は各地のNGOのプロジェクト評価や技術支援ということでいろいろな地方のNGOをサポートしましたが、印象に残っているのは、ある学校の若い先生の実践です。ジンバブウェでは、学校運営の方針はかなり校長にゆだねられており、エイズ教育に関しては、理解のある校長ならうまくいきますが、それがない校長だと、関心を持って積極的に取り組みたいと思っている教師の意向をつぶすようなこともあります。

私がサポートした、地方の学校の校長は後者で、その先生の提案は何度もはねつけられました。だから、その先生は学校の課外活動として、エイズ予防教育を行う生徒たちのクラブを立ち上げました。このグループは、歌とダンス、劇によって、学校の同級生たちにエイズのメッセージを伝えていこうとして、一生懸命がんばりました。やがて、児童生徒だけでなく、村人たちにもエイズのメッセージを届けるようになりました。たとえば、村人がもっとも集まりやすいバーの前で歌を歌って村人たちを集め、エイズについての劇を上演します。それで、「それだったら、こうしたらいい」というような村人たちの意見を出してもらって、村人たちに参加を促しながらエイズについての知識を深めていく努力をします。村人たちも、なかなか大人がことばでメッセージを伝えようとしても聞く耳を持たないことがありますが、子どもたちが一生懸命伝えようとすれば、耳を傾けてくれることが多いのです。

事務局:学校でのこうした取り組みは、日本ではほとんど見られないものですね。

芦田:ジンバブウェでは、こうした取り組みを学校単位、村や町の若者グループ単位で行っているところが結構あるのです。ジンバブウェの文化省は、ダンス・グループの活動を支援して、オフィシャルにグループの登録を行い、全国でコンテストを開いたりしています。最近ではエイズについてのメッセージを伝えるグループも増えています。

事務局:有名なミュージシャンや芸術家などによるエイズ予防啓発などは行われていますか。

芦田:ミュージシャンがエイズに関するメッセージソングを歌うということは、結構あります。たとえば、ジンバブウェで一番人気のあるミュージシャンの一人、オリヴァー・ムトゥクジ Oliver Mtukudzi。ジンバブウェでは、「トゥク」(Tuku)という愛称で呼ばれていますが、この人がエイズに関するメッセージソングを歌っています。

エイズ:社会構造全体にかかわる問題

事務局:ジンバブウェの首都ハラレでのエイズに関する活動について教えてください。

芦田:ZANに加盟しているローカルNGOは150以上ありますが、そのうちの40くらいがハラレを主な活動拠点にしています。ホーム・ベイスド・ケアを行っている団体が多いですが、予防啓発のためのアウトリーチ活動を行っている団体もあります。今、問題なのは、どの団体がどの地域やどの対象をカバーしているのかはっきりしないことです。これについては、各団体ごとの領域の区分けなどができればいいと思っています。実際にUNICEFがこうしたことに手をつけようとしたこともあるようですが、まだうまくいっていないのが状況です。

事務局:エイズによる孤児などに関しては、どのようなことが行われていますか。

芦田:エイズ孤児の問題は深刻です。地域や大家族での受け入れが追いつかず、孤児のためのシェルターが、キリスト教の団体などによって営まれています。エイズ孤児の問題は、農業などとも関係する問題で、農村などでは家族を支える中堅世代がエイズで死んでしまい、老人と子どもだけが取り残されるという状況が出てきています。このため、ZANはジンバブウェのエイズ関係以外の事業をしているNGOとも協力関係を結んで、ネットワークを広げていこうとしています。ジンバブウェには、広くNGOの連合体として全国NGO協会(National Association of NGOs:NANGO)があり、ZANはこのネットワークとの協力関係を作って、エイズの活動だけではたりないところを補っていこうとしています。

エイズ問題にも影を落とす白人支配の構造

事務局:ZANの活動は非常に積極的ですね。

芦田:ZANは、なんとか自分の力で解決への道を切り開いていきたい、という強いポリシーを持っています。

私が以前訪れたカメルーンと比較すると、ジンバブウェの人々は「白人支配」による心の抑圧を未だに抱えているところがあります。たとえば、ロバート・ムガベ現政権による白人からの土地取り上げ政策が国際的に問題になっています。ムガベ政権については、独裁だとか、逆に人々のためにやっているとか、評価が極端に分かれていますが、私はどちらでもないと思います。ムガベ政権はもともと土地改革に消極的で、今は追いつめられて人気取りでやっているわけです。首都では、高い失業率の事もあって、変革を求めるという気運が強いため野党のMDC(Movement for Democratic Change: 民主主義のための変革運動)の人気が高いですね。一方、地方ではムガベ政権が根強く支持されている、という印象を持っています。

問題の根源は、条件の良い土地がすべて白人が支配し、黒人の農園労働者を働かせて、何千万ドルというものすごい高収入をあげている、その一方で黒人の多くが貧しい暮らしを強いられている、というところにあります。こうしたギャップが人々の精神に及ぼす悪影響は計り知れないものがあるのではと思います。逆にカメルーンは、みんなが貧しく、逆に精神的なねじれは感じなかったですね。

エイズに関しても、白人農場主の農園で働いている黒人の農園労働者の集落には、NGOはつい最近まで入れてもらえなかったという現実があります。農園労働者たちがエイズでばたばたと亡くなり始めて、労働力の減少が問題となるにいたって初めて、ようやくこうした集落でNGOが予防啓発などの活動が出来るようになった。

事務局:ジンバブウェのエイズ問題の中で、他にターゲット・グループとして挙げられるのは何でしょうか。

芦田:刑務所に於けるエイズ問題や、ゲイ・コミュニティにおけるエイズ問題もあります。政府がジンバブウェにゲイはいないというのを建前にしており、ゲイの状況には厳しいものがあります。一方、刑務所には多くの人が詰め込まれており、刑務所でのHIV感染は深刻ですが、これは刑務所内での同性間性行為によるもので、政府としてはその存在を認めたくない。しかし、刑務所内でHIV感染を防ぐための現実的な対応をする必要がある。当局者としては、こうしたジレンマに挟まれて困惑し続けているというのが実情のようです。具体的に言いますと、政府の立場がある関係で、法務省の刑務所担当官は健康福祉省にコンドームの配布を要求できないという状況が起っています。ですから最近では、法務省担当官からの要求を受けて、NGOと刑務所担当官との非公式な打ち合わせなどが行われています。

事務局:日本では、南部アフリカのエイズ問題については数字だけが一人歩きして、人々がそこでどう生き、エイズとどう向き合っているのかはあまり紹介されてきませんでした。今日のお話を聞いて、ジンバブウェの人々はエイズに対してせい一杯向き合い、取り組んでいる、というのがとてもよくわかりました。今日はどうもありがとうございました。(2002年7月31日 飯田橋にて)

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