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軍隊でのエイズ予防
国連、エイズとの戦争で、平和維持軍と兵士に狙いを定める

2001年6月に発行された国連アフリカ専門情報誌「Africa Renewal」エイズ問題特集号掲載記事です。

コフィ・アナン国連事務総長が、国連エイズ特別総会の場で訴えたようにHIV/AIDSが「現代の発展に対する最大の挑戦」であるということは今や広く受け入れられている。この死の感染症との「戦争」を呼びかける世界の指導者の数は増え続けており、指導者たちは、この病気で亡くなった人の数は、最近アフリカ大陸で発生したすべての戦争の死者を累積したものよりも多いと訴える。

しかし、戦争そのものが、アフリカでHIVが急激に広まった原因であるとの強力な証拠がある。国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、紛争によって人々は、経済的、かつ社会的な移動を余儀なくさせられると主張する。ここには、難民や国内避難民の強制移動が含まれ、その結果として生計手段の喪失、家族離散、保健や教育サービスの破綻、急激に増加するレイプや売春がもたらされる。これらすべてが、HIVや他の感染症の急速な拡大につながっている。軍関係者も、交戦国の兵士であるか、あるいは平和維持活動に参加しているのかに関わらず、この死の病に感染し、そして他者に感染させる危険性を抱えている。

2000年1月10日に開催された国連安全保障理事会(安保理)は、アフリカでのHIV/AIDSの脅威についての前例のない議論を行い、紛争とこの病気との関係に世界の注目を集めた。初めての保健問題についての討議の後、安保理は7月に決議案第1308を採択して、HIV/AIDSが「安定と安全保障に対する脅威」であることを宣言するとともに、アナン事務総長に対して、国連平和維持活動局(PKO)を通じて、平和維持軍に対するエイズ教育および予防のための研修を強化するように提言した。2001年1月に開かれたHIV/AIDSに関する第4回安保理会合で、UNAIDS事務局長のピーター・ピオット博士は、安保理が引き続きこの問題に関心を持っていることを賞賛した。「安保理がエイズを重要な問題として捉えているという単純な事実が、強力なメッセージとなるのです」彼は続けた。「安保理は、エイズに対する世界的な戦いを支援していくことが、自分たちの主要な仕事の一つと考えています。」

不確かな影響

どの紛争がどの程度、HIV感染拡大につながっているのかは不確かである。HIV感染の危険性が増大する紛争状態においては、正確な感染率を把握したり、どのように感染していくのかを特定したりすることは困難な作業である。しかし、限られた情報からでも、事態の深刻さが窺い知れる。例えば、西アフリカの平和維持活動から帰国したナイジェリア軍に対して、HIV/AIDSと戦うための市民と軍の共同戦線(CMA)が実施した調査によれば、兵士の感染率は、一般国民の2倍以上にのぼっている。さらに、この調査で明らかになった非常に特徴的なことは、感染する危険性が、紛争地域での兵役年数に比例して、毎年2倍ずつ増加していることである。これは、紛争地域での任務とHIV感染が直接結びついていることを示している。

PKO医療部門の局長であるクリスチャン・ハル博士がアフリカ・リカバリーに語ったところによると、問題の一部をなしているのは、紛争が、HIV感染に関して、セックス・ワーカー(Commercial Sex Worker; CSW)と15歳から24歳の青年という二つのハイリスク集団を結び付けてしまうところにある。「難民や家を追われた人たちの間で、セックス・ワーカーの数が増加することは良くあることです。女性は、家族の生活を支えるための手段が他にないように思ってしまうからです。」

また、博士は、兵士たちも、これと同様に危険な行動に走りがちであると言う。「軍隊の文化は、男性の行動を極端なものにしがちです。」最も性衝動が強い時期にある何千もの若者が、家庭やコミュニティの束縛から離れ、危険を冒すことや、自らが無敵であるかのような感覚を教え込まれ、男性のあるべき姿として攻撃的であること、また強靭であることが推賞される。こういった態度は、性行動に影響を与え、しばしば、セックス・ワーカーとの接触へとつながっていく。

カンボジアで5ヶ月にわたって平和維持活動に従事したオランダ軍を対象とした調査では、45%の兵士が、在留中に売春婦、もしくは地元の住民と性交渉を持ったことが報告されている。ハル博士は、18ヶ所に及ぶ武力衝突、地域に展開する何万もの部隊、そして800万人に及ぶ難民と国内避難民、こういった事柄を考えれば、戦争がアフリカにおけるHIV感染拡大の主たる要因でないとすれば、かえってそのほうがおかしいだろうと言う。「戦闘地域には、HIVのような性感染症を含む感染症の感染拡大を引き起こす条件がそろっています。」

高い感染率

カンボジアでのオランダ軍人の行動は、軍隊生活で当然起こるであろうと考えられていることに、統計的な裏打ちを与えた。戦争があり、そこで若者が戦えば、彼らはセックスの機会を見出し、その避けられぬ結果として性感染症に感染する場合も出てくる。非常に最近まで、そのような病気は軍人にとってさしたる問題ではなかった。任地の司令官が「ウインクしてにやりとすれば」、そして医務官が強めの抗生物質を処方することによって解決する問題だったのである。しかし、アフリカの軍隊と警察でHIV感染率が急増しているという証拠を前にして、アフリカ諸国政府、国連そして国際社会は、兵役とエイズとの関係に注目するようになり、教育と予防プログラムを拡大させてきている。

UNAIDSは、平和時においてさえ、軍人のHIV感染率は一般国民に比べて2倍から5倍高いと推定している。紛争地域に在留している間の感染率は、彼らの出身国の感染率の50倍にもなる。CMA副代表のロジャー・イエガー博士は、CMAが1993年にHIVに関する教育と予防プログラムの開発を始めたとき、アフリカの軍指導者の一般的な反応は否定だったと語る。「何年にもわたって、彼らは、エイズは西側の同性愛者と麻薬常用者の問題であると言い続けてきました。」任務を完遂するための訓練を施し、兵員や装備を整えて戦地に赴くという軍の能力、「迅速に軍の体勢を整えるというこの能力をエイズが蝕んできて初めて、上級司令官は自分たちが問題を抱えているということを否定するのをやめ、「自分たちに何ができるのだろう」との問いかけを始めたのです」

既にHIVに感染している軍人や警官にとって、救われる道はほとんどない。彼らが守っている国と同様にアフリカの軍隊は、軍人たちに救命薬を提供できるような資金を持ってはいない。実際に、イエガー博士によれば、ほとんどすべてのアフリカの軍隊は、「最良の方法」をその政策として採用し、部隊に自発性に任せたHIV抗体テストとカウンセリングを提供することにしている。しかし、このようなサービスを実際に提供できる軍は非常にわずかである。また、多くの国でこの病気に未だにまつわる呪われたイメージ、そしてテスト結果が陽性と出た場合に除隊させられるかもしれないという危険性を考えれば、HIV抗体テストを志願する軍人がいるかどうかは疑わしい。

その代わりに、アフリカの軍指導者や国際社会は病気の予防に力を入れてきた。既存の訓練プログラムに取り入れるために、HIVについての教育と予防のための教材を開発してきたのである。ムセベニ大統領は12月に開催されたアフリカ開発フォーラム(2001年1月のアフリカ・リカバリー参照)で、ウガンダ軍はHIV陽性の軍人が差別されないように厳格な方針を採用していると語っている。ウガンダの感染率をそれまでの半分にしたと言うことで賞賛されているこのかつてのゲリラ指導者は、陽性者は軍隊にとどまり、病気が重くなるまで、軽作業に従事していることを強調した。

他のアフリカ諸国の中にも、軍隊向けのHIV教育に限られた資金を振り向ける国が出てきている。2月、ブルキナファソの防衛及び保健の両大臣は軍の最高司令官と会談して、政府の反エイズ・プログラムの一環としての、軍を対象とした反HIV/AIDS行動計画について合意した。この会談は、先立って行われた軍隊でのHIV感染に関する秘密調査の結果を受けて行われたものである。行動計画には以下のことが掲げられている。

  • 教育と予防プログラムを行うことで、新たな感染を毎年5%ずつ減らしていく。
  • 新兵がHIV陰性であることを確認する。
  • 軍関係者に対して任意、匿名かつプライバシーに配慮したHIV抗体テストを実施する。
  • 感染者にはカウンセリングを実施するとともにジェネリック薬を配布する。
  • 感染者の家族および遺族に対して社会的、経済的支援を行う。

この計画を実行に移すために必要とされる2001年の費用は、1億7800万CFA(セーファフラン、約25万米ドル)と見積もられており、資金は国連開発計画、世界銀行、多数の二国間援助機関、および複数の国内で活動する反エイズ団体から拠出される。軍司令官のアリ・トラオレ(Ali Traore)大佐は、今後エイズとの戦いを毎年の防衛計画の特色とすることを公約している。

他のアフリカ諸国にも、軍を対象とした二国間援助が届き始めている。例えば、10月アメリカ国防省は、同盟関係にあるアフリカ諸国の軍に対して、HIV感染防止を目的とする、流行病と戦うための指導者と投資(LIFE)プロジェクトを1000万ドルの予算でスタートさせた。LIFE責任者のデビッド・ハモンは、アメリカはHIV感染防止のために「研修者の育成」に力を入れていると語った。現在行われている研修方法を改善するための技術支援や、軍隊でHIVの感染がどの程度進んでいるのか、またどのような経路で感染しているのかの調査への支援を行っている。

平和維持軍がHIV感染拡大の原因か

国連が、平和維持軍に参加している兵士のHIVとの戦いをどのように支援していけるのかについては、加盟国、特に平和維持軍に自国の部隊をたびたび派遣している国々の政策や態度によって左右される。兵士に対して行う訓練の内容や彼らの健康について責任を負っているのは、部隊を派遣する国々である。PKOは、各国のHIV/AIDSプログラムについて、助言を行っている(しかし、命令することはできない)。国連自身が知らず知らずのうちに、世界にウィルスを撒き散らしている張本人かもしれないとの懸念の中、この問題の重大さは増してきている。アメリカの国連元大使リチャード・ホルブルックは、2000年1月の安保理で、「残念ながら平和維持軍を通じて、HIV感染が拡大しています」と語っている。

研究者たちが、ホルブルック氏の発言にまず間違いがないとする一方で、データがそろっていないために、問題がどの程度深刻なのかを正確に図る事は不可能な状況にある。公式に文書化されているのはわずかな事例に過ぎない。危険性をかなり正確に把握することができるであろう、任務開始前と終了後の強制テスト導入に賛成する国はほんのわずかである。

懸念は的を得ていると言えるだろう。ハル博士は次のように語る。「国境を、そして大陸間を膨大な数の若者が行き来しています。非感染地域から感染地域へ、また感染地域から非感染地域へと移動が行われます。国連が、地域にウィルスを持ち込むようなことにならないか、私たちは非常に懸念しています。また、平和維持軍がウィルスに感染して、帰国するようなことがあってもなりません。」

平和維持軍に対して、強制テストを実施することへの反対は、人権問題からであると博士は言う。「私たちには、自分たちが選んだ職業から排除されるかもしれないテストを兵士に受けるように強制することはできません。部隊の派遣国が、HIV陽性であると判明した兵士を差別しないと保証するまで、私たちは強制テストの実施を推し進めることはできないのです。」

国連総会で取り決められたように、現在PKOは、兵士に対して自発性に任せ、かつプライバシーを守ることのできるHIV抗体テストとカウンセリング(VCCT)を実施するよう、加盟国に強く求めている。また、平和維持軍の派遣国に対しては、軍の訓練プログラムに含まれるHIV/AIDSの教育・予防コースを強化するよう促している。

しかし、任意テストに関しての最大の障害の一つは費用である。「アフリカは、任意テストの必要性を最も強く訴えている地域です。しかし、テストの費用は安くありません。」ハル博士は語る。「彼らにはやる気があり、それについての政策もあります。しかし、実施するための財政手段を持っていません。」国連がVCCTを実施する際の費用を支援していこうとする動きが先進国の間で出てきている。しかし、その場合でも人権問題や倫理問題が残ると博士は言う。兵士の出身国政府ではなく、「テスト結果が私たちの手元にあることが重要です。そうすれば、結果がどのように活用されるかを監督することができ、差別のために使われるようなことはなくなります。秘密が守られることが重要です。」しかし、HIV抗体テストにまつわる様々な問題と同様に、平和維持軍に対する国連主導のHIV抗体テストについて、加盟国間の同意はない。将来HIV抗体テストを実施する場合、その結果を兵士の出身国政府に提供するよう準備会合で主張している国があることが報告されている。

予防に焦点を

HIV抗体テストについての議論が引き続き行われる一方、国連は、平和維持軍に参加する兵士ならびに文官への教育・予防プログラムを拡大している。2001年1月19日の安保理前夜、UNAIDSと平和維持活動局は、「平和維持軍がHIV感染についての啓発と予防のための活動を支持し、かつ実践するために必要とされる能力の構築を図っていく」ため、共に活動していくことで一致し、それを公式化するための同意書に仮調印した。PKOが現在使っている50ページのHIV/AIDSについてのハンドブックを簡略化し、すべての平和維持活動に従事する兵士のポケットに収まるようカードにして配布することにしている。このカードは国連公用語だけではなく、部隊を派遣している主だった国々で使用されている言語でも印刷される。また、カードを読む人たちの文化規範や感覚にも配慮して作成されることになっている。

昨年12月にストックホルムで開催されたエイズと平和維持活動についてのUNAIDS専門家会議での提言に沿って、アフリカ2ヶ所を含む各地に地域センターを設立し、国家間の連携を促進していくことになった。PKOの主任医務官として、ハル博士がPKOでこの病気に対処するために行われているあらゆる試みに関して中心的な役割(フォーカル・ポイント)を担っている。将来、すべての国連平和維持軍では、このようなHIV/AIDSについてのフォーカル・ポイントを任命し、HIVについての啓発や予防活動が平和構築のあらゆる場面に組み込まれていること、プログラムがすべての平和維持軍関係者や人道援助関係者に行き届いていること、地域で、また国際的に活動する市民社会団体間の連携が強まっていることを確認していくことになる。配布されるコンドームの数は著しく増加しており、診療テントだけではなく、兵士が集まるところ、例えば、トイレ、食事室、バーや娯楽施設などでも配布されている。新しい試みは、3月にシエラ・レオーネで始まっている。

変化する態度

ハル博士にとって、国連軍でのHIV感染を減らすにあたって、最も大変なことは、文化的に適切な研修教材を開発することではなく、危険で受け入れることのできない行動につながるような態度を変えていくことである。特に女性や子どもに対する態度である。そのため、博士によれば、PKOのHIV/AIDSイニシアチブは、HIVと紛争についての安保理決議第1308と同様に紛争における女性と子どもの権利保護を強調した第1325をも基にして作られている。レイプや売春は戦争の結果として、避けることのできない事として受け止められがちであると博士は言う。「しかし、そうであってなりません。これらのことは、平和時と同様に、戦時においても許されるべき事ではありません。」

博士は続ける。PKOは、態度に変化をもたらすことによって、任地での平和維持部隊の行動を変えていくだけではなく、「彼らが帰国したときHIV感染拡大を食い止めるために行動する」ようになってほしいと考えている。「私たちは、責任感のある平和維持軍を作りあげるために努力しています。平和維持軍として、武器の取り扱いや直接の任務の遂行を、責任を持って行うだけではなく、任地、あるいは帰国した際、周りの住民との関係についても責任ある行動をとってほしいと思っています。」

ハル博士は、態度を変えていくための努力の中で、国連の最も強力な味方は、任地で部隊と共に行動する宗教指導者であると言う。文化、政策あるいはアプローチといった違いはあっても、人類すべてに共通する礼儀や行動規範といったものがあると博士は主張する。「イスラム教の指導者に、コンドームの使用を促進してもらおうとは思っていませんし、このことは、カソリックの神父についても同様です。しかし、私は、自分たちの周りの人をどのように扱うか、特に最も弱い女性や子どもたちにどのように接するべきかについて、話してもらえると思っています。もし、世界人権宣言に則って、そして世界共通の倫理に則って行動すれば、それだけでこの病気の感染を食い止める何かをしたことになります。」

反エイズ活動の支持者と実践者

2000年12月11日から13日かけて、国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、ストックホルムで専門家を招いての会合を開いた。会合では、PKOのエイズに対する現在の方針を見直し、その改善についての提言がなされた。また、平和維持軍は、HIV/AIDSに対抗していくために展開される活動の「支持者、かつ実践者」として位置づけられるべきであり、国連は、平和維持軍がその役割を担うために必要とする支援を提供できるようにその政策を整備して行くべきであるとの宣言がなされた。以下がその主だった提言である。

  • 研修
    国連は、部隊を派遣する国々や国連の研修実施者が活用できるように、兵士が赴任前に受けるHIV/AIDS研修についての最低基準を設けるべきである。国連研修支援チームは、平和維持軍の増加にあわせて、増員されるべきで、特に「研修者の育成」に重点が置かれるべきである。

  • 行動規範
    国連は、平和維持軍を対象とした最新かつ強制力を有する行動規範を制定するべきである。この行動規範は、あらゆる場面での一般市民との接触について規定し、特にHIV/AIDSの予防を強調するものである。部隊の司令官は、本規範を大きく逸脱した兵士を送還できる権限を付与されるべきである。

  • HIV抗体テスト
    この問題の複雑さを鑑みて、UNAIDS事務局長と平和維持活動を管轄する国連事務次官は、HIV抗体テスト問題を分析し、総合的な計画を策定するために上級専門家による委員会を緊急に召集するべきである。
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